アレンの冒険[世界は広いなぁ~]編   作:チョモランマ斉藤

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4話

 

 

「おかえり、どうだった?」

 

「ダメだった」

 

 

即答である。

部屋に帰りつくなり軽い感じで聞いてくるべーやんに俺は落ち込みながら答えた

 

 

「ちゃんと愛してるとか大好きとか付け加えたかー?」

 

「言ったよ!めちゃくちゃ恥ずかしかったけどちゃんと言いましたよボカァ!思春期に何言わせとんじゃい!!」

 

 

激昂である。

このぬいぐるみは思春期に何を言わせているのか小一時間問い詰めたい気持ちで一杯だった。

珍しく照れている皆は新鮮だったけれども、俺はそれ以上に照れていたのだよ!

 

 

「あれぇ?おかしいなぁ…アレンに言われたら一撃だと思ったんだがなぁ」

 

「全員からダメの一言だったよ!」

 

 

本気で理解できないといったようなこのクマちゃんをどうしてくれようか。

 

 

「で、どうする?」

 

「へ?」

 

頭の中でこのぬいぐるみをいかにして蹂躙してやろうか考えていると、真面目な声色でべーやんが訊ねる。

 

 

「諦めるのか?」

 

「うーん…」

 

 

正直、一回で説得が成功するだなんて思って無かった。あわよくば、といった程度だ。

だけど、あそこまで聞く耳を持たれぬとも思って無かった。取りつく島もない程の即答で拒否された。

 

ぬーん。こんなに頑張っている俺を少しは認めてくれたって良いじゃないか。

皆に言ったことは間違いなく本音なのにさぁ。

俺があそこまで赤裸々に言ってあえなく無下にされてしまったのだ。ろくに理由すら教えて貰えずに。

 

ふっふっふ。ならばこちらにも相応の考えがあるというもの。

 

 

「抜け出すか、城」

 

 

俺はニヤリと笑ってべーやんにそう言った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「いきなりどうしたのでしょうか、アレンは」

 

「………」

 

「ここの生活が嫌になったのかなぁ…」

 

「バカを言うな、アレンに限ってそんな事」

 

「でも、今まで外の世界に行ってみたいだなんて、聞いたことがなかったよ?」

 

「ではやはり、あの人形か…?」

 

 

魔王補佐であるウィンが魔王ゼノに問いかけるも、ゼノは口をつぐみ、何かを思案していた。

 

食後のひと悶着のあと、魔王と幹部達が1室に集まり緊急会議と称して話し合っている。

 

アリアが落ち込みながらポツリと呟けば、すぐさまフレイがそれを否定する。

 

シェリスがこれまでのアレンの態度におかしな所など無かったことを伝えれば、幼い頃よりアレンの部屋に居るという、アレンがべーやんと呼び慕う謎の人形が幹部全員の頭に思い浮かぶ。

 

 

謎のクマのぬいぐるみ、べーやん

 

 

幼いアレンが数回、魔王を含め幹部全員に見せてくれたことがあった。

はじめは子供特有の妄想かと思っていたが、なんと、自分の意思をもって言葉も話すではないか。

 

 

ウィンによって調べられた結果、非常に高度な魔導生命体では無いか、との結論に至った。

ウィンとしてもこの結果に納得出来るものではなく、解剖して詳しく調べたいところではあったが、友達をいじめないでとアレンに泣きわめかれれば、ウィンとしても引き下がるしかなかった。

 

 

魔王ゼノとしても、そのような奇妙な物体を幼い我が子に買い与えた記憶も無ければ、アレンが自分で魔の森で拾ってきた形跡もなかった。

ならば、元々魔王城にあったのか。

 

クマ本人(?)に聞いてみても煙に巻くように誤魔化される。

分からんと、気がついたらここにいたと。

本心なのか、何かを隠しているのか。

魔王ゼノであっても見極める事は出来なかった。

 

結局、アレンは懐いているし、特に害は無いと判断され、アレンの部屋に妙に口のまわる奇妙な同居人が住み着くこととなったのだ。

 

 

「アレンは、私の息子だ」

 

「?…ええ」

 

「性格は、お前達や……癪だが、あの人形のお陰で、明るく育った」

 

「我々としても、自慢の弟です。ゼノ様」

 

不意にポツリとゼノが呟く。

フレイは自分の主が何を言わんとしているか今一図りかねていたが、胸を張って家族であることを誇った。

 

 

「だが、根底は私の性格を良く受け継いでいる」

 

「はあ…」

 

 

いきなり何を言い出すのだろうこの主は。

雪のように真っ白な肌に、これまた雪のように真っ白な髪。

同性の自分からみても寒気すら感じるほど美しいと思う自分の主に、フレイは曖昧な返事をする。

 

 

「部屋に行くぞ、息子は、すぐに行動に移すはずだ」

 

「!!!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「アレン、いるか」

 

コンコン、と

アレンの部屋の扉をゼノはノックする。

 

 

「……アレン?」

 

 

いつもならばあの人形と楽しげな会話をしている時間帯だが、返事がない。

まだ眠るには早すぎる。

 

後ろに控えた幹部達から少しばかり動揺した様子を感じたゼノはアリアに目配せをする。

アリアに索敵魔術を使用させ、部屋の中の気配を探る。

たとえ家族であってもここから先は息子のプライベートな空間であり、母親であっても立ち入ることは気が引けたが、事態が事態だ。

 

「ゼノ様、反応はあります」

 

「………アレン、入るぞ」

 

アリアの言葉にコクリと頷き、ゼノはアレンの部屋の扉を開けた。

 

 

 

「よう、遅かったな」

 

 

魔王と幹部を出迎えたのは、空いた窓からそよぐ夜風と、アレンのベッドにちょこんと座ったお喋りな人形ただ1人だけだった。

 

 

 

 

 

 

 




べーやんを「人形」から「ぬいぐるみ」に変更しました。
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