ONE PIECE “IF” RED 【完結】 作:巨象先輩
二次創作も小説執筆も初めてです。お手柔らかにお願いします。
タイトルやあらすじにもある通りFilm REDのヒロイン、ウタが麦わらの一味に仲間として加わるならどんなお話になるかなあ、という妄想から書き始めました。
ぶっちゃけ書きたいことに実力が伴ってないところもありますが、初めにも書いた通り何卒お手柔らかに、お手柔らかにお願いいたします……。
富・名声・力――
かつてこの世のすべてを手に入れた男、〝海賊王〟ゴールド・ロジャー。
彼の死に際に放った一言は、人々を全世界の人々を海へと駆り立てた。
『おれの財宝か?欲しけりゃくれてやるぜ…。探してみろ。この世のすべてをそこに置いてきた』
かくして世は、大海賊時代を迎えた。
男たちは、〝
そしてこれは、そんな世界で生きていたある少女の〝もしも〟の物語である。
†
風は東。波は穏やか。
ここは〝
その海原を進むのは、海賊船ゴーイング・メリー号。帆には麦わら帽子をかぶったドクロのマークが堂々と掲げられている。
「陸だ! 陸地が見えたぞ、ルフィ!」
見張り台から船の進路の先を望遠鏡で探っていた長鼻の青年ウソップが呼びかけると、メリー号の船首、大きな羊の頭の上に座り込んでいた麦わら帽の男が立ち上がる。
「よおぉーっし! 野郎ども、上陸の準備だーっ!」
「アンタも手伝うのよ! 人手が足りないんだから」
「あでっ」
甲板へと飛び降りながら意気揚々と号令をかける船長、モンキー・D・ルフィの頭にチョップを繰り出すオレンジの髪を短く切りそろえた女。彼女の名はナミ。海賊専門の泥棒であり、現在ワケあってこの船に身を寄せている。
そんな甲板でのちょっとした騒ぎに起こされ、居眠りをしていた男が大きなあくびをしながら立ち上がった。
「……何の騒ぎだ?」
「おおゾロ! 手伝ってくれよ、もう少ししたら上陸だ」
「おお、そうか」
緑髪の、腰に剣を三本携えた青年、ロロノア・ゾロが帆を畳む準備をしながらナミに呼びかける。船旅はからっきしの者ばかりの一味で、航海技術を持っているナミは命綱でありご意見番である。とはいえ、数日前に出発したシロップ村では新たな仲間であるウソップを一味に迎え入れ、立派な船も手に入れることができた。〝偉大なる航路〟に挑む準備はかなり進んできたといえるだろう。
「それで、次の島では何するんだ? そろそろ行きたいなあ、〝偉大なる航路〟!」
「……あのね。腕っぷしと航海術だけじゃ〝偉大なる航路〟どころかこの〝東の海〟も進んでいけないわよ?」
ルフィのあっけらかんとした物言いに、本気でこのまま彼らの本命である〝偉大なる航路〟へ突入する気なのか、と半ば呆れた様子で答えたナミは、続けて彼にこう問う。
「さて、お聞きしますけど、この数日間アンタたちの食事をつくってあげてたのはだぁれ?」
「ナミさんです」
「そうよね?
わたしとしてはお金さえいただけるなら今後も料理番をするのもやぶさかではないわよ?」
彼女が話しているのを遠巻きに聞いているウソップは、舵を操って船を停泊させるのに適したポイントへゆっくりと移動させる。ゾロは真剣に聞く気がないのか、頭を掻きながら錨を下す作業のため階下の倉庫へと向かった。手持ち無沙汰なのはルフィだけである。
「でもこのままわたしがこの船の航海士と料理番、どっちもやり続けたらどうなると思う?」
「……正式にコックになる?」
「パンクするわっ‼」
神妙な顔でトンチキな答えを返す船長の脳天に、ゲンコツが飛んだのだった。
†
「なるほど。仲間探しかあ」
得心がいったという風にポンと拳を手のひらに打ち付けるルフィ。
何故今の今までその発想がなかったのだと言いたげなナミの表情を横目に、ウソップが頷いた。
「しかしナミの言い分ももっともだ。
おれもある程度は料理できるけど、この人数を相手にしたら一週間もつ気がしねえよ」
「特に船長の食いっぷりはウチの最大の弱点とも言えるな」
ゾロの言葉を受け、一味の視線が一斉にルフィに向く。
「それに、長い船旅ではケガ以外にも命の危険が多いのよ。特に栄養失調とかね」
「肉だけじゃダメってことか?」
「なんで肉だけで解決できると思ってんのよ」
陸上での生活とは違い、海の上では食料を保存する術は限られている。どれだけ量を船に詰め込んでも、腐ったりしてしまっては意味がない。そのため船旅では干し肉やキャベツの塩漬けなど、長期保存できるものを食べるのが一般的だ。
しかし、それでもなお船上での食糧事情は厳しい。保存のきくものを食べ続けていたとしても、栄養が偏っていればいずれ身体に害を及ぼすだろう。
「長旅の中でもクルーのために献立を考えられて、調理に特化した〝コック〟か……」
「船を手に入れた今だからこそ優先して探すべきね」
「なるほどなあ」
腕を組みながらうんうんと頷くルフィの姿に未だ若干の不安を覚えつつも、ナミが今後の方針をまとめだす。
「とにかく、ここではコック探し!
もしくはコックを仲間に引き入れられそうな場所の情報を得ることを目指しましょう」
「ついでにまた食い物の補充もしとかないとな」
「えっまた買うのか? お前らもうちょっと食う量考えろよなー」
「ほとんどお前が食ってんだろが‼」
かくして、一行はあらたな土地へと足を踏み入れてゆくのだった―─。
†
村はずれにある丘。ここからは海の様子がよく見える。
村の漁師が魚を獲っている様子が小さく見えることがほとんどだが、時折村にやってくる商船が見えたり、ごく稀に海賊船やそれを追う海軍の船が遠目に見えることもある。大して面白みもない光景ばかりだが、物思いにふけるにはぴったりの場所だ。
そんな場所でぼんやりと座り込んでいる一人の少女がいる。
赤と白の髪が頭のちょうど真ん中で半分ずつ生え別れ、それを後ろ手に結んでつくった大きな二つの輪がよく目立つ。耳を覆うヘッドホンには「UTA」と書かれているが、長年使っていたせいでかすれ、薄くなった文字の上から更になぞり書いたらしい跡がみえる。
今日も西の空に日が沈んでいくのを眺めながら、彼女は丘の頂上に腰を下ろしていた。
「姉貴ーっ、ウタの姉貴ーっ!」
後ろの方向から呼びかけてくる声に反応して、少女の頭の後ろで垂れていた輪が跳ね上がった。 聞き覚えのある声に、ウタと呼ばれた彼女は振り返る。
「……ああ、ジョニー。もう時間だっけ?」
「へいっ! ゴードンの親っさんがそろそろ呼んできてほしいってんで……」
ジョニーと呼ばれた、顔の左側に「海」の文字をでかでかと彫り込んだサングラスの男が息を切らせながら答える。
立ち上がり、尻についた草を払いながらウタは大きく息を吐き出す。
「オッケーオッケー、すぐ行くよ。
あとジョニー。〝姉貴〟はやめてよね。なんかイカツくてイヤだから」
ビシリと指を差しながら言うウタへ苦笑いしながら頭を搔くジョニー。彼の横を通り過ぎながら、少女はニッと笑顔をつくってみせた。腕を通して羽織っただけのジャンパーが風になびく。
「よーっし、今日も私の歌で、皆を笑顔にしてあげる‼」