ダイワスカーレットと異世界勇者トレーナー   作:グリングリン

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 サリオス前が壁ェ!!






ダイワスカーレットと修行の成果

 

 夏合宿から早くも一ヶ月が経ち、八月に入ったある日のこと。

 

 俺とスカーレットは体を休めるために、いつも修行をしている山の中ではなく海にやってきていた。

 

「白い砂浜に輝く太陽、それに透き通る海! くぅー! 最高だな、これぞ夏って感じだっ!」

 

「子供みたいにはしゃいじゃって……、アンタ本当に元気よね」

 

 テンション爆上がりの俺とは正反対に、顔に当たる日差しを手で避けながらどこか憂鬱そうなスカーレット。

 

「せっかくの休みなんだからな、そりゃ元気にもなるって。スカーレットもそんな顔してないでよ、もっと楽しそうな顔しろよ? な?」

 

「アタシだってそうしたいわよ。でも、今は修行中でアタシはアンタに一度も攻撃を当てられていないのよ? 1番を目指してるアタシがそんな様じゃ、能天気に遊んでる余裕なんてないわよ。あれだけアタシのこと戦わせたくないって言ってたんだから、少しは手加減してくれたっていいじゃない」

 

 スカーレットがご機嫌斜めだったのはこれのせいか。この一月の間、俺との手合わせでスカーレットの剣は空気を斬るだけに留まっていた。

 

 決してスカーレットが強くなっていない、というわけではない。現に彼女の力は既に修行が始まる前から何倍にもなっている。魔気力の使い方も上達の速度が尋常ではないほどだ。

 

 ではなぜスカーレットの攻撃が俺に当たっていないのかと言うと、

 

 俺も同時に成長してしまったからである。

 

 スカーレットが思いの外強すぎたせいで、こっちも死ぬ気で戦う事になり、その結果俺も一緒に強化されていく謎のサイクルが完成した。

 

 2人共強くなっていくので、その間の溝が埋まるのはなかなかに時間がかかっているという事。こんな状況では彼女が休日を楽しめないのも無理はない。

 

 しかし、スカーレットの言い分も分かるが勘弁してほしい。お前の剣が当たったら、まあもう無事では済まないのです。血がドバドバ出るのですよ。

 

 この事を言ったら情けなすぎるので言わないが。とりあえず、スカーレットを励まして今はリフレッシュしなくては。

 

「そんな焦んなくても大丈夫だって! お前は確実に強くなってんだ、自信持て! それに、んなストレス溜まってんなら尚更遊んで解消しちまった方が、修行捗ると思うぞ?」

 

「…………まあ、それもそうね。よし! じゃあ今日はパァーっと遊ぶわよ! トレーナー、アンタもちゃんとついてきなさいよねっ!」

 

 いつもの調子を取り戻したのか、両手をグッと握って気合いを入れるスカーレット。今日は水着姿でいるため、その動きはいい具合に胸元が強調されて目が吸い寄せられる。

 

 フリルが付いた赤い水着に、普段のツインテールをほどき髪を下ろした姿のスカーレット。

 

 15才とは思えない抜群のプロポーションに、砂浜と海が映えること映えること。通り過ぎる人達が一様にスカーレットの方を振り向いてしまっている。

 

 かくいう俺も目を離せないでいる。こいつ本当に学生なんか? 体だけならそこらのグラビアアイドルと遜色ないぞ。

 

 これでまだ成長途中らしいからな、ヤバいぜウマ娘。そりゃみんな好きになるわ。

 

「……ちょっと見過ぎ。そこまで見られると流石に恥ずかしいわよ、この変態」

 

「仕方ねーだろ、今日のお前すげー可愛いんだもん。水着も似合ってるし、髪下ろしてんのも超良いし。もはや無敵かよテメー、最強じゃねえか」

 

「ふっ、ふーん。そっ、そういう事なら許さない事もないけど? アンタがどうしてもって言うなら、もうちょっとぐらいなら見てもいいわよ? それに……トレーナーもその……、結構……」

 

「んへ?」

 

 褒められて分かりやすく照れていると思ったら、今度は体をモジモジさせながらこちらをチラチラ見てくるスカーレット。

 

 具体的には俺の上半身あたりを、頬を染めながら見ているっぽい。

 

「すごくいい体してて見惚れちゃうじゃない…………」

 

「なんて?」

 

 小声で何か呟いたようだが、ギリギリ聞き取れなかった。一体何を言いたかったのか分からない。

 

 だが、スカーレットの表情と態度、視線が俺の体に向いている事から推察できる答えは一つだけある。

 

「はっはーん! 分かったぞ? お前さん、俺の体が意外とムキムキだから見惚れてただろ?」

 

「そっ、そそそそそそそんなわけないでしょ!? アッ、アンタの引き締まった体なんか見て、うっとりなんてするわけないじゃない!? 全然カッコいいとか思ってないし? 勘違いしないでよねっ!? この変態トレーナーッ!!」

 

 凄い早口で捲し立ててそっぽを向くスカーレットだったが、やはり俺の体が気になるのか、横目でちょこちょこ見ているのが隠しきれていない。

 

(前々から思ってたけど、スカーレットって男に対する免疫弱くない? チョロいってもんじゃねえぞ。可愛いポイントではあるんだけど、流石に心配になるというか。悪い男に引っかかりそ────いや、この世界で悪い男見た事ねえや、逆に俺がその筆頭だわ)

 

「ほっ、ほら! とりあえず、こんなところでウダウダやってないで遊びに行くわよ! 久しぶりの海なんだから、楽しまなくっちゃ!」

 

 何はともあれ、スカーレットが乗り気になってくれてよかった。この休みで彼女の日々の鬱憤を晴らすために、俺も楽しみ頑張りますか!

 

 

 

 

 

 ────────────────────────

 

 

 

 

 

 何をするにもまずは腹ごしらえ、という事で。俺とスカーレットは近くにあった海の家に足を運んでいた。

 

 店に入るとかなりの盛況のようで、慌ただしく動く店員と食事を摂る客達の活気で満ち溢れている。

 

 働いている人の多くがウマ娘で、皆アルバイトでもしているのだろうか。店内が華やかでとてもいい感じだ。

 

 それにみんな水着姿だし。スタイルが良い子ばかりで嬉しい限りだぜ。眼福、眼福。

 

「……馬鹿」

 

「いたいんっ!」

 

 スカーレットにお灸を据えられていると、奥の席から見知った奴らの声が聞こえてきた。

 

「はむ、んむ、んむ、んむ……。うん、こっちもおいしいな」

 

「ホンマにぎょーさん食うなぁ、アンタは。腹壊しても知らへんで?」

 

「ふふふっ、そこがオグリちゃんの良いところですからね〜。食べてる時の顔、とっても素敵ですよ」

 

「あの……ミータリさん、本当にいいんですか? ウチのオグリがそれはもう沢山食べてますけど……。お金大丈夫ですか? やっぱり私も払った方がいいんじゃ……」

 

「なに、心配するな。俺は普段金は使わんからな、むしろありがたいくらいだ。それに……、惚れた女の前でくらい格好つけさせてくれ」

 

「〜〜〜っ!!!」

 

「はっー! ようそんな歯が浮くようなセリフ、サラッと言えるなぁ〜」

 

「でもトレーナーさん、嬉しそうですよ〜」

 

「…………何やってんの? おめぇ?」

 

 チームレグルス一同と、何故か一緒にいる八雲風太が並んで座って飯を食っていた。

 

 しかも、ちゃっかり櫻井さんのこと口説いてるし。彼女も彼女で、なんか満更でもなさそうだし。いつの間に仲良くなってんだおい、俺知らないんだけど。

 

「なんだ、貴様か。用がないなら帰れ。今俺は忙しいんだ」

 

「いや、飯食いに来てんだよこっちも。おめぇこそ、乳繰りあってねぇで見回りとかちゃんとやれや」

 

「ふっ、2人共! 喧嘩はダメですよっ!?」

 

 性懲りも無く風太と言い争いをしている隙に、スカーレットはしれっとオグリ達の隣に座りメニューを選んでいる。

 

 悪態を吐きながら俺も空いている場所に腰を据える。ちょうどクリークの真前の席だ。座ろうとすると、クリークがどこか惚けた顔をしているのに気づく。

 

「どうしたクリーク? ボケっとして、大丈夫か?」

 

「……あっ!? おっ、大神さん!? ごめんなさい、急にボッーとしてしまって……。もう大丈夫ですから、気にしないでください。…………一体どうしちゃったんでしょうか、私……?」

 

「いつの間にかチームが色ボケの巣窟になっとって、ウチは悲しいで」

 

「恋を知らないタマに言われても、虚しいだけだと思うのだが」

 

「アンタもそうやろがっ! オグリィ!!」

 

 結局クリークの様子がおかしかった理由は分からなかった。今もやけに頬が紅潮しているが、体調が悪いんじゃないだろうな。

 

 まさか、スカーレットと同じく俺の体を見てそうなったとか? いや、そんなわけないか、スカーレットじゃあるまいし。

 

 というか、先ほどからそのスカーレットからめっちゃ見られてるんだけど。何、何なの、怖い。何を訴え掛けてんの、その目は。

 

 とりあえず今のは見なかった事にして、俺もメニューを開いて何食べるか決めてしまわないと。

 

「がうがうがっ!」

 

「……んっ!? おめぇ、がうがうじゃねえか!!」

 

 何処から現れたのか、白い毛玉の魔物、がうがうが俺の隣でメニューを見ている。しかも器用に短い手を使って、メニュー表の一点を指差しているし。

 

「もしかして……これ食いたいのか? スーパーウルトラデラックスかき氷パフェ……」

 

「がうっ!」

 

 元気よく返事をするがうがう。俺の予想通り、どうやら本当にこれを食いたいようだ。いやこれ、結構値段すんぞ。

 

 まあそんな事モンスターのこいつが分かるはずもなく、期待に満ちた目で俺の顔を覗き込んでくる。くそ、カワイイじゃないの。

 

「はあ……ちゃんと全部食えよ」

 

「がっがーう!」

 

 結局がうがうの可愛さに負けて、俺の注文に加えてパフェも買う事になってしまった。かなりの金額になってしまったが、風太が奢ってくれるらしいので問題ないだろう。

 

 数分後、俺とスカーレット、追加注文したオグリの品々が届けられ、ようやくゆっくりとお昼を摂ることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウワッーーーーーーー!?」

 

 食事を終えてみんなと話しながら休憩していると、外から誰かの叫び声が響き渡った。

 

「おいスカーレット、今の声って……!」

 

「ええ……ウオッカのだわ……!」

 

 急いで席を立ち、店から出る俺とスカーレット。それに続いて他の面々も走って追いかけてくる。

 

 浜辺へと向かうと、多くの人々が何から逃げるように海から離れていく光景が目に入った。その中で逃げる人とは正反対に、立ち止まる人物が2人。ウオッカとそのトレーナー、霧島和也だ。

 

「おい、お前ら! 何があった!」

 

「ウオッカ、何みっともない声上げてんのよ!」

 

「大神かっ!? 何故こんな所に! いや、そんなことより──」

 

「スカーレット見ろよあれっ!? 馬鹿でかい()()がいるんだっ!!」

 

「「え?」」

 

 やけにテンションが高いウオッカが指差す方を見ると、海の水が徐々に迫り上がってくるのが目に入る。

 

「やっと、追いつきました〜。もう2人共、急に走ったら危ないです……よ…………えっ?」

 

 遅れてやってきたクリーク達も海の異変に気づき、目を見開いて驚き戸惑っている。

 

 一体何が起きるのか。皆が固唾を飲んで見守っていると、盛り上がった水のヴェールが剥がれ落ち、中から巨大な何かが現れる。

 

「こっ、これって……!」

 

 現れたのは、三角の頭に丸い口のような突起物、ヌメヌメとした赤い体表に8本の吸盤が付いた触手を持った、20mは軽くありそうな特大の怪物。

 

 タコなのかイカなのか判別がつかない謎の生物が、こちらを見据えてウネウネと動いている。

 

「イカ……なの……?」

 

「いや、タコだろう。足が8本だし、体が赤いからな」

 

「せやかてオグリ、体はイカのフォルムまんまやで? イカちゃうか?」

 

「うーん……どっちなんでしょう? イカと言われればイカですし、タコと言われればタコですし……。迷っちゃいますね〜」

 

「先輩方、やっぱイカだと思うッス! イカの方がカッケーし、美味いですし!」

 

「みんなそんな場合じゃなくないっ!? 早く逃げないと、危ないよっ!?」

 

 ウマ娘達がこの怪物がイカかタコかの考察で盛り上がる中、混乱しつつも彼女らの安全を優先してこの場から逃げようと促す櫻井さん。

 

 俺も櫻井さんと同じく生徒達を安全な場所に促そうと動き出した瞬間、突然イカタコもどきが動きを止め、言葉を放った。

 

『アチキはタコ、タコなんでゲソ! あんなイカとかいう野蛮な奴らと同じにしないで欲しいゲソ! まったくもう!』

 

 

    (((((えっ、喋んの?)))))

 

 

 予想外の出来事に思考が一致する俺達。呆然としながらも何が起こるか分からないため、臨戦態勢に移る俺と風太、そしてスカーレット。

 

「なんつーデタラメなヤツだ。魔物なんか、こいつ?」

 

「いや、魔力を感じない。おそらく、こいつはこの世界の固有種だろう。ウマ娘という不思議な存在がいるんだ、こんな化け物がいてもおかしくない」

 

「…………」

 

「なっ、何だ? まずい事言ったか?」

 

「……風太くんって、偶に頭いいよな」

 

「偶には余計だっ!!」

 

 言われてみれば確かにそうだ。タコを自称するこの生物からは魔物の特徴である、魔力を使用した気配が感じ取れない。風太の見立て通り、ウマ娘の世界の生き物で間違いないだろう。

 

 モンスターではないとはいえ、この大きさだ。あの触手で攻撃されたらひとたまりもないだろう。敵対する意思があるならば、素早く対処しなければならない。

 

『それにしても、アチキをイカに間違えるなんて無礼な人間達でゲソ。これはお仕置きが必要でゲソな。ちょうどお腹も空いていたし、アチキのご飯にしてやるゲソ! ありがたく思うでゲソ!』

 

「わ〜お……。殺る気マンマンじゃないですか……」

 

「っ! 避けろっ!!」

 

『ブッシャッーーー!!!』

 

 風太が叫ぶと共に、タコが口っぽい所、漏斗と呼ばれる器官からタコ墨を勢いよく噴出した。

 

 風太の忠告のおかげで俺とスカーレットは空にジャンプして、ギリギリ躱す事ができた。風太も同様に宙に身を投げて事なきを得ている。

 

 しかし、それ以外のメンバーは反応する事も叶わず墨をモロに受けてしまう。

 

「うわっ!? なんやこれっ!?」

 

「真っ暗だ……急に夜になってしまったぞ……!」

 

「あわわわっ……! タマ、オグリ、クリーク! みんな無事ですかっ!?」

 

「くそっ!? ウオッカ、どこだぁ!! 何も見えんっ……!」

 

「ウワッー! 相棒! 何かヌメヌメするっー!?」

 

 どうやら体にダメージはないようだ。よく見ると、風太が咄嗟に気弾を投げて威力を相殺したらしい。墨は飛び散ったようだが。

 

 どちらにしろ、好都合だ。皆が墨で目が見えなくなっている内に、このタコ野郎をぶちのめさなければ。俺達が力を使っている場面を見られるのは、色々と面倒くさいからな。

 

「さていっちょ──うおおおおおおおおおおおっ!?」

 

「なっ!? 離せっ!!」

 

『ゲッソッソッソッ! 捕まえたでゲソよ〜!』

 

「トレーナーッ!?」

 

 油断した。空に飛んだと同時に、タコが触手を伸ばして俺と風太を掴んできた。まんまと捕まってしまったが、俺達なら簡単に抜け出せるだろう。実際、風太が既に力を込めて引きちぎろうとしている。

 

 その前に、テレパシーを送って風太にやめさせるよう伝えた。

 

(風太、待てっ! 今思いついたんだが、このタコはスカーレット1人に倒してもらう!)

 

(オレオスッ!? 何を言っている! なにやらダイワスカーレットを鍛えていたようだが、ここで彼女を戦わせるのは危険すぎるっ! 馬鹿なのかっ、貴様は!)

 

(分かってる! だが、頼むっ! 信じてくれっ!)

 

 風太の心配はごもっともだが、今のスカーレットなら十分やれる筈だ。彼女が自信を持つためにも、修行の成果を見せる時なんだ。

 

「ちっ……! 分かった、ただし危なかったらすぐ俺も出るぞ!」

 

 風太からの了承も得た。後は何とか戦えない理由をでっち上げて、スカーレットをその気にさせるだけだ。

 

「スカーレット! お前が1人で戦うんだっ!」

 

「なっ、何言ってんのよ! アンタッ!?」

 

「この触手に捕まると、力が抜けちまうみたいなんだっ! だから、俺と風太は戦えねぇ! スカーレット、お前がやるんだ……いいな……?」

 

「で、でも……アタシッ…………!」

 

『ピーピー、ピーピーうるさい男でゲソね。さっさと死ぬでゲソ!』

 

 スカーレットが逡巡していると、タコが触手による締め付けを強くしてくる。正直、痛みなど何一つ感じないが、今の俺は水着を着て上半身が裸なのだ。

 

 何が言いたいのかというと、触手の吸盤が露出した乳首に吸い付いてきて、とてつもなく感じてしまう。

 

 

 痛みではなく、快感をっ!

 

 

「うわあああああああああああああああっ♡♡♡♡♡」

 

 

「気持ち悪い声を出すなっ! この変態がぁっ!!」

 

 快楽に悶える俺、嘆く風太、墨に塗れゾンビのように蠢くウマ娘とトレーナー、ゲソゲソ言ってるタコ。この地獄絵図の中、スカーレットはわなわなと体を揺らし、静かに魔気力を上げていく。

 

『そこの宙に浮いてる女も、こいつらと同じ様に絞め殺してやるゲソ! さあ、アチキのご飯になるでゲソッ!!』

 

 言うや否や、2本の触手をしなるように伸ばしスカーレットに向けて放つ。触手がぶつかる直前まで来た瞬間、スカーレットの怒りが爆発した。

 

「……アタシのトレーナーに……! 手ェ出してんじゃないわよっ!!」

 

 スカーレットが練り上げた剣の斬撃によって、斬り落とされるタコの触手。刹那の内に二度剣を振り、見事にどちらの触手も一撃で斬ってみせた。

 

 普段の修行以上の力を見せているスカーレット。おそらく、俺がダメージを負ったと勘違いして怒り、限界を超えた能力を出しているのだろう。

 

 自分の腕をあっさりと切断され、何が起こったか分からず困惑しているタコに向かって、間髪入れず突進していくスカーレット。

 

「大人しく、やられなさいっ!!」

 

『ゲソッーーーー!?』

 

「はあぁああああああああああああっ!!」

 

 剣を大きく振り上げ上段に構えてから、また一気に振り下ろす。海をも斬り裂く必殺の一撃を防御する事もできず、タコは脳天から真っ二つに割れて水の中に沈んでいった。

 

 

 

 

「なっ……何だ、あの強さはっ……?」

 

「知らん。唯、スカーレットを怒らせちゃアカンってことしかわからん」

 

 スカーレットの活躍により、海での騒ぎは一件落着となった。

 

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 

 その後、倒したタコは勿体無いので食材として再利用し、パーティーとして振る舞う運びになった。

 

 もちろん、他の生徒達や教師陣も一緒にだ。

 

 俺は主催側としてバーベキューコンロの前で、せっせと肉やら野菜やらタコやらを焼いている。かなり忙しいが、海を見ながらのBBQも存外楽しいもんだな。

 

 スカーレットはウオッカと仲良く喧嘩しながら楽しそうに食ってるな。それを後ろから暖かく見守る和也。

 

 相も変わらず櫻井さんを口説く風太に、めっちゃ食べてるオグリとがうがうにツッコミを入れるタマモッティー。

 

 各々楽しんでいる中、クリークだけが見当たらず探していると、波打ち際に1人立っているのを見つけた。ある程度焼き終わったので、肉を持ってクリークの所へ向かう。

 

「うい、楽しんでっか? ほれ、俺が焼いた肉だ美味いぞお〜」

 

「大神さん……ありがとうございます。いただきますね……」

 

 やはり、いつもの元気がない。何があったか聞いてしまいたいが、担当でもないのにそこまで深掘りするのも違うだろう。

 

 それにクリークも子供じゃないんだ、言いたい事があればそのうち言ってくれると思う。

 

「あの……大神さん……その……。このお肉とってもおいしいですね〜!お料理も出来るなんて、すごく偉いですよ〜、ふふっ」

 

「だろ? 意外とできる男なんだぜ、俺は!」

 

 無理した笑顔、ではなさそうだ。何か言いかけていたが、今はこれでいいだろう。静かな波の音を聞きながら、思いの外大騒ぎだった休日が終わっていくのだった。

 

 

 

 

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