青の星、水の星、生命あふれる星。
様々に呼ばれる太陽系第三惑星【地球】。遥か太古から生命体による食物連鎖が繰り返され、多くの営みが生まれては消えていった破壊と再生の星。
その星の中に生まれた種の一つである【人間】は、その人間にとって気の遠くなる時間、想像もつかない年月を掛けて進化を重ね、やがて地球を代表するかのような生命体へと変化していった。
生まれ故郷である美しき地球で生きる為、地球の自然環境を利用する技術を生み出し、また地球の力に頼らない技術すらも編み出そうとしていた。やがて地球を飛び出し、謎多き漆黒の宇宙にその手を掛けようともしていた。
だが、それを許さぬ者もまた存在する。それを利用しようとする者も、人間が汚した地球を守ろうとする者も。それは怪しき獣であり、宇宙からの来訪者であり、侵略者でもある。そして人間同士が完璧に調和しているとも言い難い。
そんな火種を抱えたまま、外なる脅威に怯えたまま明日を生きなければならないのか。否、人はいがみ合うだけではない。手を取り合い互いを理解し、共に立ち向かう事ができるのもまた人なのだ。そして侵略者が居るのなら、手を貸してくれる協力者も存在する。
人間を愛し、共に戦い、共に学ぶ、そんな協力者が。地球の遥か先に輝く光の国から我らの為に。来たぞその名は───
【ウルトラマン】
▽▲▽▲▽▲
「この辺りか?」
「ええ。こっち側は被害が少ないみたいね」
山中を進む二人の男女。コスプレイヤー以外の一般人はまず着用しないような「制服」の上にプロテクターを装着し、物々しい機材と物騒な銃器をそれぞれ装備している。
「本当なら今日休みだったのにぃ」
「仕方ないだろ。シルバーブルーメの一件でピリピリしてる所に今回の隕石だ。新しい円盤生物の可能性も捨てきれない以上、動ける俺らが動くしかない」
「オビ真面目過ぎ~」
「リルが気を抜き過ぎなだけだ」
オビとリル、互いにそう呼び合う男女は、地球を防衛する組織【BURK】の隊員。「とある宇宙生物」による襲撃により、隊員が人質に取られ、現在BURKと共闘している【ウルトラアキレス】も退けられるという最悪一歩手前の事態が発生した。それが解決して一ヶ月、警戒態勢で神経が逆立っている所に届けられた「地球への落下コースに入った隕石」の報。本来は非番の二人に調査の命令が下ったようだ。
「っとと、急に反応しちゃってさぁ・・・!」
「武器は構えておけ」
ウンともスンとも言わなかった機器が急に反応を示す。弛緩していた空気は霧散し、BURK隊員としての張り詰めた雰囲気を纏う二人。オビは最初から保持していたBURKガンHSを握り直し、リルも探査機材から手を離してBURKガンとBURKエッジLSを構える。徐々に荒れてきた地形を慎重に進むリル、その隙をカバーする形で警戒姿勢のオビ。
「見事に粉々ね・・・」
「ただ隕石が落ちただけ、なら運が悪かったで済むんだがな。人的被害が無かったのは不幸中の幸いか」
二人が発見したのは小規模なクレーター。その中心地から飛散したと思われる破片が、そこかしこに転がっている。
「とにかく本部に報告だな」
「そうね」
通信機を起動し、状況を報告するリルと周囲を警戒するオビ。
「・・・」
そのオビすら気付かない位置から二人を、そして落下地点を見詰める影があった。「それ」は視線を外すと、一瞬の内に去るのだった。
「っ」
「───なので回収を・・・オビ?どうしたの?」
「いや、何か・・・」
▲▽▲▽▲▽
「何なんだ」
度々発生する怪獣による被害、それから立ち直りつつある街中。行き交う人々を眺めながら、ベンチで独り言を溢している男が居た。【鶴千 契】今は非番なのか私服だが、外星の調査にメンバーとして抜擢されるBURK隊員である。
(あの外星調査から違和感が拭えん・・・記憶も曖昧な部分が多い)
【ホピス】と呼ばれる惑星の調査。半年前に行われたそれから、消えるどころか日に日に増していく「違和感」に悩む契。
(本当に部分的な記憶喪失なのか?本当に成果無しだったのか?セイバーには戦闘機動を取った形跡もあった。隊長達も負傷していた。情報統制ならと引き下がったが、あの場で何かがあったのは間違いない)
(何があった?)
洞窟の崩落に巻き込まれ、岩塊の下敷きになったらしい契を含めた男性隊員たち。戻ってきた際には「全部終わっていた」かのような雰囲気であり、何があったか情報を探ろうとしても、民衆の不安をいたずらに煽れない、という名目で不明瞭なまま。知らないならそれで良い、と言わんばかりの秘密主義にシルバーブルーメの一件で下されかけた判断も加わり、元から低い上層部への信頼が下限を突き抜けそうになっている。
「チッ・・・」
苛立ちを舌打ちで少しだけ吐き出しベンチを立つ契。こういう時は体を動かすに限る、と休みにも関わらず基地へ足を向ける。同じBURK隊員の士道 剣にスパーリングでも申し込む気だろうか。
「ん?」
大通りの方が騒がしい事に気付く。遠目でも分かる程度には人集りが出来ており、お祭り騒ぎという雰囲気でもない事から街のイベントという訳ではないらしい。「興味」が大半の野次馬に、「恐れ」や「嫌悪」のような悪感情が混じっているのも見て取れる。
「警察官か・・・まぁいい、ちょうど暇していたしな」
しまいには警察官まで現れ、BURK隊員として無関係とは言えなくなってきた。誰に向けるでもない言い訳じみた独り言と共に人集りへと向かう契。すまない通してくれ、と人垣を掻き分け、人々が注目している先へ辿り着いた。そこで目にしたのは───
「子供?だが・・・」
怯えたように背筋を丸め、早足で大通りを抜けようとしている小さな姿。子供が小走りしているだけなら気にも留めないが、その様子と容姿が人の目を集めているだろう事は直ぐに分かった。
後ろ姿でも分かる程に白い髪。服装は現代の地球文化では見ないようなデザイン。おまけに裸足で、何かから逃げるように走っている。
「下がってくださーい」
「BURKの鶴千だ、状況は」
「あっ、しっ、失礼しました!」
制服を着ていないから分からなかったのだろう。野次馬として下げようとした警官にBURK隊員証を兼ねたデバイスを見せ、状況の説明を求める契。だが、警官も「様子のおかしな子供が居る」「人が集まりすぎて危ない」程度の通報で出動した為、詳細は分かっていないようだ。
「こちらで追う。怪我人が出ないように整理してくれ」
「はい!」
▽▲▽▲▽▲
「・・・!」
「あー、敵意は無い、ぞ?」
数分後、大通りから少し外れた公園で少女と契が睨み合っていた。厳密には契は屈んで目線を合わせようとしており、言葉通りに敵意は一切無いのだが、少女は警戒を解こうとしてくれない。更に言えば契は子供の相手は苦手な部類の人間である。
(駒門さんの方が良かったか・・・今から連絡して直ぐに現着できるかは分からんが)
自覚できるレベルの仏頂面よりも、包容力のある女性の方がこういう場面は良いのでは、と気付いたのは少女に睨まれてからの契だった。
「そうだな・・・俺は鶴千 契。この地球を守っているBURKという組織の隊員だ。おま・・・君は?」
「・・・」
(駄目か)
苦手で不器用ながらも意志疎通を試みる契。だが少女は頑なに言葉を発しない。
「あー・・・その動物を追いかけてた、のか?」
「!」
少女の腕に毛むくじゃらが抱かれているのが見えた。街中を走っていた時から持っていたのか、この公園でようやく捕まえたのかは定かではないが、可能性の一つとして話題に出してみる。少女の目付きが鋭くなった辺り地雷だったようだが。
「すまん、動物なんて失礼だよな。名前はあるのか?」
愛着のあるペットか何かなのか、と考えた契。失言のフォローを兼ねてほんの少し話を逸らす。今の自分に出来る最大限の微笑みを浮かべながら。20年強生きてきた中で、今ほど表情筋を使った事は無いだろう。普段の俺はどれだけ仏頂面なんだ?と思わずにはいられない契だった。
「・・・」
「むぅ・・・」
密かな努力も功を奏さず。毛むくじゃらを指差したのも悪手だったか、その動物らしき何かを更にギュッと抱きしめ警戒を強めてしまった。
「君は一人で来たのか?ご両親・・・パパとママは?」
「!」
今までになく激しく動揺する少女。また地雷を踏んだかと焦る契。子供どころか人付き合いが苦手な男はここに来て更に追い詰められていた。
「っ!───!」
「何だ?どこの言語だ?」
何かを伝えようとしているらしいが、その内容が全く分からない。世界規模の防衛組織BURKに所属している為、日本語以外もそれなりに理解できる契だが、少女の言葉は今までに履修してきたどの言語にも当てはまらない。
(可能性の一つとして思い付いてはいたが、異星人なのか?それなら辻褄が合う)
第一印象として侵略宇宙人ではない、と思える少女。ここまで地球の環境に怯えるようでは斥候すら務まらないはず。何よりこんな子供に本命はおろか尖兵を任せられるのか?と考える。勿論この幼い姿、あるいは怯えた仕草が偽装だったり演技だったりする可能性も捨ててはいない。
(目的は何だ?俺に何を伝えようと───)
契が思考の深みに嵌まりかけた瞬間。少女の背後で光が瞬いた。
「くっ」
「───!?」
突き飛ばす訳にもいかず、覆い被さるように少女を守った契。その右肩には火傷のような傷が刻まれていた。
「───!───!」
「安心しろ、この程度で死にはしない・・・アイツだったら問答無用で蹴り飛ばしてたんだがな」
何処かで誰かがくしゃみをした気がする。
無事な左腕で少女を庇いながら、光が飛んできた方向を睨む契。あえて隙を晒したつもりだが、最初の一発以降が飛んでこない。襲撃者は逃げたのか、はたまた本当に気を緩める瞬間を狙っているのか。
「この借りは必ず返してやる」
上着の内ポケットから通信機を取り出し、所属部隊に連絡を取る。その間にも油断なく警戒していたお陰か、襲撃者は姿を見せなかった。やがて到着した隊員達に保護され、契と少女はBURK日本支部へと向かうのだった。
▲▽▲▽▲▽
「士道くんとの殴り合い宇宙以外で、ここのお世話になるの久々すぎない?」
「かもな」
BURK日本支部基地。その内部の医務室にて怪我の手当てを受けている男と、手当てをしている女。男は謎の襲撃者から少女を守った契であり、女は医務室に詰めている女医である。名は「築与 真矢」。
「ところでさぁ」
「言いたい事は分かる。可能なら頼みたい所だ」
「あー・・・契で無理ならあたしにも無理よ」
「・・・」
怪我をしていない方の腕、契の左腕をガッチリと掴んで離さない少女が居た。心なしか真矢を睨んでいるようにも見える。
「いい加減に離してくれないか・・・」
「──」
「今のは、嫌って言ったのかしらね?契を取ったりしないから安心しなさいな」
言葉が通じていないのもあってか契を離そうとしない。やはり異星人なのか子供にしては握力がやや強く、若干の痛みを左腕に感じ始めた契。ついでに言えば毛むくじゃらの推定宇宙生物も抱えたままの為、熱くなってきた。
「この調子で離れないから聴取も出来ん」
「だからあたしに、というか医療班に丸投げしてきたのね・・・治療のついでに手伝えって契もまとめて」
「だろうな」
「はぁ・・・あたしはカウンセラー兼業なだけで取り調べのプロって訳じゃないんだけど。んんっ、まずは自己紹介からね。改めてはじめまして、あたしは真矢よ。マ、ヤ」
「・・・マ、ヤ?」
幼くもしっかりとした発音。真似をして言葉を発する程度は出来るようだ。
「そう!で、こっちは───」
「ケイ」
「もう覚えたのか」
「さっきからあたしが何回か呼んでたしね。さて、あたしはマヤ、こっちはケイ、じゃああなたは?」
順番に名前を聞かせ、それと同時にそれぞれを指差していく真矢。最後に少女を指差しながら質問をする。
「ムム。ム、ム」
白髪の異星人の少女こと【ムム】。名前を知れただけでも大きな前進だろう。やはりこういう場面では女性の方が強いな、などと少し落ち込んでいる契だった。
「名前はオッケー。問題は・・・」
「来訪目的と襲撃者に関して、だな」
正直なところ、これを聞き出すのが最も難しいだろう。名前はフィーリングとボディランゲージで何とかなったが、目的や人間関係は明確に「会話」をしなければ伝わらない。
「襲われてたらしいけど・・・この子、親御さんは?血縁じゃなくても保護者とか。まさか一人で他の星から逃げてきた、って訳じゃないわよね?」
「現場では見当たらなかった。血縁に絞ってこの子と似たような白髪赤目に同じような服で捜索しているが、連絡が無い以上手掛かりすら掴めていないんだろう」
「えーっと、通じるかな・・・ムムちゃん、お父さんとお母さんは一緒じゃないのかな?」
「?」
先程のボディランゲージよりも詳細に、手話を交えてどうにか会話を試みる真矢だが、ムムは疑問符を乱舞させて首を傾げる。やはり何かを言っている事は分かっても、その内容までは伝わらないようだ。
(両親・・・待てよ、あの時は・・・)
真矢の言葉でムムとのやり取りを思い出す契。あの公園で対面した時、確かに「両親」について聞いている。そしてムムの様子が急変し、何かを伝えようとしていた所で襲撃を受けたのだ。
(お父さんとお母さん・・・違う、俺はたしか)
「ムム、ママとパパは?」
「!」
お父さん、お母さんではなくパパ、ママと言い、それに反応したのだ。恐らくパパとママのどちらかがムムにとって大事なキーワードなのだろう。
「ママ!──!───!」
「それを調べろ、と?」
相変わらずママ以外は意味が分からないが、発言と同時に右腕を契に押し付け始めたムム。その部位には、何らかの機械が嵌められていた。ブレスレットにしては大きく物々しいそれには赤い発光パーツが存在し、囚人のような鎖が伸びている。
「ママが地球と同じ意味かは微妙だけど、お母さんが着けたのかしら?みまもり機能とか、防犯ブザーみたいな感じで」
「可能性はあるな。弘原海隊長、鶴千です」
通信機を起動し、上官である弘原海に推測混じりではあるが現状を報告する契。謎のブレスレット調査の為に技術班がスタンバイしたが、やはりムムが契から離れようとせず、若干時間が掛かったのだった。
▽▲▽▲▽▲
「ハァッ・・・!ハァッ!」
岩を乗り越え、木々を避け、川で水飛沫を上げながら走る一人の女性。その表情は恐怖に染まっており、しきりに背後を振り返っている。何者かに追われているようだ。
「・・・ムム!」
スタミナの限界に達したのか、一際大きな樹木に背中を預けて座り込んでしまう。女性が荒い呼吸と共に発したのは、契が保護した異星人の少女の名だった。
「ッ!」
突如、女性が休んでいた樹木が爆発を起こす。その衝撃で投げ出され、強く胸を打ってしまう女性。痛みを堪えながら再び走り出した。
『フッフッフッハッ・・・』
逃げる女性の背を見つめ、不気味に嗤う【何か】が居た。
▲▽▲▽▲▽
「発信器?」
「ええ。追跡装置の類いかと」
医務室から移動し、技術班が詰めているBURK日本支部基地のラボ。契と真矢以外に触れられる事を嫌がるムムを落ち着かせ、ブレスレットを解析にかけて数分。結果は装着者の居場所を探るための追跡装置と判明した。
「定期的に信号を発しているようです。その信号を受信する親機の存在も確実でしょうね」
「ふむ・・・受信元は探れないか?」
「やってますよ。あと、その子の声も録音データで貰ったので、翻訳してみます」
「頼む」
「ケイ・・・」
「安心しろ。ここに居る限りは安全だ・・・と言っても伝わらないのか」
不安げなムムの頭を優しく撫でる契。その様子を見た真矢は不思議そうにしている。
「契が異星人に優しいなんて、明日は槍でも降るのかしらね」
「どういう意味だ」
「何て呼ばれてるか知ってる?能面蛮族とかクールバーサーカーとか、あとMA殲滅ニキだとか散々言われてるわよ?」
ちなみにMAはMonster&Alien、つまり怪獣と異星人は殲滅する男という意味である。くだらん、と溜め息を吐いた時、信号の傍受を行っていた研究員が声を荒げる。
「鶴千隊員!」
「どうした」
「ムムちゃんのブレスレットと同じ反応をキャッチしました!」
「何だと!?」
研究員の手元のモニターを覗き込む契。そこには山岳地帯のマップデータが映されており、ムムのブレスレットと同じ反応を示す赤い光点が重ねられていた。
「同じ反応・・・!ブレスレットは二つある?」
(まさか・・・狙われているのはムムだけじゃない?)
「ママ!」
真矢にしがみついていたムムが契に駆け寄る。今にも泣き出してしまいそうな顔で。
「ケイ!───!ママ、───!」
翻訳を待つまでもなく、ムムの言葉が分かる。
「ママが危ない。ママを助けて。」
とうとう大粒の涙を溢し、契に体当たりするように抱き着き懇願する。大事な家族が死んでしまう、どうか助けてほしいと。言葉が通じない中で、必死に助けを求めたムムの涙が契の服を濡らす。
「約束する、お前のママは必ず助ける。真矢!」
「ムムちゃんは任せて」
戦士が戦場へ飛び立つ。
▽▲▽▲▽▲
「・・・」
『そう気負うな鶴千。あの子とお袋さんを助けてやりたいのは俺も同じだからな』
『俺達、でしょう?』
基地から発進し、空を切り裂くかのように飛ぶ鋼鉄の猛禽が二羽。単座型でやや先行しているのは、契が操縦している「Gホーク Type-A」。その後ろに位置しているのが複座型の「Gホーク Type-B」である。現在のパイロットはBURK日本支部の実働部隊隊長 弘原海と、コ・パイロットとして同乗している女性隊員 駒門琴乃の二名。
『にしても、お前にこんなコネがあったなんてな』
『他の機体とはまた違う感触だな。それに速い』
「元々俺がテストパイロットをしていたので。向こうに頼んで二機とも出してもらっただけです。俺から言わせてもらえば、いきなり乗りこなすお二人の方が信じられませんよ」
契の友人はそう多くないが、数より質、とでも言うのか濃いメンツが殆どである。その中の一人にBURKと提携している企業連合のトップが居る。より多くのデータを取る事を名目に今回の一件で実戦投入され、ついでとばかりに複座型のType-Bも隊長格二名に貸与されたのだ。
(あの人の場合は「家族」の部分に思う所があったんだろうが)
ビジネスマンとして辣腕を振るう仕事一筋の男。だが、その正体は何よりも家族を大事にする超が付く程の身内バカだ。赤の他人どころか生まれの星が違う家族にも関わらず、理不尽に踏みにじられそうな命を見捨てる事ができない優しい男でもある。恐らく問題が出ないよう、様々な根回しと幾つものお題目を掲げて契にGホークを貸し出してくれたのだろう。
そんな不器用で優しい男の心意気に応える為、そしてムムの涙を拭う為、契はGホークで飛ぶ。
「この反応は?」
契のType-Aが前方に何かを捉えた。ほぼ同時に弘原海と駒門のType-Bもそれを確認する。
『少なくともBURKや自衛隊じゃない』
『鶴千!直ぐ撃てるようにしとけよ!』
「もう撃てますよ」
Gホーク両機に緊張が走る。楕円を組み合わせたような形状の飛行物体を視認した瞬間、「それ」から光線が放たれた。
『撃ちやがった!』
『地表に・・・?っ、生体反応!誰かを狙っているのか!』
「やらせるか!」
接近してきたGホークにではなく、何故か地表に向けて光線を発射した飛行物体。Type-Aよりも探査能力に優れたType-Bが捉えたのは人間に近い生体反応。何者かが地表の誰かを狙って攻撃したのは確実だ。
「ッ!」
今さらGホークに気付いたのか、より上空に離脱しようとする飛行物体。だが、そんな悠長な退避行動を許す契ではない。Type-Aの機動性を存分に発揮し、飛行物体の背後にピタリと張り付いてみせる。
「墜ちろ!」
照準を合わせ、Type-Aのビーム砲のトリガーを引く。
「チッ、しぶとい・・・!」
『部下にばっか良いカッコはさせらんねぇな!』
『発射!』
Type-Aのビームは直撃こそしたものの撃墜には至らず。黒煙を上げながら、それでも逃走しようとする飛行物体に対し横から回り込んでいたのは弘原海と駒門のType-Bだ。小回りが利かない代わりに、現場での移動指揮室としての役割を持ち、更に搭載武装の火力も高いType-Bから高出力のビームが放たれる。
『見たか!・・・なっ!?』
『消えた!?』
Type-Bのビームも見事に直撃し、航空機としては致命傷を負ったはずの飛行物体だが、墜落するのではなく光学迷彩のように姿を消してしまった。
『クソッ!どこ行きやがった!』
「レーダーからも消えるのか・・・!」
『後詰めのセイバーが来る。我々は地上に降りて、対象を保護しよう』
「了解」
敵性宇宙人は取り逃してしまったが、ムムの親族と思われる人物は無事のようだ。遅れて到着する予定のBURKセイバーに宇宙船の警戒と捜索を任せ、地上に降りる契達。そこで待っていたのは───
標的、二人の異星人
【鶴千 契】
本作の主人公。原作のウルトラマンカイナ特別編にて登場したBURK隊員。
無愛想でぶっきらぼう。敵性宇宙人・怪獣は殲滅すれば良い、という短絡的思考を持った蛮族。
怪獣被害によって姉を喪っており、その経験から上述の殲滅思考を抱くようになった。「家族」を喪うという悲劇を他者に味あわせたくない、という彼なりの優しさでもある。
【ムム】
落ちてきた少女。異星人。
地球の言葉は喋れず、母星のものと思われる言語を使う。右腕に物々しいブレスレットを装着させられ、隕石型のカプセルで地球に飛来した。
【築与 真矢】
BURK日本支部基地の医務室に勤める女医。
色々と規格外な女性隊員に埋もれがちだが、ファンが居るなど性格も相まって人気がある。何かとメンタルに響きがちな隊員達のカウンセラーも兼任している。
【鎚打 帯】
BURK日本支部の男性隊員。
山岳・森林地帯に落下した隕石の調査に駆り出された。
自分用にカスタムしたロングバレルの拳銃型装備「BURKガンHS」を愛用する。
リルとは幼馴染み。
【太刀薙 理流】
BURK日本支部の女性隊員。
オビと同じく隕石の調査に駆り出された。本来は非番だった事を嘆いていた方。
BURKガンにコンバットナイフ「BURKエッジLS」を組み合わせた近接戦闘が得意。個人的にはもっと長いブレードの方が好みとは本人の弁。
【Gホーク】
契の個人的な友人である、企業連合のトップからBURKに貸し出されている新型戦闘機。テストパイロットも契が務めていた。
正式にBURKで採用された訳ではない為、「BURK」の名が付けられていない。
かつてのウルトラホークが一応のベースだが、形状や性能は全くの別物。契が搭乗した単座型のType-Aと、弘原海・駒門の両名が搭乗した複座型のType-Bが存在する。
【弘原海&駒門 琴乃】(出典:オリーブドラブ様)
原作、ウルトラマンカイナより。
弘原海がこの話における現時点でのBURK隊長。
駒門は副官に近い隊員。
【企業連合トップの男】(友情出演:笑う男 様)