アレンの冒険[世界は広いなぁ~]編   作:チョモランマ斉藤

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尻はどうだ?…………ダメ?

 

 

 

アレンが研修に向かい、暫くしてからレベッカも業務に戻った。

カイとルナがクエストに向かい、1人テーブルに着くジンは、たくさんの冒険者で賑わうクエストボードを眺める。

 

暇になったので良さそうなクエストでもあればそれを受けようと思っていたが、次から次に現れる冒険者達を見れば、自分がクエストボードの前に立つのは暫く先の時間になりそうだ。

 

 

どのようにして時間を潰そうかとジンが考えていると、にわかにギルドが活気付く。入り口の方が騒がしい。

なにか問題でも起きたかと意識を向ければ、どよめきには尊敬や畏怖の声が多く混じっている。

クエストボードを眺めていた冒険者達も、肘で隣の人をつつき、入り口を指し示す。

 

 

ギルド内の冒険者達や、職員の視線を集める3人の冒険者。

ギルド内のどよめき等どこ吹く風、いつもの事だとばかりに3人がジンの座るテーブルへとやってきた。

 

 

「おう、ジン!オメェも来てたんか!」

 

「やあ、久しぶりだね」

 

「………………」

 

 

 

1人のオーガ族の男性に声を掛けられたジンは、その人物と、一緒にこちらに向かってきた2人を確認する。

 

ジンに声をかけたオーガ族の男性は、アレンがこの町にやってきた初日に見かけた、昼間から酒を飲みジークに声をかけていた人物だった。

名を、バトゥ。

東区のクラン、アースラーズを率いる団長である。

 

そして、狼の獣人の麗人、フォルトゥナのレティシア。

 

最後の1人、無言でジンを睨み付けている人間の女性。

名をリナリー。漆黒の衣服の、長く美しい銀髪に眼帯。そして腕には包帯が巻かれている、端麗な女性。

彼女も東区でクランを率いている団長である。

クラン名は、ネメシス

 

 

「東区の有力クランの団長が揃い踏みとはな。両手に花だな、バトゥ」

 

「ガッハッハ!こいつらにゃ悪いがウチのカカアにゃ敵わんわ!」

 

「ふふふ、相変わらず愛妻家だね」

 

「………………」

 

バドゥが豪快に笑い、ジンの座るテーブルへと腰を下ろし、大きな声で酒を注文する。

レティシアも同じく腰を下ろして静かに笑う。

リナリーだけは無言で、どこか憮然とした表情でジンを見ていた。

 

 

「君も座ったらどうかな?リナリー」

 

 

レティシアが1人立っているリナリーに着席を促すが、彼女は依然として無言だ。

バトゥは注文した酒を飲み干して、すぐに次を注文していた。

リナリーから睨まれているジンは、特に気にした様子は無いが、それを見守っている周りの冒険者達は気が気ではない。

 

この東区で特に有名なクランの団長3人が集まってこのギルドに来ているのだ。

団長達の勇名はこの町はおろか、王都でもその名を知らぬ者がいないほどの豪傑達。

 

全員がAランク。単騎でドラゴンを討伐して涼しい顔をして帰ってくるような連中だ。

その1人が、Dランクプレートをぶら下げた男性を睨み付けているのだ。

 

ジンはカイのように目立つ存在ではないために、東区のほとんどの冒険者達のジンの認識は

迷子のペットを探したり、町を清掃したり。

畑を耕したり、老人の荷物を持っていたりといったごく一般的な、むしろ素朴な冒険者といった程度の認識なのだ。

 

故に、戸惑う。

あの冒険者は一体何者なのだと。

何故あんなに団長達に囲まれて平気な顔してコーヒーを飲んでいられるのだと。

 

なぜネメシスの団長に睨まれているのだ、と。

 

 

「座ったらどうだ、リナリー」

 

 

 

ジンとしても、周りから奇異な目で見られるのは好ましくなく、じっとこちらを見てくるリナリーが流石に鬱陶しくなったのか、ため息混じりにリナリーに声をかけ、空いている席を指し示す。

 

といっても、有名な団長達に囲まれている以上、奇異な目で見るなというのは無理な相談なのだが。

 

 

「貴様……」

 

 

ジンに声をかけられても微動だにしないリナリー。ギルドに来てから初めて喋ったが、その声色には怒りが感じ取れた。

怯える冒険者達。

 

「何度言えば分かるのだ。我とキャラが被っているのだ。いい加減その格好を止めろ」

 

静かに、だがしっかりと怒りの籠った声でジンに向かって命令するリナリー。

その返答に再びため息を溢すジン。

レティシアはその様子を楽しげに眺めており、バトゥは4杯目の酒を飲み始めた。

 

 

「ジン。見ろ、我を。見たか?どうだ?似ているだろう?貴様と我。この眼帯と、この髪色」

 

「……そうだな」

 

「ジン。我はな、ネメシスの誇り高き団長なのだよ。他の追随を許さぬ深淵の申し子。それが我だ。凡人など恐れを成して近づけぬ存在なのだ。だがな、ジンよ。最近我が道を歩けば老人達に囲まれるのだ」

 

 

「……そうか」

 

 

リナリーいわく。

 

あら!ジンちゃん!こないだは荷物持ってくれて有り難うねぇ!これ!ウチの裏の畑で取れた野菜!持ってって持ってって!

 

いわく

 

おわっ!どうしたんだジン!包帯なんて巻いてからに!怪我したんか!?待ってろ!すぐポーション持ってきてやっからな!おーいばーさん!ポーションどこだぁ!?

 

 

いわく

 

 

ジンさん、またウチのミーちゃんが居なくなっちゃったの……ゴメンねぇ、ミーちゃん首輪をすぐ焼き切っちゃってねぇ……でもほら、いくらサラマンダーでも鎖で繋ぐのは可愛そうじゃない?ごめんだけど、また探して貰える?

 

 

いわく

 

 

おーう。ジン坊じゃねぇか……を!?お前さんいつの間に女になったんだ!?ばーさん!ジン坊が別嬪さんになっちまった!はー。美形だとは思ってたが、まさか本当に女だったとは……チチ揉んで良いか?なんつって!ガハハハハ!!

 

 

「分かるか、ジンよ。この我が……この我が……」

 

怒りと虚しさで体を震わせるリナリーがようやく腰を下ろす。

レティシアは彼女に何て声をかければ良いのか考えあぐねているのか、なにかを言い掛けては口をつぐみを何度か繰り返し、最終的には震えるリナリーの肩に優しく手を置いていた。

 

「ガッハッハッハ!リナリー!オメェからジンを真似しといてその言い分は無しだぜ!ジンを初めて見たときに目ぇキラッキラさせながら……おん?どしたぃレティシア?え?酒奢ってくれるのか!?」

 

レティシアがそれ以上はいけないとバトゥを遮り酒代を机に置く。バトゥは言いかけていた言葉を酒と一緒に飲み込み、再び店員に酒を注文する。

 

 

「言い分は分かった。考えておく」

 

レティシアに慰められているリナリーに、少し疲れた様子のジンが答える。

ジンの返答にパァッと顔を明るくしてレティシアを見るリナリー。

レティシアもまた、そんな彼女に良かったね。なんて声をかけていた。

 

 

考えるだけだがな、と1人心の中で思うジン。

最初に出会ったリナリーは黒髪で真っ赤なコートに鎖を全身に巻き付けた格好だったはずだ。

 

ある日いきなりリナリーからファッションとして眼帯ってどう思う?と聞かれたジンは特に深く考えずに、良いんじゃないか?と答えたら、リナリーがにまーっと笑っていたのを思い出す。

 

彼女なりにジンに配慮したのだろうが、ジンとしても特に思う事など無く普通に答えただけだ。

結果が、今の彼女の姿なのだが。

 

ようやく席に着いたリナリーが足を組んでふふふ、と冷笑を浮かべてミルクを飲んでいるのを視界の端に置きながら、団長達に問いかけるジン。

 

 

「それで、ここに来た目的は?」

 

「私たちの可愛い団員が研修を受けに来ていてね、それの見守りだよ」

 

と、微笑むレティシアに、そうか。と、返すジンだった。

周りの視線を無視して、団長達と雑談を始めるジンであった。

良い暇つぶしが向こうからやってきてくれた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「はい!それではこれからクランと、パーティーについての説明をしますね!受けるクエストによって人数が条件に含まれている場合もありますので、しっかりと聞いておいてくださいね!」

 

 

~マーリル先生のクラン?パーティー?それなに講座~

 

 

と、いってもアレン君とオウカさん以外は全員がクランに所属してますので、ここからは2人に向けた説明になりますね!

 

冒険者達が複数集まって出来た組織、これをクランと言います!

必ずしもクランに属さなければならないという訳でも有りませんが、属していると色々と便利なので、可能ならばクランに属した方が良いでしょう!

 

優秀な冒険者にはクラン側からスカウト等もありますので、良い意味で目立ってくださいね!

時には王都の騎士団からのスカウトだって……ふふふ。

 

 

クランに属すると中級以上の冒険者に中級クエストに連れていって貰ったりだとかがスムーズに行えるのも利点の1つですね!

さらに、大体のクランがモンスターの生態についてだったり、クラン独自の情報を持っていますので、冒険者生活を安全に過ごす為にも、利用出来るものはどんどん利用しちゃってください!

 

すでにクランに属している人たちは、所属するクランによって様々なルールが決められていると思いますので、決められたルールを守って、先輩達から色々と学んで立派な冒険者となることを期待しています!

 

 

そして、パーティー。

こちらは人数が指定してあるクエストを受ける際に組む、4人~5人の一時的な集まりだと考えていただいて結構です!

クランに属している人達はクランの冒険者達とパーティーを組むと思いますのであまり考えなくても大丈夫です!

 

2人は、クランに属していない冒険者や人数が足りていない冒険者達がパーティー募集をかけていたりしますので、行きたいクエストで人数が揃わない場合は、パーティーの募集が無いか窓口の職員さんに聞いてみてくださいね!

ですが、求められた職業で無い場合は、参加を見送ることをオススメしますね!

 

 

中級以上のクエストになってきますと、討伐クエストや町を出てのクエストが主になってきますので、例え採取クエストであってもモンスターと遭遇する危険性があります。なのでほとんどがパーティーを組んでのクエストになります!

 

 

例え下級クエストの人数指定の無いクエストであっても、相手はモンスターです。不意の遭遇が想定されますので、単独での出発はなるべく避けてくださいね!命を大事に!

 

 

さて、少しチラッと言いましたが、ここからはパーティー内の職業や編成についてです。

 

パーティーの理想的な編成ですが

アタッカー。ミドルレンジャー。ヒーラー。サーチャーがそれぞれパーティーに含まれているのが好ましいですね!

 

 

アタッカーは文字通り攻撃職ですね!

ミドルレンジャー。こちらは魔法使いや、中距離での攻撃を得意とする攻撃職です。

ヒーラーは回復職で、サーチャーはサーチやソナーが得意な方の哨戒職となりますね!

 

モンスターによっては物理攻撃が効かないモンスターもいますので、物理と魔法。それぞれの攻撃職を編成している事が生存率を高めることになります!

 

 

もちろん、偏った編成でも人数さえ達していればクエストは受注可能ですが、別のモンスターの乱入等の想定外の事態になった際に臨機応変に対応できない可能性がありますので、可能な限り先程言ったパーティーでクエストに向かうことをオススメします!

 

中には単独で複数の職に対応した冒険者も居るのですが、そういった方々はベテランの冒険者かつ、かなりの実力者ですので、大体はどこかのクランの幹部なんかをやったりしていますね!

 

 

今日はこの研修の後に実際にパーティーを組んで、練習クエストを受けて貰います。

 

そうですねぇ。ジーク君達はすでにパーティーとして何度かクエストを受けた経験が有るようですね?この訓練は受けなくても大丈夫ですが、どうしますか?

 

 

参加します?分かりました!では、ジーク君達はそのままパーティーを組んで貰って良いですか?

はい!当たり前の事を言うなという顔ですね!ごめんなさいね!ふふふ!

 

では、残りの4人には誰かリーダーを決めていただきたいのですが……はい!オウカさん!良い挙手ですね!素晴らしい!皆さんもオウカさんがリーダーでよろしいですか?

 

はいっ!ではオウカさんをリーダーとして、アレン君、ミニレさん。トキオ君のパーティーでクエストに参加してください!

今回は練習クエストです。複数人でのクエストに慣れて貰うのが目的ですので、編成が偏っていても問題ありませんが、皆さんで自分の出来る事など話し合って、編成を組んでみるのも良いかもしれませんね!

 

 

では!早速町を出て練習場へ向かいましょう!

 

 

 

 

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