アレンの冒険[世界は広いなぁ~]編   作:チョモランマ斉藤

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カーチャン。冒険者って大変なんだね。
いえーい!第一村人発見!


 

 

転移が終わったのを感じる。自然の匂いが俺の鼻腔をくすぐる。

さっきまで毒の森にいたからか、余計に空気が澄んでいるように感じる。

 

ここが新天地。ここからが俺の新しい生活のスタート地点なんだ。

期待に胸を膨らませ、閉じていた目をゆっくりと開ける。

 

 

 

「……?」

 

 

 

……どこだ此処。

いや、確かにカーチャンから何処へ飛ぶとか聞かされてなかったし、聞いてなかったか。

 

 

ふふ、俺ってばおっちょこちょいだぜ☆

 

 

誰も見てないのに額を叩いて舌を出しておどけてみる。

さて、反省は済んだ。

早速探索してみよう!

俺は改めてリュックサックを背負い直して歩き出す。

 

さて、時刻は何時くらいだろうか。

ついさっきまで夜だったのに、太陽が大分高いところにある。

ウィン姉が言っていたな。時差ってヤツか。

 

…………。

 

………えっ!?ミカエリス大陸か!?

サタナキア大陸の反対側じゃないか!!

うっそだろ!?

あの一瞬でここまで来たのか!?

ヤッベー。転移部屋ヤッベー…。

 

 

 

あまりの衝撃に戦慄していたが、驚いてばかりもいられない。

ただ単にここで朝を迎えた可能性だってあるし。うん。

 

 

改めて、周りを見てみる。

周りは…廃墟だろうか?崩れた家っぽいのが周辺にたくさんある。

崩れた家らしきものには植物が巻き付いていて、廃墟になってから随分と時間が経っているのか分かる。

 

 

 

索敵魔術を使用しながら暫く歩いていると、反応があった。

これは……人かな。行ってみよう。

 

 

 

…………………。

相手がどんな存在か分からない以上、慎重にならねばならない。

俺は反応の有った場所に気配を消して近付いてみる。

 

 

居た。人間…かな。

人間のおじいさんが一人でなにか作業をしているのが遠目から見えた。

害は……無さそうだな。とても弱そうだ。普通の人間だろう。

一応戦闘になっても大丈夫なように、俺は落ちていた木の枝を拾っておじいさんに向かって歩き出した。

 

 

 

 

「ン……誰ぞおるのか」

 

 

うへっ!ミカエリス語じゃん!!

俺も使う言葉を変えよう。ウィン姉に教わっていて良かった…。

さて…なにはともあれ!

俺も初めておじいさんの存在に気が付いたようにビックリしたフリをして、ペコリと会釈。

 

 

 

「あ、どうも、こんにちは」

 

 

「…こんなところにお主のような若いのが何の用だ…家出か?」

 

 

おじいさんの言葉にドキリとしてしまう。

いや、もちろん最初は家出のつもりだったけど、結局皆に送り出される形で来たからなぁ、違うかもなぁ。

 

 

 

「その…道に迷ってしまって。アレンって言います。アレン・ニンバスです」

 

 

うん、何一つ嘘は言ってないな。ミカエリスなんてもちろん来たことない。実際迷ってると言って良い。

 

 

「………そうか」

 

 

 

おじいさんは俺をチラリと見たら作業に戻ってしまった。

なんとなく気まずい雰囲気に俺が頬をポリポリと掻いていると、周囲に魔物の気配を感じた。

 

 

 

「また出おったか……」

 

 

 

俺とおじいさんの向こう側。そこから灰色の魔獣…アレは、図鑑で見たな。確かワイルドウルフだったかな。狼型魔獣の中で一番弱いヤツだ。

 

ワイルドウルフが3頭グルルル言いながら現れた。

 

 

 

「若いの…戦えるか。戦えないのであれば逃げろ。」

 

 

俺に声をかけながらおじいさんが側に置いてあった杖を拾い、立ち上がる。戦うつもりらしい

……ん?待てよ

 

 

 

「敵か!?敵なんだな!?よぉし!俺にまかせておくれおじいさん!アレン・ニンバス!新天地で初戦闘、いっきまーす!」

 

 

 

別に戦闘狂って訳じゃないと思うんだけど、初戦闘という事で妙なテンションになってしまった俺は、杖を構えるおじいさんを庇うように前に出る。

 

 

 

「ふふん。お前らみたいな犬ッコロ、ボッコボコのボコにしちゃる!」

 

 

 

ブンブンと手にした枝を振りながらワイルドウルフに向かって歩き出す。

初めて見る魔獣だが、このくらいならなんとでもなりそうだ!

笑みを浮かべて近付く俺にワイルドウルフ3頭がうなり声をあげて飛び掛かってきた!

 

 

 

よっしゃ!おいでワンちゃん!しつけの時間だぁ!

なんて思っていると後方からおじいさんの怒声が響く。

 

 

 

「バカめ、そんな枝で何ができる!」

 

 

 

ゴウッ!という音と共に、俺に襲いかかろうとしていたワイルドウルフ3頭が俺に当たらないように背後から放たれた炎に包まれた。

突然の事に慌てて振り返れば、おじいさんが杖を構えていた。

 

 

 

えぇー…。

あ、所々燃やされたワイルドウルフが逃げていく。キャンキャン言いながら逃げていく…。俺の初勝利が逃げていく……。

 

 

 

「ハァッ…!ハァッ…!」

 

 

「!!おじいさん!どした!?」

 

 

あんまりな展開に俺が呆然としていると、突如おじいさんが杖を落とし、胸を抑えてうずくまる。

その尋常ではない様子に俺は慌てておじいさんに駆け寄る。

 

 

 

「凄い熱だ…!ちょっとごめんよ!」

 

 

脂汗を浮かべて苦しむおじいさんの身体に俺は慌てて解析魔術をかける。

!!魔力がすっからかんじゃないか!!ええと、この辺りに使えそうな薬草は!?

 

 

キョロキョロと周りを見渡しても使えそうな薬草は生えていない。

俺はおじいさんの身体を寝かせて、使えそうな薬草を探しに慌てて走り出した。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「…………む」

 

 

「よかった、目が覚めたかい?」

 

 

 

しばらく走り回って、なんとか使える薬草を見つけることが出来た。一本一本に解析魔術をかけるのは骨がおれたぜ…。

俺はそれを使って魔力回復薬を精製し、おじいさんに飲ませた。

横に座っておじいさんの様子を伺っていると、うめき声と共におじいさんが目を開く。

 

 

 

探索魔術が使えれば良かったんだけど、初めて訪れた土地では使うことが出来ない。

探索魔術はその土地に生息している薬草やら魔獣、魔物達を実際に自分で見て、ソイツが放つ魔力を覚えて初めて使える魔術だ。

便利だけど、使いづらい。

 

 

 

「びっくりしたよ、いきなり倒れるんだもん」

 

 

「助けるつもりが…助けられるとはな…今日はもう無理だな…」

 

 

おじいさんが身体を起こして置いてあった道具を拾いだす。

俺もそれを手伝う。何の道具だろうコレ。あ、それはそれとして…。

 

 

「あのー……」

 

 

「…付いてこい。助けてもらった礼をせにゃならん」

 

 

お、やったあ!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

おじいさんが持ってきていた小さな荷車に道具を積み込み、ついでにおじいさんにも乗って貰って荷車をひいて歩き出す。

道中、おじいさんにいろいろと話を聞いた。

 

 

 

おじいさんはここから少し離れている町に1人で住んでいて、あの廃墟は20年くらい前に戦争で滅んでしまった小さな村だったらしい。

おじいさんはその戦争で、当時村に住んでいた息子さんを亡くしてしまったとのこと。

 

 

 

あの場所が魔獣達の住処となってしまったのを不憫に思い、魔法使い(魔術師の事か)だった頃の経験を活かしてモンスター(こっちでは魔物や魔獣をそう呼ぶんだったっけ)避けの護符を作成、あの場所に埋め込んでいたらしい。一人で。

 

 

 

「その…他に頼れる人は居ないのかい?1人じゃ危ないよ」

 

 

 

「娘夫婦と孫が近くに住んでおるが、お主と同じ事ばかり言う」

 

 

 

そりゃそうだ。

いくら一人で魔獣…モンスターか。を撃退できても、魔力切れで倒れちゃうんじゃいつ命を失ってもおかしくない。

 

 

 

綺麗に舗装された道を荷車をひいて歩く。

しばらく他愛もない話をしていると、すれ違う人が多くなってきた。町が近いのかな。

おじいさんがここで止まれと言うからまだ町も見えないのに何事かと思えば、舗装された道から外れた所にあったボロい納屋に荷車を隠していた。

 

 

 

このおじいさんめ…。なんて呆れながら2人で歩いていると、町が見えてきた。

おお、町だ。なんて、当たり前なことにいちいち感動してしまう。

 

 

 

「おや、モーゼスさん、お帰りですか」

 

 

「うむ」

 

 

おじいさんが門番の人と話している。

なにやら話し込んだあとに、おじいさんが俺に付いてこいと手招きする。

すれ違うときに門番の人に会釈をすると

「モーゼスさんが散歩中に倒れていた所を助けてくれたんだって?ありがとな!」

とお礼を言われた。へっへっへ

……いやおじいさん。あなた嘘を付いていますね?

 

 

 

 

「はえー…人がこんなに沢山」

 

 

「?……そんなに大きな町ではなかろうて」

 

 

 

初めて見る人の多さに俺が驚いていると、そんな様子の俺に不思議そうなモーゼスさん。

すみませんね。初めてなんですぅー。

 

モーゼスさんから離れないように町をキョロキョロと観察しながら歩いていると、モーゼスさんの家に付いたのだろうか。一軒家にモーゼスさんが入っていく。

 

 

お邪魔しまーすと家に入れば、元魔法使いというのもあって色々な道具が沢山置いてあった。お世辞にも綺麗に整頓されてるとは言えないけど。

失礼にならない程度に部屋を見ていると

 

 

「まあ座れ…なにか飲むか」

 

 

「ありがとう。あー…じゃあ水で」

 

 

「酒もあるぞ?」

 

 

「水で大丈夫だよ」

 

 

そうか、とモーゼスさん。

2つのグラスと酒瓶と水差しを持って俺の前に座ったモーゼスさんが頭を下げて俺にお礼を言ってくれた。

 

 

 

「改めて礼を言う。しかし、お主が枝をもってワイルドウルフの前に立った時は肝が冷えた。アレで立ち向かうのは蛮勇と言うものだ……だが、あのマナポーション、自分で作ったのか?」

 

 

 

「マナポーション?…ああ、魔力回復薬の事か」

 

 

 

 

「魔力回復薬……そうか、お主サタナキアの生まれか…もしくは親がサタナキアの者か」

 

 

 

「あ」

やっべ。

 

 

 

「随分と田舎から出てきたのか?ここも田舎ではあるが…お前のようなハーフは目立つ。この辺りでは見たことがない顔だ」

 

 

 

うっ。そうか…これで田舎なのか…知らなかった…。

しかし、俺が半人前というのも見破られたなぁ。

まあ、別に隠してないけど。

 

 

 

さて、どうしようか。

俺は半人前の証である赤と黒の髪の毛をいじりながら、なんて誤魔化そうか考えを巡らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

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