「アリア、アレンが今何処に居るか分かったか?」
「うぅ~ん…」
アレンが居ないことを確認してすぐにウィンは最も索敵魔術が得意なアリアに魔術を使わせたが、未だに発見には至らなかった。
「部屋で感じた魔力、あれは間違いなくアレンのモノだったな」
「そうだね、見事に騙されちゃったみたい」
唸りながら探知を続けているアリアを待ちながら、フレイとシェリスが部屋での出来事を思い起こす。
部屋にはアレンの反応。しかし、居たのはあのクマただ1人。
見事にしてやられた。
「ウィン、アレンは何処へ向かう?この分じゃあ大分遠くに進んでいると考えるが」
「そうだな、食後のアレンの会話からこの…なんだ、家出か。家出したとなれば目指すはこの国からの脱出だが……ふむ」
ウィンは考えを巡らせる。
チラリと部屋の状態を見た程度であるが、事前から計画を立て、それを今日実行したというよりは、反対され、衝動的に出ていったと考える方がしっくりくる。
アレンはどうやら冒険者になりたいらしい。
だが、このサタナキア大陸には冒険者が所属するギルドそのものが存在しない。
なので、この大陸で冒険者になるのは不可能。
であれば、海を越えて別の大陸を目指すために港町を目指したのだろうか?
しかし、どうも腑に落ちない。あのクマがそのような提案をするだろうか。
他の大陸へ渡る船が出る港町まではこの国から軽く3日はかかる。
時間が経てば経つ程アレンを連れ戻す事は容易になる。
「………まさか」
「どうしたの?アレンの向かう先が分かった?」
アレンの向かう先、その一つを思い付いたウィンだが。何故?という疑問が生まれる。
シェリスが考え込むウィンに問いかけるが、ウィンの表情は優れない。
シェリスにはいまいちウィンの考えていることが分からなかった。
んー?と、シェリスが顎に指を添えて首を傾げていると。
「フレイ、お前に動いてもらうかもしれん。確証は無いが、下手をすれば、間に合わないかもしれない」
「なに?それはどういう…」
ウィンがフレイに指示を出そうとしたその時
「見つけた!ここから5㎞先で大きなアレンちゃんの魔力を見つけたよ!えーと……北に真っ直ぐ、猛スピードで進み始めた!」
「やはりか!」
ずっと唸っていたアリアが声をあげた。
アリアの報告にウィンがいち早く反応する。
何故あのクマがあの祠の存在を知っているかは今は良い。だが、このまま行かせればアレンは本当にこの大陸を出ていく事になる。
「フレイ、試練の祠だ」
「!」
「アレンは祠の存在すら知らん、あのクマの入れ知恵だろう」
「なんとまあ…戻ったらあのクマを問い詰めなければならんな」
あのクマめ。フレイが苦笑する。
なるほど、これは少し厄介だ。
急がなければ手遅れになるだろう。
フレイがすぐに追跡に出発しようと魔力を体に纏わせ始めると
「フレイ、コレを」
「ん?……私にあの辺りの毒など効かんぞ?」
シェリスが出発しようとするフレイにとある液体の入った瓶を渡す。
受け取ったフレイだが、瓶の中身を見て首をかしげる。
今さらこのような薬、自分には必要のないものだ。
「貴女にじゃないよ、アレンに」
「ああ、なる程」
シェリスから受け取った瓶を懐にしまうと、今度こそフレイは凄まじいスピードでアレンの追跡に出発した。
「アリア、お疲れ様」
「うん…でもゴメンね、凄く時間がかかっちゃった…」
シェリスが索敵魔術を終えたアリアに声をかける。
探知に時間がかかってしまった事を気にして落ち込んでいるアリアだが
少しだけ、アレンを最後まで見つける事が出来なかった事に姉として、アレンの成長を嬉しく思っていた。
「私はゼノ様の元へ向かう、2人はどうする?」
「そうだね、私もアリアももう出来ることはないだろうし…あのクマちゃんとお話でもしてみようかな?」
「あ!良いね!アリアさんもアイツに文句が山ほどあるんだよー!良い機会だし、アリアさんも着いていくよー」
ウィンはゼノにアレンの目的地を伝えるため。
シェリスは純粋に興味があるから。
アリアは、普段からずいぶんと翻弄してくれた憎きクマに一言物申さねば気が済まぬと、再びアレンの部屋を目指すのだった。
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「む、流石に早いな……これはフレイの嬢ちゃんか」
「この場所は…やってくれたな」
強大な魔力が猛スピードでこの城から動き出したことを察知したべーやんと
その方向から行き先に見当がついたゼノ。
確かにアレンは見つかったようだ、しかし、向かった先が良くない。
「はっはっは、まさに最初の試練ってな。今のアレンには丁度良い……いや、フレイの嬢ちゃんをどうにかする事の方が難易度が高いか?」
「減らず口をよく叩くクマだ」
ゼノが立ち上がる。
場所さえ分かればもうここに用は無い。
厄介な所を教えたものだ、急がねばならない。
フレイが追っているのだ、アレンに勝ち目は万に一つも無いだろう。
だが、億に一つがあるかもしれない。現にアリアを出し抜いた。
ならば、行かねばならない。
母として、魔王として。
(さあ、アレン。これからが正念場だ…頑張れよぉ!)
ゼノが立ち去り部屋に1人
べーやんが心の中でエールを送る。
今のところは作戦どおり。しかし、追手が非常に悪い。指揮はウィンが執ったのだろう、最善の人選を最短でブチ込んできた。
「おん?」
部屋の外で話し声がする
ゼノとフレイ以外の幹部達がなにやら話しているようだ。
「ではゼノ様。お気をつけて」
「ああ」
幹部達がゼノを見送る。
そして、幹部達が部屋に入ってきた。
凍りついた部屋の様子にに少しだけ驚いていたようだが、それよりも普段からべーやんに対する鬱憤が溜まっていたのだろう。
無言でこちらに近づく三人、特にウィンとアリアは不機嫌さを隠そうとしていない。
楽しい世間話をしに来た訳ではなさそうだ。それはそうだろう。
痛くしないでと祈るばかりである。
(わあ、俺、これからも正念場だぁ…助けてぇ…)
完全に自業自得であった。