アレンの冒険[世界は広いなぁ~]編   作:チョモランマ斉藤

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「この部屋は?」「隣に変態が住んでおります」

 

 

 

道中、ジンさんから聞いたこの国のしくみを自分なりにまとめてみた。

 

 

・シュライグはアラドエル王国の中でも、王都に次ぐ広さを持つ町で、レディス大爵が町長としてこの町を治めている。

 

 

・アラドエル王国では一番上を王様として、大爵、中爵、小爵呼ばれる貴族達がこの国の特権階級として、政治に関わっている。

ジンさんいわく他にも細々とした爵位があるらしいが、今はこの認識で問題ないとのこと。

 

 

・町には国の役人として門番さんや衛兵さん達が町の治安を守っており、ギルド職員も国の役人なのだとか。因みにレベッカさんは休日限定のバイトなんだと。

国の職場でバイト…?まあ、そういうものなのかな。

他にも国の役人がこの町で働いている。

 

 

・王都では衛兵さんや門番さんの役割を騎士さん達が担当しているらしく、この町で優秀な人達は

騎士として王都へと引き抜かれたり、逆に騎士さんが悪いことして降格してやってきたりする。

 

 

・この町での主な移動方法としては、町中では徒歩か空飛ぶホウキと呼ばれる魔道具(免許が要るらしい)。お金がいるがバスと呼ばれる人専用の座席が付いた荷馬車みたいなのが定期的に走っている。

バスは大きいのから小さいのまでサイズは様々なのだとか。

 

 

・別の町への移動方法は、これまたバスか、持ってる人は荷馬車や移動用のモンスター。なんと空行くワイバーン便なんてのもあって、大金さえ払えば一般人も利用出来る。大金持ちは個人でワイバーンを移動用として利用しているのだとか。

飛空挺なんてのもあるらしい。

 

 

・町には東西南北4つの門があり、俺が入ってきたのは東門。町が大きいのでギルドも4つあって、俺が登録したのは東ギルド。ここは東区。今目指してるのが東区ナルベル通り。

多くの冒険者がこの東区に住んでいる。

東ギルドの傾向として、多種多様なクエストが貼り出される。

 

 

・南区は全体が学園街となっており、ドミオン学園が有る。

6歳から学園に通えるらしく、最長22歳まで学園で勉強できるらしい。

小等部中等部と呼ばれる9年間以外は親元で過ごし、高等部からは学園街にある寮に住むのだと。

王都の学園にも進学することも可能らしいが…まあ、俺には関係ない場所なので詳しくは聞かなかった。

南ギルドには生徒用のクエストが貼り出される。

 

 

・北区は……俺にはまだ早いと言われた。どう言うことだろう?危ないのかな。

北ギルドは護衛系のクエストが多い。

 

 

・西区は工業地域で職人達が多く住んでおり、新人冒険者は西区で武具を作るのを目標として頑張っている人も居るのだとか。

主に武具や魔道具の作成に必要な素材を集める、討伐系のクエストがこの西ギルドには多く貼り出される。

 

 

・各ギルドにテレポートという非常に高価な魔石を使用した装置が置いてあり、有事の際にはコレを利用して東西南北4つのギルドを行き来することが出来る便利な転移システムがあるらしい。

難点としては一人一人しか送ることは出来ず、再使用に時間もかかる。

小規模な転移部屋みたいなものか。

 

 

・冒険者の派閥とかも有るらしく、ジンさんはそういうのが煩わしくてソロで活動しているのだとか。わざわざ俺のために有難い話である。

 

 

 

 

 

「大体こんな感じか。分からないことがあったら聞くと良い」

 

 

「あざす!…空飛ぶホウキって?」

 

 

「あれだ」

 

 

早速質問をした俺にジンさんが空を指差す。

ジンさんが指し示した方をみれば、そこには魔道具に跨がり大空を自由に駆け抜ける人が。

その形は…なんと言えば良いのだろうか。箒というよりも流線型の馬のような形をしていた。

 

 

「ホウキという名前は昔の逸話の名残らしい。あれは空飛ぶモンスターの魔石をエネルギーとして空を自由に飛ぶことを目的に開発された移動用の魔道具だ」

 

 

高純度の魔石でなければすぐに魔力切れを起こしてしまう為、別の町へ行く等の長距離の移動は向かないものの、この町を移動する程度ならば問題無いのだと。

もっとも、エネルギーが切れたら新しい魔石を買わねばならず、メンテナンス等も必要なため金銭に余裕がある人達しか今は所持していないらしい。

 

 

「エネルギーの切れた魔石はどうするんですか?」

 

 

「ギルドで回収している。それと高位のモンスターの落とす高純度の魔石は高値で取引されるからな、俺達冒険者の収入源にもなる。この国で資格のない者が魔石を販売すると違法だ。冒険者は大丈夫だが、一度ギルドを通す必要がある」

 

 

ギルドで回収して再利用でもするのかな?

ともあれ、討伐系のクエストを受けた時は魔石の回収も視野にいれなければならないのか、リュックを持っていった方が良いかな。

ふふふ、クエストか…明日には行けるかな、どうかな。

 

 

俺はいずれ来る初クエストに想いを馳せてジンさんと共に賑やかな町を歩いていく。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ここがナルベル通りだ」

 

 

ジンさんと目的地であるナルベルという通りにたどり着いた。

おお…コレが私の住むエリア(予定)ね!

 

 

ナルベル通りもまた、多くの人で賑わっていた。

アパートと呼ばれる1つの建物に多くの住人達が部屋を借りて住む賃貸物件から、一軒家まで様々な住宅が建ち並ぶ。

 

 

すぐ近くには商店街といえば良いのだろうか?

武具屋や飲食店、アイテム屋から八百屋に精肉鮮魚店なんかが並んで建っている。

 

 

「こっちか」

 

 

ジンさんが通りの地図が書いてある掲示板を見て、歩きだす。後で俺も見ておこう。

 

 

ジンさんに連れられて一軒のお店の前に立つ。

ここは?と聞けばこの辺りの住居を管理している

不動産屋という所らしい。色々な職業があるんだなぁ。

 

 

「いらっしゃいませぇ~」

 

 

俺達が店に入ると、どこか気の抜けた挨拶をするメガネ姿の男性。くたびれたスーツを着ていた。

 

 

「彼が部屋を探しているのだが」

 

 

「アレンと申します。よろしくお願いします」

 

 

「そちらのお方ですねぇ、こちらにお掛けになってお待ち下さいねぇ」

 

 

俺が案内されたイスに座ると、メガネの男性が書類を準備している。

すると奥から別の男性が俺の前に来てどうぞ、とコップを置く。飲んで良いのかな?湯気が立ち、黒い液体が入っていた。これは……なんだろうか。

 

お連れ様もどうぞ、とジンさんにも同様に飲み物?が出される。

後ろに立っていたジンさんも俺の隣に座ると有難うと一言言ってコップを手に、そのまま飲む。

 

 

 

…熱っ………苦ぁい…なぁにコレェ…。

ジンさんに倣って出された飲み物を飲んでみたら、焦げたような、酸味の有る酷く苦い味。

 

 

ジンさんは平気な顔して飲んでいたが、俺にはとても飲めたモノではない。顔をしかめていると

俺の様子を見つけたジンさんがコップと一緒に出されていた紙の筒?と小さな容器を指差した。

 

 

「ジンさん、コレは…?」

 

 

「コーヒーという飲み物だ。初めて飲むなら苦いだろう、この包みに砂糖と、容器にミルクが入っている。甘味を足して味を調整するんだ」

 

 

「へぇ、コーヒー」

 

 

この飲み物はコーヒーというのか。水とフルーツジュースしか飲んだことの無い俺にとって初体験だ。

ジンさんの言うとおりにやってみよう。

とりあえず苦くて飲めたものではないので、全部ぶちこんでやろう。

 

 

…………うむ、苦い。苦いが……まあ、飲めない事はない。

チラリとジンさんを見ると砂糖もミルクも使わずに苦いのを平気な顔で飲んでいた。俺にはその姿がとても似合っていて、格好良く見えた。

か……カッコいい………。

いつか俺もコーヒーの似合う大人になろう。

そう決心していると。

 

 

 

「お待たせしましたぁ、こちらの物件などいかがでしょうかぁ」

 

 

どこか気の抜けた物言いの店員さんと、ジンさんの3人で

これがいいあれがいいと住む部屋を見繕っていく。

楽しい。凄く楽しい。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

外に出るとずいぶんと薄暗い。

時間はもう昼を過ぎて大分涼しくなってきた。

 

 

不動産屋さんの案内でナルベル通りから少し離れた2階建てのアパートの前に連れてこられた俺達。

外観からは年数はそれなりに経っていることが伺えるものの、住宅街から離れていて静かな場所にあり、家賃も安い。いくつか上がった部屋候補のうちの1つだ。

 

 

「あちらに大家様がいらっしゃいますねぇ~」

 

 

アパートの前を掃除している狐耳の獣人の女性。

不動産屋さんが彼女に近づきなにやら話している。

彼女がこのアパートの大家さんなのだろう。

ジンさんはアパートの一室をじっと見ていた。

 

 

?…あ、不動産屋さんが手招きしてる。

 

 

「こちら大家のルナ様です、こちらは物件を見に来たアレン様に、付き添いのジン様」

 

 

自己紹介とともに、お辞儀。

 

 

「初めまして!大家のルナです!お部屋、見に来てくれたんだって?気に入ってくれたら嬉しいな!」

 

 

なんとも元気に笑う女性だ。この国には美人しか居ないのか?

ルナさんが言うには全部で6部屋あって、1階と2階の101号室と201号室以外は空いているのだという。

 

 

うーん、こんなに部屋が空いているんだったら103号室か203号室のどちらかが良いかな。隣人がどんな人か分からないし。

 

 

「203号室を見せてもらって良いですか?」

 

 

「あっそこは…」

 

 

「?」

 

 

「ちょっと問題があって…その、前の住人が怪しい召喚術に傾倒していたらしくて、変なバケモノを召喚してしまったみたいなの。住んでた人もバケモノに食べられちゃって。そのままバケモノが部屋に住み着いちゃったの!」

 

 

テヘペロ☆

テヘペロではないが。

 

 

「よし、次に行きましょう」

 

 

「あーん!まってまって!そこにさえ目をつぶれば良い部屋なのよ!ね?お願い!私も生活しないといけないの!お母さんから任されて大家になったのは良いけどあんなものが住み着いちゃって誰も住んでくれないの!封印だってしてるし!たまにしか悪さしないよ!お願い!助けると思って!家賃安くするからぁ!」

 

 

ね?ね?とルナさん。ものすごい勢いで俺に泣きついてきた。

いや、ね?ではないが。たまに悪さするのかい。

 

 

「ええ…隣にバケモノ住んでる部屋って…因みに家賃はおいくら?」

 

 

「5…いや!3!3万エルでどうかな!?」

 

 

ううむ。この辺りの相場は大体6万〜9万エルくらいだったか。大体半分くらいかぁ…。

しかしバケモノが住んでる部屋の近くかぁ。

 

 

「ちなみに、ソイツを討伐しても家賃はそのままか?」

 

 

「え?元に戻すよ?8万!」

 

 

ジンさんがルナさんに問いかけると、ルナさんはキョトンとして答えたあとニコニコと笑っていた。

 

 

「…不動産屋さん」

 

 

なんて物件を紹介してくれたんだこの人は。

といった様子で俺が彼を見ると

 

 

「すみませんねぇ~こちらも契約している物件が多くて……申し訳ございません。」

 

 

不動産屋さんも困ったように汗を拭いていた。

彼も知らなかったようだ。

 

 

「とりあえず、見てみるか」

 

 

ジンさんが歩きだす。

え?部屋を?バケモノを?

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ジンさんが件の部屋へと向かっていく。

階段を登って2階の、1番奥の部屋。

部屋の扉にはびっしりと護符が貼ってある。これが封印の護符なのかな。

扉からは護符の雰囲気や時間帯もあって、異様な気配。

不動産屋さんは下で待っている。

 

 

「ふむ……これなら大丈夫じゃないか、アレン」

 

 

「え?」

 

 

「え!?ほんと!?」

 

 

ジンさんの言葉に首を傾げる俺と凄く嬉しそうなルナさん。

ちょいちょい出てくるジンさんの俺に対する評価はなんなんだろうか。凄く嬉しいけれども。へへへ。

 

 

「この程度の存在ならば逆にお前には近付くのを避ける筈だ。下手に障れば消滅させられるのはこいつだ」

 

 

「ふーん」

 

 

「ね!なら大丈夫だよね!住んでくれるよね!どの部屋がいい!?この部屋の隣!?それとも下かな!?ねえ!ねえねえ!」

 

 

ルナさんが俺の肩を持ってブンブンと振ってくる。

この人…必死だ。

 

 

「わかっ…わかったからぁ!揺らさないでおくれよ!」

 

 

「あーん!ありがとうアレン君!」

 

 

よっぽど嬉しかったのかルナさんが俺に抱きついて背中をバシバシ叩いてくる。

意外と力が強くて痛い。

 

 

 

思わぬジンさんからの援護で気分を良くしたルナさんに押しきられる形で、結局俺はこの部屋の隣に住むことにした。

ルナさんいわくこの部屋のバケモノはたまに外に出ようとするらしい。なので気がついたら抑えて欲しいのだという。

抑えつけてくれたらお小遣いをくれるとも言っていた。

……なんて人だ。

 

 

 

この部屋に住むと不動産屋さんに伝えたら、彼はとても恐縮した様子で何かあったら力になりますと言ってくれた。

 

 

ルナさんも知り合いの伝を使って家具やらを用意してくれると言っていた。まあ、コレくらいは甘えても良いだろう。なぜなら新居の隣にバケモノが住んでいるのだから。

 

 

そういえば、ルナさんは俺と歳がそう変わらなかった。

ドミオン学園に通う19歳。冒険者でもあるらしく、ランクはE。普段は南区の寮に住んでいるのだが、休日はこうして大家として東区にやってきているのだとか。

 

 

 

「後は銀行と…服屋くらいだな。その前に飯にしようか、アレン」

 

 

「私は家具を準備しておくね!一緒にやろうねアレン君!ジンさん!一人じゃ怖いもん!明日また来てね!明日までには用意しておくから!夕方来てね!まってる!」

 

 

「私、美味しいところを知っていますので、お詫びといってはなんですが、ご案内させていただきます~」

 

 

 

ブンブンと手を振って俺達を見送るルナさん。

不動産屋さんに教えてもらったご飯屋さんはとても美味しかった。

食後にコーヒーを飲むジンさんの真似をして俺もコーヒーを飲んでみるが、やはり苦い。

 

 

しばらくまったりしてから。再び町へ。

2人で銀行にいき、口座を作ってエリィさんから受け取ったお金を預ける。

この国の殆どのサービスはプレートでやり取り出来るので、簡単な手続きでスムーズに口座が開設できた。ちなみにここでも電流ペンは大人気だ。

 

 

 

そんなこんなしていると、空がとっぷりと暗くなっている。

道には街灯が規則正しく並んでいた。人ももうまばらだ。

服も部屋の準備が出来た明日で良いだろう。持ち歩くには邪魔すぎる。

 

 

ルナさんが家具を用意してくれるらしいし、明日も忙しくなりそうだ。

俺はナルベル通りの宿屋に泊まり、東ギルドに集合の約束をしてジンさんと別れた。

1日中付き合ってくれたジンさんには感謝感謝だ!

 

 

 

…?

………なにか忘れている気がする。

 

 

 

………あっ手紙!!

 

 

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