一度投稿したものを再編集して投稿しなおします。
余りにも辻褄が合わなすぎた…もう読まれてしまった方、申し訳ございません。
デビットさんの操る荷馬車に揺られ、俺達は王都へと向かう。
大きな荷車を引くのはこれまた大きな馬型モンスター2頭。
図鑑で見たことがあったな、たしか、そう。
バンエーという名前のモンスターだったかな。
その大きな体格に似合った体力を有し、人によく馴れることからもミカエリス大陸ではよく移動用に利用されるポピュラーなモンスターと図鑑に書いてあった。
「お義父さんを助けてくれてありがとうねアレン君!」
バンエーを観察していると、デビットさんが俺にお礼を言ってきた。
確か、モーゼスさんは散歩途中に倒れていた事になっていたな…話を合わせた方が良いのかな。
「お義父さんにも、一人で作業は危ないって言っているんだけどね」
「え?」
モーゼスさんが倒れた本当の理由をデビットさんは知っているようだった。
俺が驚いてデビットさんの顔を見たら、デビットさんは前を向いて苦笑していた。
「一応妻には散歩途中に倒れたと説明していたみたいだけどね」
「そうなんですか」
僕には分かるのさ。
と、デビットさん
俺がなんとも曖昧な返事をしていると、デビットさんが彼自身の話をしてくれた。
「僕はね、昔はアラドエル王都で働いていたんだよ!大陸の歴史や文化専門の学者でね!」
「へー!すごい!」
アラドエル国の学者さんか!すごいなぁ。
う、しかし。そうなってくるとサタナキアの文化にも詳しいのかな。
もしかしたらカーチャン達の事とか知ってるかもしれない…。
「ま、今はごらんの通り農家だけどね!たまにこうして王都へと町で採れた作物を運んだりしてるのさ!」
「へー」
「後ろを見てごらん、この荷馬車は保冷馬車と言われていてね、知ってるかい?」
保冷馬車?聞いたことがないなぁ。普通の馬車とは違うのかな?
俺は素直に首をふる。
「説明しよう!この馬車は長期の移動で作物や魚介類が腐ることのないように開発された画期的な馬車なのさ!」
ほほう、保冷馬車とな。
そういえば屋根のない荷台に作物を積み終わったあとに、荷台部分を覆うように上から箱のようなものを被せていた。
日除け的なモノなのかなと思っていたけど、違ったようだ。
「上に被っているカバーの中には氷モンスターの魔石が入っているのさ!その魔石から冷気をだして、中の作物が腐ることのないように温度を保っているんだよ!」
え、すごい。
そう思ってカバーを触ってみても、カバー自体に冷たさは感じない。
どういうことだろう?
俺が首をかしげているとまたデビットさんが説明してくれる。
「この荷馬車の開発にはとても多くの人達が関わっているのさ!」
デビットさんの説明によれば
人間、エルフ、ドワーフ、オーガ、獣人といった多くの種族があーでもないこーでもないと各々の知識を振り絞り、長い時間をかけて開発されたのだという。
保冷馬車の中は氷の魔石が備えてあり、カバーは熱を通さず冷気に強い特殊な素材で作られているのだという。また、荷台自体も同様の素材でできているというではないか。しかも冷気の温度調整すら可能らしい。
ほへー…スッゴい。
「すごいだろう?多くの種族が集まってそれぞれ知識を出し合えば、この世に作れないものは無いとさえ思えてしまう。この装置もそうだけど、これだけ技術が進歩したのはたった15年かそこらの話なのさ!」
「え?そうなんですか?」
「そうとも。アレン君は歴史は詳しいかい?」
どうだろう。一応ウィン姉がサタナキアの歴史は教えてくれたけど、他の大陸の歴史は自分で調べた程度だ。
しかも興味のある部分だけ。過去の英雄とか。
そういえば、ウィン姉はなんでミカエリスの言葉だけは教えてくれたのだろうか。
「この大陸については、あまり」
「?…そうかい!ならば説明しよう!なぁに、王都への旅は始まったばかりさ!僕と話でもしながら行こうじゃないか!」
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アレン君が生まれた直後くらいかな、ミカエリスで大きな大戦があったのさ。
とても大きな大戦でね。多くの人が参加して、多くの人が亡くなった。
魔王ギリアム。知ってるかい?サタナキア大陸1の大きな国を治める最大最強と名高い魔王さ。
彼は突然このミカエリスにある神聖シュラール王国へと戦争をしかけてきたのさ。
今でこそシュラール国は多種多様な種族の暮らす国だけど、大戦前は人間だけの国だったんだよ!
話の続きだけど、反対側にいる大陸の魔王が何故?誰も理由なんて分からなかった。
しかも当時サタナキア大陸はどことも交易なんてしてなかったしね、なおさらさ。
宣戦布告と共に大航空船団を引き連れて、魔王自らが周りの全てを破壊しながらシュラールに乗り込んできた。
圧倒的な力をもつギリアム軍にシュラール国の聖騎士達も立ち向かったが、陸から空から攻めてくるギリアム軍に苦戦を強いられていた。
戦況がシュラール国不利に傾いたとき、新たな別の魔王がシュラール王国にやってきた。
ミカエリスに住む様々な種族、エルフやドワーフ、オーガや獣人達を引き連れてやってきたのさ。
それが魔王ゼノだった。
?…どうかしたかい?なんでもないって?そっか!
なんにせよ、シュラール国はさぞ驚いただろうね。サタナキアから増援が来たかと思えば、なんと魔王ゼノはギリアム軍と戦闘を開始したじゃないか。
しかも自分達とは交流を断っていた多くの種族達と共に。
シュラールの友人からの話でしか聞いてないけど友人はとても感動したと言っていた。
傷付き、もうダメだと思っていたら、手をさしのべてくれたのがオーガだったのだから。
あのオーガだよ?三度の飯より戦好き!って有名な
そこからミカエリス連合軍とも呼べる部隊の快進撃が始まった。
大陸中のありとあらゆる種族が協力し、強大な敵に立ち向かう。
そうして、長い戦闘の末に連合軍は魔王ギリアム率いるギリアム軍を撃退した。
そこからかな。魔王ギリアムの治めるドゥニーム国を除くサタナキア大陸の6大国と、他の大陸の交易が開始されたのは。
シュラール国は、国を救ってくれた魔王ゼノや他の種族達に大変感謝して、過去の自分達を恥じ、多くの種族との友好関係を築いたのさ。
素晴らしい話だよね!
……どうかしたかい?アレン君?
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「とまあ、こんな感じで多種多様な種族との交流を開始したシュラール国は、多くのモノを発明した発明大国でもあるようになったのさ!」
デビットさんの話に俺はとても驚いた。
そんな事があったのか…全然知らなかった。
だから城にはシュラール産のハチミツとかあったのか。
というか!やっぱりカーチャンの名前を出さなくて良かった!この大陸にがっつり関わってるやんけ!!
「僕の義兄もね、他の種族との共存を夢見てたのさ。」
「それって、その、亡くなったっていう…」
「そうさ。今でこそシュラール国を参考にどこの国でも交易や交流がなされているけど、昔はそうじゃなかったのさ…。とても愚かな事だと思うよ。もっと早くに多くの人と理解し合えれば、こんなに素晴らしいものがもっと早く世に出回っていただろうに……義兄にも、この今の世界を見て欲しかった」
太陽のように明るいデビットさんが暗い顔をしている。
彼には彼の想いというものがあるのだろう。
俺が踏み込んで良いものでは無い。
「さ!暗い話はここまでさ!楽しい話をしようじゃないかアレン君!僕の家族の話を聞いてくれ!」
「お!良いですね、教えて下さい」
「僕には愛する妻と娘と息子が居てね。妻と息子はこっちに住んでいるんだけど、娘はなんと!王都の学園に居るんだよ!凄いだろう!?」
デビットさんはとても嬉しそうに話す。
さっきまでの暗い雰囲気など吹き飛ばすように。
王都まではどれくらい時間がかかるのだろうか。
俺はこの人ともっと話をしてみたいと思った。
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「もう20年以上前かな。妻との出会いはね、僕がフィールドワークに出ているときにモンスターに襲われていたところを助けられたのがきっかけさ!」
「ふむふむ」
「いやあ美しかった。魔法もさることながらモンスターに立ち向かうその勇姿!一目惚れというやつさ!」
「ほうほう」
「そのあと何度も何度も妻に交際を頼み込んだのを覚えているよ。今でも思い出す…。最終的に折れてくれてね。いざお義父さんに結婚の許可を貰いに行ったらこれまた反対されてね!お義父さんはとても頑固でね!大変だったよあっはっは!」
「へー…恋愛って奴ですかぁ」
「アレン君は恋人は居ないのかい?」
「はい、そういったものは全く」
「そうかい!ならば娘には絶対に会わせないよ!」
「えっ」
「君からはどことなくモテの波動を感じるからね!絶対に会わせないよ!今ならお義父さんの気持ちがよく分かる!」
「は…はあ…(モテの波動…?)」
「そういえば、僕はいつもこのペンダントに家族の写真を入れているのさ。見るかい?」
「え?良いんですか?」
「ダメさ!娘が写ってるからね!見せないよ!」
「もぉー!なんなんだよこのオッサン!!」
俺は敬語を使うのを止めた。
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夜、宿屋近くの草原にデビットさんに誘われて2人して寝そべりながら星空を眺めていた時の会話
「見てごらんよアレン君。綺麗な夜空だろう?」
「おお…星がこんなに沢山…」
「あそこに白いモヤがかかったような星の1団が見えるかい?僕の指の先さ」
「あれっすか?」
「そうさ!あれはね女神の母乳と呼ばれているのさ」
「へー」
「命名は僕さ!僕しか言ってない。ふふふ、女神の母乳…素敵な響きさ」
「………………」
「星と星を指で繋げば…ほら、ご覧よアレン君!巨大なおっぱいさ!」
「………………」
「僕は王都でこんなことばかり言っていたら、エロ学者なんてとても名誉なあだ名をつけて貰ったのさ…嬉しかったなぁ!」
「………………」
「アレン君、寝たのかい?…起きてるじゃないか!…あれ?どこに行くんだいアレン君!そっちは宿屋だよ!アレン君!おーい!」
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次の日、よく晴れた日に荷馬車に揺られての会話
「おや!あそこを見てごらんアレン君、ワイバーンだ」
「あ、ホントだ……襲ってこないの?」
「今は繁殖期じゃないからね!よっぽどの事がない限り地上には降りてこないよ。お義父さんの護符もあるしね!」
「ふぅん」
「まあ、この辺りは野党も居ないし、平和なものさ!」
「護衛のつもりだったんだけどなぁ」
「あっはっは!もしもの時は頼むよアレン君!あ、ワイバーンが上を通過するね!気を付けないと」
「?襲ってこないんでしょ?」
「彼らは空でうんちするのさ!天より降り注ぐ巨大なうんちさ!」
「……………」
「しかし勇敢だねアレン君。冒険者になりたいんだって?」
「うん、そのためにここに来たんだ」
「だったら、王都の前でお別れかな!」
「え?どうしてだい?」
「王都では新規の冒険者登録はしてないのさ。冒険者にもランクってのがあって、王都ではCランク以上の冒険者しかクエストを受けられないんだよ」
「そうなのかい?知らなかった…ありがとうデビットさん」
「お安いごようさ!娘はやらないけどね!」
「もー!わかったって!大丈夫だから!」
「それは娘に興味が無いって事かい!?」
「どうしろっていうのさ!!」
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翌朝、王都近くの町付近での会話
「お義父さんは昔は高名な魔法使いだったんだよ。アレン君!」
「モーゼスさんが?」
「そうさ。今では魔法使いも引退して、故郷でもあるあの町に帰ってくるまでは王都でも名の知れた冒険者だったのさ」
「え!大先輩じゃん。色々教えて貰いたかったのに」
「あっはっは!これからは君達若い世代の時代だからね。お義父さんも遠慮したんじゃないかな」
「そんなものかなぁ」
「そんなものさ!僕はね、アレン君」
「んー?」
「君のようなハーフが、今の時代の象徴だと考えているのさ」
「?」
「今まで世界でもハーフは珍しく、場所によっては禁忌とまでされていたのさ。僕は学者として色々な文献を読み漁り、時には遺跡に出掛けて調べたけれど、君達ハーフの存在はこの国のどこにも書いてなかった」
「うん」
「思想も、文化も、どこか自分達とはわかり会えないものだと勝手に決めつけていたのさ。もちろん人類に友好的な種族とは交流もあったけれど、根っこの部分では、お互いを信用できてはいなかったのさ」
「…」
「だけど、あの大戦で全ての価値観が変わった。誰かの為に…自分以外の種族の為に、人々は協力し合えるのだと。その証がこの保冷馬車であり、君達ハーフなのさ」
「…」
「君を、義兄に紹介したかったよ。アレン君。僕の、僕達の父親を救ってくれた大切な恩人を。」
「光栄だよ。そういって貰えて」
「僕はね、アレン君。心から義兄を尊敬しているんだ。過ごした時間は短くとも。血の繋がりなんてなくても。本当の兄弟だと心から思っているのさ。僕の誇りだよ」
「……とても、よく分かるよ」
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「さあ、着いたよアレン君」
「うわぁ…」
デビットさんとの二人旅を終えて、一つの町へとたどり着く。
俺の目の前にはモーゼスさん達が暮らす町よりももっと大きな町。
モンスターからの襲撃を防ぐためだろう巨大な壁が町全体を囲んでいた。
「ここでお別れだね。僕はこのまま王都へ向かうよ」
「ありがとうデビットさん。色々話をしてくれて、とても楽しかったよ!」
「ここで冒険者として名をあげて、王都でクエストを受けるようになってもセラフィー学園に近づいちゃダメさ!娘が居るからね!」
「わかったて!最後までなんなんだよもー!」
2人して笑い合う。俺は苦笑だったかもしれないけど。
デビットさんの乗るこの時代の結晶たる保冷馬車を見送る。
モーゼスさんのように、その姿が見えなくなるまで俺は手を振っていた。
さあ!ここからが本当のスタートだ!
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お義父さんの言っていたとおり、とても気持ちの良い少年だった。
デビットは手にしたペンダントの写真を見ながらアレンとの短い道中を思い返す。
随分と懐かしい過去を話したものだ。
魔王ギリアムとの戦争で何故この国のあの村だけが戦火に巻き込まれたのか。
果たして、本当に巻き込まれたのか?
疑問は残る。
最後まで解り合えずにいた義兄に贖罪するように廃墟となった村へ1人でモンスター避けの護符を埋める義父。
その助けになればと学者を辞めた。未練はない。
結局頼っては貰えてないけれど。
随分と身勝手な話だけれども、新しい世代に期待してしまう。より良い世界を作ってくれと。
でなければ2人が余りにも不憫だ。
同乗者が居なくなって、少し寂しくなった馬車でデビットは1人、王都を目指すのだった。
亡き義兄に想いを馳せながら。
さ、久しぶりに娘とご飯でも行こうかな!
がんばれよ、アレン君!