「おぉーい!お袋さんよぉー!」
「それだと隊長の母君に聞こえますが・・・」
宇宙船を撃退し、地上に降りた三名。ムムの母親を捜索するが中々見付からない。
「ポイントは間違っていない。そう遠くに行ったとも思えん・・・何処だ」
「うおっ!?何だこりゃ」
ムムの為にも、と焦りを募らせる契だったが、弘原海が何かを発見する。集まる契と駒門の二人が見たのは、岩石に付着した液体。それも青白い物。
「この地域特有の・・・という線は薄いか」
「付着の仕方、乾き具合・・・飛散したのか?」
「これ手形じゃねぇか?」
弘原海の言葉を聞き、もう一度岩を凝視する契。確かに言われてみれば、この液体が着いた手で岩に触れた跡のようにも見える。
「・・・ん?」
思考をまとめている契の聴覚が何らかの音を捉えた。そう離れていない場所から、ガラッという音がした。まるで小石や砂利が崩れたような音が。
「隊長」
「分かってる」
弘原海と駒門の二人にも聞こえていたのだろう。BURKガンを構え、ハンドサインで駒門を音がした方向にとっての死角へ回らせる弘原海。即座にそれに応えた駒門も静かに、かつ迅速に展開を行う。契も同じくBURKガンのトリガーに指を掛け、慎重に音がした岩に近付いていく。フォローが容易な位置に着いた駒門が頷き、岩の影に飛び込む契。彼の視界に映ったのは───
「っ!」
「なっ、女・・・?」
口を固く結び、左腕を右手で抑え踞る女性だった。
「鶴千!・・・こいつぁ」
「白い髪に赤い瞳、それに服装も」
「間違いねぇ、か」
ムムと同じ特徴を備えた女性。顔立ちも契の記憶に新しく刻まれたムムにどことなく似ている。ムムが成長すれば目の前の彼女のようになるだろうか。
「驚かせてすまない。こちらに敵意は無いんだ」
「───?───、──」
「こっちも通じねぇか・・・」
BURKガンをホルスターに収め、両手の平を見せて武器はもう持っていない事を示しながら、座り込んでいる女性に目線を合わせる契。だが、ムムと同じく言葉が通じていない。更にこちらも同じく女性の使う言語が分からない。
「どうしたもんかねぇ」
「ムムなら分かるかもしれ───」
「ムム!?───!────!」
怯えていた女性が血相を変える。ムムの名前に反応し、弘原海を睨み、契に掴み掛かった。やはり互いに思い合う間柄のようだ。
「落ち着いてくれ。今ムムに繋ぐ」
掴まれ、揺さぶられても無抵抗な契。その様を見た女性も警戒こそ解かないが、少なくとも敵ではないと判断してくれたのだろう。言葉は相変わらず互いに伝わっていないが。
「こちら鶴千、応答を」
『こちらラボ。どうしましたか?』
「真矢とムムはまだ居るか?ムムの母親と思われる女性と接触した。ムムに確認してほしい」
了解しました。と映像通信からフェードアウトする研究員。数秒と経たず映像に別の誰かが映る。ムムを伴った真矢だ。
『・・・ママ?』
「ムム!」
通信中のデバイスにムムが映った瞬間、契の腕に飛び付く女性。そのまま引ったくりかねない勢いでムムに話し掛けている。次第にムムによく似た垂れ目は濡れ、涙が溢れていた。
「ん?」
娘さんも無事で良かったなぁ、などと弘原海が男泣き一歩手前の顔になっている傍らで、契は自分の腕に半ば抱き着いている女性が気になっていた。正確に言えば、契の腕を掴んでいない方の腕。つい先程まで自分で抑えていた左腕だ。
(青い・・・血か?)
やや青色が強い服装で分かりづらかったが、ポタポタと女性の左腕から滴っている。弘原海が発見した別の岩に付着していたのも、この女性の血液だろう。上空から襲われていた所で別の戦闘機が現れ、ドッグファイトを制して降りてきた。それを警戒して隠れようとした際に岩に触れてしまい、弘原海に見付かったといった所だろうか。
「───!──、───」
「お、おう・・・なぁ、何て言ったんだ?」
「自分にも分かりませんよ。ムムの確認も取れた事ですし、応急処置をして帰還しましょう」
「応急・・・おぉい!怪我してんのか!」
先程の男泣き未遂も含め、その熱血っぷりが何処かの剣さんに似ていなくもない弘原海。いつもの毒っ気たっぷりのツッコミをどうにか呑み込みつつ、止血を行い包帯を巻いていく。その迷いの無いテキパキとした処置に弘原海も感心している。
「へぇ、以外だな。お前はもっと不器用な奴だと思ってたんだが」
「真矢・・・築与医務官に応急処置くらいは出来るようにと厳命されているので。それに、この程度は実働部隊員として出来て当然です」
あっという間に処置を終え、女性の青い血を止血した契。ムムにも同じ血が流れているのだろうか、等と考えながら女性に手を貸しGホークへと戻ろうとする。
瞬間、契が悪寒を感じた。自身の体調不良ではない、明確な【悪意】による凶兆を。
「伏せろ!」
「うおぁっ!?」
「隊長!?鶴千!」
奇しくもムムと同じく契に守られる女性、至近距離の爆発で衝撃を諸に受けた弘原海、契より一瞬遅れて「襲撃者」に気付きBURKガンを構える駒門。四者四様の動きを見せる中、駒門とちょうど真逆の位置に姿を見せた襲撃者。
その姿は異星人が地球人の服装を纏い、頭と手首から先が異形と化しているというチグハグなものだった。
『フッフッフッ・・・ハァッ!』
頭から曲がった銃身のように生えている突起部。その先端が光輝くのとほぼ同時に契の周辺地形が爆発を起こす。どうやら破壊光線を頭の突起部から放っているらしい。笑っているかのような不気味な声を発しながら、少しずつ距離を詰めてくる襲撃者。
「クッ・・・おい、大丈夫か?」
「───!」
イヤイヤ、と首を振り、契には分からない言語で怯える女性。この様子からするに【アレ】にずっと追われていたのだろう。契の中に【火種】が灯る。
「俺の目を見ろ」
「!」
そのまま蹲りそうになっていた女性の顔に触れ、若干強引に視線を合わせる契。
「アレは俺がどうにかする。指一本たりとも君に触れさせはしない、ムムの為にも」
「──、ムム・・・」
「鶴千!お前はその人連れて下がれ!ここは俺達で何とかする!」
光線着弾の衝撃から立ち直り、BURKガンを引き抜いて応戦を開始した弘原海。駒門も弘原海と鶴千を援護すべく、BURKガンを連射しながら駆け寄って来ている。
「ここに居てくれ。直ぐに片付ける!」
女性を岩が防壁になってくれる位置に移動させ、ジェスチャーも交えつつ諭す契。そのまま駆け出し異星人と思われる襲撃者に向かって行く。
「ちょっ、おい鶴千!」
「ここで始末しないと何処までも追ってきます!」
「ったく、しゃあねぇな!駒門!あのバカの援護だ!」
「了解!」
合流した駒門と共に援護射撃を行う弘原海。二つの火線に晒される事を嫌がったのか、あくまで狙いは女性だけであり光線の直撃コースを確保したかったのか、破壊光線の発射を止めて場所を移そうとする襲撃者。だが、その隙を見逃す契ではなかった。攻撃が止んだのなら好都合と一気に距離を詰める。
「ッ!」
『ヌゥッ・・・』
BURKガンによる一撃。距離が縮まった事で狙いを付けやすくなったが、襲撃者の身体能力か動体視力が良いのか躱されてしまう───
「どこ見てやがる!」
「そこっ!」
『グオォッ!?』
契に注目せざるを得ない状況で放たれたのは、弘原海と駒門のBURKガンのビーム。何の打ち合わせも無く、ただ突出した馬鹿を援護する為に撃たれたそれは、見事に襲撃者の両膝をそれぞれ撃ち抜いていた。
「ッラァ!」
『グヌッ・・・』
バランスを崩し、地に膝をつく襲撃者。体勢が低くなった襲撃者に対して契が取った行動は、情け容赦無しのケンカキックだった。気の抜ける声と共に倒れ込み、後頭部を強打する襲撃者。
『オォッ!』
「遅い、んだよッ!!」
手傷を負わさた事で契の脅威度を上方修正したのか、即座に上半身を起こし突起部を向ける。だが発射した破壊光線は虚空に吸い込まれ、代わりに胸部へ強烈なエルボードロップが繰り出されていた。
『グッ・・・ウォォォ・・・』
「その爪は飾りか?オラ、立てぇっ!」
呼吸器や内臓の仕組みが人間と同じか、など契には分からない。だが【生物である以上、ダメージを受け続ければ死ぬだろう】という蛮族思考を持つ契にそんな事は関係無い。これが「あんな蛮族を宇宙に出したら地球人が誤解される」とまで評されたクールバーサーカークオリティである。
「シッ!ッ!ダアッ!」
「た、隊長・・・」
「あー・・・」
地球の物か、あるいは地球製に似た物かは不明だが、服を着ていた事が災いした襲撃者。胸倉を掴まれて強引に立たされ、格闘技の型に添っているか微妙なラフラッシュで更に負傷が積み重なる。それを見ている駒門と弘原海は内心密かに同情していた。「鶴千はとにかく格闘戦が強い」と知っているからだ。特に【相手を倒す】事を決めた契を止められる、互角に戦える人間はBURK内でも片手の指で足りる程しか存在しない。
もし、これがゲームで【ツルセケイ】というキャラクターを相手が選んだ時【それへの対策は何か?どう戦えば良いか?】と聞けば、どんな初心者であっても明確に答えてくれるだろう。
【絶対に近寄らせるな、引き撃ちに徹しろ】と。
『グ・・・オァ・・・』
「セェアッ!」
弘原海と駒門の両名が引いている中、契は襲撃者を沈めに掛かっていた。渾身の回し蹴りが襲撃者の側頭部に炸裂したのだ。二回転ほどして倒れ伏す襲撃者。フィニッシュムーブを決めた契は、右手を数回スナップさせ襲撃者を見下ろしていた。
「終わりにする」
『ヌゥ・・・クアッ!』
「なっ!?」
収めていたBURKガンに再び手を伸ばし、トドメを刺そうとした契。だが襲撃者もやられるばかりではなかった。契が手を止める瞬間を見計らい、半ば自爆同然に破壊光線を地面に向けて放ったのだ。超至近距離での爆発により、吹き飛ばされる契と襲撃者。かなり強引に仕切り直しを図ったらしい。
「くっ!まだ、だッ!」
転がった先で素早くBURKガンを抜く契。この程度の痛みが何だと闘志は全く衰えていない。舞い上がった粉塵を迂回するように弘原海と駒門も動いている。次こそ仕留めてやる、とジグザグに粉塵を突っ切った瞬間───
『グオォッ!?』
聞こえてくる苦悶の声。契を中心として左右に展開していた両名も困惑している事から、二人が撃った訳でもないらしい。再び膝をついた襲撃者の背後には、離れている為に小さくしか見えないが見慣れたBURK制服があった。
◆◇◆
「間に合ったみたいだな・・・」
「山一つ越えていきなり撃ってさぁ、見事に命中させた私を誰か褒めても良いと思わない?」
「はいはい、エライエライ」
「煽ってるよねそれ」
軽口を叩きながらもBURKガンのサイトから目を外していないのは男女一名ずつのBURK隊員。隕石の調査に赴き、そのまま回収作業の補助と護衛をしていた鎚打と太刀薙の二人である。
契と弘原海、駒門の三名が発進した際、現地に最も近い増援として移動が命じられたのだ。隕石の落下ポイントと契達が降りたポイントはちょうど山で隔てられており、太刀薙の言葉通り山を一つ越えた所で襲撃者と戦闘を行う三名を発見したのだ。
「後は向こうに任せよう」
「早く帰ってシャワー浴びたいなぁ」
「っ!そう簡単には終わらないみたいだ!」
「ちょっ、ウソでしょ!?」
◇◆◇
「コイツは!」
「おいおいマジかよ!ホークまで戻るぞ!」
鎚打と太刀薙による援護射撃で動きを止めた襲撃者。そこに弘原海と駒門の攻撃が命中し、絶命したかと思われた。だが襲撃者はそれでも終わらなかった。今までは全て遊びだ、とでも嘲笑うようにその身体を巨大化させ始めたのだ。
「───!」
「っ、クソッ!」
岩から身を乗り出して叫ぶ女性の元へ走る契。見捨てる等という選択肢は存在しない。
───ギシャアァァァァァッ!!!
契が女性を背負って走り出すのと、襲撃者が巨大化を完了したのはほぼ同時だった。
ギリギリ人間に近かったシルエットは崩れ、二足歩行の怪獣と形容できる異形へと変異した襲撃者。淀んだ青い瞳は、契と女性を確実に捉えていた。
「隊長!鶴千が!」
「俺らが戻ってもやられるだけだ!このままホークを飛ばして援護する!」
一足先にGホークへ辿り着いた弘原海と駒門。スタンバイ状態だったシステムを叩き起こし、離陸と同時に攻撃態勢を整える。
───シャアッ!
「ぐうっ!」
Gホークへ急ぐ契だが、襲撃者、もとい怪獣も易々と見逃してくれない。サイズが大きくなった事で爆発の威力が上がった破壊光線が地形に着弾し、その衝撃で大きく吹き飛んでしまう。
「っ・・・くっ、おい・・・大丈夫か」
「・・・」
弱々しく頷く女性。何とか立ち上がった契だが、怪獣の影が直ぐそこまで迫っている事に気付く。その本体も。女性を降ろしBURKガンで攻撃すべきか?と考えるが、即座に自己満足だけして死ぬだけだと切り捨てる。女性を背負い直し、彼女だけでも逃がす方法は無いか、と思考しながら走る契。
───グオォッ!
先程、契に肉弾戦で痛め付けられた恨みを晴らそうとでも考えているのか、破壊光線ではなくその巨体で踏み潰そうと動いている怪獣。そんな怪獣の愉悦と慢心の隙を突くようにミサイルが着弾した。
「セイバー?この際誰でも良い!」
後詰めとして現着していたBURKセイバーによる援護射撃。撃破には程遠いが、新たな脅威として気を引く事はできたようだ。
『鶴千!今のうちに!』
『やらせねぇってんだよ!』
更に完全に起動したGホークType-Bからも高出力ビームが発射される。追加で発射されたBURKセイバーのミサイルも同時に命中し、大きくよろめく怪獣。この隙は逃せないと全力疾走する契。だが───
───グゥ・・・キシャァァァッ!!
『効いてない!?』
『執念深すぎんだろ!逃げろ鶴千ぇ!!』
「っ!?」
「───!」
直ぐさま体勢を戻し、立て続けの攻撃も無視して契を追い始めた怪獣。ミサイルとビームの効果が薄い、という訳ではないのだが、弘原海の言ったように驚異的な執念で契を抹殺しようとしているのだ。厳密に言えば契が背負っている女性を、だろうか。そのついでに邪魔者である契も殺そうというのだろう。
(こんな、所で・・・!)
怪獣としてのタフネスに物を言わせて迫る襲撃者。このままではGホークに辿り着いても、起動している間にお陀仏だ。ここまで来て、こんなに呆気なく終わるのか。
(まだだ・・・!まだ終われない!最後の最後まで抗い続けてやる!)
否、断じて否。契の中の【火種】が勢いよく燃え上がろうとした瞬間。
『ダアッ!』
───ギュルァッ!?!!?
裂帛一閃。
怪獣の背後から飛び回し蹴りを放つ何者かが居た。推定60mを超える怪獣を蹴飛ばせる人間など存在しない。それも、前のめりに倒れて契に危険が及ばないよう回し蹴りで横に吹き飛ばす、等と考えて攻撃できる者など。
『フッ!』
『来てくれたか!』
『ったく、遅いんだよ!』
自身はしっかり着地し、倒れた怪獣に対してファイティングポーズを取る巨人。人非ざる超常の存在。深紅のボディに銀のラインが走る宇宙の戦士。
その名は───
「アキレス・・・」
▽▲▽▲▽▲
(あっぶねぇ・・・みんな無事だな)
ちらりと自分を見上げる二人に視線を送り、無事を確かめてから拳を握り直すウルトラアキレス───こと暁 嵐真。
悪夢の始まり、災厄の先触れとなった怪獣戦車とそれを追って現れた光の巨人【ウルトラマンカイナ】。彼が地球を去った後、入れ替わりで現れたのがこの赤い巨人【ウルトラアキレス】である。19歳の大学生【暁 嵐真】と一体化したアキレスは、彼と共にBURKの力も借りながら地球を守り続けているのだ。
(さぁて、容赦しねぇぞこの野郎!)
何故、BURK基地からも彼が籍を置く大学からも離れた山にすぐ現れたのか、そして何故ほんの少し嵐真の機嫌が悪いのか。理由は単純、大学の課題で山の近くに来ていた為である。BURKへの協力で多少は免除されているとはいえ、彼の本分は学業。せっかくの課外活動もすっぽかしたとなれば単位やら何やらが危ないのだ。
『ヤァァァ!!!』
───グギュウ!?
起き上がった怪獣に対して怒りのジャンプキック。再びゴロゴロと転がる怪獣に追撃の一手。
『デュアッ!』
(トロイレーザー!)
頭部のビームランプから放たれる細い光線。立ち上がろうともがく怪獣の背に直撃し、その小さな爆発痕を刻み込んだ。
(まだまだぁ!!)
一気に距離を詰め、怪獣に組み付くアキレス。膝蹴りを数発入れてから振り向かせ、正面を向いた所でパンチとエルボーのコンビネーション。大きく怯ませてから掴み直し、再びビームランプにエネルギーを灯す。
(もういっちょトロイレーザー!───はっ!?)
『ヘアッ!?』
超至近距離でのトロイレーザーで更なるダメージを狙ったアキレスだが、驚愕に動きを止めてしまう。その原因はもちろん怪獣。なんと頭が外れ、腰辺りから文字通り顔を覗かせたのだ。
───ギュアァァ!
『グアァァ!』
アキレスの左腰に激痛が走る。外れた頭から破壊光線を発し、身体と組み合って動けない所に命中させたのだ。更にアキレスの力が緩んだ所へ追い打ちの打撃。先程とは逆にアキレスが地を転がる。
(なっ、なんだアイツ・・・!頭が尻尾みたいに!)
異形の怪獣となった襲撃者は、更にその姿を異形のものとしていた。腕を前足として地に降ろし、四足歩行の獣のような姿勢を取り、尻尾かはたまた脊髄のように下半身から伸びる部位の先端に頭が着いている。毒針の代わりに頭部を着けた蠍に近い何かだ。
(四つ足になったから何だってんだ!)
『フッ!ディヤァ!』
驚きこそしたものの嵐真の闘志は揺らがない。頭部の宇宙ブーメラン、アキレスラッガーを手に持ち果敢に斬りかかって行く。軽く飛び上がっての斬り下ろしで怪獣の頭部を狙うが、ろくろ首のように不規則に動く頭を捉え切れずに終わる。
(くっ、そぉッ!)
待ってましたとばかりに突進を行う怪獣の身体。着地して直ぐのアキレスに突撃し、頭を置いてあった先端部で膝を抉るように体当たり。バランスを崩し、片膝をついたアキレスを更に頭部が狙う。
『シュアッ!』
───ギュウァ!?
胴体と首の間、そう狭くはないスペースに一か八か飛び込んだアキレス。その賭けに勝利し、破壊光線を回避した上で胴体部分に光線を誤射させる事にも成功した。
(っ!いっ、てぇ・・・)
だが完全に無傷という訳にもいかなかった。攻撃を受けて体勢を崩し、その状態から無理に跳躍した事が祟って左足を痛めたようだ。傷は怪獣の方が深いだろうが、結果としては痛み分けか。
『グッ・・・!』
(こんなもんで・・・!負けるか!)
スラッガーを握り直し、どうにか立ち上がるアキレス。誤射から立ち直った怪獣もアキレスに向き直り、威嚇するように首を震わせている。
『背中がお留守だ!』
『援護する!行けアキレス!』
そこに隙を窺っていたGホークから援護射撃が飛ぶ。後脚の根元にビームが着弾し、煩わしげに頭部をGホークへと向ける。破壊光線が発射される直前、側面に回っていたBURKセイバーからも攻撃が行われる。
(今だ!)
『フッ・・・!』
怪獣の注意がホークとセイバーに逸れた瞬間。アキレスは目の前の空間にスラッガーを固定した。
(本家には程遠いけど・・・食らえッ!)
『ジュアッ!』
ウルトラ念力で固定したスラッガーをエネルギー光弾と共に撃ち出し、その威力を数倍に高める。嵐真と一体化したアキレスの記憶に色濃く残っていた技。嵐真が「本家」と称したウルトラ戦士、アキレスはおろか数多のウルトラマンにとって偉大なる先達であるウルトラセブンが使った技。ウルトラノック戦法だ。
───グギュアァァァ!?
途中でアキレスが何かをしている事に気付くが、さすがに遅すぎた。鈍重そうな四本足形態に反して身軽なサイドステップで避けようとするが、一瞬遅く避けきれなかった。
(よし!このままトドメだ!)
存分に威力を発揮して戻ってきたスラッガーを左手に保持したまま、身体を大きく振りかぶるアキレス。本人の言葉通り必殺のイーリアショットでトドメを刺すつもりらしい。
(っ!何だ、この感じ───)
チャージを終え、発射姿勢を取ろうとした瞬間。アキレスとなった嵐真の感覚が何かを捉えた。徐々に近付いてくる音も聴覚が捉えた時、背後から【それ】は現れた。
───グギャオォォォォゥッ!!!
『ヘアッ!?』
(なっ!?何だコイツ!)
大きく跳躍しながら現れ、アキレスに奇襲を仕掛けた巨大な影。イーリアショットの発射をキャンセルし、斜め前に転がる事で乱入者の爪を回避するアキレス。集めた両腕のエネルギーを散らしながら、視界に捉えたその姿は【白い獣】だった。
(怪獣!?もう一匹居たのか!)
左前方には異形と化した襲撃者、右前方には突如として乱入してきた白い獣。互いに敵対している素振りや警戒している様子が無い事から、恐らくこの二体はグルだろう。襲撃者の危機に駆け付けて来たのだろうか。
(やるしか、ねぇ!)
まず白い獣に先手を打つ為、アキレスラッガーを投擲しようとするアキレス。だが足下から聞こえてきた声に、またしても行動をキャンセルするはめになる。
「よせアキレス!」
(うおっ!?BURK隊員の・・・そこ危ないって!)
「その白い怪獣は───」
「ムムを人質に取ってるんだ!」
【ムザン星人】(原作:ウルトラマンティガ)
極悪ハンター宇宙人という別名を持つ。
捕えた生命体に発信器を兼ねたブレスレットを装着し、宇宙に放流して追跡。対象を追い詰めてからハントするという残酷極まりないゲームを行う異星人。
原作に登場した個体はGUTSのメンバーとティガに、今作の個体はBURKのメンバーとアキレスに邪魔をされる等ややクソエンカ率が高い。地球近くに向けて放流するから悪いとか言ってはいけない。
【暁 嵐真/ウルトラアキレス】
(原作:オリーブドラブ様、原案:Megapon様)
地球人の男性。地球に降着したアキレスと一体化して共に戦う19歳の大学生。街の人々やBURK隊員の命を見捨てられない義理人情に厚い男。
アキレスがウルトラ戦士としてまだ未熟な事、嵐真が特別な訓練を受けた訳ではない事から度々無茶をする。
BURKの弘原海や駒門、女傑と呼ばれる女性隊員達にはアキレス=嵐真だと正体がバレている模様。