初投稿です。最後まで読んでくれると幸いです!
異世界勇者とウマ娘
魔王城、王座の間。そこで世界の命運をかけ魔王と勇者の二人が戦っていた。
「だぁりあああああああ!!」
「くっ……!」
勇者の渾身の一撃が命中し魔王が大きく後ろにふきとばされる。すかさず勇者は勝負を決める一発を放つため、腰を落とし両手を合わせ脇腹の方に腕を持っていき必殺技の構えをとる。
そう、誰もが知っているであろうあの必殺技の構えを。
「か〜め〜は〜め〜」
勇者の両手に青白く光る球が生まれる。それは徐々に発する光を強めていき、終いには球を中心に渦巻くように強烈な風が発生する。
「波ッッッッッ!!!」
勇者は腕を突き出し両手に溜めたエネルギーを放出する。全てを込めたかめはめ波は一直線に魔王に向かって突き進んでいく。
対する魔王もただやられるのを待っているわけではない。
「フレイヤー・フラッシャー!!」
両腕を弓のように引き絞り一気に前に押し出し、手の平から赤く光るビーム状のエネルギーを発射する。
勇者の青と魔王の赤。両者の必殺が衝突する。
「ぐ、ぎぎぎぎぎぃ……!」
「ぬううううぅぅ……!」
二人の力が拮抗しどちらも一歩も譲る気はない。このままエネルギーが相殺しあい爆発を起こすかに思われたが。
(こんなもんじゃないはずだ……!神さまから貰ったサイヤ人としての力は……!こんなもんじゃないだろ!!)
「うあああああああああああああ!!!」
「なにぃ!?」
勇者が叫ぶと共に急激にかめはめ波のパワーが増していく。文字通りの全身全霊、勢いのついたかめはめ波は魔王のフレイヤー・フラッシャーを飲み込み、魔王の体に直撃する。
「フッ……ハッハッハッハッ!!……さすがだな、勇者よおおおお!!」
どこか清々しい顔をしたまま魔王は青い光に飲み込まれ、その体は完全に消滅した。
魔王と勇者の闘いは勇者の勝ちに終わった。
「はあ……!はあ……!遂にやったのか……!これで俺の役目も終わる……」
立っているのもやっとな満身創痍の勇者は、闘いの影響で破壊された城の天井から覗く空を見上げながらぼんやりとこの後のことを考える。
(俺はこの後どうなるんだろう……。元の世界に戻れんのかな?あんましこの世界にはいたくねぇなぁ……)
魔王を倒したことによる達成感と今後の自分に対する不安とが混ざり、なんとも言えない気持ちになっていた時。
急に空が眩く光り、目を開けていることすら出来なくなり自然に目を閉じた瞬間。そこで勇者の意識はプッツリと切れてなくなってしまった。
──トレセン学園──
ヒュューーン…
ドォォーーーン!!
「いてて……いったい何がおきたんだ……?」
(ついさっきまで自分は魔王城にいたはず。魔王を倒した後、なんか光に包まれたってとこまでは覚えてんだけど……。ここは一体どこだ?どーやら空から落っこちてきて地面にぶつかった感じだが。……どういうことやねん。いや、まさか……)
「神さまの仕業か?」
「何事ッ!!グラウンドにクレーターができているぞ、たづな!」
「理事長!危険ですからあまり近づかないでください!」
そんなことを考えていると、いつの間にか俺が落ちてできたクレーターを覗くように二人の女性が立っていた。
とりあえず現状確認をするべきか、上の二人に話を聞くため地面を蹴り空中に飛んで二人の元にゆっくりと着地する。
「驚愕ッ……!人が空を飛んでいる!!」
「う、宇宙人とかでしょうか……?」
困惑する二人をこれ以上驚かさないようにできるだけ優しく、友好的な態度で話しかける。
「ひとまず俺はおめぇさんらに危害を加えるつもりはねえ。それだけは信じてくれると助かる。」
「理事長……」
緑色の制服を着たとんでもなく美人なお姉さんが、理事長と呼ばれた小さな少女を不安げな目で見つめる。
「……質問ッ!君は一体何者だね?」
どうやら一応俺と対話をしてくれるみたいだ。ホッと胸を撫で下ろし、理事長と呼ばれた少女の質問に正直に返す。
「俺は大神勇斗。…こことは違う異世界で勇者として闘っていた男だ。さっき空を飛んだのも空から落ちてほぼ無傷なのも、勇者として神さまから貰った特別な力のおかげだ」
「異世界……勇者……そっ、そんなの信じられるわけないじゃないですか!!理事長!この人は……」
案の定お姉さんの方はさらに取り乱してしまうが、
「たづな……大神くんが言っていることはたぶん本当だろう……」
「理事長!?何を言っているんですか!?」
「冷静ッ!落ち着いて考えるんだたづな……大神くんの言葉が事実ならこれまでの奇怪な事柄も説明がつく。何より!彼がここで嘘をつくほど器用な人間には思えない!」
予想に反して少女の方は俺の言葉信じてくれるみたいだ。こんな怪しさ100%の男の言葉を。
なんておもしろ…じゃなくていい子なんだ!後で飴ちゃんあげようね〜……持ってないけど。
「しかし!信じるとは言っても君自身を信用したわけではない!!大神勇斗くん……君の目的はなんだ!」
「目的って言われてもな…前の世界では魔王打倒が目標だったけどそれも達成しちまったしな…強いて言うなら職かな!今の俺、無一文の無職だしな!そーいやここはどこなんだ?見たところ学校とかそういう感じの施設っぽいけど」
少女の質問にこれまた正直に答えて、俺もまた聞きたかった疑問を投げかける。
「……ここはトレセン学園。トゥインクル・シリーズを目指すウマ娘達が通う全寮制の学園です」
意外にも答えてくれたのはたづなと呼ばれていたお姉さんのほうだった。いろいろと初めて聞く単語が出てきてさらに疑問が増えたが。しかしホントに美人だなこの人、永遠に見てられんだけど。
「なっ、なんですか……?こちらをジロジロと見て?」
「いやっ、悪りぃ。あんまり美人なもんでついな、すまなかった」
「なっ、ななっ……!!」
いやめちゃくちゃ顔真っ赤にして照れてんだけど、かわいすぎんだろ。なにこの人無敵か?
そんなやりとりをしていると不意に少女が口を開く。
「大神くんの話はよく分かった!そこでッ!提案ッ!君さえよければここでウチの職員として働いてもらいたい!!」
「理事長ッ!?何を言ってるんです!?一体どうしてそんな結論になるんですか!気でも狂ったんですか!?」
「傷心ッ!さすがにそこまで言われると傷つくぞ、たづな!いやなに彼なら何かウマ娘達の役になってくれる気がするのだよ!それにたまには勢いだけで行動してもバチはあたらないだろう!」
「いや理事長は普段から結構勢いだけで行動してますよね!?」
どうやらこの学園で働かせてもらえるみたいだ。ありがたい話だけど本当に大丈夫なんか?もしかしてこういうこと結構あったりすんのかな…?
二人の微笑ましい言い争いを眺めつつ考えを整理していると、ひと段落ついたのか俺に話を振ってくる。
「それでどうかな?君にとっても悪い話ではないはずだ!」
「ああ!お言葉に甘えてその提案受けさせてもらうぜ!」
「理事長〜……」
俺と理事長はがっしりと握手を交わし、たづなさんは頭に手を当て大きくうなだれていた。
「失敬ッ!そういえばこちらの自己紹介を忘れていた!私は秋川やよい!ここトレセン学園の理事長をやっている!そしてこっちが……」
「はあ……理事長秘書の駿川たづなです。決まってしまったものはしょうがないので、これからよろしくお願いします。で す が!!私はまだあなたのことを信じていませんからね!少しでも怪しい態度をとったら即刻この学園を去っていただきますからね!!」
二人に自己紹介をしてもらってようやく名前がわかる。やよいちゃんは本当に理事長らしい。あんなに小さいのにすごいな。
たづなさんは当然だがまだ信頼を得られてないようだ。この人の信頼を得られるよう頑張らなくては。
「ところで職員って何をするんだ?それにウマ娘?のことも俺よく分かってないんですけど」
「決定ッ!君にはこれからそのウマ娘を導く、トレーナーになってもらう!!」
『ウマ娘』。ウマの耳と尻尾を持ち、超人的な走力を持つ人間とはちょっと違った種族。彼女達は走るために生まれてきており、国民的人気を誇る『トゥインクル・シリーズ』にデビューするために、ここトレセン学園で日々ライバル達と切磋琢磨し自分の走りを磨いている。
ウマ娘は全て女性であり、容姿端麗な者が多くアイドル的な存在になっている。
そんな彼女達を一番近くで支え、トゥインクル・シリーズへと導く者達。それがこれから自分がやることになった、トレーナーと呼ばれる職業だ。
いわゆる監督やコーチのような立ち位置の存在で、トレーナーになるにはいろいろと難しい試験を突破しなくてはならないのだが、「気にするな!こちらでどうにかしておく!」とのことらしいので、ちゃっかり俺はなんの苦労もすることなくトレーナーとしての道を歩むことになった。
その際、たづなさんがまた頭を抱えていたのは言うまでもない。
「しっかし、ウマ娘ねぇ……俺が元いた現代日本によく似ているけど、やっぱここは違う世界なんだなぁ」
理事長室でウマ娘について話を聞いて、貰い受けた制服とトレーナーバッジを身につけ、俺は今学園内の廊下を歩いていた。
偶に通り過ぎる女生徒達は皆、頭に耳を、腰から尻尾を生やしており、ここがやはり異世界なんだと実感させる。
(……ん?なにやら外が騒がしいな?)
窓から見えるレース場の一角に、かなりの人だかりができていた。
一体何があるんだろうと立ち止まってそこを見つめていると、校内の至る所に設置されたスピーカーからアナウンスが流れる。
『これより選抜レースを行います。参加する生徒、観戦するトレーナーの皆さんは、レース場にお集まりください』
(選抜レースか……!年に四回ある、デビューしていないウマ娘が、スカウトしに来たトレーナー達にアピールをすることができる、学園の一大イベント……とんでもない時にやってきたもんだな、俺は……!)
選抜レースについても、たづなさんから話を聞いてその重要性について知っていた俺は、他の生徒やトレーナー達と同様、レース場へと足を運ぶのだった。
(ふう……どうにかいい場所につけたな)
レース場に着いた俺は、たまたま空いていた前の方に陣取り、これから走るウマ娘達を眺める。
その中でも一際注目を浴びる二人の少女がいた。
「よろしくお願いしまーすっ!」
「っしゃーす」
「あれがダイワスカーレットとウオッカ……!!二人共いい仕上がりだ!」
「先日の模擬レースでどちらも素晴らしい成績を残している。果たして今日はどっちが上なんだ……!」
緋色の髪を二つに纏め、誰もが羨むようなスタイルを持った少女、ダイワスカーレット。
片目を隠すように伸びた髪と、ボーイッシュな雰囲気が特徴的な少女、ウオッカ。
この二人がトレーナー達の視線を一心に集めている。かくいう俺もダイワスカーレットから目を離せないでいた。
(すげぇ綺麗な子だな……さて、もうレースが始まるみたいだ。一体どんな走りを見せてくれんだ……?)
ガコン!!
ゲートが開きレースが始まる。ダイワスカーレットはスタートから先頭に立ち、終始レースの主導権を握っている。だが、最後の直線で勝負が大きく動いた。
「ハァッ!!!」
最終コーナーを曲がってウオッカが勝負を仕掛けてくる。一気に上がってくるウオッカの末脚は驚異的で、残り200mの時点で前を行くダイワスカーレットに並びかける。
「くっ……!?一番はっ!……っ、アタシのものなんだからぁぁーっ!!」
「うおらあぁああああっ!!」
粘るダイワスカーレット、追うウオッカ、ゴール板が迫っていき──決着がついた。
「はあっ……はあっ……」
「はー……へへっ。今日は俺の勝ちだな。スカーレット!」
勝ったのはウオッカ。本当にギリギリの僅差だったが、ウオッカが差し切ったのだった。
「…………っ!」
「あっ、おい!?」
ダイワスカーレットは下を向いたままその場を走り去ってしまった。よほど悔しかったのだろうか、目には涙が溜まっているようにも見えた。
その後、トレーナー達が走り終わったウマ娘達をスカウトする中、俺は声をかけたい相手がいなくなってしまったので、そそくさとその場を後にした。
こうして選抜レースは幕を閉じた。
その日の夜。俺は学園近くを一人散策していた。
(にしても、すげぇ一日だったな…………はあー……とりあえず理事長とたづなさんに恩を返すためにも、トレーナー頑張んなきゃなー……)
ぼんやりとそんなことを考えながら歩いていると、道の横に大きな階段が続いているのを見つける。
(神社か!……そーいや、前の世界では教会で神さまと会話できてたし、もしかすると神社でも同じようなことができるかも……!)
勇者として戦っていた時、教会にて祈りを捧げることで神さまとテレパシーを交わすことができた。その要領で神社でも同じことができるかもと思い、階段を登っていく。
(神さまと話すことができれば、何故自分がこの世界にきたのか、この世界で何をすればいいのか教えてくれるはず…………!!頼むぜ……神さま!)
長い階段を登り終え、神社へとたどり着く。すると奥の方からなにか声が聞こえてくる。どうやら先客がいるようだ。
「はあっ、はあっ、はあっ……!ダメ、こんなのじゃ……!もっと、もっとスタミナを……!もう二度と、あんな思いは……!」
「おめぇは……」
「ひゃっ!?だ、誰!?」
そこにいたのは、全身から汗を流し息も絶え絶えな、ダイワスカーレットだった。
「って、……トレーナー、さん?確か、選抜レースにも来てた……。申し訳ありません。自主トレーニング中なので、お引取り頂けますか?」
「と言われてもな……俺も用があってここに来たわけだし……。ってかおまえさん、時間は大丈夫なのか?もう門限は過ぎてるはずたぞ?」
ここを立ち去るよう促してくるダイワスカーレットに対し、こっちも門限のことを指摘する。
痛いところをつかれたのか、ダイワスカーレットはバツが悪そうな顔をして押し黙ってしまう。──が
「……っ!か、関係ありません……!アタシは……!一刻でも早く、今の自分を叩き直さなきゃいけないんです!!」
「それって……今日のレースで負けたからか……?だとしても2着だし、そこまで焦る必要ねーんじゃねぇか?」
「2着じゃダメなのよっ!!アタシは1番じゃなきゃいけないの!!」
何か俺の言葉が気に障ったのだろうか。ダイワスカーレットは大きく声を荒げる。
「あっ……す、すみません。」
「……お前さん、それ本気で言ってんのか?2着じゃダメだって……」
「っ!……失礼します。」
「あっ、おい!……行っちまった……」
急に会話を切り上げ、神社を後にするダイワスカーレット。一人残された俺に冷たい夜風が吹いてくる。
(1番じゃなきゃいけない……か。ダイワスカーレット、思った以上におもしろそーなやつだな。……って、もしかして2度も避けられてる俺って、もうスカウト絶望的!?ああぁっああーーー!?やっちまったぁぁああああ!!もっとイケメンな感じで答えりゃよかったああああぁぁぁ!!)
そんなこんなで、大神勇斗とダイワスカーレットの初の邂逅は、なんとも微妙な感じで終わったのだった。
「つーか!神さまも答えてくれないんですけどぉ!?」