アレンの冒険[世界は広いなぁ~]編   作:チョモランマ斉藤

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8話

 

 

俺の家出作戦も中盤に差し掛かった。

市街地を一瞬で飛び越えて、夜の草原を走り抜ける。

連続の転移魔術で結構魔力を消費してしまったが、もう遠慮する事はない。全力で走り抜けてやるぜハッハー!!

 

初めて見た魔王城と魔の森以外の景色に意識を割く事なく俺は前を向いて走った。

余裕があれば、初めて見る景色に心踊らせてもっと観察とかしていたかもしれないが

そーんな余裕あるわけねぇ!なんかヤバイ予感がひしひしとし始めたんだけど!

 

「うっ…」

 

全力で走り続けること数十分後。目の前に鬱蒼とした森が見えてきた。

その不気味さに思わず立ち止まってしまう。

 

なるほど、ここが目的地か。たしかに一気に空気が変わった。

森の周囲は、ここから先は限られた者しか生きることは許さん!とばかりに不自然に枯れた草が広がっている。

 

森全体が毒を放っているのか…この国の全ての毒性生物達を集めたかのような森だなぁ。

だが、怯んでもいられないな!目的地はこの森の中だ。よっしゃ!あと少し、やったるぜ!

俺は意気揚々と森の中へと入っていった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

アレンが毒の森へと入っていったその頃、アレンを連れ帰る役目を担い猛進するフレイはすでに毒の森のすぐ近くまで来ていた。

 

「さて、アレンは試練の祠を目指しているのだったか…そぉら、今から私が行くぞ!」

 

ここまで接近すれば自分は既にアレンの索敵魔術の範囲内だろう。

しかし、一向に探知された気配がない。

毒の森に苦戦して、索敵魔術を行う暇が無いのだろうか?

まったく、手のかかる弟だ。

 

獰猛に笑ってフレイが全魔力を解放した。その魔力は紅蓮の焔となってフレイの体を纏う。

視認出来るほどの魔力を体に纏わせてアレンに伝える。

私が来た。

と。

 

アレンならば、いや。少しでも索敵魔術を使用できる者ならば魔術を使用しなくても分かる程の高出力の魔力を身に纏い、ドライグ国最高戦力が更にスピードを上げて駆け抜ける。

 

 

 

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早速だが現在、俺の体は猛毒に冒されていた。

 

もう一度言おう、猛毒に冒されていた。めちゃくちゃ辛い。

正直なめてた、誠にゴメンナサイ案件である。

 

言うて魔の森レベルの毒じゃろう?余裕余裕ガッハッハ!

なんて思っていた数分前の俺を殴り飛ばしてやりたい。

 

解毒しても解毒しても、先へ進む度に新しい毒が俺に襲いかかる。

中には物理的に刺してくる奴だっていた。特に赤い奴、赤い奴はヤバイ。

魔物としても普通に強い。

こっちが解毒に四苦八苦していてもお構いなしに襲ってくる。まあ、そりゃそうだけれども。

少しは融通をきかせてほしい。

 

そんな訳で、俺は解析魔術と精製魔術の2つを駆使してこの忌々しい毒の森を進まねばならないのだ。もうね、アホかと。

索敵魔術?無駄、周りに敵しか居ないもん。

 

まず解析魔術で俺を蝕む毒を解析し、その毒が効かない生物を探しだす。

で、精製魔術でその生物から抗体を抽出。即効性のある解毒剤を作って、飲む。

この繰り返しだ。

 

奥に行けば行くほど毒は強力になっていく。

共生してるとはいえ、序盤のヤツ等はこの毒の森でも生存競争に敗れて端へ端へ追いやられたヤツ等だ。

え、つまりなにかい?この森の中にある毒の沼って……

 

 

「うおっ!!?」

 

 

俺が嫌な予感に冷や汗を流していると、突然強大な魔力が凄まじい熱量と共に森の外に現れた。

虎視眈々と俺に襲いかかろうとしていた生物達が魔力を察知してか、一目散に逃げ出した。

あー…これはまずい……フレイ姉だ……。

 

俺はついさっき思ったことを改めて思い出す。

 

 

赤い奴は、ヤバイ

 

 

 

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「なんだ、まだこんなところに居たのか。随分のんびり屋さんだなぁ、アレン」

 

紅蓮の焔を身に纏い、毒など知らぬとばかりに周りの空気を焼きながら悠々とフレイ姉が現れた。

空気が熱い。息をする度に喉が焼けそうだ。

 

 

「んー、しかしいつ来てもここの毒は鬱陶しいな…どれ、アレン」

 

 

ポリポリと頬を掻きながらそんな事を言う姉が最後まで言い終わる前に、俺は瞬時に体に魔力を纏わせて防御体勢を取る。

次の瞬間凄まじい魔力の奔流が業火と共に周囲の木々を焼き払った。

 

「よし、これで話しやすくなったな!」

 

この程度、なんてこと無いような気軽さで、俺の苦労を嘲笑うかのようにフレイ姉はこの毒の森を攻略して見せた。

俺の頬を伝うこの汗は絶対に暑さのせいではないと断言できた。

 

 

もう一度言おう、何度だって言おう。

 

 

 

アカイヤツハ、ヤバイ

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

辺り一面を焼け野原にして、悠然と佇むフレイ姉が俺に微笑みかける。

その顔はとても、残酷なほどに優しい顔をしていた。

 

「こんな場所、ピクニックには向かんだろう?お前の気持ちも、覚悟も分かった。だが、ここまでだ。さあ帰ろうアレン」

 

強烈な魔力を抑えて普段通りの温和な表情で俺に手を差し伸べてくるフレイ姉に応えず、思考を巡らせる。

 

考えていた最悪の展開になってしまった。だが、姉達の誰かが向かってくることなんて最初から覚悟の上で俺はここに居るのだ。帰る?バカを言っちゃあいけないぜフレイ姉。

 

俺は帰るつもりはない。いや、勿論たまには里帰りするよ?でも、今は帰らない。

 

 

「イヤだ、俺は行く。冒険者になって、自分で生きていく」

 

「なにも冒険者にならずとも、この大陸でお前の望みを叶える事はできるじゃないか。私からもお前の自活をゼノ様に進言してみよう」

 

「ここじゃダメだ、俺は魔王ゼノの息子だ。どうしたってカーチャンや姉ちゃん達の存在が、その……」

 

「邪魔になるか?ははは、まあ、ゼノ様や我々はこの大陸で名前が知れ渡ってるからな。安心しろ、手は出さんさ」

 

「なら、このまま行かせておくれよ」

 

「ダメだ」

 

「なんでさ!理由を教えてくれよ!」

 

「ずっと弟のように可愛がってきたお前が急に居なくなるなんて、寂しいじゃないか」

 

「そんな理由で!………え?そんな理由?」

 

「他になにが?ゼノ様はどうか分からんが、少なくともウィンやアリア、シェリスは私と同じ気持ちだよ」

 

「えぇー……」

 

「さ、もう良いだろう。いい加減帰ろうじゃないかアレン、明日も訓練だ。その後は…そうだな、皆でピクニックでも行こう。私のお気に入りの場所を案内するよ」

 

駄々をこねる子供に言い聞かせるようにフレイ姉が再度俺に帰宅を促す。

 

違う。嘘だ。

寂しいってのは、嘘じゃないんだと思う。だけどもっと別の、俺をこの大陸から出したくないなにか別の理由が有るはずだ。

実力不足って訳でも無いだろう。

現に、一人でここまで辿り着けた。

来て分かったが、ここはドライグ国でも特にヤバい場所の1つだ。

しょーもない理由過ぎて現実逃避してる訳じゃないぜ?いや、正直したいけども!

 

フレイ姉は嘘をついている。フレイ姉の表情と言葉に長年顔を合わせてきたから分かる些細な違和感がある。

本当と嘘を織り混ぜて俺をなんとかこの地に残そうとしている。

 

家族を想うなら、この場に残るのが正解なんだろう。だけど

 

 

 

「イヤだね、いい加減姉弟離れしようぜ、お互いにさ」

 

「アレン」

 

「俺は行く、絶対に行く!例えフレイ姉を倒してでも俺は行くんだ!!」

 

「ほう?ほうほう…ほうほうほうほう?」

 

 

俺の叫びを聞いたフレイ姉が再び魔力を高め始めた。辺りが殺気に包まれ、空気が熱を帯び始める。

 

 

「誰が誰を倒すだと?ほんの少し見ない間に随分と面白いことを言うようになったなぁアレン。本当に面白いよアレン。仕方ない、実に仕方ない。聞き分けの無い子供にはお仕置きをしないといけないなァ」

 

「ぐっ…」

 

 

フレイ姉の強烈な魔力に思わず怯む。しかし

退かん!絶対に退かん!男に二言はねぇ!自問自答はもうやり飽きた!だから俺はここにいるんだ!ゴールは目前なんだ!俺は前に進むぞ!

ちくしょうフレイ姉なんて怖くねぇ…やってやんよぉ!

 

 

「よっしゃ来いやぁ!!」

 

「ははは……骨の2~3本は残してやるよアレェェェン」

 

うわわわ超怖ぇぇぇぇ!!!

紅蓮の焔を煌々と纏うフレイ姉の迫力にチビりそうになりながらも、俺も魔力を全開にして、フレイ姉に突撃した。

 

 

 

 

 

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