アレンの冒険[世界は広いなぁ~]編   作:チョモランマ斉藤

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食後のコーヒーは美味いなぁ!

 

 

 

町へ帰ってすぐにコーザさんのお店に向かった俺達は、籠の中身をコーザさんに見せると納得のいく量だったのか、感謝の言葉と共に報酬金である4000エルを貰った。

 

これも、カイさんが俺にそのままくれた。

小声でシーフベアの討伐金としてはかなり少ないが、勘弁なと笑っていた。

まあ、本来のクエストとは予定に無かった討伐なので俺も特に問題はない。カイさんの弱点というか、新しい一面も見れたしね。

 

クエストを達成して、お店を出ようとしていた所にコーザさんから呼び止められた。

 

 

「待て、このポーションは?」

 

「ああ、そこにあったんだ。それは途中で怪我人を見つけてヨギを使って俺が作ったポーションだよ」

 

 

カイさんが籠の中に入れっぱなしだったのか、コーザさんが俺の作ったポーションを見せながら俺達に問いかけてきた。

どこまで話すべきなのかな?自分ではなかなか判断しづらかったので、チラリとカイさんを見れば、肩を竦めて俺の好きにしろ。と言いたげだ。

 

 

「コレを、お主がのう…」

 

 

う。シェリス姉から教わった通りに作ったから、なんら問題は無い筈だ。オニールさんの傷だって治せたし。

でも、本職から見るとやっぱりどこか違和感でもあったのかな?コーザさんはポーションをじっと見つめている。

 

 

「コレをワシに譲ってくれんか?金は出す」

 

「ええ?…俺は構わないけど…」

 

「そうか。そうじゃな、見た所中級ポーション並みの回復量はあるのう。アレンとやら、残り全てを10000エルで買い取りたいのじゃが、よいか?」

 

10000!?確かポーションは4つ作って1つと半分はオニールさんに使ったから、コーザさんの手元には2つと半分しか残っていない。

それを10000エルでって…。

 

「そのポーションがどうかしたのか?爺さん」

 

「見事な出来だ。回復量の少ないヨギをどれだけ集めてもこのようなポーションは出来はしない。フォッフォッフォッ!久々に研究意欲が湧いてきたわい!ほれ金じゃ、コレで交渉成立返せと言われても返さんぞ!」

 

「いや…まあ、良いけど」

 

「気にするなアレン。爺さんの悪い病気だ…俺も何度かやられた……もういいか?朝から何も食ってなくて腹へってんだけど」

 

「おう帰れ帰れ。今日は店じまいじゃ!アレンとやら、お主独学か?」

 

「いいや、とても優秀な先生に教わったんだ」

 

「そうかそうか!フォッフォッフォッ。もちろん作り方は言うでないぞ、ワシが自分で見つけてこそ意味があると言うものじゃ!」

 

嬉しそうにしているコーザさんが立ち上がってすぐに帰れとばかりに俺達の背中を押してくる。

ドワーフなだけあって体は小さいがとても力強い。

 

「ほれほれ出た出た!またクエストは依頼するつもりじゃからな、アレン!期待しておるぞ!」

 

 

えぇー…期待されても困るんだけどなぁ…と、コーザさんに追いやられるままに店を出る俺とカイさん。

コーザさんはお店のドアに架かっていた表札の向きを変えて、さっさとドアを閉めてしまった。

コーザさんの勢いに唖然としている俺に苦笑したカイさんが声をかける。

 

「気にすんな。あの爺さんはいつもあんな感じなんだよ。よかったな、臨時収入だ」

 

「うん…まあ、そうだね。そう考えるかぁ」

 

 

コーザさんからの追加料金で14000エルとなった今回の報酬金。多少のトラブルはあったものの、薬草集めでこの額は破格だ。

そういえば、これからどうするのかな?ポポを連れてきたまんまだ。

 

「さぁて、俺はこれから東門に行くがアレンはどうする?東門に行った後飯にしようかと思うんだが、お前も来るか?」

 

「うん!一緒に行ってもいいかい?」

 

「よしきた!美味い飯屋に連れてってやるよ!乗れ乗れ、シュナイダーに乗りまくれ」

 

うーん。カイさんの笑顔が眩しい。

ポポに乗りまくることは出来ないけどね。カイさんの紹介する美味い飯屋ってのも気になるし

 

 

「そういえば、ポポはお手柄だったね今日」

 

「だろう?すげぇ奴なんだよシュナイダー」

 

な!話しかけるカイさんにまたもやヒヒン!と返事をするポポ。

カイさんと意志が通じ合っているのか、離れたところに居ても呼べば来るレベルで仲良しのようだ。

 

「ちゃんと名前で呼んであげたらいいのに」

 

「細かいことは良いんだよ!シュナイダーはシュナイダーなんだ。まあ、誠に遺憾ながらポポでもあるようだが」

 

いや、ギルドの馬である以上紛れもなくポポなんだと思うけどね。

まあ、本人達がそれでよしとしているなら、俺が口を挟むことでもないか。

 

 

俺達は軽快な足取りのポポに連れられて、東門へと向かうのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「じゃあなシュナイダー。また次も頼むな!」

 

「今日は有り難うねシュナイ……ポポ!」

 

 

危ない。カイさんにつられてシュナイダーの事をポポと呼んでしまう所だった。

?……違う逆だ!

 

厩舎へと連れていかれるポポを見送っていたら、俺の腹から大きな音がなった。

朝から何も食べてない。体力に自信はあっても、流石に腹は減る。

 

 

「よっしゃアレン、肉か魚か野菜。どれが食いたい?」

 

「肉ぅ!」

 

「当たり前だぁ!肉以外認めねぇ!今日は肉だ!」

 

 

なぜ聞いたんだい?

1人でテンションの上がっているカイさんに連れられて、馴染みの店へと連れていって貰った。

 

 

カイさんの案内してくれた場所は北区寄りにあって、周辺はとても多くの人達で賑わっていた。

なんと言うか、露出度の高い服を着た女性とすれ違う事も多く、非常に心臓に悪い。零れるんじゃないの?大丈夫なの?寒くない?

 

ここは飲食街なのか沢山の飯屋が建ち並び、辺りからは食欲を刺激する良い匂いに更に腹が減る。

 

目当ての店に入っていくカイさんの後を追えば、店内も多くの人で賑わっていて、食事時からは少し時間が過ぎているが、それでもクエスト帰りだろう冒険者や仕事終わりの人でとても賑やかだった。

 

 

「おーう…相変わらず混んでるな。まあ、カウンターで良いよな?」

 

「どこでも!」

 

早く食いたいすぐに食いたい!いざ食べる前になると更に腹が減るのはなんでだろう。

カウンター以外はほぼ満席のようだが、運良く2席空いたカウンターを発見してそこに座る。

 

「俺が勝手に頼むな。嫌いな食いもんあるか?」

 

「ええとね、そうだなぁ…」

 

「店員さーん!注文おねがーい!」

 

何で聞いたの?ねえ、なんで!?

ビックリしている俺を置いてけぼりに、手を上げて店員さんを呼ぶカイさん。それに反応した店員さんが注文票を片手にやってくる。

 

おお、ロウガさんと同じ狼の獣人の女性だ。

キリリとしていて格好いい。

 

 

「なんだ、カイか。ここに来るなんて久し振りだね…いつもは嫌がって来ないのに」

 

「あー……ま、たまにはな。アレン、レティシアだ。おっかないぞ」

 

「アンタにだけだよ。よろしくねアレン君」

 

その紹介はどうかと思うが、レティシアさんは気にした様子もない。

俺が自己紹介をすれば、優艶な笑顔で応えてくれるレティシアさん。どこがおっかないのさ、良い人そうじゃん。

 

「カイに似ちゃダメだよ。それで、注文は?」

 

カイさんの知り合いはそれを言う決まりでもあるのかい?殆どの人が俺に助言というか、アドバイスというか。似たような言葉を言ってくる。

まあ、レベッカさんも言ってたしな。ロクでもないって。

 

 

カイさんがレティシアさんに食事をどんどん注文していく。

頼んだのがどんな料理かさっぱりわからないが、これだけ賑わっているのだから、期待は高まる。

注文を書き留めて、厨房へと向かうレティシアさん。

レティシアさんが持ってきてくれた水で喉を潤す。

 

 

「あんまり来ないの?」

 

「まあな、良い店なんだが、良い店過ぎて…」

 

 

料理を待つ間にカイさんと世間話をしていると、大声で笑い合う冒険者らしき一団。

クエストの話で盛り上がっているのか、店内に大きな笑い声が響く。

カイさんは肩を竦めて

 

「この様さ。良い事なんだがな。有名なクランもここを贔屓にしていて見つかると勧誘が面倒くせぇんだ。お前も目をつけられないように気をつけな」

 

「ふぅん…カイさんもジンさんもクランに入ったりしないの?」

 

「しねぇなぁ。俺に集団行動は無理だ!ま、ジンがお前と行動するってんなら、俺も参加させてもらうがね。面白いし」

 

 

2人の俺に対する評価の高さがとてもむず痒い。

自分で言うのも恥ずかしいけど、姉達に随分と鍛えられたのだ。自分の強さには自信がある。

推定Bランクのシーフベアも苦戦すること無く倒せたしね。

でも、2人とも俺の強さを初めから見抜いていたような気がする。

 

あの平原で俺にモンスター討伐を頼めるか聞いてきたカイさんの顔は

お前なら出来るだろう?

と、確信めいた顔をしていた。

 

 

「カイさん達って───」

 

何者?と聞こうとしたときに料理が運ばれてきた。

美味そうだ!とても美味そうだ!カイさん達の正体?んなもんあとあと!うひょー!肉汁が滴ってますねぇー!!

 

とても美味しそうな料理を前にした俺は、カイさん達が何者なのかとか、すっかりどうでも良くなっていた。

料理美味しーい!連れてきてくれてありがとー!

 

 

 

 

「あー!美味しかった!」

 

「だろう?」

 

何故かカイさんが誇らしげだ。

随分と長居をしてしまったのか、アレだけ賑わっていた店内も今は俺達だけになっていた。

美味しい料理にとても満足感していると、俺の頭にある閃きが。

 

そうだ、アレをやってみよう。

密かに憧れて習慣にしようと画策している事。

そう、食後のコーヒーだ

俺もジンさんのようにスマートに飲めるようになりたい。

 

 

「カイさん、ここってコーヒーあるの?」

 

「ん?お前そんなの飲むのか?あるけどよ」

 

カイさんが近くに居たレティシアさんにコーヒーとフルーツジュースを注文する。

フルーツ……ジュース……?いかんいかん。俺はコーヒーを飲むのだ。うん。そうだとも。

 

 

暫く待っているとレティシアさんが注文した飲み物を持ってきてくれた。

どっち?と聞いてくるレティシアさんにコーヒーは自分だと伝えると

「あら…そう?」

と、とても微笑ましいものを見るような顔でコーヒーを俺の前に置いてくれた。

 

まずは香りを楽しむ

うーん!……わからぁん。

 

次は味だ……ミルクと砂糖はどうする…?入れるか…?いや、まずは……。

 

 

「………美味いか?」

 

「…ッ…お…美味しいよ?」

 

「ふーん」

 

コーヒーの苦味に打ちのめされている俺に、涼しい顔でフルーツジュースを飲むカイさん。

なにさ、なんでニヤニヤしてるのさぁ!

 

「砂糖とミルクで味を変えてみるのも悪くないよ?」

 

近くで見守っていたレティシアさんが苦笑しながら俺にアドバイスをしてくれる。

なるほどなー!たしかになー!用意されてるもんなー!使わないってのも失礼だもんなー!

俺がミルクに手を伸ばすと、ニヤニヤした顔のカイさんが

 

「おいおい、野暮なこと言うなよレティシア。なあアレン?コーヒーってのはブラックじゃなきゃなぁ?」

 

「はへ!?……も、もちろんさ…」

 

ブラック!?何も入れないのをブラックって言うのか!?くそぅ!いちいち格好いいな…!

ミルクに伸ばしていた手を引っ込めて、再びコーヒーを一口。

 

「……ッ…うん。お、美味しいなぁブラックは」

 

「………カイ」

 

 

苦味を我慢する俺の様子に腹を抱えて笑っているカイさん。それを嗜めるような表情で見るレティシアさん。

 

「はっはっは…はー…笑った。おいアレン。美味そうじゃねーか。俺にもくれよ、交換しようぜ」

 

「えっ!?……しかたないなぁ!もー!次からは自分で頼んでおくれよ!?ほら!もー!交換ね!交換!しかたがないなぁカイさんは!ねぇレティシアさん!」

 

「ふふふ、そうだね」

 

 

 

 

うーん。………フルーツジュースおいちー!!

 

 

 

 

 

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