命を照らす者 ~ウルトラマンメディス~   作:X2愛好家

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諦めるな


招く者、拒む者【後編】

『やったぁ!こちらも仕掛けましょう隊長!』

『今のは……』

 

異形の海にて続く激闘。グロテスクな怪獣を投げ飛ばし、優位に立っているメディスの姿に歓声を上げながら追撃を進言するカタリーナ。部下の言葉を聞きつつも、メディスの挙動に違和感を覚えたロートシルトだが、怪獣にダメージを与える絶好の機会である事には変わりない。ケルベロスの武装を怪獣へと向け、その照準を合わせる。

 

「けい……たたかってる……」

 

そして右後方のコ・パイロット席で踞っていたミア。上げたその顔に精気は無く、今にも朽ちてしまいそうだ。だがロートシルトとカタリーナの声を聴き、今なお戦いを続けているメディス───契の気配を感じた彼女の瞳に光が戻る。

 

「わたし、も───」

 

操縦桿に手を伸ばすミア。

 

「っ!?ひっ」

 

だが闇は、恐怖は、絶望は、ミアを絡め取り離していなかった。一瞬にしてキャノピーが黒い粘膜で覆われ、操縦桿から触手のような何かが伸びてくる。たちまち右腕が動かなくなる程に拘束され、コックピットのあちこちから呻き声や絶叫が聞こえてくる。

 

「あっ、あぁ……がっ───」

 

しまいには喉の奥から黒い水が溢れてきた。身体の内側から溺れるという感覚に耐えきれず、意識を手放してしまうミア。

 

深く深く、暗い海の底に沈んでいく。

 

───?

 

暗闇から響く嘆きと怨嗟の叫びの中に、暖かな声が混じっていた事にも気付かず。

 

 

◆◇◆

 

 

(くっ……何だ?)

 

一方のメディス。ロートシルトが感じていた微かな違和感を、こちらは明確に味わっていた。立ち上がろうともがいている怪獣に対し、追撃の光弾を放つが、その腕を上げる動作すら重く感じる。戦闘開始直後と現在では、このメディスの体のコンディションがまるで異なっている。ごく短時間で何があったというのか。

 

(消耗が、いつもより早い……!)

 

仕舞いにはカラータイマーも赤く点滅を始めた。確かに光弾の連射からウルトラスラッシュ、バリアの展開に格闘戦とエネルギーを消耗する動きが連続したが、いくら何でも危険域突入が早すぎる。ホピスに駆け付けてきた時や、オペラチオンを使用しながら変身したムム奪還の時ならともかく、エネルギーを使いながらダメージも受けていた守り神戦よりも消耗が早いのはおかしい。

 

(いつ、何をされた……!)

 

───キュェアァッ!

 

(チッ……!)

 

光弾すら物ともせずに立ち上がる怪獣。再び触手を伸ばしメディスを狙うが、その大仰な予備動作のお陰で何処を狙っているのか手に取るように分かる。

 

『ッ!』

(しまっ───)

 

ベストコンディション、とはいかずとも普段の契なら余裕を持って回避できた攻撃。だが今は、全身に余計な重りを付けられたのかと思える程に身体を動かせない。やや不恰好ながらも身を投げ出して躱すが、遅れて伸びてきた一本が左腕に巻き付いてきた。ついに怪獣の得意レンジに捉えられたのだ。

 

『グッ……!ダアッ!』

 

───キシャアァァァ!

 

触手に振り回され、体勢を整える事が出来ない。やっとの思いで触手を掴み、シフリウムエッジで切り裂こうとするが、それを易々と許す相手ではなかった。Gホークを大破させた黒い霧を今度はメディスに向けて放出する怪獣。どんな原理なのか、霧が纏わり付いた箇所から火花が上がりメディスの体力を奪っていく。

 

『グアァァァッ!』

(くっ……!?不味い、か!)

 

とうとう膝を着く形で動きを止めてしまうメディス。自由だった右腕にも触手が巻き付き、両腕を拘束される。

 

『ウッ!?』

(なんてパワーだ!)

 

更にはその状態からメディスを持ち上げてみせた。一瞬の浮遊感の後に襲い来るのは痛みと衝撃。持ち上げた勢いのまま、メディスを地面に叩き付けたのだ。

 

『これ以上はやらせない!』

『一斉発射ですよぉ!』

 

霧を避け、迂回する事で怪獣の背後を取っていたケルベロス。ロートシルトの号令でケルベロスの火器を一斉射するカタリーナ。レーザーとミサイルが背中に直撃し、その衝撃でメディスの拘束が緩む。

 

(助かった……!だが、ここからどうする!)

 

触手を振りほどき、背後へ跳躍して仕切り直す。脱出こそできたものの、契は内心大いに焦っていた。消耗の激しい今、先程までのような近接戦闘は難しい。かといって光線や光弾を連射して悠長に遠距離戦を行える程エネルギーに余裕がある訳でも無い。

 

(最大出力のシフリウムも撃てて一発……それで仕留められなければアウトだ!)

 

怪獣のダメージも積み重ねているが、シフリウム光線で倒せるかどうかは怪しい所。全エネルギーを使ったシフリウム光線を耐えられれば、もはや完全に打つ手が無くなりゲームオーバーだ。

 

───キェアァァァッ!

 

『ハッ』

 

迷いに気付いたのか、弱った獲物を仕留めんとする獣の本能か。再び触手を伸ばしながらメディスに迫る怪獣。口と思われる最も大きな穴から黒い霧を吐き出し、それ以外の穴からは触手が這い出ている。これまでの動きも含めて、怪獣の武器は触手と霧の二つだけという事がほぼ確定したが、契からしてみればだから何だという事実でしかない。

 

『シュアッ!』

 

飛翔して霧を避け、触手も振り切るメディス。カラータイマーの点滅も早くなり、焦燥だけが募る状況が続く。

 

『くっ!』

『うわわぁ!?こっちですかぁ!?』

 

更に悪循環は重なる物で。メディスを狙ったと思われた触手は、ケルベロスに向けられた物だったのだ。

 

(くっ、そォ!)

『ハァァァッ……!ジェアッ!!!』

 

迷っている暇など無かった。溜めを省略したシフリウム光線を放ち、今にもケルベロスに巻き付かんとしていた触手をまとめて薙ぎ払ったメディス。そのまま腕を振り抜き、怪獣に光線を向け、出力を最大まで高める。

 

───ギシャァァァッ!?!!

 

断末魔の叫びにも思える怪獣の声。一拍遅れて飛散したエネルギーが周囲を包み、大爆発を引き起こした。

 

『怪獣は……!』

『や、やりましたぁ?』

 

(っ……ダメか!)

 

───グギュルルルル……!

 

爆発したのは怪獣の周囲だけ。怪獣本体は、岩と死んだ珊瑚礁のような外殻を幾分か吹き飛ばされつつも、その命にまでは届いていなかった。

 

(ここまでか……!だが、せめてケルベロスだけでも逃がさなければ!)

 

ほんの僅かに残った生命維持の為のエネルギーすら手足に回し、果敢に怪獣へ向かっていくメディス。それを見たロートシルトは、メディスが───契が自分たちを逃がす為に命の蝋燭を燃やし尽くすつもりだと、そう理解しケルベロスの機首を怪獣から外す軌道を取らせた。

 

『隊長!?彼がまだ!』

『今の我々にはどうする事も出来ん。生きて戻り、対策を立てる』

『しかし!』

 

(それでいい……!俺は、コイツを!)

 

飛び込みからの肘打ち。チョップ、ストレートパンチのコンボに回し蹴り。通すものかと何度も何度も攻撃を浴びせるが、メディスのエネルギーが尽きかけているからか、はたまたケルベロスに拘る理由でもあるのか、怪獣はびくともせず足を止められてもケルベロスへのルートを取り続ける。

 

『ダアッ!』

(何が目的なんだコイツは!)

 

メディスへの興味を失った訳ではないようだが、ターゲットの切替が早すぎる。

 

(俺を排除するつもりが無いのか!それとも、いつでも始末できると踏まれたか!)

 

と、ここで契の脳裏に一つの推測が浮かぶ。それは咄嗟の思い付きであり、正解からは遠い推測なのかもしれない。だがもしも、もしもこの考えが正しければ。

 

(島の上空にワームホールを出した時から、コイツはケルベロスを目的にしていた?)

 

ならば何の為に。

ケルベロスは、怪獣の琴線に触れるような特殊動力源を搭載している訳でもない。強いて言うならダロンを一撃で粉砕した超火力のビーム砲があるが、アレも通常兵器の中では高出力というだけだ。演習の為に目を通した仕様書では、三人のフルメンバー状態のパイロットがそれぞれ出力制御やら何やらをしなければ、そもそも発射できない。

 

(パイロット……?)

 

突然発狂したかのように異変をきたしたミア。彼女の不調の原因が、このグロテスクな怪獣の存在だとしたら。

 

(狙いは実愛か!)

 

最初から彼女を標的に動いていたと仮定し、酷く重い身体を引き摺りながら怪獣に食い下がる。岩塊のような怪獣のボディを殴り付ける度に拳が痛むが、実愛に手を出させる訳にはいかない。

 

(怪獣に全てを奪われて……!今度はその命まで奪おうと言うのか!そんな事、絶対にッ!!!)

 

だが現実は非情で。

メディスの腕をすり抜けた触手がケルベロスに迫る。同時に黒い霧を噴出し、メディスにダメージを与えた怪獣。胸のカラータイマーが凄まじい速度で点滅し、契の命もまた尽き掛ける。

 

全ては徒労に終わる───

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

『ミアちゃん起きて!わたしだけじゃ、もう制御しきれない!ツルセ隊員も!』

 

け、い……

 

『いい加減に目を覚ませヴォルフ!その牙で怪獣の腸を喰い千切ってやると吼えたあの時の貴様は、全て嘘だったのか!』

 

リナ……隊長……

 

でも、私……もう……

 

───諦めないで

 

だれ……?

 

───まだ諦めちゃ駄目だ

 

───君はまだ生きている

 

───生きて、その光を

 

ひか、り……?

 

───繋ぐんだ、絆を

 

きずな……絆……

 

皆、こんな私の為に……命懸けで、戦って……

私は……こんな所で、諦めたくない……!

 

でも、怖い……怖いよ……!

 

───大丈夫、少しだけ勇気を持って

 

───僕と彼が、背中を押すから

 

『実愛に、手出しは……させない!』

 

けい……契!

 

お願い!力を貸して!契を、皆を……助けて!

 

───ありがとう。見付けた!

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

暗雲に覆われた空にヒビが入り、絶望を粉々に打ち砕くように「それ」は現れた。

 

『デェヤァァァァッ!!!』

 

───グルァッ!?

 

空間を砕き、飛び出してきた勢いのまま怪獣に蹴りを見舞う新たな巨人。吹き飛び、ゴロゴロと転がっていく怪獣を後目にメディスへと手を翳す。

 

(これは……エネルギーか?)

 

もはや消える寸前だったカラータイマーが青い輝きを取り戻し、全身に纏わり付いていた倦怠感も消えた。どうやら現れた巨人が自分の活動エネルギーをメディスに分け与えたらしい。

 

[ガルサス……]

 

(メディスの声?知り合いなのか)

 

[…………]

 

(都合が悪くなるとだんまりか!)

 

一瞬だけ聞こえてきたメディス本人の声。直ぐに黙ってしまったが、どうやらあの巨人───ウルトラマンは知り合いであり、ガルサスという名らしい。

 

(大丈夫ですか?間に合って良かった)

(お前は……そのウルトラマンと?)

(僕は皆鍵(ミナカギ) (メイ)って言います。彼はガルサス、今は訳あって一緒に旅をしているんです。あの怪獣の同類───)

 

───スペースビーストを追って

 

メイが言い終えると同時に立ち上がり、不気味な咆哮を上げる怪獣。ガルサスのエネルギーによって全快したメディスと、この暗い海の影響を受けていないようなガルサスもまた、同時に拳を構えた。

 

(詳しい説明は後で!行きます!)

(あぁ、やるぞ!)

 

『シェアッ!』

『フッ!』

 

───ギャシャァァァァァッ!

 

 

◆◇◆

 

 

『う、ウルトラマンがもう一人!?』

『あのウルトラマン、何処から……』

「リナ!隊長!申し訳ありませんでした!ヴォルフ、復帰します!」

 

一方、ケルベロスのコックピットではミアが意識を取り戻していた。力強く操縦桿を握る今の彼女には、迷いも恐怖も見えない。

 

『ミアちゃん!良かった、けど……』

『やれるんだな?ヴォルフ』

「はい、やれます!」

『なら良い。事情は後で聞く』

 

『ケルベロス、全システム正常!』

『我々を散々弄んでくれた礼だ、あの怪獣に死の宣告を下してやれ!』

「『了解!』」

 

(今度は私が助ける……!もうあんな奴を、怖がったりなんかしない!)

 

 

◇◆◇

 

 

『ディヤァ!』

『ダアッ!』

 

───グブゥ!?

 

ガルサスのジャンプキックと、メディスの右ストレートがビーストの身体に突き刺さる。体勢が崩れた所に追撃の連続パンチ。更に屈んだ姿勢でのローキックをメディスが放ち、ガルサスがその背に手をつき飛び越しながらのサイドニーキック。オマケにケルベロスのレーザー砲が連射され、ビーストに深刻なダメージを重ねていく。

 

(実愛……立ち直ったか)

(どうやら彼女は、あのビーストに付け狙われていたみたいです。ビーストは、知性体の恐怖を食べて進化する生態を持っているらしくて)

(実愛の様子がおかしかったのは、やはりあの怪獣が原因だったか……)

(でも、最後に残った希望の欠片を、彼女は捨てなかった。お陰で僕とガルサスが此処を、あなた達を見付けられたんです)

 

───ガァァァァァッ!!!

 

(おっと、流石にお怒りのようだ)

(ビーストは細胞の一欠片からでも再生し、増殖していきます!全力の攻撃で跡形も無く消し飛ばすしかありません!)

(なら俺の得意分野だ!)

(ほんの少しだけ時間を!)

 

恐怖を振り切られても尚、ミアの捕食を諦めていないのかケルベロスに意識が逸れているビースト。旋回中のケルベロスを狙って黒い霧を噴出しようとしているが、そんな悠長な行動を見逃す契ではない。

 

『デヤァッ!』

 

───グルァッ!

 

シフリウム光線にウルトラネオバリアーを圧縮して乗せ、遠隔で光壁を展開する離れ業「リモートディフェンダー」でケルベロスを守る。空いた両手にシフリウムエッジを生成し、ビーストの斜め上から二刀で袈裟斬りにする。明確なダメージを示す裂傷痕を刻まれながら後退していくビースト。その感覚が、メディスの背後に禍々しい力を捉えた。

 

『フンンンッ……!ハァッ!!!』

 

左肩から右脇腹に掛けて、爪を立てて自らを切り裂くような動作を見せたガルサス。次の瞬間、M78星雲のウルトラマンの特徴である赤と銀のボディに異変が生じる。

 

黒いラインが全身に走り、赤い部分がくすんだ青に変化したのだ。更に陣羽織のようなアーマーの肩部分には獣の瞳が開き、本来の瞳も目付きが鋭くなる。

 

これこそガルサスの「本気」。

モードN(ノーマル)からモードB(ビースト)へ移行した事を示す「変異」。

グロテスクなスペースビーストと同じ「獣」をその身の内に宿した、異形の力。

 

(行くぞッ!)

『ウォォォォォッ!!!』

 

獣狩りの獣と化したガルサスがビーストへと飛び掛かる。流麗な足技を主体にしていた先程までとは打って代わり、荒々しく野蛮に爪で引き裂き、殴り、蹴り飛ばす。その様は正に獣だった。

 

『……!』

 

「っ、隊長!あのウルトラマンの背に!」

『あぁ、此方の奥の手も見せてやろう』

 

だが人の理性まで失った訳ではない。ビーストが怯んだ一瞬の隙に、ケルベロスへと目配せをしていた。意図を察したミアがロートシルトへ進言し、皆まで言わずともと即座に実行へ移す。

 

距離を詰めるガルサスの背に隠れたケルベロスが、三つの戦闘機に分離したのだ。ガルサスが前転して黒い霧を回避したのと同時に飛び出し、各機のレーザー砲やミサイルで集中砲火。

 

『これがドライ ファングツェーンだ。三つ首の狼に食い千切られる気分はどうだ?』

 

ケルベロスの離脱とほぼ同時に体勢を起こし、エネルギーを纏わせた爪でビーストを切り裂きながら背後へ抜けていくガルサス。俺を忘れてもらっちゃ困る、と空中に陣取っていたメディスがシフリウム光輪を放ち、二人のウルトラマンとケルベロスによる即席とは思えない連携攻撃を締め括った。

 

───キュァァァ……!

 

(弱らせた!これなら!)

(決めるぞ!)

 

立ち上がりこそしたものの、もはや虫の息のビースト。倒すなら今だとメディス、ガルサス、そして合体し再び一機の大型戦闘機に戻ったケルベロスが、各々の全力の一撃をチャージしていく。

 

メディスは右腕で拳を突き出し、それを一回転させてから手首で左腕と合わせ。

 

ガルサスは両手で目の前の空間を引き裂くように交差させ、スパークさせた両腕を左腕を立て、右腕を平行にする形で組み。

 

ケルベロスは三機分のエネルギーラインを直結させたレーザー砲、粒子壊裂砲の照準をビーストに定める。

 

そして───

 

『シュアッ!!!』

『デェェヤァァァッ!!!』

Feuer(撃て)!!!』

 

───グッ……ギャァァァァッ……!

 

必殺のシフリウム光線、フィアーレイシュトローム、粒子壊裂砲が直撃。不死身とすら思えたビーストは、自らが作り出した暗い海に落ちる事すら出来ず、青白い光の粒となりやがて完全に消滅した。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「っと、ここは……」

「あのビーストに引き摺り込まれる前のポイントだと思います。誤差はあっても、そう遠くはないかと」

 

ビーストの撃破によって通常空間に戻ってきた契。その傍らには記憶に無い少年───皆鍵 溟が立っていた。

 

「お前があのウルトラマンの……助かった、礼を言う」

「礼を言うのはこちらですよ。あなた達が諦めなかったから、絆を辿れたから、僕とガルサスが間に合った。これ以上、ビーストの好きにさせる訳にはいかないから……」

「聞かせてくれ。あのビーストとは何なんだ?」

「僕も全てを知っている訳ではありませんが───」

 

曰く、スペースビーストは宇宙由来の青い発光体、ビースト因子が生物等に取り付いて発生する生命体だと言う。種全体がビースト固有の生体波、ビースト振動波を発しており、その振動波によるネットワークを形成して情報伝達を行う一種の群体生命でもある。そのネットワークの恩恵で学習・進化速度が凄まじく、一体でも放置すればたちまち地球人類が危険域に叩き込まれる可能性が高いのだと。

 

「そして生命力も強いんです。際限無しに増殖していくタイプや、破片から再生した個体も見ました」

「だから消し飛ばせと言ったのか……」

「それだけではありません。ビーストの目的は、恐らく次世代のビーストを呼ぶ事。戦っている時にも言いましたが、ビーストは知的生命体の恐怖を喰らって進化していきます」

「なるほど、少しは読めた。ビーストへの恐怖が次のビーストを呼び、最終的にこの地球はビーストで埋め尽くされるって寸法だ」

「それが、最悪のシナリオです……」

 

故に溟は戦っているのだという。ビーストを恐れる心が次のビーストを生んでしまう、その悪循環を断ち切る為に、たった一人で。ビーストを見てしまった人々の記憶から、ビーストと自分の存在を消してまで。

 

たった一人で、孤独に。

 

「なら俺の記憶も消すか?」

「……いえ、あなたとあの戦闘機の三人は大丈夫だと思います」

「良いのか?本当に」

「あの三人、特にビーストに狙われていた人は、もう恐怖に縛られる事は無いでしょうし。あなたは……何と言うか、恐怖とは縁が無さそうというか……」

「少し前に同じ事を言われたよ」

 

恐怖の感情を食らい、そして敵を恐怖させて身動きを封じる守り神。土偶のような異形と、真弓に言われた「恐怖とは無縁の兵士」という言葉を思い出す。

 

「恐怖を消して封じ込めるのではなく、恐怖を乗り越えて立ち向かう。地球全体でそれが出来るようになるまで、僕とガルサスが戦います」

「無理はするなよ。何かあったら俺を───」

 

『デュワッ!』

 

「別のウルトラマン……確か、アキレスでしたっけ」

「訂正だ、俺達を頼れ」

「はい……!ありがとうございます!」

 

そういえば行方不明の弘原海隊長を捜索に来たんだったと、ようやく潮風島を訪れた目的を思い出した契。だがその動作に焦りはなく。何故なら、アキレスのイーリアショットがギマイラを撃ち抜いていたからだ。ラブラスはネットに絡まった状態で、エネルギー切れで超重量の重しと化したセブンガーに捕まっていた。

 

「後は隊長を探して帰るだけだな。最悪、あのラブラスが隊長である可能性も高いが……」

「お互い苦労しますね」

「あぁ、だが自分で選んだ道だからな」

「えぇ、その通りです」

 

出来れば、また力を合わせるような事態にならない事を願って、とガルサスの姿になった溟と別れる契。暗い海からの帰還時についでに回収した、大破したGホークを前にどうしたものかと頭を掻く。

 

(不思議な人だったな……でも、何故だろう。初対面なのに親近感みたいな感情が湧いてきたのは。何処かで何かが違っていれば、僕とあの人の運命は逆だった……そんな確信すらある)

 

ホピスに降り立ったのが契ではなく溟で、窮地に陥った彼らを助けるべく現れたのが、メディスではなくガルサスで。そんなあり得ないifが、運命の悪戯があったのではないか。下らない妄想、されど何故か確信に至れる想いが、溟とガルサスの繋がった心を過ぎ去っていった。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「ぬっ……!くっ……!」

「コントローラー握ると体ごと動くタイプか」

「あんた、さぁ!ウルトラマンに申し訳ないと思わないの!?レオは宇宙拳法の達人でしょう!」

「これも立派な宇宙拳法だ」

「そんな陰湿ウルトラショット連発戦法は宇宙拳法と言わない!!!」

 

ダロンの出現に端を発した一連の事件は幕を閉じ、契は独断専行を咎められ謹慎処分となっていた。といっても独房ではなく自室、ミアの同室も許可され、二人で仲良くゲームに興じていられる辺り本気で罰するつもりは無い事が窺える処分だ。

 

二人がプレイしているのは「ファイティングレボリューション」と名付けられたコンシューマゲーム。「最初に地球にやってきたウルトラマンに助けてもらった」事で脳を焼かれた青年が開発者であり、そのウルトラマンを称え、後世にその存在を残す為に作ったのがこれの一作目。それ以降も、何故か歴代のウルトラマンに開発者の血縁者が助けられて一族経営・開発が続けられてきたのがこのシリーズなのだ。

 

余談だが最近カイナが追加された新作が発売され、現在は無料アップデートでアキレスも参戦予定らしい。

 

「はぁ……勝てない……」

「年期が違うからな」

「……本当に変わったわよね、ケイ。ううん、知らなかっただけか……私の理想を押し付けて、こんな娯楽になんか見向きもしない、冷徹な怪獣キラーとしてしか見ようとしなかった」

「変わったのは事実だ。俺も、お前も」

「そうかな……」

 

現にあのビーストの闇を振り切ったろ、とミアの頭を撫でる契。バッと契から距離を取るミアの顔は真っ赤だ。

 

「ちょっ、はっ!?何!?」

「何って……あぁ、すまん。最近ムムの相手もよくするからな。そのクセが付いたかもしれん」

「ムム……?あの子供……へぇー……」

「なんだ」

「べつにぃ?」

 

私はまだ子供扱いですかそうですか、と内心少し。否、かなり拗ねているミア。まぁいいわと話題を今回の事件に戻す。

 

「ワダツミ隊長、無事で良かったわね」

「あぁ、全くだ。駒門さんに隊長を討たせるような真似はさせたくないからな」

 

結論から言えば、捕獲されたラブラスは弘原海ではなかった。採取された細胞片から、出現したラブラスは潮風島の島民であるという事が判明したのである。当の弘原海は、ギマイラのホワイトスモークを吸って操られた怪獣化させられていない島民達に捕まっていたらしく、アキレスがギマイラを撃破した後に居住区から自力で脱出してきたようだ。

 

「そういう所は甘いわね。ロートシルト隊長なら迷わず撃てって言うわよ、そっちも同じなんじゃない?」

「本人の意思と実行する人間の思いは別だ」

「本当に甘いわね……でも、そういう所がウルトラマンに選ばれた理由なのかもね?」

「基本だんまりだがな、アイツは」

 

コントローラーから手を離し、懐に入れてあるベーターSフラッシャーを取り出す契。何処か複雑そうな表情になった契の横顔を見て、わざとらしく挑発的な態度をミアが取り始めた。

 

「それを使えば、私もウルトラウーマンになれるのかしら?もし戦いに嫌気が差したなら、変わってあげても良いけど?」

「馬鹿を言うな。これは俺が選んだ道で、誰かに押し付けるような事はしないしさせないさ」

「それでこそ、よ。ケイ」

 

椅子から立ち上がり、出入口へと歩いていくミア。その足取りは確かであり、暗い海と正体不明の闇に纏わりつかれていた少女は居ない。

 

「じゃあ謹慎ガンバってね」

「謹慎の何を頑張るんだ」

 

ミアの笑顔は晴れやかで、契も珍しく微笑を浮かべていた。




足踏みしてるだけじゃ進まない


【クトゥーラ】(原作:ウルトラマンネクサス)
フィンディッシュタイプビースト。
原因は不明ながら、この世界に紛れ込んだビースト因子が水棲生物を取り込んで誕生した。
原作個体と同じくダークフィールドの応用で作られた「異形の海」を根城に活動する。
ターゲットに定めた生命体を海にまつわる幻覚・幻聴で弱らせ、触手で異形の海に引き摺り込み捕食する。今回はミアをターゲットとしていたらしく、彼女の不調はクトゥーラが原因。
ネクストやネクサス(ビースト振動波とは逆の波長を持つ者)が存在しないこちらの世界では、根絶する方法が無いに等しく人類は破滅の道を辿っていた……が、ガルサスがビーストに近しい能力を開花させた事でミアと契を発見、撃破された。


【ウルトラマンガルサス】
M78星雲出身のウルトラマンの一人。
宇宙警備隊所属で、単独での任務を遂行中に謎の宇宙人の襲撃を受け重傷を負う。そのまま命尽きると判断されて捨て置かれたが、別宇宙から紛れ込んだビースト因子に適応。ガルベロスの因子が発現した事で高い再生力を獲得したが、理性と獣性という相反する二つの衝突で暴走してしまう。
地球外の調査に出ていた溟の乗るシャトルを破壊し、彼の命を奪ってしまったが、ビースト因子が溟の細胞を捕食した事でガルサスの中で蘇生。元々、心優しい性格の溟が理性に加わった事でモードBとしてビースト因子を制御できるようになった。
以降はビースト因子に共有されてくるスペースビーストを狩る為、溟と共に戦い続けている。

ガルサス本来の必殺技はレイシウム光線。
モードB時はビースト振動波を乗せて強化したフィアーレイシュトロームを使う。

【皆鍵 溟】
18歳にして地球外での環境・生態調査員に抜擢された天才。
地球から遠く離れた星での調査を終え、帰還しようとしていた際に暴走したガルサスと遭遇。命を散らしてしまうが、前述の理由から「ウルトラマンとビーストの細胞で構築されたビーストノイド」として復活を果たす。
ガルサスのビースト因子を制御できる程に理性的かつ優しい性根をしており、公式には死んだ人間とされつつも地球とそこに生きる命を守る為、ガルサスと共に孤独な戦いに身を投じた。
ビーストの本能と捕食衝動が無い人型ビースト、とでも言える存在であり、勝手に共有されてくる他のビースト振動波を察知して現場に向かう事ができる。また、フィアーレイシュトロームを放つ際には、ガルサスの振動波を対象のビーストに調整する役割も果たしている。これによって、同じ振動波同士を対消滅させる事でビースト因子を飛散させる事なく消滅させている。
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