有名NTRゲームのハーレム野郎はハーレム大先生でした。 作:蒼井魚
お好み焼き・アキの建て直し作業がはじまった。保険会社との交渉も上手く纏まり設備分のお金も支払われた。この店も賃貸ではなく持ち物だったことも効いている。
全国から日本で唯一ダイナマイトで爆破されたお好み焼き屋としてそれなりに有名になり、新装開店したら県外から食べに来るというお客さんも沢山やってきていた。ダイナマイトを投げ込みたくなるくらい美味いお好み焼き屋。明広は笑う。
「秋頃には再開できそうだ。保険って凄いな」
「そうだね、保険は凄いよ」
朝のニュースを見ながら温かいお茶を口に運ぶ。高級な茶葉を買う余裕はあるのだが小市民が抜けないので398円の普通の茶葉、それでも香りは悪くない。
まだまだコーヒーに舌が適応できない歳なので緑茶で我慢、父の方は当たり前のように機械で淹れたブラックコーヒーを飲んでいる。少し羨ましい表情になる。何度も人生を繰り返していると子供の舌では味わえないものが沢山ある。その最たる例がコーヒー、子供の過敏な舌では香りは苦さに掻き消される。
「おはようございます……」
まだまだ敬語が抜けきれていない妹に苦笑いを見せる。この感じは彼女が中学性になるまで抜けない。何度もループしている彼だが小学生の間に敬語が抜けた試しがない。気長に待つしかない。
「このみちゃんおはよう!」
「おはよう、このみちゃん」
「は、はい……」
「そんな怖がらなくても……お父さん寂しくなっちゃうなぁ……」
「あの、えっと、ごめんなさい……」
「父さん……」
「ごめんなさい……」
このみは明広の膝の上にチョコンと座り上目遣いで見つめてくる。それを見て苦笑いをしながら頭を撫でてみる。すると心地いいと言わんばかりの鳴き声を出して微笑んでいる。
「本当の兄妹より仲良しさんだなぁ、お父さんにも弟と妹がいるが……昔からなぁ……」
「真っ先にお金の工面に来たのは叔母さんだったからね」
宝くじ当選の話しをどこからか聞きつけ真っ先にやってきたのは明文の妹、息子の妹と真逆で兄のことを軽蔑し父親より早く洗濯物を別にしてくれと言われる程だ。父は別に不潔に見えるわけじゃない。逆にちゃんとした格好をしたら俳優レベルの精悍な存在になる。だが、実は気弱で顔色を伺うことが多い。そのヘコヘコとした態度が嫌いなのだろう。
「いっそのこと明広と結婚したらどうだ? 義理の兄妹なわけだし天下の法律様も許してくれる」
このみは明広と結婚しないかという提案に顔を真赤に染め上げる。
「このみちゃんはまだ小学生だよ、これから先に本当に好きになる人が出てくるさ」
「むぅ……」
「いたいいたい! 膝を抓らないの! め!」
「お兄ちゃんが悪いもん……」
嫉妬してくれて嬉しい。でも、未来のこのみはこの世界の主人公に奪われる。それはおれ――ッ!? ……相沢明広の日記に書かれてある通りに原作主人公の非道な手によって未来は砕け落ちる。
それを望むのは兄として最低なのかもしれない。それでも相沢明広という存在は西暦と同じだけの絶望を繰り返し、辿り着ける終点はたった一つ、物語の終点は一つだけ、それが彼にとっての空虚。
この世界はヒロインに冷たい。
この世界は主人公に温かい。
この世界は明広にとって――生温い。
中途半端に優しく、中途半端に厳しい。そして結末は虚しい。
答えを知らない迷路なら楽しめる。答えを知る迷路なら――それは結末次第。
「このみちゃんも起きたことだし朝ごはんを作ろうかな、お味噌汁は白と赤、どっちがいい? お兄ちゃんがんばるぞー」
「このみちゃんが選んでいいよ」
「えっと……お豆腐が入った赤いの……」
「サーイエッサー」
彼は誰にも顔を見られていない時に酷く冷たい瞳になる。
それはヒロインすら、自分すら変えられない無力さを嘆いているようだ。
無駄、それでもまだ見ぬ主人公は彼女達を大切にしてくれると信じて……。
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