アレンの冒険[世界は広いなぁ~]編   作:チョモランマ斉藤

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うおお!よけろシュナイダー!

 

 

 

「おう!おはようアレン!探検に行こーぜ!」

 

「なにやってんすかカイさん」

 

 

朝、ギルドに行くか図書館に行くかどちらか迷いつつも、とりあえず出掛けようと身支度を整えて外へ出たら、カイさんがにこやかな笑顔で立っていた。

 

 

「昨日はジンとクエスト行ったんだろ?なら今日は俺と遊ぼうぜ!」

 

「いや、遊ぼうって…」

 

 

俺の返答など聞かずに肩を組んで歩きだすカイさん。

カイさんの方が俺よりも背が高いので、引っ張られる形で歩いていく。

う。組んで分かる。この人もかなり強い人だ。

 

 

「しっかしアレン、お前スゲーとこに住んでんなぁ…隣ナニあれ」

 

「あー…なんか人食いのバケモンが封印されてるみたい」

 

「えぇ…倒せば?」

 

「あのバケモノが居ると家賃が安いんですよ」

 

 

なんつー場所住んでんだよ、とカイさん。

全くもって同意である。新居で初めて朝を迎えたが、昨晩も何も起きなかったのでほっといても良さそうだが…ちなみに、昨晩帰ってきたときに1人でおっかなびっくり隣の部屋を意識しまくりだったのは内緒だ。

 

 

「つーか、敬語なんて要らねーぜアレン。俺とお前の仲じゃねーか!」

 

「わかった!カイさんに敬語ってなんか嫌だったもん!」

 

「え?酷くない?」

 

 

しれっとジンさんにも敬語は止めていたけど、ジンさんの反応を見る限り大丈夫そうだ、すこし嬉しそうだったし。

俺の返答に若干ヘコんだカイさんと2人でギルドを目指す。

今日も良い天気だ!しかし暑いから早く離れておくれよ!もう!

 

 

「そうだカイさん。図書館ってギルドの近くにあるかな?俺読み書きが出来なくてさ、勉強しようと思って」

 

「お!偉いじゃねーか!本ならギルドの2階で借りれるぜ。ギルド内なら持ち出し自由だったはずだからクエストが終わったら行ってみようや」

 

 

いい加減にこの国の読み書きを覚えなければいつまでたってもジンさんやカイさんに迷惑をかけてしまう。

今のところ問題はないが、このままでは1人でクエストを受けられないし、買い物とかも困ってしまう。

部屋でゆっくり勉強するのも良いし、ギルドで勉強出来るのならば誰かに教えてもらいながら勉強できれば一番良いんだけど。

 

 

「ありがとう!そういえば探検って言ってたけど、どこにいくんだい?」

 

「今日は町から出てみようと思うんだが、まあ場所はクエスト次第だな。そろそろ爺さんのクエストが貼り出される頃だからよ」

 

 

 

 

クエストにあてがあるのか、カイさんの頭の中では今日の流れがある程度計画されているみたいだ。

ギルドを目指す道すがら。ふとナルベル通りに違和感を覚える。

そういえば、今日は平日か…なるほど、どことなく若い人達が少ないような気がする。

 

 

「この町の若い人達はみんな学園に行ってるのかい?」

 

「ん?いや、お前だって若いじゃねーか。若い奴が全員ドミオン学園に行ってる訳じゃねーぜ。貴族の3男3女あたりは冒険者やってたりするしな」

 

「ふぅん…なんで?」

 

「何でって…そりゃ、アレよ。当主になれないからじゃあねーかな。」

 

「ああ、聞いたことがあるなぁ…その家の長男長女しか家を継げないんだっけ」

 

「そっそ。変な話だよなぁ。俺もその辺は良く分かんねーんだ。ま、若い奴が全員が貴族って訳じゃねーからそう構えなくても平気だぜ」

 

「カイさんは貴族相手でも畏まらなそうだよね」

 

 

なんだとこのー!とカイさんとはしゃぎながら歩く。

ジンさんとはまた違った楽しさがある人だなぁ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

平日でも変わらず賑わうギルド。カイさんは馴染みの冒険者と挨拶を交わしながらボードへ向かう。

俺もいつか誰かとパーティーを組んでクエストに行く日がくるのかな。知り合いの多いカイさんが少し羨ましい。

他の冒険者に会釈しながらそんな事を考えていると、カイさんは初級ボードの前でクエストを探していた。

 

 

「おっ!あったあった。行こうぜアレン」

 

どうやら目当てのクエストは貼り出されていたようだ。少し雑にカイさんはクエスト用紙を剥がす。豪快と言うかなんというか。

 

2人して窓口へと向かう。今日はレベッカさんとマリカさんの姿は見えない。

今日はレベッカさんが居ないのでそこそこ順番待ちの時間は長かった。

 

 

「おうドニー。コレ頼むわ」

 

「おやカイさん、王都から戻ってたんですね」

 

 

俺達の番が来て知り合いだろうギルドの職員さんに親しげに声をかけてクエスト用紙を渡すカイさん。

カイさんからドニーと呼ばれた男性。この人は…魔人かな?綺麗に整えられた髪がワックスで光っている。

 

 

「君がアレン君ですね?僕はドニー。サタナキア出身の魔人だよ、よろしくね」

 

「よろしくお願いしますドニーさん!」

 

「カイさんの言うことはあまり聞かなくても大丈夫だからね、是非ともそのままの君でいて欲しい」

 

「おいコラ。ドニーコラ」

 

「はいっ!!」

 

「おいコラ良い返事をするなアレンコラ」

 

「さて、今回のクエストはコーザさんの薬草採取ですね。人数制限無しのDランククエストとなります…町の外へ出ますか?」

 

「おう。テロー平原へ向かおうと思う」

 

「テロー平原ですね。あの辺りは大丈夫ですが、奥の森林でキラーウルフの目撃情報がギルドに寄せられています。お気をつけて」

 

「おーう。そうだ、遠いから馬車貸して欲しいんだけど」

 

「ええー。カイさん壊すじゃないですかー」

 

「だーからあれはワイバーンの糞を避けようとしたら壊れたんだって!お前らだって糞まみれの馬車より車軸が歪んだ馬車の方がまだマシでしょーが!」

 

「もー。しょうがないですねぇ…東門の門番さんに連絡しときますよ」

 

 

それでは、お気をつけて。とドニーさんに見送られて、俺とプンプン膨れているカイさんとで今日の依頼人の元へと向かう。

カイさんと親しい人は皆遠慮がないというか、なんというか。

不思議と嫌われている様子を感じないのは、カイさんの人徳なのだろうか。……ホントかぁ?

 

 

 

「コーザの爺さんはこのギルドの近くでアイテム屋やってんだよ。報告ついでに籠とか借りに行こうぜ!」

 

「オッス!」

 

 

 

道中、そういえばジンさんはどうしたのだろうかとカイさんにジンさんの所在を尋ねたら今日は朝早くから迷子の猫探しクエストを受けているらしい。

うーん。あの人が猫を追いかけてる姿が想像できない。真面目にやっているのだろうけど。

 

 

「ここだ、着いたぜ。おーい爺さん、クエスト行くから籠貸してくれーい」

 

 

目的のアイテム屋に入っていくカイさん。

俺も後を追う。初めてアイテム屋に入ったけどこうなっているのか。

お店の中はとても綺麗に整理されていて、棚に様々な種類の薬品が売られている。

店内に漂う回復薬の香りがシェリス姉の部屋を思い起こさせる、少し懐かしい。

 

 

「なんじゃ、やっぱりお主が受けたのか。ならば説明は不要じゃな。いつものように頼むぞ。籠はソコのを使えば良い…おや?お主は?」

 

「初めまして。つい先日冒険者になったアレンと申します。今日はカイさんと一緒にクエストに参加させてもらいます」

 

お辞儀した頭を上げて、椅子に座る小柄なお爺さんを見る。

白い髭を立派に蓄えたドワーフのお爺さん。

ドワーフ族は武具や魔道具作りが得意だとウィン姉に習ったけど、違ったのかな?

 

 

「なんじゃ、本当にお主の知り合いか?カイ」

 

「なにが言いたいんだよ爺さん」

 

「とても礼儀正しい子じゃ。お主も見習え」

 

「う、うるせぇやい……アレン、この爺さんはドワーフ族だが回復アイテム専門の変わり者の爺さんだ。見てくれはおっかないが、まあ、とって食われたりはしないから安心しろ」

 

「カイさん。そういうところだと思う」

 

「まったく失礼な奴じゃ。影響などされるなよアレンとやら」

 

「はいっ!!」

 

「ウム。良い返事じゃ」

 

 

俺とコーザさんの会話を聞いているのかいないのか、籠を背負って外に向かうカイさん。

ついに無視を決め込み始めたみたいだ。

いや、自業自得だと思うんだけど。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

カイさんと東門の隣にあった厩舎へ向かうと、ドニーさんが連絡してくれたのだろう一台の馬車が門番さんと一緒に待っていた。

 

厩舎ではバンエーからサラブレーという名のスピード重視の馬型モンスターが30頭程飼育されていた。

ギルドに頼めばあの馬達を貸してくれるのだろう。

 

「シュナイダー!元気だったかオイ!」

 

カイさんが用意されていた馬車を引く馬に駆け寄って親しげに体を叩いている。

ほう。あの馬の名前はシュナイダーと言うのか。格好いいな。

種類はサラブレーかな?バンエーよりも体格が小さい。

 

 

「シュナイダー違う。この子の名前ポポ」

 

 

馬車を用意してくれた赤い肌で銀髪のオーガ族の女性。この人は俺の想像するオーガ族だ、体格が良い。

というか、え?名前違うの?でもカイさんはシュナイダーって言っていたけど…?

 

「細かいことを言うなよリリィ!馬車用意してくれてありがとな!」

 

「次は壊すな。修理は大変」

 

「悪い悪い、気を付けるよ。シュナイダーに何かあったら大変だもんな!ロウガは今日は居ないのか?」

 

「シュナイダー違う。ポポ。ロウガ居る。呼んでくるか?」

 

「いいよいいよ、俺達で行くよ。アレン!リリィだ!リリィ!アレンだ!」

 

 

いや雑ゥ!ついにこの人まともな紹介すら放棄しちゃったよ!

俺はシュナイダー?ポポ?…いや多分ポポだ、ポポが正しいんだ。カイさんが勝手に名前つけて勝手にそう呼んでるんだ…。

ポポと戯れるカイさんに呆れつつ、リリィさんに挨拶をする。

 

 

「よろしくアレン。私はリリィ。言葉変かも。許して」

 

「よろしくリリィさん!俺もこの国の読み書きはまだ出来ないんだ!」

 

「そうか。私は読み書きは覚えた。後で本貸そうか?」

 

「良いのかい?とてもたすかるよ!」

 

 

にこやかに笑って頷くリリィさん。滅茶苦茶良い人じゃん!

リリィさんの言葉はカタコトではあるけれど、別に不都合はない。

読み書きの本は図書館で借りようと思っていたけど、リリィさんが貸してくれるなら必要ないかもな。大事に使わないと。

 

 

「騒がしいと思えば帰ってたのか、カイ…おや、君は先日の。アレンと言ったか」

 

「おう!ロウガ!久しぶり」

 

「あ!あの時の門番さん!」

 

 

厩舎の方にこの町へ来たときにお世話になった狼の獣人の門番さん。ロウガさんがやってきた。

カイさんとも知り合いなのかとても親しげだ。

 

俺はロウガさんに駆け寄って冒険者のプレートを見せる。初日に見せに行くつもりだったが、バタバタしてて遅れてしまった。

 

 

「見ておくれよロウガさん!おかげで冒険者になれたよ!」

 

「ほう。それは良かった。アレンならば良い冒険者になれるだろう。これから町の外でクエストか?」

 

「へっへっへ…うん。カイさんと薬草集めだよ、テロー平原って所」

 

「テローか。あの辺りはキラーウルフが目撃されている。カイが一緒ならば心配はないと思うが、一応気にしておけよ」

 

「そういえばドニーさんも言ってたっけ。危険なの?」

 

「キラーウルフの討伐はCランククエストだ。ワイルドウルフよりも一回り体躯が大きく、非常に狡猾なハンターだ。この辺りには出ないモンスターなのだが…」

 

「おーい!アレン!そろそろ行くぜー!」

 

「はーい!じゃあロウガさん、リリィさん、いってきます!」

 

 

ロウガさんからモンスターの情報を聞いていると、カイさんが俺を呼ぶ。

ロウガさんとリリィさんにお辞儀して、馬車に乗り込む。

手綱を握るカイさんは気合い十分。勇ましく馬車を出発させる。

 

 

「行くぜシュナイダー!風となれぃ!」

 

 

カイさん違う、この子はポポだよ。

そしてカイさんの勢いを他所に、馬車はとてもゆっくりと発進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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