有名NTRゲームのハーレム野郎はハーレム大先生でした。   作:蒼井魚

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4:変化する事件

 停学、腑に落ちないという父の表情を尻目に俺は釣り竿を持って川釣りに出かけた。もちろん結衣とさくらが襲われる河川敷、そこの草陰と呼べる場所だ。

 この川では鯉や鮒、緩やかな水流なのでブラックバスにブルーギルなんかも釣れる。餌は除草の際に刈られた草を置く場所の腐葉土、そこに大量のミミズが生息していて、時間分だけ餌にさせてもらっている。

 釣果の方は鯉が二匹、そのすべてが80cm以上の大物、泥抜きさえできれば美味しく食べられるのだが、時間つぶしの行為でしかない。リリースさせてもらった。

 

「もうそろそろだな……」

 

 左腕に巻きつけた腕時計を見るにこの河川敷を通過する五分前と言ったところだろうか? そろそろ身構えておかなければ対処に支障が出る可能性がある。

 釣り竿を置いて、静かに草陰に潜む。

 ――二人が舗装路を歩いている姿が見えた。

 こうしてみると俺の方が不審者のように見えるだろうが、それ以上に異彩を放っている存在が彼女達の背後、数メートル後ろに覚束ない足取りで歩み寄っている。

 

「動くな……ひひっ……」

「だ、誰ですか……え、なにそれ……」

「刺されたくなかったら橋の下に行きなさい……おじさんは気が短いんだ……」

「ゆ、結衣ちゃん……!」

「叫んだらこの子を殺すよ……君も来るんだ……」

 

 遠方で聞こえないが結衣の背後にあてがわれるドスで状況は把握できる。

 そのまま人目につかない橋の下まで二人を誘導していく。

 ――駆けた!

 

「グハッ!? いっつ……!」

 

 結衣の服を破った瞬間には小太りな男は俺の両脚によって吹き飛ばされる。

 少し離れた位置にいたから服を破かれてしまったか……。

 着ていたジャケットを結衣に投げ渡して手放したドスを川に蹴って使えないようにする。

 

「この! 死ね!!」

「け、拳銃!?」

 

 結衣とさくらは目を瞑って俺に起こるであろう惨劇から目を背ける。

 ――杞憂だ。

 日本に密輸されるトカレフ拳銃は基本的に粗悪品、それに付け加えてライフリングは4本線で基本的には命中精度は低い。

 つまり、構えてちゃんと撃たないと対象に弾は当たらない。

 咄嗟に取り出して撃った弾は地面を抉り、二発目は大空に向かって飛翔する。

 懐に入り込み、片手で握られたトカレフを強姦魔の左足に無理矢理発砲させ、崩す。

 何度も繰り返している。慣れたものだ。

 ――背後から殺気を感じる。

 咄嗟に横に飛んで何かを回避する。

 

「が!? うぅあ……」

 

 右足にも風穴、強姦魔は立つことが出来ずそのまま崩れ落ちた。

 背後を見る前にトカレフ拳銃をローリングしながら回収し、構えてもう一人の誰かに照準をあわせる。

 ――若い男?

 

「あらら、羽渕に頼まれた子供じゃなくて下洲の兄貴を撃っちまった」

「お、おまえ! 中村!? ちゃんと狙え!!」

「いやいや、あれだけ密接してたら狙いも狂いますって……にしても、その構え方! 慣れてるねぇ……」

 

 銃を構えながら結衣とさくらの盾になれるように彼女達の前に立つ。

 

「民間人を庇いながら牽制を忘れない……こりゃ、どっかの特殊部隊か? カッコイイね! 嫌いじゃないよ」

「立木さんと新島さん……ここは危ないから壁に隠れて……」

「え、ええ? う、うん……」

 

 結衣が震えながら腰が抜けたさくらを抱えて弾丸を防いでくれる場所まで移動してくれる。これでヒロインの負傷は……俺が死なない限り大丈夫だろう……。

 男は拳銃を懐に戻して頭を掻いた。

 

「いや、下洲さんが小児性愛者だってのは噂で聞いてたけどさ、裏風俗以外の子にも手を出すなんて思ってもなかったですわ」

「なんで銃を戻してる! こいつを殺せ!!」

「いやぁ、このまま撃ち合えば確実に俺が撃ち殺されますって、そんなの嫌ですよ……で、僕? 俺は撃つ気なくなったけどさ、下ろしてくんね」

「……」

 

 トカレフのマガジンを抜いて、スライドを引いて薬室の弾を抜く。そのままマガジンを川に投げて銃だけを強姦魔に返してやる。弾を弾けない銃は鉄の塊でしかない。

 

「にしても、羽渕が言ってるような性根の腐った糞餓鬼には見えねぇな? 学校でガキ大将してて、ゆすりたかりが大好きって聞いてたが……真逆に見えるわ……」

「銃を抜け! 早く撃ち殺せ!! そうしないと警察が……」

「いや、俺はもう下洲の兄貴は見捨ててますって、羽渕の野郎も見捨てるか見定めてるんですわ……まあ、もう下してもいいと思うんですけどね……」

 

 男は携帯電話を取り出して誰かと通話をはじめる。

 

「おう、羽渕? おまえが言ってた糞餓鬼、俺から見たら完璧に真逆の存在に見えるんだが、あ? 頭の良い弟の言うことが間違ってるわけがないって……この坊やの同級生だろうが、どうみてもこの坊やの方がおまえの弟より頭良さそうだぞ。ああ、おまえさ……誰に物言ってるんだ……もういいよ、じゃあな……」

 

 男は携帯をポケットに仕舞い込んで溜息を吐き出した。

 

「いやさ、羽渕って奴に坊やを殺せって言われたのよね。でもさ、俺には坊やがどうみても奴が言うような悪ガキには見えないんだよねー、そこのところどうなの?」

「……弟の方が糞餓鬼だ」

「あ、そうなんだ。一回命を救われたから可愛がってやってたけど、年下の糞餓鬼に利用されてたって考えるとイラつくなぁ……」

 

 男は肩を落として静かに去ろうとする。

 

「おい! 中村! 俺を見捨てるのか!!」

「だ、か、ら! 俺は下洲さんを見限ったって言ったでしょ? 刑務所でオナ禁してくださいな」

「まて! 俺は!!」

 

 泣き叫ぶ強姦魔を尻目に河川敷に止められているバイクに向かう……中村という男、だが、後ろ髪を引かれたように振り返った。

 

「坊や、名前は?」

「……相沢明広」

「相沢ちゃんね、二度と会わないことを願うよ。じゃーね」

 

 中村はバイクを唸らせて颯爽と逃げていった。残ったのは小学生と犯罪者。

 震えるさくらのランドセルに付けられた防犯ブザーを鳴らして静かに座り込む。

 ――平行線の世界だからか、知らない人物が登場した……。

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