アレンの冒険[世界は広いなぁ~]編   作:チョモランマ斉藤

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旅立ちの時
1話


 

 

 

とてもとても大昔のお話。

まだ世界に朝も夜も無かった、そんな昔の時代のお話。

 

光のモノと闇のモノ

 

争いの理由はわからない

 

とにかく、2つの大いなる存在が衝突した

 

最初の衝突で大地が5つに割れた

 

闇のモノが全てを飲み込む暗闇を創れば

 

光のモノが全てを照らす灯りを創った

 

闇のモノが燃え盛る山を創れば

 

光のモノが命生まれる水溜まりを

 

朝を、夜を、火山を、海を

 

大いなる存在が戦う度に、この世界は荒れ狂い、美しく輝いていった

 

それが、この世界の成り立ち。どっちが勝ったかはわからない…案外、うまいこと世界ができて、満足しちゃったのかもね?

 

 

 

 

「んぁ……っ」

 

聞き覚えのない、だけどどこか懐かしい声で意識が覚醒するのを感じた。と、同時に体のあちこちに痛みを感じて目が覚めた。

 

「目が覚めたか、アレン」

 

俺を呼ぶ声に目を向ければ、こちらを見下ろす見知った顔があった。

木刀を肩に担いで、燃えるように赤い髪をもつ勝ち気な印象を与える美人。どうやら俺は全身をしたたかに叩かれて気絶していたようだ。額には濡れタオルが乗っていた。

俺の戦闘の師匠であり、姉のような存在でもあるフレイ姉。

 

「ぬぅん…なんだ、また負けちまったか」

 

痛む体をなんとか起こし、すぐそばに落ちていた木刀を拾って見てみる。

木刀は半ばからポッキリと折れていて、もう使い物にならなかった。

俺は手にした木刀をへし折られてから、そのまま全身に殴打を食らったようだ。相変わらず、容赦がない。

 

「ふふん、そうやすやすとワタシに勝てるとでも?」

 

いや、いやいや。ドヤ顔で言ってますけどアナタ我が国の最高戦力だからね?

そんな簡単に勝てるなんて思ってないわい!

作戦を練りに練ってのこの結果だよぅ!

うぅん、ちきしょうめ。今回はかなり良いところまで行ったと思ったんだけどなぁ。また作戦を練らなければ……。

くそぅ。次こそは必ずギャフンと言わせてやるぜ……。

だいたいさぁ!強すぎるんだよ!

そして大人げない!昔っからそう!

 

 

「アレン」

 

「ん?」

 

「お前はいつまでたっても世話のかかるヤツだなぁ」

 

「!!」

 

俺がブツブツと心のなかで文句を呟いていると、美しい顔をニヤニヤとさせた戦闘の師匠兼姉がそんなことを言ってきた。

 

カッチーン!おうおう、おうおう言ってくれるじゃねぇか!こちとらアンタら幹部に毎日しごかれて何度死にそうになったことか!

そりゃあ俺は"魔族"と"人間"の"ハーフ"さ!半人前よ!それに俺の義母は"魔王様"さ!強く在らねばカーチャンの顔に泥を塗っちまう気がする!多分だけど!

戦闘訓練だってこの国の最高戦力が直々に指導してくれてるってのも分かってる!でもさ、でもさぁ!

 

「少しくらいは誉めてくれたって良いじゃねーかチキショォォ!」

 

うわぁぁんと泣くフリをしながら、笑う彼女の横を走り抜ける。

泣かないさ、男の子だもの!

 

「………あざっした」

 

戦いの余波で所々崩れてしまっている訓練所から出る時に、お礼を言うのは忘れない。

彼女も忙しいのにこうして訓練してくれたんだからな、毎度の事ながらキチンと手当てだってしてくれている。親しき仲にも礼儀ありだもんな。

 

「ああ、お疲れ、アレン…………しっかりと強くなっているよ、お前は」

 

そんな俺を、フレイ姉が楽しそうに笑って見送るのを当然俺は見ていない訳で。

走りながら

(ああ、次はウィン姉の座学かぁ…体を動かした後だと眠くなっちゃうんだよなぁ。でも寝るとめっちゃ怒られるしなぁ……)

なんて思っているのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

さて、自己紹介が遅れたな。

俺の名前はアレン。アレン・ニンバス。

世界に5つある大陸の1つ。魔族達と魔物・魔獣達が住む"サタナキア大陸"にある、魔王が統治する"ドライグ国"。

 

つまり、俺はこの国の魔王である"魔王ゼノ"の義理の息子でい!

住んでる場所は魔王城!ヒュー!格好いい!

 

歳は17歳。幼い頃に俺は人間と魔族のハーフなんだとカーチャンに教えられた。16年位前に突然玉座に現れたんだってさ。

実の両親は俺が物心つく前に死んでしまったみたいで、それからは魔王であるカーチャンが母親代わりとして育ててくれている。

実の両親を知らない俺にとってはカーチャンこそが母親だ。

 

で、魔王業でなにかと忙しいカーチャンに変わって俺の面倒を幼い頃から見てくれてるのが、我が国の最高幹部かつ、俺にとっては姉のような存在の

フレイ姉(魔王国最高戦力)

ウィン姉(魔術長兼魔王補佐)

アリア姉(隠密部隊長)

シェリス姉(医療長)

 

だ。

 

英才教育と言えば良いのかな?

彼女達から幼い頃より様々な技術を学んでいる……叩き込まれているのが俺の今の現状だ。

 

最初こそなんでこんなに厳しく鍛えられてるのか訳も分からず、言われるがままに訓練をしていたけれど、成長した今となっては正直言って有難い。

なんといってもこの国の中枢を担う人達から直々に指導してもらってるわけだから、この国の極々限られた場所しか知らん俺にとって彼女らの指導が全てだと言っても良い。

あ、あともう一人居たか…ふふふ。

 

 

城のある町を一歩外に出れば、凶悪な魔物や魔獣達が生息していて、ソイツ等と戦う力がなければとてもじゃないが出歩ける環境じゃ無い。

 

「アレン!私の話を聞いてるか?」

 

「あい!!?」

 

と、言うのを今しがた俺を叱った人に昔教わったし、実際に連れていかれて学んだ。強制的に。

だからこその、この厳しい訓練なんだなぁ。と、幼い頃に無理やり納得したのを覚えている。

魔獣に追いかけられながら。

 

 

今教わっている座学のあまりの難しさに軽く現実逃避なんかをしていると、ウィン姉の声によって無理矢理意識を覚醒させられた。

 

 

「たるんでいるようだな。もう一度フレイのところに行くか?」

 

「やです」

 

緑色の長い髪に切れ長の目、10人中9人が美人であると断言するクールビューティーが俺を睨み付けていた。

(残りの一人は多分変態)

俺の魔術と教養の師匠のウィン姉である。この国で一番魔術と常識に詳しい人だ。

カーチャンの補佐役であるにも関わらず、何気に一番長い時間俺に付き合ってくれているのだ。

いつ休んでいるのだろうか、少し心配。

 

「なら、集中しろ」

 

「はい」

 

ウィン姉の脅しに即効で屈しつつ、黒板に書かれている事をノートに写していく。

今日の授業内容は魔力コントロールの応用編。

いかにして体内の魔力を効率良く練り上げて、"魔術"や"魔力纏い"を併用するか。

黒板にはびっしりと文字が書かれており、可愛らしいイラストで魔術を放っている女の子も描かれている。

 

この世界に住む人々は体内にある魔力と呼ばれる力を使用して様々な魔術を扱うことが出来る。

4つの属性からなる、火・水・風・土の攻撃魔術。

攻撃魔術には初級から上級まで様々な攻撃魔術が存在して、上級になるにつれて修得難易度も威力も上がる。

さらには、敵やモノを探したり、様々な回復薬を作ったりする補助魔術なんてのもある。

 

ウィン姉からは、今のところ生存に必要な魔術だけ教わっている。

他は、おいおいなのだと。

 

 

んで、特定の人物しか持たない、又は修得出来ない特別な能力なんかもあったりする。

4つある属性に属さない攻撃魔術であったり、補助魔術であったり。

 

 

そして、主に近接戦闘で使用される魔力纏いと呼ばれる自己強化。

自身の魔力で体を強化して攻撃力やら防御力やらの使用者の身体能力を上げる技術。こちらは武器やモノにも纏わせることが出来る。

 

 

魔術も魔力纏いも、全て綿密な魔力コントロールが必要とされる、この世界で生き残るために必要な技術達。

覚えたからといって終わりじゃなくて、2つの技術は修得した人の錬度によってその性能が大きく変わる。

 

先程のフレイ姉との戦闘訓練では俺が木刀に纏った魔力より、フレイ姉が木刀に纏った魔力の方が上回ったから俺の木刀がへし折られてしまったのだ。

まだまだ修練が足らん結果って奴だね。

 

 

そして、目の前で教鞭を振るうウィン姉。

彼女も、この国の魔術長という肩書きが表す通りに様々な魔術を修得しており、魔力コントロールはこの国随一だ。

身体能力と魔力量の差でフレイ姉には一歩劣るらしいが、それでも多彩な魔術を扱うウィン姉がこの国の戦力の1人である事に変わりはない。

 

というか、身体能力も魔力量も劣ってるのに、あのフレイ姉にたった一歩で済むのが凄い。

俺がもし魔術だけでフレイ姉と戦えと言われたら、瞬殺される自信がある。

てかされた。

 

「アレン、今どれだけの魔術を併用出来る?」

 

「えぇと、2つかなぁ。戦闘で言えば魔力纏いと索敵だよ」

 

「よし。じゃあ次からは追加で攻撃魔術も使えるように訓練してやる。喜べ、訓練中に寝てしまってもすぐに目を醒まさせてやる」

 

全く喜ばしくない事をサラリと言うウィン姉。

ひえぇ……。

ウィン姉もフレイ姉と同じくらい容赦の無い人だからなぁ……。

さっき言った魔術だけでのフレイ姉との戦闘訓練もウィン姉の指示だったし……。

 

 

こうして、俺の訓練漬けの毎日は過ぎていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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