有名NTRゲームのハーレム野郎はハーレム大先生でした。 作:蒼井魚
明広は書斎になった部屋でペンを走らせる。
最近購入したホワイトボードに必要な情報を書き記していく。
【河川敷少女強姦殺人事件】
【
反社会勢力・アルタイル幹部、幼児性愛者。
非合法の未成年売春宿を愛用し純潔を汚すことを趣味にしている。
近年は幼児を仕入れることが出来なくなり売春宿が閉鎖、その余波によって行動に至る。
身長:推定165cm
体重:推定80kg後半
「……無視すると身代わり出頭させて罪を逃れるからな」
【新島さくら】
同級生、物語のヒロインの一人。
視力が低く黒縁メガネを愛用している。
髪型は三編みが多い。
兄妹はなし。
【立木結衣】
同級生、物語のヒロインの一人。
活発な少女、リトルリーグに所属。褐色の肌が特徴。
髪型はポニーテールが多い。
兄妹は上に兄、下に弟がいる。
明広は事件が起こる日時を書き足す。
そして下洲と二人のヒロインに線を引き、【関連性なし】と書いた。
その後は事件の解決方法を選ぶ準備に入る。
西暦と同じくらいの時間を繰り返している彼にとってこの事件はループする前以外は全力で介入している。最初の試練ということもあり軽いジャブのようなものだ。
最初の解決方法は下洲が幹部をしている反社会勢力・アルタイルのパソコンにハッキングし、違法な児童ポルノなどを警察にリークする。比較的簡単なのだが、今現在この家に回線を引いておらずハッキングはインターネットカフェなどでやることになる。後々にアルタイルを壊滅させるための手法を先に持ってきているという一面もある。
二つ目は下洲を深夜に急襲する。もちろん病院送りにして事件を起こらないようにする。単純明快な方法なのだが、こいつには欠点がある。下洲は拳銃を常に装備しており、一撃で戦意喪失させなれば撃たれて大怪我に繋がる。それに逃げられでもしたら明広が少年院送致なんてこともありえる。一回しかやったことがない。
三つ目は至ってシンプル、二人を襲おうとした瞬間に間に入ってボコボコにするという計画もヘッタクレもないもの。彼が一番やってきた手法。実はこれにも欠点があり、下洲は拳銃で二人を脅すのだ。もちろん弾を受ければ大怪我、流れ弾でヒロインが死ぬこともある。最初のイベントにしては鬼畜難易度と言っても過言ではない。
「……いつもの三番でいいか」
一番試行回数が多い
「……未来は報われない。でも、同級生が死ぬのは嫌だ」
彼はそう吐き捨てて書斎から出た。
2
何度も戦闘機パイロットになってる彼にとって小学生の勉強は退屈としか言いようがない。でも、今現在の彼が小学生なので仕方がないと諦めて机でノートをとる。
そんな彼を後ろの席から眺める瞳、さくらは変化した明広に心惹かれていた。
(相沢くん……かっこいいな……)
少女達の目から見ても美形な明広、いじめられていた頃は前髪を目元まで伸ばし、猫背で顔が見にくい状態だったのだが、今はスッパリと髪を切り、猫背も治っている。
堂々と凛々しい姿。数週間前まで泣きながら謝罪の言葉を必死に唱えていた彼とは思えない。
うっとりと彼の後ろ姿を見ていたが、教師の「この問題わかる人いるかな」という言葉で意識を取り戻し、書いていない黒板の内容を必死に書き記していく。
そして授業が終わり掃除の時間。
さくらは少し心配そうに明広の背中を見る。掃除の時間、水浸しの姿で戻ってくる明広の姿を何度も見ている。トイレ掃除の当番、教師の目の届かない閉鎖空間。暴力も見逃されやすい。なんなら水浸しの状態で戻ってきても明広が水遊びしていたと他の生徒の言葉を鵜呑みにする教師しかいない。心配で胸が苦しくなる。
「さくらどうしたの? ぼーって」
「な、なんでもないよ……結衣ちゃん……」
同じ教室掃除の当番である結衣がさくらの肩を叩く。そしてさくらの視線の先にある明広を見て顔をしかめる。
「……どうせまたいじめられるわよ」
「結衣ちゃんは相沢くんがいじめられた方がいいの……?」
「あたしはナヨナヨした男大嫌い。どうせお金持ちになったから気が強くなっただけよ!」
「でも、いじめは……」
「悪いことだけど、自分で解決できないなら一生いじめられるのよ……」
結衣は心底嫌そうな顔をして雑巾をバケツに投げた。
場所は変わって二階男子トイレ、小便器をブラシで丁寧に擦り汚れを落としていく。明広以外の生徒達はトイレ掃除なんてやる気はなく、明広一人にすべての作業を任せて雑談に花を咲かせている。
「おい相沢! 早く終わらせろよな!!」
「やってるだろ、早く終わらせたかったら手伝ってくれないかい」
「はぁ? 誰に向かって言ってんだ」
「
二人は未だに明広をいじめの対象としか思っていない。だが、明広の言葉一つ一つに反論できない。現に明広以外は掃除なんてしていない。それでも、彼らの捻じ曲げられたプライドが衝動を生み出していく。
掃除用のバケツに水を注ぎ、明広に向かってぶちまけた。
明広は見透かしていたかのように個室の扉を開けて飛び込んでくる水を防いで個室の掃除に取り掛かる。
「避けんじゃねぇよ!」
「避けてないよ」
再びバケツに水を注ごうとするが狙いを定めようとした瞬間には明広が目と鼻の先に立っている。今まで猫背でわかりにくかったが小学五年生にしては高い162cmの身長、そして見開かれた瞳は恐怖心さえ植え付ける。
「終わったから帰ろうか……」
「あ、ああ……」
「チッ……いじめられてた癖に……」
二人は絶対にもう一度いじめて謝らせてやると心に決める。だが、それは永遠にできないことだ。今の明広は西暦と同じくらいの月日を生きた存在、それをいじめられるのは
3
HRが終了し、ランドセルに教科書類を詰め込む時間帯。明広は誰よりも早くそれを終わらせて足早に下駄箱に向かう。今からは一秒を争う、だから迅速に行動しなければならない。
「まてよ」
下駄箱で靴を抜き取ると同時に上級生に声をかけられる。その視線は蛇のように鋭く、額にはシワがよっている。
明広は少し遅かったか、なんて心で呟いて心底興味なさそうな顔で上級生を見つめる。
「俺の弟が世話になったみたいだな、仕返しさせてくれねぇか」
「……場所を変えましょう」
明広は冷静に結衣とさくらが下校する時間、この上級生をやり込める時間を計算する。そして叩き出されたのは十分、これ以上の時間を使用すると最初の事件は悲惨なものに変化する。本当にこの世界の神様は残酷だと。
体育館裏の誰も来ない場所に連れてこられた明広はいじめの主犯と数人の上級生に囲まれる。
「金持ちになったからって調子に乗るんじゃねぇぞ! おまえは俺達より下なんだからな!!」
主犯が高らかにそう宣言し、明広に殴りかかる。が、それは空振りに終わり、雑草が生い茂る地面に倒れる。
それを見た上級生達が怒りを顕にし一斉に襲いかかってくる。
明広は怒りを顕にし言い放つ、
「時間が無いんだよ!」
4
結衣とさくらは帰り道である河川敷を歩く。
彼女達は小さい頃からの友達というわけではなく、小学三年生の時に結衣が転校してきて共通の趣味で仲良くなった。その共通の趣味は野球。さくらは観戦だけだが、結衣はリトルリーグに所属するくらいの野球好き、互いに両親の影響だが今では自分の趣味にしている。
「セカンドとショートって難しいんだ。でも、監督に立木は目がいいからって」
「ふふっ、結衣ちゃんは本当に野球が好きだね」
「やっぱり白球を追いかけるのって楽しいし」
「猫ちゃんみたい」
笑いながら歩く帰り道、彼女達は気づかなかった。後ろに自らの欲に溺れた存在が近づいていることに……。
「……さくら、やっぱり相沢と仲良くしちゃ駄目だよ」
「……どうして、相沢くんは」
「私が三年生の時に転校してきた理由しってる?」
結衣は暗い表情で語りだす。
彼女はいじめられていた。女の子なのに野球をしているというよくわからない理由で女子からは総スカン。男子からも男女と呼ばれて笑われる。被害者、でも、ある日一人の女の子が転んで怪我をした。
その女の子は結衣に足を引っ掛けられて転んだと嘘をついた。その女の子が転んだ時、結衣は図書室で野球の本を読んでいた。確固たるアリバイ。でも、誰も結衣を信じてくれなかった。
いじめられっ子に言い訳もアリバイもない。弱者は強者に食い物にされるだけ、また……自分がいじめられる立場になりたくない。だから
「……それでも、相沢くんは変わったよ」
「あたしだっていじめられるのよ、意識が変わっても意味ないわ! もう、あんな惨めな気持ちにはなりたく――「動くな」」
自分の首に当てられる銀色に鈍く輝く刃物、それは包丁や果物ナイフみたいな物ではなく日本刀を小さくしたような形をしている。ドスと呼ばれている刃物だ。
結衣の首にあてられている凶器にさくらは叫びそうになるが、牽制するように、
「叫んだら殺す……ひひっ……」
小太りな四十代くらいの男はさくらの首根っこを掴んで河川敷の橋の下まで誘導する。そして乱雑に投げてズボンのファスナーに手をかける。
その目には狂気が揺らめき、自らの欲望を発散する為だけの行為をこれからしますと言わんばかりだ。
「へへっ、こいつは上玉だ……気持ちよくしてくれよ……」
「け、警察呼ぶわよ!!」
「呼んでいいよ、でも……死ぬよ……!」
ゆっくりとさくらの首にドスを差し向ける男、
「わ、わかった! あたしはどうなっていいから……さくらだけは……」
「いいね! いいね!! 店の女の子は従順だったからこういう態度は興奮する!!」
男は結衣の服をドスで切り、行為に至ろうとする。さくらは声も出なく、自分達に未来は無いのだと確信した。
これは現実、
ある意味で結衣が言っていた受け入れるしかない現実。
――その瞬間、結衣を犯そうとしていた男が吹き飛んだ。
「間に合った……!」
息を切らした明広が脱いでいたジャケットを結衣に投げて小太りな男と向き合う。
二人はこれが現実かわからなくなる。絶対に現れないヒーローがやってきて、刃物を持った男に立ち向かっている。
――
「クソガキ! 俺の楽しみを邪魔しやがって!!」
男はドスを握りしめて突進するが、その刃は教科書が詰め込まれたランドセルに防がれる。そして男の手を思い切り殴りドスはランドセルという鞘に収まった。
そのままランドセルを川に投げ捨て相手の武器を奪う。これで互いに拳――なんてことはない。懐から出されたのはトカレフ拳銃、男はニンマリと笑い殺意をぶつけてくる。
「相沢くん! にげ――」
発砲音、二人は目を閉じた。同級生が撃ち殺される、その姿を目に焼き付けたくない。だから目を閉じ続けた。
二発、三発と重なる銃声。
相沢明広は蜂の巣になってしまっている。それを見てしまったら自分達は立ち直れなくなる。
――
四発目の発砲音とともに男の叫び声が響く、
二人は目を開ける。そこには無理やりに男の足に発砲させ拳銃を奪い取った明広の姿があった。
「こ、ころさないで……」
大の大人が小便を漏らしながら小学生に許しを請う姿は酷く滑稽に見える。明広は構えた拳銃のマガジンを抜き取り、スライドを引いて薬室の弾を排莢する。そしてマガジンを川に投げ捨ててゲームセット。
「……新島さん、発砲音ですぐに警察が来ると思うけど、防犯ブザー鳴らしてくれない?」
あまりの出来事に現実か夢かわかっていないのか、ランドセルに付けてある防犯ブザーを使えないでいる。
――ようやく理解できて防犯ブザーを鳴らした。
その後は警察がやってきて川に投げたマガジンやドスを回収。男は病院に運ばれた。もちろん回復したら裁判が控えているだろう。
小学生三人も取り調べを受けるが見ればわかる通りに強姦魔が半グレの存在で刃物や拳銃で脅し少女達を犯そうとした。それを明広が咄嗟に無力化し、加害者が怪我をして終わり。過剰防衛にもならない。
「明広! 大丈夫だったか!?」
明文が明広を抱きしめて頭を撫でる。大丈夫だからと苦笑いを見せる。その後に結衣とさくらの両親がやってきて同じように子供を抱きしめて気が抜けたのか涙を流す。
結衣とさくらはようやく頭が回りだし、怖かったと泣きじゃくる。
「明広くん……娘を助けてくれてありがとう……」
「いえ、自分に出来ることをしただけです」
この世界の神様は酷いことしかしない。
だから、明広は戦わなければならない。
未来に救いが無くとも、
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