有名NTRゲームのハーレム野郎はハーレム大先生でした。   作:蒼井魚

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2:世界の洗礼

「……宝くじの番号が違う」

 

 これからが始まりだというのに大先生が言うように元の世界ではなく、平行線の世界に移行した影響下かいつもなら当選する筈の宝くじが掠りもしなかった。

 図書館に置かれてある新聞、それをにが虫を噛み潰す表情で睨みつける。

 世界の洗礼、そうだよな、都合のいい部分だけを残してくれるなんてありえない。この世界は似ているが違う世界、宝くじの番号だって変化する。宝くじの当選番号なんて大きな視点で見れば小さな変化だ。だが、俺にとってこれは――重すぎる変化だ……。

 

「このみ……このみが……!」

 

 最愛の妹、それが汚い大人に汚され……自ら命を……!

 宝くじが当たらない世界線だと父さんとこのみが死ぬ。父さんを救うには障害者になるか……。

 ――選べない。

 だけど、助けられるなら一人でも助けたい。

 結衣とさくらが強姦魔に襲われる時にはまだ父さんは生きている。その間に俺が母と再婚相手を殺して、山奥で逃げる。そして結衣が誘拐される時に半グレの潜伏場所を警察に通報すればいい。

 その後は、出頭するだけでいいか……。

 外れた宝くじを鮮血が流れる程に握りしめて、この世界を最善の方法で切り抜ける決意を固める。俺は、最善だけは尽くす!

 

 

 結衣とさくらを強姦魔から救い出し、俺は汚い大人の家の前で静かに座り込む。何度も繰り返す時間の中で奴らの家くらい覚える。このみを引き取った後も金を要求する機械になった母、親父が一回、ループの回数でいうなら六回くらいまで許した。それで奴らの家は覚えている。嫌な話し、嫌いな奴の顔ほど覚えるものだ。

 そして、救えなかった父の首を吊る姿も……。

 

「あの、えっと……君は誰ですか……?」

「この……いや、君のお母さんの息子さ、お金の無心に来たんだ」

「で、でも……父も借金ができて……」

「それでも、お金が必要なんだ。百円でもいいからさ」

 

 この世界では同じ家に住む兄弟ではなく、母の再婚相手の子供であるこのみが俺の辛そうな顔を見て、まだまだ肌寒いからと家に招き入れてくれた。

 そして家に入れてもらい。

 

「借金でいろいろ取られちゃって……お茶はありますから、淹れますね」

「ありがとう」

 

 閉じられたこのみの母の仏壇を開いて、座布団も無く静かに正座。そして、一礼、湿気った線香を手に取りライターで無理矢理着火させて上げる。

 そして静かに両手を合わせた。

 

『お願いします。このみを守ってあげてください……』

 

 兄として最大限の行動はする。アリスは……救えないが……!

 それでも、この世界を探る為には絶対にしなければならないこと! 最初の一回は情報を集める為に捨てる。最低だろ? でも、一回目は語られる相沢大先生にはなれない。許してくれ……!

 

「え、えっと……お母さんにお線香あげてくれてありがとうございます……」

「ごめんね、声をかけないで勝手にお線香上げさせてもらって」

「い、いえ! お母さんも喜びます……」

 

 互いに帰ってくる親を待ち続ける。

 互いに会話を挟まない。

 俺は、本当に……!

 ――ガチャリとアパートの扉が開かれ、酒臭い大人二人が帰ってくる。

 

「このみ! 仏壇を開けるなと言ってあっただろ!!」

「ご、ごめんなさい……」

「んぁ? 誰だこのガキ……チッ、気分悪い」

「あ、あんた……明広?」

 

 俺は小さくこのみにごめんと呟いて隠し持った包丁を二人の首に突き立てた。

 小学五年生にしては高い身長のおかげで俺は二人の首を掻ききり、そして心臓に確実な一撃を突き刺すことに成功した。これでこのみは天涯孤独の身になる。外に親戚がいるかわからないが、彼女の現状を知って見て見ぬ振りをしているのだ。多分、孤児院に入れられる。この屑共と生活するより何百倍もマシだ……。

 包丁をボトリと手から離して部屋の隅で震えているこのみに声をかける。

 

「――ごめん、本当に」

 

 その後は深夜だということを利用して近くの山に潜伏した。食料は野草や川魚を食べて飢えを凌ぐ。

 そして、結衣が誘拐される日。

 俺は自販機の下に落ちてあった百円玉を使って公衆電話で警察に電話を入れる。ガラケー全盛期だ。不審なことが起こっていれば子供なら公衆電話で警察に連絡を入れることも珍しくない時代。

 

「すいません。田宮コンクリート、潰れた田宮コンクリートの廃工場にガラの悪い男の人達が入っていって、怪しいなって思って隠れて見てたら! 女の子が白いバンから運び込まれたのをみたんです!!」

 

 そして、三日くらい経った後、俺はもう一度公衆電話、それの警察直通のボタンを押して、

 

「相沢明広です。逃げるのは疲れました。捕まえに来てください」

 

 

 俺は少年院を出た後、孤児院に入った。

 その後は陸上自衛隊 高等工科学校に入学し、防衛大学に進んだ。

 犯罪者は公務員になれないと言うが、少年犯罪には前科は存在しない。だから一応は空を目指すことにした。

 アリスを見殺しにした自分の心は癒えないが、それでも、俺はもう一度――ファイターになれた。

 この世界も同じように戦争が起こり、そして、ミラージュ2000-5が俺の愛機だ。

 

「こちらデュエル2、デュエル1のッ!? アラート!!」

「護衛機を付けていない爆撃機なんていないってことか、背中を頼むぞデュエル2!」

 

 俺は、この戦争の未来を変える!!

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