アレンの冒険[世界は広いなぁ~]編   作:チョモランマ斉藤

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ワイワイワイバーン

 

 

「それでは、下に降りて準備をしましょう!先生も準備してきますので、先に降りていてくださいね!」

 

 

パンッと手を叩きマーリル先生の講義が終わった。

次は、いよいよ初のパーティーを組んでのクエストか。少しドキドキしてきたな。

オウカさんが隣で凄く張り切っている。

 

ジークさん達はさっさと席を立って会議室を出ていった。

その時ジークさんが俺とオウカさんを見て鼻で笑っていたが、ルシオラさんとサイラスさんに窘められていた。

 

俺は少しムッとしてしまったが、オウカさんは特に気にしていないようだった。

 

 

「さあ、私達も下に降りよう」

 

オウカさんの号令に俺達も立ち上がって会議室を後にする。

早速リーダーシップを発揮している、頼りになりそうだ。

 

「トキオさんってクランに入ってるんだね」

 

「ああ、アレンも知ってるだろう?ネメシス・オブ・ジ・エンド。この町で最も冷徹で最も偉大なクランだぜ」

 

「ふぅん……」

 

ごめんよトキオさん、聞いたこと無い。というか、この町のクランはフォルトゥナの人達しか知らない。

というか、フォルトゥナの人達すら知らないといっても良いレベル。

トキオさんと雑談をしながら階段を降りる。

先を行く女子達は女子達で交友を深めているようだ。

 

「アレンは今までクエストはどれくらい受けた?」

 

「そうだなぁ、大体は町の中で手伝い系のクエストを何回かと、採取系を何回かかな。いつも2人か3人でしか行ったことないから、今日は楽しみだよ 」

 

「ふっ。そうか!俺はもう討伐系を達成したぜ?Cランククエストだ……ま、余裕だったけどな」

 

 

トキオさんが誇らしげに言う。

ほほう。Cランククエストはまだ受けたことが無いなぁ。

手伝い系はジンさんと、採取系はカイさんと主に行ってたけど、殆どが下級クエストのソロでも出来るようなクエストばかりだ。

 

「俺はまだ冒険者になって二週間経たないくらいだけど、アレンは?」

 

「俺は一週間だよ」

 

「私は3日だ、クエストもまだ受けたことが無い」

 

「私はー。10日前かなー。」

 

 

丁度会話が切れたのか、女子達が俺達の会話に混ざってきた。

自分が一番先輩だったのが嬉しかったのか各々の冒険者期間を聞いてトキオさんがニヤリと笑う。ミニレさんと似たようなものじゃないか。

オウカさんはまだクエスト自体を受けたことがなかったのか。

まあ、俺もジンさんに出会っていなかったらまずは読み書きからだったからなぁ。下手したら生活すら出来ていなかったかも。

 

「初クエストだが、リーダーとしての責務は果たす。皆私についてこい!」

 

「おー。」

 

「よろしくね、オウカさん」

 

「ふっふっふ!この俺を満足に使えるかな?」

 

「黙れこの嘘つきめ」

 

あ、オウカさんの棘のある言葉と視線にトキオさんが落ち込んでしまった。まだ初対面の事を根に持っているのか……。

いきなり怒鳴りつけてしまった俺も大概だけど、初対面で偽名を名乗られたのがよっぽど頭に来たんだろうなぁ。

 

結局、トキオさんはそれ以降しょぼんとしてしまって、彼を慰めるのに随分と時間を使ってしまった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

下の階に戻ってくると、なにやらギルドがざわついていた。

騒がしいというよりも、どちらかと言えばひそひそ話をしていてそれが室内に響いているような印象だ。

 

?……なんで誰も座ってないんだろう?

目の前には随分と不思議な光景が広がっていた。

1つのテーブルを残してその周囲を囲むように距離を空けた冒険者達が遠巻きにその1つのテーブルを見てひそひそと話してる。

よくみたら最初に俺達が座っていたテーブルだ。ジンさんも見える。

 

 

先に降りていたジークさん達がオーガ族の人と楽しげに話している。あ、あの人初日の人だ……まだ朝だというのにすっかり出来上がっている。

 

俺達が座っていたテーブルにはジンさん、レティシアさんと、見たこと無い女性と、先程のオーガ族の男性が集まっている。その後ろにジークさん達。

 

 

やはりギルド内に残る冒険者達はあのテーブルに意識を向けてざわめいているようだった。

?……あのテーブルになにかあるのかな?

 

 

「あー。団長だー」

 

「団長!来てたのか!」

 

 

見知った人を発見したのか、ミニレさんとトキオさんがジンさん達のテーブルへと駆け寄る。

ミニレさんがレティシアさんと楽しそうに話しているけど

えっ、団長て……レティシアさんってあの飲食店の店員さんじゃなかったの?

 

トキオさんもどこかジンさんと格好の似ている女性と話している。彼女がネメシス某の団長なのかな?

 

「とりあえず、俺達も行こうか?」

 

「ああ」

 

取り残された2人でいつまでもここにいても仕方ないので、かなりの大人数になったテーブルへとオウカさんと向かう。

周囲に人は居ないので、集まっても迷惑では無いだろう。

 

「おや、アレン君」

 

「お久しぶりですレティシアさん。レティシアさんってクランの団長さんだったんですね」

 

「うん、そうだよ」

 

オウカさんと共に件のテーブルに向かった俺は顔見知りであるレティシアさんに挨拶をする。

カイさんも人が悪い。一緒に店に行った時にそんな事一言も言ってなかった。

 

「なんだ、レティシアと知り合いだったのか」

 

「うん、こないだカイさんとね。全員ジンさんの知り合い?」

 

「ああ。レティシアは知っているようだな、彼女がフォルトゥナの団長だ。酒を飲んでいる彼がアースラーズの団長、バトゥ。そして、銀髪の彼女がネメシスの団長リナリー」

 

 

ジンさんが説明してくれた。ほうほう、ジンさん以外が全員団長なのか……。

えっ。フォルトゥナ?フォルトゥナの団長だったのレティシアさん。

 

俺が驚いてレティシアさんを見ると、彼女は俺に向かって笑いながら手を振っている。

 

「黙っているつもりはなかったんだけどね、言うタイミングが無くて」

 

「そうだったんですか……カイさんがご迷惑をおかけしたみたいで」

 

ペコリと頭を下げる俺に、きょとんとした後に笑うレティシアさん。

一応ね。カイさんがクランに迷惑かけたみたいだからね。一応ね。

 

「おう、オメェか、ジンの言ってたアレンってのは!俺がバトゥだ!よろしくなぁ!そっちの娘は彼女か!?手がはやいな!ガッハッハ!」

 

「なんでさ!違うよ!友達だよ!よろしく!」

 

酒を飲んで上機嫌になったオッサン、バトゥさんが変な事を言って豪快に笑っている。

ウィン姉が昔言っていたとおりだ。

 

いいかアレン。明るい時間帯から酒を飲んでる奴にロクな奴は居ない。お前はそんな大人になるんじゃないぞ

 

と。なんだこのオッサン!出会い頭にとんでもない事言う人だな!やっぱウィン姉は正しかった!カイさんと違うベクトルでロクでもないな!

 

 

チラリとオウカさんを見れば、特に気を悪くする事無く、むしろ

ふふふ、友達

と、はにかんでいた。

 

 

「全員が挨拶をしたのだ。我もせねば無作法というものか……。小僧。我がネメシスの団長。リナリーだ、恐れ敬い、称えよ」

 

ジンさんと似た格好の女性も、どこか癖のある挨拶をしてくれた。

クラン名はトキオさんの言うネメシス某では無いようだ。

あ、リナリーさんの後ろでトキオが青ざめている。

ははぁん?横を見なくても分かるぞ?俺の横でオウカさんがすごい顔してるな?

 

 

「はーい!皆さんそろそろ………えっなにこれ凄い」

 

マーリル先生が降りてきて、ギルド内を見て、というよりも一ヶ所に集まる団長を見て唖然としている。

この町のクラン事情なんて全く知らない俺だけど、このギルドの様子を見ると流石に分かる。

 

この人達がこの町のトップ冒険者達なのだろう。

 

 

「え……と。はい!集合!皆こっち来て貰って良いですかね!?先生ちょっと近づけない!オーラ!オーラが凄い!」

 

 

はわわわと俺達を高速手招きで呼ぶマーリル先生。

特に此処に留まる理由も無いし、なにより研修中だ、俺達は全員でマーリル先生の元へと向かう。

 

 

「資料で知ってましたけど、まさか団長達がギルドに来てるだなんて……さ!気を取り直して、今回受けるクエストを説明しますね!」

 

 

マーリル先生の説明によれば、俺達はこれからワイバーンに乗ってギルドが管理しているダンジョンへと向かい、ダンジョンの最深部に置いてある魔石を取ってくればクエスト達成なのだと。

 

クエストランクも、管理されたダンジョン内でのクエストになるためにFランク相当のクエストらしいので、緊張せずにのびのびとやってくださいって事だった。

 

「それでは、外にワイバーンが準備されていますので、東門へと向かいましょう!あ!皆さん一応武器を持ってきてくださいねー」

 

すこし慌てた様子のマーリル先生が見守る団長達に挨拶をして、俺達を急かすようにして、ギルドを後にした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おお、近くで見るとでっかいなぁ」

 

目の前には移動用にギルドが飼育したワイバーン2頭が、リリィさんと一緒に俺達を迎えてくれた。

鈍い緑色の、腕の無い大きな飛竜。野生のワイバーンと違って人を襲うことは無いようだが、それでも元々はCランク相当の危険度があるモンスターだ。

 

向かい合うと自然とワイバーンとの戦い方を頭の中で組み立ててしまう。

空を飛ぶ相手か……火を吐くことは無いが、エアネイルでの遠距離攻撃も持っている。対面すると苦戦するかもしれないな。だがまあ、やりようはあるか。

 

「研修頑張って。アレン」

 

「ありがとうリリィさん!」

 

ワイバーンとの戦闘を脳内でシミュレーションしていると、リリィさんが声をかけてくれた。

余談だが、俺と目があったワイバーンが少し怯えた目でこちらを見ていたが、どうしたのだろうか。

 

「それでは、それぞれパーティーに別れて乗り込んでください。ジーク君達はワイバーンに乗った経験も有るようなので、私はオウカさんパーティーの方に乗らせて貰いますね」

 

先生の言葉を聞いてジークさん達が用意された箱に乗り込む。

これもシュラール国で開発されたモノらしく、人の乗り込んだ箱をワイバーンの胴体に装備された器具にロープで固定し、運ぶのだとか。

箱の外部に飛行系のモンスターの魔石が設置されていて、風圧や揺れを抑制して、中の人が不快にならないよう設計されているらしい。凄い。

マーリル先生が教えてくれた。

 

ジークさん達が箱に乗り込み、ワイバーンが飛び立つ。

あっという間に上空へ飛び上がったワイバーンが空の彼方へ消える。

はえー。スッゴい便利。落ちたりしないのかな?

 

 

「さ!私達も出発しましょう!」

 

マーリル先生を先頭に俺達も箱へと乗り込む。

箱の中はバスのように人が座れる座席が複数設置してあり、とても快適そうだ。

マーリル先生が座席を操作して5人が向かい合って座れるように調整してくれた。

 

男性陣女性陣と別れて座り、向かい合って座る。

これから空の旅が始まる。箱には窓があったので、俺とトキオさんは体の向きを変えて窓から外を見る。

あ、リリィさんが手を振ってくれている。

 

「あの美人さんと知り合いなのか?アレン」

 

「うん、とても良くしてくれてさ、俺まだ読み書きが出来ないんだけど、辞書とか色々と貸してくれてさ。めちゃくちゃ良い人だよ」

 

トキオさんと会話をしながらリリィさんに手を振り返していると、ワイバーンが羽ばたきを始めて、すぐさま空へと飛び上がる。

 

不思議な浮遊感と、少しの緊張感。

ワイバーンは俺達を乗せて、ダンジョンへと向かう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「目的地までは暫くかかりますので、皆さん自由にして貰って結構ですからね!」

 

マーリル先生の言葉に、はーい。と返事をする俺達。

オウカさんがコホンと咳払いをし、俺達を見渡す。

 

 

「改めて、今回のリーダーとなったオウカだ。これからのクエストに向けて各々の能力を把握したいのだが、構わないか?私の武器は刀だ。寄って、斬る。先生の言葉を借りるならばアタッカーだな」

 

オウカさんが青い刀を俺達に見せる。

パッと見鞘の色くらいでしか違いが分からない。

刀の種類なんて良く分からないから良いものなのかどうか分からないが、ジンさんの持っている刀とは違うのかな?。

 

「いいよー。私はねー。武器はこれー。」

 

ミニレさんが持ってきた武器を俺達に見せてくれる。

これは、ハンマーかな?金属製の長い柄をした白とピンクの可愛らしい色合いのハンマー。槌の部分が少し小さい。

 

「ハンマーー。」

 

あ、そう発音するんですね。

 

 

「俺は会議室でも宣言したとおり魔法使いだ!得意とする魔法は全てを焼き尽くす地獄の炎。そう!ヘルフレイム!」

 

ほう。そんな魔法があるのかな?聞いたことは無いけれど。

手にした杖を掲げてチラチラとオウカさんを確認しているトキオさん。

刀を持ったオウカさんに追いかけ回されたのだ、また嘘をつくなんて考えられないけど……。

 

 

「なるほど、つまりアタッカーとミドルレンジャーは揃っているようだな。アレンはどうだ?見たところ無手のようだが」

 

オウカさんが頷いて俺に聞いてきた。

うーん。そうだなぁ。索敵も回復も遠近戦闘も出来るしなぁ、俺。

あら!そう考えれば意外と有能なんじゃないのか俺ってば!ふふふ、まあね。鍛えられましたからね。

 

「使い慣れた武器は剣だけど、大体は現地調達してるから今のところ特定の武器は持ってないよ。サーチも回復も出来るから、今回はサーチャーとヒーラーに回ろうか?」

 

「おいおいアレン……格好いいじゃねーか!でもよ、嘘つくとオウカに追い回されるぜ?先生も言ってたじゃないか、そういうのはベテランか実力者だけだってさ」

 

「それは貴様だけだこの嘘つきめ。私は友達を信じる。そう。友達をな!アレン。私はお前を信じる、今回は哨戒職を頼んでも良いか?」

 

「よっしゃ!任せておくれよ!オウカさん!」

 

 

まあ、先生の言うとおりなのかもしれないけど、使えるものは使えるのだ。へっへっへ、実力者。

オウカさんが力強く頷き、トキオさんが疑わしげに俺を見ている。

ミニレさんは相変わらずほわほわ笑っていて、マーリル先生は微笑ましそうに俺達を見ていた。

 

 

ワイバーンに運ばれながら、ワイワイと雑談を楽しむ俺達は、のんびりとダンジョンを目指す。

 

 

 

 

 

 

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