『ダアッ!』
───ジュアッ!
激突し、交差する二本の足。
メディスとニセアキレスのハイキックがぶつかり、相殺したのだ。流れるように蹴り出した足を引き、右ストレート、肘打ちと繋いでいくメディス。だが、その動きを完璧に読んでいるようにニセアキレスも拳を突き出し、肘を合わせる。
まるで、予めステップのタイミングを打ち合わせた舞踏のように。
(予想はしていたが……コイツ、俺の動きまでトレースしていたか!)
アキレスに化けた段階で、恐らくは可能だろうと思われたメディスの模倣。姿形だけならともかく、技の精度は不明だったがそちらも本物さながららしい。
(ならッ!)
『デェヤァッ!』
互いの距離が僅かに離れた瞬間、右手にエネルギーを集束させ刃を形作る。ここ最近で精度の上がったシフリウムエッジだ。形成速度もあって完璧な奇襲として決まるはずだったそれは、ニセアキレスがいつの間にやら抜いていたアキレスラッガーに受け止められていた。
───フッ……
『ヌウッ!』
(硬度と切れ味も本物と遜色無しか……!)
先程までの体術と同じく、得物を使っての戦闘もほぼ互角。技を真似するだけではなく、それらをキチンと使いこなして見せている辺りコウの実力は契と同程度か、最悪それ以上らしい。
───デュアッ!
『シェアッ!』
鍔迫り合いは数秒。両者同時に相手を突き飛ばし、再び距離を取った瞬間に飛び道具。メディスは螺旋状のエネルギー波であるアタックシュートを、ニセアキレスは本家と同じく額のビームランプからトロイレーザーを放った。
やはり二人の実力差はそこまで開いていないのか、螺旋状ゆえに中央部には破壊能力が無いアタックシュートの内側をトロイレーザーが通過し、トロイレーザーはシフリウムエッジに、アタックシュートはアキレスラッガーに切り裂かれ無力化された。
(コイツ……強い……!)
───フッ……
まだ遊び足りない、とメディスに向けた拳を開き指だけ動かして挑発するニセアキレス。上等だと一息に飛び上がり、ニセアキレス目掛けてシフリウムエッジを振りかざす契。ニセアキレスもまた、そうこなくてはと狂喜しながらアキレスラッガーを逆手に構え直し、ジャンプスラッシュで迎え撃つ。
そんな二人の激闘をコックピット越しに観測しつつ、ようやく巨剣のリングへ辿り着いたBURK日本支部部隊。セイバー数機に、契の代わってType-Aに搭乗した弘原海と、太刀薙をコ・パイロットとしてType-Bを操る駒門という編成だ。
「見てくれは完全に嵐真と同じか……」
『あぁも暴れられては、鶴千の無事を確認する事も……!』
「分かってる!各機、兵装使用自由!銀十字のウルトラマンを援護する!」
『了解!』
メディスとニセアキレスの着地に合わせて攻撃を開始する日本支部部隊。だが、最新鋭の各種火器はその効果を一切発揮する事なく、巨剣の間に張り巡らされた電撃によって掻き消されてしまった。可視化されている部分の隙間を狙って放たれたレーザーやミサイルだが、電撃による防御は見た目よりも広い範囲を守っているらしい。
(そんな事だろうと思ったよ……!)
───言ったろう?これは決闘なんだよ
よほど自分の作った巨剣に自信があるのだろう。アキレスラッガーを念力で触れる事なく回転させて弄びつつ、余裕たっぷりにメディスとの距離を詰めてくるニセアキレス。セイバーやGホークが機を待ち旋回を続ける中、第二ラウンドのゴングが鳴る。
▽▲▽▲▽▲
「まさかウルトラマンと戦う日が来るとはな」
『偽者みたいですけどねぇ!』
『怪獣の命まで利用しないと戦えない臆病者に、容赦する気なんてないから!』
「ヴォルフの言う通りだ、卑怯な紛い物に死の宣告を下してやれ!」
『『了解!』』
一方のドイツ支部。
緊急発進してきたBURKケルベロス。そのコックピットからロートシルトが見たのは、復旧が間に合わなかった防衛設備を悠々と踏み越え歩を進めるもう一体のニセアキレス。既にリーゼロッテ隊が迎撃しているが、セイバーの火力ではウルトラマンの進撃を止めるには至らず。まるで火力が足りていない。
「機動性を活かす。ドライファングツェーン!」
異形の海で見せた分離機能。今回は敏捷性の高いウルトラマン相手という事で、最初から手札を切る事としたらしい。
「私とヴォルフで前衛を張る。シュミットは解析を優先しろ」
『了解!』
『了解しましたぁ!前はお願いしますねぇ!』
新たな脅威と判断したのか、本物同様にスラッガーを取り外して手に保持するニセアキレス。まだ距離がある段階でスラッガーを持ったという事は、この後に繰り出す攻撃は一つしかない訳で。
「当たらん!」
『ざぁんねん、私達は目を瞑ってても連携できるのよ!』
大振りに振り抜かれたニセアキレスの右腕。そこから放たれたスラッガーがケルベロスに迫るが、充分に引き付けた所で分離し回避に成功。そのままアタックポジションを取り、ロートシルト機とミア機が攻め掛かる。
「さすがに機銃程度では倒れんか。シュミット、解析はどうなっている?」
『妨害の類いは無いので、もうすぐ結果が出ます……なに、これ……』
『リナ?どうしたの?』
少し離れた所で旋回しながらニセアキレスの解析を試みていたカタリーナ。幸い、妨害電波やバリア等は張っていないらしく直ぐに解析結果が表示された。だが、その結果を見て困惑した様子。ロートシルトとミアの元にもデータが共有されてくる。
「構成物質が生体由来ではない……?」
『地球上には存在しない金属?』
『そうとしか言えなくて……でも、ウルトラマンの有機的なマニューバは、生物の骨と筋肉が無いと再現が難しいですし……』
『金属生命体、とでも言うんでしょうか』
カタリーナが出した結論は「金属でありながら、生物のように振る舞える未知の擬似生命体」、言うなれば金属生命体だった。それが何故、ウルトラマン───ウルトラアキレスの姿を取り、怪獣を利用して人類の防衛網を破壊し、その上で戦いを挑んできたのか。知能が高いと思わせる行動を見せながらも、人類とコミュニケーションを取る素振りが無いのは何故なのか。
「聞いた所で返答は無いだろうがな!」
現にカタリーナが解析の傍ら様々な周波数、言語で停戦信号を送ってもニセアキレスは侵攻を止めない。既に火蓋は切られているとでも言いたいのか、ニセトロイレーザーやスラッガーによる攻撃は苛烈さを増すばかりだ。
『うわわっ!?』
『リナ!』
「シュミット!まだ飛べるか!」
『な、なんとかぁ!』
さすがに煩わしくなってきたのか、ニセアキレスの攻撃の矛先がカタリーナに向いた。ニセトロイレーザーが主翼を掠めるが、どうにか立て直して戦闘を継続するカタリーナ。分離状態では火力に欠けるかとロートシルトが思案し始めたその時、レーダーが空の彼方から飛来する影を捉えた。
『来ましたよぉ!本物が!』
『まったく、遅いのよ』
「アキレスを援護する!解析結果を照準と識別に重ねて固定しろ!本物には当てるなよ!」
(間に合った!)
日本から離れたドイツの地に、二人のウルトラアキレスが並び立った瞬間である。
▲▽▲▽▲▽
『セアッ!』
───フンッ!
一方、メディスvsニセアキレス。
何度目かも分からないシフリウムエッジとスラッガーの鍔迫り合い。盛大に火花が散る最中、契はとある予想が確信に変わりつつあった。
(お前……誰を見ている!)
───ん?
(俺やアキレスに誰を……何を重ねているのかと、聞いている!)
───ほう
ただ単にウルトラマンと戦いたい、そんな理由でここまで大掛りな事をしでかす女には見えないのだ。本当に戦う事が目標であったとしても、そこには口にしていない別の思惑があるように感じる。そして、何度か打ち合う内に朧気ながら見えてきたのだ。
自分自身でアキレスの皮を被り、メディスを通して別の何かを見ているのだと。
───鋭いねぇ。そうさ、私は君やアキレスに恋い焦がれている訳じゃあない。君たちと同じウルトラマンではあるがねぇ?
(別の、ウルトラマン……?)
───そう、ティガさ
【ティガ】
その名を発した瞬間、青白い光に包まれるメディス。光の内側はドームのようになっており、幾つものモニターが連なるように映像が流れていた。恐らくはニセアキレス───コウの思念や記憶だろう。
───私はかつて人だったモノ、とは言ったね?私は人の肉体を捨て、高次元の精神生命体キリエルとなったのだよ
(キリエル……?)
太古の昔、地球人類を裏から操っていたエーテル体。それがキリエル人であり、人類をより良い方向に導くのが役目だと言う。だが現代になって人々を怪獣や宇宙人の脅威から守り始めた光の巨人、ウルトラマンティガが守護者として崇められるようになると「後から出てきた分際で好き勝手するな」と敵意を向け、挙げ句の果てに「ティガは人類を守ってくれる存在」と発言した特捜チーム隊長イルマを襲撃。最終的にはキリエロイドという巨人の姿でティガと激突するも敗北した。
(……随分と他人行儀な言い種だな。嘲っているようにすら聞こえる)
───本当に君は鋭いねぇ。なに、失望しているだけだよ。我らが素晴らしくも哀れなキリエル人にね
コウの発言はどこか冷めていて、自分自身の事でもあるキリエル人を貶しているかのようにも思える。
───自分達こそが守護者であり神である。崇められるべきは我らキリエルであり、ティガなどという偽りの神ではい。我らキリエルの怒りを知れ……ハッ!逆恨みと誇大妄想で挑んでおいて返り討ちにされては三流の喜劇だねぇ!
(これがティガ……)
光の内側に流れている映像が集まり、一つの大きなモニターへと変わる。そこに映し出されたのは、赤と紫を纏った巨人が骨と岩で人型を形作った悪魔と激突している様子。
赤と紫の巨人がウルトラマンティガ、骨と岩の悪魔がキリエロイドなのだろう。映像は進み、ティガが全身を紫色に変えた事で圧され始め、一度は巻き返すもティガの能力で凍結させられた。そこで姿を赤と紫に戻し、エネルギーをチャージするティガ。必殺の光線が放たれ、キリエロイドが爆散した所で映像は途切れた。
───ここで「対策」はしても「理解」をしないのがキリエル人だよ。ティガはイルマ・メグミの激励、祈りと想いを受け取り立ち上がった。ならば次は、彼女を含めた人間たちをどうにかする……ここまでは良いのだがねぇ
ノイズが走り、途切れた映像が別のシーンを再生し始める。より禍々しい姿となったキリエロイドが、再びティガと相対しているようだ。ティガが全身を赤く染めると、それに対応するようにキリエロイドも体を頑強かつ硬質に変異させる。ティガが素早い紫の姿に変わると、キリエロイドは翼を生やして空を飛ぶ。
どうやら、ティガの形態変化に対抗する能力を得たらしい。しかもその全ての対応形態においてティガを圧倒している。
(ウルトラマンをここまで追い詰めておいて、何が不満なんだ?)
───見ていれば分かるさ
溜め息を吐き出しながら映像に目を戻すコウ。そこではティガが遂に倒れ伏し、キリエロイドは何やら扉のような物を開こうとしている。だがそこで、一人の女性が尋常ならざる様子の民衆に必死に語り掛けた。恐らく彼女がイルマ・メグミなのだろう。
彼女の呼び掛けによって、正気を取り戻していく人々。皆、思い思いの光を倒れたティガに向けていく。戦闘機に乗った向こうの世界の防衛チーム、名前も知れぬ少年、そしてイルマ・メグミ。彼ら彼女ら人間の「祈り」と「光」を受けて、ゆっくりと起き上がるウルトラマン。神々しく暖かな光景に業を煮やしたのか、降り立つキリエロイド。再びティガを圧倒してやろうと襲い掛かるキリエロイドだったが、人々の光を背負ったウルトラマンに敵は無い事を契は知っている。逆に圧倒され、ティガに渾身の力で投げ飛ばされ、扉に叩き付けられるキリエロイドには、もはや戦う力は残っていない。
───こうしてイルマ・メグミ一人を侮り、人間の心を過小評価した偽りの救世主キリエルは敗れました。人々はより一層ウルトラマンという光を信じるようになりましたとさ。めでたしめでたし
(要は負けて悔しいから復讐したいと?成る程、話を聞くだけでも自分勝手なキリエルらしい理屈だ。俺やアキレスと戦いたい、と言ったのも前哨戦で経験値稼ぎなんだろう)
扉もろともティガの光線を受けて爆散していくキリエロイドの映像をバックに、まるでお伽噺のエンドロールように締め括るコウ。聞き終えた契は、結局お前も身勝手なキリエル人だと辟易としていた。
───復讐、リベンジ、言い方は何でも良いさ。そう、私はティガに勝ちたい。だから君たち別次元のウルトラマンに挑み、模倣し、学習している
───君の言う通り、キリエル人なのにねぇ?
(……どういう意味だ)
キリエロイドとティガの戦いから凄まじい速度で映像が送られていき、映し出されたのは一面の「闇」。闇の奥には、巨大な巻き貝から下顎に目が付いているような顔が生えた怪獣が鎮座している。その怪獣の光線に貫かれ、石像となって海へ沈んでいくティガ。
(ティガが負けたのか……!?)
───そう、アレは邪神。ウルトラマンという最強の光すら葬った闇の化身さ。まぁそこはどうでもいい、この後ティガが復活して勝つからね。あぁネタバレしない方が良かったかな?
場面は切り替わり、闇の中でクリスタルに囚われている男の姿があった。彼がティガに変身しているのだろう、というのは直感的に理解できた契。そんな彼の前に、無数の人影が現れる。幽霊のように半透明で、一つ一つの表情は窺えない。
(キリエル人か!)
───あぁそうだよ
心の底から忌々しいとばかりに吐き捨てるコウ。次の瞬間、契はコウが何故ここまで同族のはずのキリエル人を唾棄すべき存在としているのか、それを理解する事となった。
【キリエルの神は地球を見捨てた。キリエルに従っておけば良かったものを……】
(コイツらは……逃げ出したのか……?)
───そう、その通りだよ。これで分かったろう?私がキリエル人でありながら、キリエル人に失望した理由が!
キリエル人の中では、むしろコウの方が異常で異質な存在なのだろう。だがコウは許せなかった。宿命のライバルにして、討つべき怨敵と定めたティガへのセカンドリベンジすら果たさず、強大な闇が現れたら負け惜しみを吐いてさっさと逃げ出すような自称支配者を。
───だから私の方から見限ってやったのさ!全てのウルトラマンを倒し!怪獣を倒し!そして最後には!あの憎きティガを完膚なきまでに叩きのめす!それこそが私の
コウが吼えると同時にモニターが弾け、光のドームも一瞬にして消失した。巨剣のフィールドに戻ってきたメディスとニセアキレスだったが、ニセアキレスの姿を見た契と日本支部の隊員達は驚愕に目を見開いた。
燃えているのだ、ニセアキレスの全身が。そして逆再生のように炎が不自然な消え方をすると、そこに立っていたのはニセアキレスではなかった。
───さぁ、最終ラウンドと行こうか?
映像で見た二戦目の禍々しい姿、それを更に進化させたと思われる岩と骨の悪魔になっていた。
異端のキリエル人
異形のキリエロイド
イシュメロイド
コウの発言通り、最終ラウンドのゴングが鳴る。
▽▲▽▲▽▲
「崩した!今だアキレス!」
(よし!ウルトライデント!)
『ダアッ!』
ケルベロスの連携攻撃によって体勢が崩れるニセアキレス。それを見逃さず、左手首に装着したブレスレットから三又槍ウルトライデントを出現させる本物。膝をついた瞬間を狙った完璧な投擲がニセアキレスに迫るが、擬態は完璧だと言わんばかりに、一瞬にしてニセウルトライデントを作り出し保持して見せた。
(嘘だろ!?)
不恰好ながらも本物のウルトライデントを弾き飛ばし、すかさず反撃───と思いきや、右手でニセアキレスラッガーを握り、それをケルベロス ファングアインに向けて投擲。ロートシルトがやむを得ず回避行動を取った所で、本命のニセウルトライデントを目の前に構えた。
(空間に固定した……?まさか!)
ウルトラ念力で宙に浮かせたニセウルトライデントに、ハンディショットのエネルギーを加えてアキレスへと撃ち出す。ウルトラノック戦法のウルトライデント版、さしずめトライデントノッカーとでも表す「飛ぶ槍」がアキレスに迫る。
(バリアは駄目だ!貫通力が高すぎる!)
『ジェアァ……!』
一瞬ウルトラバリヤーでの防御が脳裏を過るが、スラッガーの切れ味まで再現されていた事からトライデントの鋭さも自分と大差無しと判断。防御は諦め、アキレスラッガーによる
(ってぇ……手が痺れる……次に同じ速度でやられたら捌けるか分からないぞ……!)
距離を空けるのはまずい。ならば、取るべき行動は接近戦かつ短期決戦。痺れる右手に鞭打ってスラッガーを握り直し、ウルトラ念力でトライデントを呼び戻す。ニセアキレスもまたスラッガーとトライデントをその手に戻し、同じ構えを取る。が、こちらにはニセアキレスには無い心強い味方が付いている。
『ドイツ支部のつよつよ整備員が仕上げたセイバー、あんまり嘗めないでもらえますぅ?』
「行けアキレス!あそこから一歩も動かせん!」
ここが勝負どころと察したのだろう、リーゼロッテ隊とツェルベルス隊が陣形を組み猛攻を仕掛けた。すかさずトライデントを回転させ、更にウルトラバリヤーを展開するニセアキレスだが、ロートシルトの言葉通りそこから一歩も動けずにいた。
今こそ好機。
(やるしかない!)
駆け出しながらスラッガーを投擲。これは本体ではなくニセウルトライデントを狙ったもので、見事に穂先に引っ掛けて取り落とさせた。続いて本家ウルトライデントにエネルギーを集中。ニセトロイレーザーによる迎撃が飛んでくるが、絶好の機会を逃す訳にはいかないと敢えてプロテクターに直撃させる。
そして───
(ノッキングゥ……!)
(イーリアシュートォッ!!!)
『デヤァッ!!!』
トライデントノッカーの意趣返しとして、バリヤーに突き刺したウルトライデントにイーリアショットを当てて加速射出するアドリブを披露した嵐真。
名付けてノッキングイーリアシュート。
ニセウルトラバリヤーは粉々に砕け、恐らく見た目の再現以外に意味の無いフェイクカラータイマーにウルトライデントが突き刺さる。そしてイーリアショットの光線に押し込まれ続け、踏ん張りが利かなくなった所で吹き飛んでいくニセアキレス。一拍置いて大爆発を起こした。
『やったぁ!』
『よしっ!』
「あの土壇場で応用を利かせたか。やるものだな、ウルトラアキレス」
『ふーん?ま、まぁ?褒めてあげますよ』
セイバーとケルベロスのコックピットで思い思いに歓喜を表すパイロット組。見事な援護をしてくれた彼女らにサムズアップで感謝を伝えるアキレス。それに応えてカタリーナ、ミアはサムズアップを。リーゼロッテは素直に喜ぶのが恥ずかしいのか照れながら。ロートシルトは微笑みながら敬礼で返す。
都心の方は片付いたのだろうか、弘原海隊長ら日本支部の面々は無事だろうか、気を引き締め直し空へ飛び立とうとしたアキレス。
直後にカタリーナからの警告が飛ぶ。
『動体反応!?まだ生きてます!』
(なっ!?)
『ヘアッ!?』
未だ立ち上る爆煙の中から飛び出してきたのはニセアキレス───ではなく、無数のブーメランのような物体。それら一つ一つが意思を持っているかのように、複雑な軌道を描きながらアキレスへと殺到する。
(スラッガー!?クソッ……捌き、きれねぇ!)
ニセアキレスラッガーと思われる大量の宇宙ブーメランがアキレスに迫る。トライデントとスラッガーによる二刀流に加え、トロイレーザーで迎撃するが、如何せん数が多すぎる。ツェルベルス隊とリーゼロッテ隊による援護射撃も加わるが、焼け石に水だ。
『グアァッ!』
(ぐうっ……!)
「アキレス!」
『リナ!本体を叩いた方が早いんじゃないの!』
『あのブーメランがその本体みたいです!爆煙の中にはもう何も居ないんですよぉ!』
刃やレーザーをすり抜け、アキレスを切り刻んだニセアキレスラッガーの群れが今度は一ヶ所に集まり始めた。叩き落とされた物も再び浮き上がり、他のスラッガーに合流していく。
集結したスラッガーはやがて、液体のように波打ちながら人型を取り始めた。出来上がったのは、どこかアキレスを思わせつつも異形感を覚えさせる騎士のような姿の怪獣だった。
(それが……本性って訳か!)
───キュルルルオォォォォン!
肩、肘、爪先と踵にスラッガーを備え、右手にはトライデントを保持した鋼鉄の騎士。まるで刑を執行する処刑人のように、トライデントを構えてゆっくりアキレスへと歩を進める。対するアキレスは、闘志こそ揺らいでいないもののカラータイマーが赤く点滅し始めていた。
(ヤバい、か……!)
「合体する!粒子壊裂砲を使うぞ!」
『『了解!』』
ミアとカタリーナのファングツヴァイ、ドライがミサイルを放ち、ロートシルトのアインがレーザー機銃を怪獣の頭部に命中させる。怯ませた所でドッキングシークエンスへと移った。
「リーゼロッテ!」
『言われなくてもぉ!』
即座に元の大型戦闘機形態へ戻ったケルベロス。各機のジェネレータを直結し、先頭のロートシルトが操るファングアインの砲口に光が集束していく。更にリーゼロッテ隊のセイバーが全武装をもって釘付けにする。
「Feuer!」
ケルベロスから放たれる赤黒い光の奔流。粒子壊裂砲から禍々しいエネルギーが解き放たれ、防御体勢を取っている怪獣へと向かう。直撃コース、ロートシルトもミアもカタリーナもそう確信していたが───
───クルルルァァァン!
「っ……馬鹿な!」
突き出したトライデントで粒子壊裂砲を切り裂いていたのだ。左右に分かたれ、怪獣の斜め後ろを粉砕しているだけになった粒子壊裂砲。しかも、どんな怪力を持っているのか片手でトライデントを支えたまま、左手をピンと水平に伸ばす動作を取った。
『スパークしてる……?これって!』
『隊長!』
「チッ……!」
伸ばした左腕からエネルギーが散っているのを確認したカタリーナ。似たような動作をこの場に居る誰もが目撃し、記憶していた。故にロートシルトは回避行動を取ったのだが、一手遅かった。
───キエァルルルァッ!
そう、ウルトラマンが光線を放つ際の「構え」だ。曲げた左腕を右肘に添え、フェイクイーリアショットでトライデントを射出して見せたのだ。つい数十秒前のノッキングイーリアシュートを模倣して。
「ぐっ、うぅっ……!」
『あの姿勢から当ててきた!?ミア、被害は!』
『完全にビームキャノンを切り裂かれましたぁ!けど、粒子壊裂砲以外ならまだ使えます!』
(無茶するな!……?アイツ、姿が違う……?)
ケルベロスを下がらせようとして前に出るアキレス。その時、怪獣の姿形に違和感を覚えた。トライデントを射出する前と後では、どことなくパーツが足りないように見えるのだ。
(全身のスラッガーが無───)
『アキレス後ろ!』
鎧の装飾のように取り付けられていたスラッガーが無い。それに気付いた瞬間、普段の余裕を失ったリーゼロッテの悲鳴に近い警告がアキレスの耳朶を打つ。
『ッ!グアァァァッ!?』
突如として背に激痛が走る。十ものスラッガーがいつの間にやら分離し、アキレスを切り刻んだのだ。倒れる寸前に何とか踏ん張り、膝をつくに留めるアキレスだが、カラータイマーの点滅は危険域超過を知らせる高速点滅となっていた。
(ちく、しょう……!こんな、所で!)
ケルベロスとセイバーの攻撃も意に介さず歩みを進める怪獣。トライデントを振り上げ、その穂先をアキレスに定めると同時に、浮遊するスラッガーも高速回転を始めた。
万事休すのゲームオーバー
絶望に沈みかけたその時───
『デヤッ!』
一筋の光が空から舞い降り、閃光が迸った。
───キュアッ!?!?
(なっ、何だ……?)
『どうしたアキレス!お前の覚悟と本気はそんなモンなのか!』
鮮烈な赤と青の体色。
頭部に輝く二本のスラッガー。
銀のプロテクターにカラータイマー。
風に靡くマントをブレスレットに収納し、怪獣に強烈な蹴りを見舞ったその姿は。
「あのウルトラマンは……!」
(セブンの、息子!)
『怪獣がスラッガーで威張るなんざ───』
『二万年早いぜ!』
異端の悪魔、降臨
魔鉄の騎士、見参
【イシュメロイド】
キリエル人たちの中の一つ、ニトウ・コウの意識が器の総意から離反して生まれた存在。
キリエロイドⅡやカオスキリエロイドとも異なる「無表情」のように見える顔が特徴で、怒りの姿でもあり、人間を導く傲慢な愉悦をたたえた姿でもあるキリエロイドとは違い「失望」から来る真顔になっている。
ティガ打倒を唯一にして絶対の目的としており、様々な次元を渡り歩いては怪獣・宇宙人問わず挑んで自らの糧としている。
【金属生命体エリス】
ウルトラマンガイアの地球を襲った危機、根源的破滅招来体が尖兵として送り込んだ金属生命体の一種。
アパテーに非常に近しい存在の模様。
アキレスを模倣したからか、ミーモス以上に飛び道具の扱いに長けており、エネルギー障壁(フェイクウルトラバリヤー)やメタライデントも使いこなす。
騎士のような姿で、両肩、両肘、両手首、両足の爪先と踵の計10本ものフェイクスラッガーを持つ。