ユタカが勝つとやっぱり嬉しいですね! しかし、財布は寂しいんですけど!
なんでじゃあ、なんでDAIGOのワイドを信じなかったんじゃあ!
寒さ深まる一月後半。外に出るのも億劫なこの季節だが、ウマ娘達は今日も元気に走り回っている。中には半袖短パンの子もおり、見てるこっちが寒くなってくる始末だ。
備品整理のため校庭の端に置かれた倉庫で作業をする傍ら、横目で見ていた生徒達の熱に感心してしまう。俺も気や魔力を使って寒気を遮断する事もできるが、それをするくらいなら普通に体を動かして温めた方が楽である。
寒さに震える体に鞭を打ち、せっせこせっせこ物を運んで綺麗に並べていく。終わる頃にはちょうどスカーレットとのトレーニングの時間になっていた。
倉庫の鍵を閉め、彼女が待っているだろうトレーナールームへと向かう。さっさと暖かい部屋に行きたかったので少し飛ばして走り出すが、もう着くって所で一人のウマ娘に呼び止められた。
「やあ、そこの君! スカーレット君を担当している大神君だね?」
「ん? お前さんは確か?」
「ああ、すまない。私はアグネスタキオンだ。それと──」
俺を呼び止めたのは、何処か狂気を孕んだような瞳をしたウマ娘、アグネスタキオンと──
「この黄緑色に発光しているのが私のトレーナーだ」
「……ウス」
全身黄緑に淡く光るスキンヘッドの男、彼女のトレーナーの二人だった。
「……いや、ツッコミ所が多すぎねぇか?」
「さて? 私のどこにおかしな点が有ったかな? 自分では大丈夫だと思っていても、他人から見ると指摘したい部分があるのはおかしくないからね。遠慮なく意見を言ってくれたまえ」
「おめぇじゃねぇよ! 隣にいる奴の方だっ! なんで光ってんだよコイツ!? 蛍かてめーは! あとこっち見んな、こえーよ!」
一心不乱に俺を見つめる男に恐怖を感じながら、声を荒げてツッコミを入れる。そんな俺を見て合点がいった様子のタキオンは、良い笑顔で俺のツッコミに対する答えを返してきた。
「なるほど、気になっていたのはトレーナーの方か! すまない、私とした事が自意識過剰だったようだ。安心したまえ、彼は実験の副作用で一時的に発光しているだけで特段害はない。少し目に五月蝿いがね」
「……ウス」
「すげー悲しそうなトーンでウスって言ってるけど!? これ本当にいいのかっ!? つーかさっきからウスしか言ってねーけど、シャイなのこの人?」
「いいや、普段はもっとユニークな男だよ彼は。今は薬の副作用でこれしか言えなくなってはいるが」
「……ウス」
「いやてめぇのせいなんかいっ! 自分のトレーナーぞんざいに扱いすぎじゃない!?」
「ちなみに禿げているのも同じ理由からだ。明日にはいつものヘアスタイルに戻ってしまうから、今の内に存分に鑑賞した方がいい」
「……ウス」
さらっとひでぇ事実を告げてきた。スキンヘッドじゃなくて、ただハゲてただけなのかよ。髪の毛一本もねぇじゃん、辛すぎるよ。ほらもう泣きそうだもん、この子。さっきよりウスの元気ないもん。
「あと、こうやって右の尻を叩く……っと」
「ウッ……ス」
「ほら、光り方が変わるんだ。面白いだろう?」
タキオンがトレーナーの尻を叩くと、体全体を覆っていた光が頭頂部だけに凝縮していく。しかも次々と色が変わっていく仕様になっており、ゲーミングPCみたいになっていた。
「もはやびっくり人間を通り越して哀れだよもう。悲しきモンスターだよ、おめぇのトレーナー」
「まあそんな事はどうでもいいのだよ。私は君に、ムフッ、用があって、フフッ……。用が……ククッ……あって、呼び止めたんだ」
「もう笑っちまってんじゃん、ゲーミングトレーナー見て。自分でやって自分で笑うな!」
「……ウス」
「アッハッハッハッハッ!」
七色に輝く自分のトレーナーを見て、耐えきれなくなり吹き出すタキオン。彼も彼で楽しそうな担当を見て柔らかく笑っている所を見ると、なんのかんの信頼し合ったパートナーだと言うことが窺える。
ひとしきり笑い終わったタキオンは息を整えて、ようやく話の本題へと入った。
「実は先日、スカーレット君に頼まれていた物があってね。何でも、トレーニングの効率を上げるため疲労回復を促進するアイテムを作れないかと。可愛い後輩の願いだ、少々気合いを入れて作ってみたんだが……ほら、これだよ」
タキオンから手渡されたラベルの付いていないペットボトルの表面には、油性ペンで「スタミナドリンク」と手書きされていた。中身は黄色の飲料が入っており、見た目だけなら市販のエナジードリンクと何ら変わりはない。
「へぇ……スカーレットがそんな事を……。わざわざありがとな! これをアイツに渡してほしいって事か」
「ああ、そうしてもらいたいのだけど……、一つ問題があってだね……」
「問題?」
「そのドリンク、まだ誰も飲んでいないから副作用がどの程度のものか把握できてないんだ」
タキオンは肩をすくめながら鼻で笑う。いや笑い事じゃないんですけど。
「問題しかねぇじゃん。やだよ、スカーレットがこの人みたく光り出すとか。返すよコレ、いらないよ」
「落ち着きたまえ、私としても効果が不明瞭な代物をスカーレット君に渡す気などさらさらない。そんな事をしたら彼女からの尊敬が揺らいでしまうからね……。そ・こ・で・だ!」
意味ありげに言葉を溜めて、俺を指差してくるタキオン。彼女の考えが分からずにいると、横にいるゲーミングトレーナーがどこか達観した目で俺を見ていた。
彼のお陰でタキオンが俺に何をしようとしているのか、何となく察する事ができた。
「大神君、君にそのドリンクを飲んで効果のほどを実証してもらいたい!」
ですよね、そうなりますよね。一体俺が何をしたっていうんだ、ハゲたくねぇし光りたくもねぇぞ。
「というか何で俺なんだ? 自分でやりゃいいだろ。それかその人使ってよ。俺は普通にやりたくねぇぞ」
「そうしたいのは山々なんだが、私の体は色々と試しすぎて耐性ができてしまってね。薬の類いは一切効果が得られない。モルモット君も既に他の薬の副作用が出てしまっているからね、今は駄目なんだよ。……カフェに頼もうとも思ったんだが、彼女は自分のトレーナーと旅行に行ってしまったからね……。そこで! 君に白羽の矢が立ったというわけだよ!」
「えぇー……」
大袈裟な身振りで力説するタキオンに若干引き気味な俺。つーか実験しすぎて耐性できるとか、どんだけ無茶してんだよコイツ。一周回って馬鹿でしょこの人。
「なに、心配は要らないさ。副作用が分からないといっても、モルモット君のようにはならないよ。精々、元気になりすぎて一日眠らなくてもよくなるぐらいだろう」
「うーん、まあそれくらいなら……」
「……それにウマ娘と同等、いやそれ以上の身体機能を持つ君なら何一つ問題はないはずだ。正直、私としては君自身の方を隅から隅まで研究し尽くしたくてたまらないのだが……まあ、またの機会にするとしよう」
タキオンの瞳が怪しく光る。まさか俺の力が人知を超えた物だって気づいているのだろうか。そんな事はないと思いたいが、彼女の不適な笑みを見るとあり得るのかもしれない。
「さあ、ではそろそろ飲んでくれていいよ。私も早く結果が知りたいんだ! ほらっ、グイッと!」
「ウスウス!」
「ちょ待てって! 分かった! 飲むから、飲むからよ!」
二人に急かされ、渋々ボトルの中身を口に含む。味はまんまエナドリだな、可もなく不可もなくって感じだ。ホントにこれ効果あるのかな、飲んで数秒経ったが体に変化は訪れていない。
タキオンも訝しげにこっちを見てるし、失敗作だったのかな。それならそれで良いんだけれども。
「あれ? タキオンさんとトレーナーさん? それにアンタまで。一体、何をしているんです……か…………え?」
「おやおや、これは……!」
「……ウス!?」
偶々通りすがったスカーレットが俺達の元へやってくる。それと同時に、
「あり? なんかおめぇらでかくなってね?」
「ふむ、それは違うよ大神君」
冷静さを装ってはいるが、興奮を隠し切れてない様子のタキオンが俺の言葉を否定する。彼女のトレーナーも驚きすぎて動きが止まっているし、スカーレットに至っては化け物でも見たかのような顔をしている。
何が起こったのか理解ができない中、スカーレットが声を荒げて答えを叫んだ。
「アタシ達が大きくなってるんじゃなくて……! アンタが
「へ?」
スカーレットの言葉はにわかには信じられなかったが、自分の体を見回すと腕が、足が、子供の頃と遜色ないものになっているのに気づく。
思わず顔をペタペタと触ると、今の俺からは考えられない程モチモチとした感触が返ってきた。まるでガキの時のような肌の柔らかさに俺は確信してしまう。
「……マジでおれ、チビになってる……!?」
声も高い気がするし、体に力が上手く入らない。どうやら本当に俺は子供に戻ってしまったらしい。
「何がどうなってるのよアンタ!? 一体どうして、そんなに可愛らしくなっちゃってるわけ!? なんかアタシ開いちゃいけない扉、開けそうになってるんだけど! どうしてくれんのよっ!?」
「おれもわかんねぇよ! おい、タキオン! これ、ひろうかいふくのジュースじゃなかったのか!? なんでおれがガキにもどってるんだ!? あとてめぇら、せがたかいんだよ! くびがいたい!」
「……推測の域を出ないが、君の常人を超えた再生力と今回の薬が想定を凌駕する化学反応を起こし、驚異的な肉体の再生を促したと考えられる」
「……どーゆうこと?」
「まあつまり、回復しすぎて肉体が若返ったという事だ! いやぁ、ファンタジーだねぇ、SFだねぇ! どんな原理でこの現象に至ったのか、根掘り葉掘り調べたいねぇ! 一回、服を全部脱げるかい?」
説明を聞いてもよく分からなかった。どうやら思考能力までも、肉体の年齢に引っ張られているらしい。というかタキオン、さりげに服を脱がそうとするんじゃない。今の俺じゃウマ娘のパワーに抵抗できないんだぞ。
俺の体を遠慮なくまさぐるタキオン、悩ましげに何かを逡巡するスカーレット、どうしたらいいか分からずあたふたしているゲーミングハゲ。はっきり言ってこの場は地獄だった。誰か助けて。
もはや死んだ目でされるがままになっていた所に、冬場特有の強烈な突風が吹いた。
「きゃっ!?」
「あ……くろだ……」
その風は、ちょうど前にいたスカーレットのスカートを見事に捲り上げ、中の黒いレースショーツが俺の目に飛び込んでくる。
あまりの突然の事に目を逸らす事もせず、ただ純粋にこの光景を目に焼き付けていたが、すぐにスカーレットがスカートを押さえつけ見えなくなってしまう。
「ッ!! 何見てんのよっ!!」
随分大人っぽいパンツ履いてんだなぁとか呑気に考えていたら、顔を真っ赤にしたスカーレットが右足を振り上げ、そのまま──
「べがっ!?」
──凄まじい勢いで俺を蹴り上げた。
体が軽くなっていた俺は蹴りの威力に踏ん張る事が出来ず、宙に体が浮いてこの場から吹き飛ばされてしまった。
「これまた景気良く飛んでいったねぇ……」
「ウス……」
「……ハッ!? つい、いつもの癖で蹴り飛ばしちゃった……。どうしよう、アイツ死んでないわよね……!?」
(それにしても、スカーレット君も大人の階段を登っているんだねぇ。あんなに派手な下着を身に付けるなんてねぇ。まるで娘が親元を離れてしまったかのような寂しさを感じるねぇ……)
(……ウス)
─────────────────────
「…………ぁぁぁあああああああああうおぉぉぉおおおおおっ!? ぶばあっ!?」
スカーレットにぶっ飛ばされ空高く打ち上がった俺は、地面に超高速で衝突するのを回避するため全身に力を込める。地面スレスレの所で気の放出に成功し、どうにか転んで顔をぶつけた程度の衝撃に抑える事ができた。
「いちちち……! スカーレットのやつおもいっきりけりやがって、あやうくしぬとこだったな……。くそー、ここうらにわか? いちおう、がくえんないでよかったな」
どうやら校舎側から真反対の裏庭まで飛ばされたらしい。敷地外ではない事に安堵していると、近くに誰かがいる気配を感じる。大樹のウロがある辺りだな。
「……おもしろそーだし、ちょっとみにいこ!」
この時間はみんなトレーニングしているし、大樹のウロに想いを叫ぶにはうってつけの時間だ。一体どんな奴が叫んでいるのか、折角だからと野次馬根性で見に行く事にした。
バレて邪魔してしまうのは流石に申し訳がないので木の裏から様子を窺う。少しだけ木の影から顔を出し、大樹のウロで叫んでいる人物を目に捉えた。
(ん……? あれって……!?)
「わたしも友達が欲しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!! 偶には何も考えずに、一杯遊んでみたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああいっ!!」
「りっ、りじちょうじゃねぇかっ!!」
「ふぇ!?」
井戸のような切り株に頭を突っ込んで想いをぶちまけていたのは、ウマ娘達のため身を粉にして学園を運営する秋川理事長、その人だった。
思いもよらない人物だったため、衝動的に姿を晒してしまった。俺の存在を確認した理事長も驚きの表情のまま固まってしまっている。
(しまった! これじゃのぞきみしてたのがいいのがれできない! こうなったらにげのいってだ!)
理事長にバレた俺は焦りのあまり、ここから逃げる事を選択する。
「待てッ! 少年ッ! 君はここで何をしているんだ!? この学園に君のような子供は在籍していないはずだッ!」
しかし理事長に肩を掴まれ、それは叶わなかった。さらに俺が大神勇斗だと気づいてないらしく、自分の正体について疑問を投げかけてくる。詰め寄ってくる理事長に、観念して本当の事を言ってしまおうとも思ったが、ふと先程彼女が叫んでいた言葉を思い出す。
──友達が欲しい。普段は学園のためその敏腕を振るう幼い少女が見せた、年相応の願い。今の俺ならそれを叶えてやる事が出来るのでは?
そう思い始めたら何だかやってやれる気がしてきた。よーし、お兄さん頑張っちゃうぞー!
「俺は君と友達になりに来たんだ! やよいっち!」
体がようやく馴染んできたのか、口が上手く回るようになった。これは決まっただろう。
「ぎっ……疑問ッ! 全くもって意味が分からない!? そのためだけに君はこの学園に忍び込んだというのかッ!? 事実なら即刻、ここから立ち去ってもらう! それと、否定ッ! わたしは別に友達など欲しくはないッ!!」
案の定というか、逆に理事長を怒らせてしまったようだ。まあ確かに、知らない奴から急に友達になろうって言われても信じられんわな。
が、しかし。今の俺は無敵である。子供特有のノリと勢いで押し切れると判断した俺は、理事長の手を取って走り出す。
「わっ!? 急に何をするッ!?」
「いーから、いーから! 遊ぼうぜ、一緒に!」
「まっ、待って! わたしまだ遊ぶなんて一言も……っ!!」
理事長の制止も空しく、俺は彼女を連れて遊び始めるのだった。
「おい……! バレたらタダじゃ済まないぞ……! こんな所をたづなにでも見られたら……!」
「だからバレないように行くんだろ……? よし、あっち向いたな! 今だ、行くぞっ!」
それから俺と理事長は生徒や職員達に気付かれぬよう敷地内を駆け巡った。
「よっしゃ! とりあえず、軽く投げてみろよー!」
「こ、こうだろうか……?」
「えっ? 意外とはや──ぶっはぁっ!?」
時には倉庫に忍び込み手に入れたボールでキャッチボールをしたり──
「じゃあ、やよいっちが鬼な!」
「ぬぬっ、逃しはしないっ!」
「へっへーん! 俺だって足の速さには自信が……って、やよいっち足も速いのかよ──あびぼぉっ!?」
鬼ごっこだったり、かくれんぼだったりと二人で出来そうなものは片っ端から遊んでいった。
遊んでいる時の理事長はいつもの豪快な口調ではなく、何処にでもいるような生意気なガキンチョと同じ砕けたモノだった。初めて目にする見た目通りの子供っぽい言動に、無理矢理遊びに連れ出して良かったと心底思う。
「ほい、飲み物買ってきたぜ。これやよいっちの分」
「あ……ありがとう……!」
「んくんく……ふぅー。次は何すっかぁー…………ん?」
「……理事長ぉー! いらっしゃいませんかぁー!?」
人気のないベンチで休憩していると、遠くから誰かが理事長を呼ぶ声が響いた。おそらくたづなさんだろうか。もう遊び始めて結構時間経っているし、心配して探しに来たのだろう。
「たづなか……。少年、わたしはもう行かないとダメみたいだ……」
「そうみてぇだな。俺、楽しかったよ! やよいっちと遊べてさ!」
「うん……! わたしも……楽しかった……!」
短い時間だったが、理事長が少しでも楽しめていたなら良かった。俺も本当にガキに戻ったみたいで面白かったし、win-winってヤツだな。
たづなさんに俺の存在がバレたら面倒そうなので、先にこの場を去ろうとするが、理事長が名残惜しそうに俺を見ているのに気づく。そんな彼女を見て、俺は子供としてではなく、今度は大人として伝える。
「なあ、理事長? 次はみんなで今みたいに遊ぼうぜ?」
「え……?」
「お前さんは誰よりもウマ娘達のために頑張ってる。そして、その事を学園にいる奴らは全員知ってんだ。だから、偶には息抜きをしたっていいんだよ……。もっと周りの奴らを頼っていいし、甘えていいんだ」
「頼って……甘えて……。でっ、でも……! わたしは……!」
「理事長、なんだろ? なら命令しちゃえばいいんだよ。みんなお前さんが大好きだから、喜んで言う事聞くぜ? 遊ぼう、なんて言われたら授業ほっぽり出して理事長と遊びたがると思う。だからよ……今度はもっと大勢で遊び倒そうぜ! そん時はまた俺も来るからさ、きっと!」
「…………うん、わかった。必ず……みんなで遊んでみる……!」
理事長が今日1番の笑顔を見せる。彼女の小さな背中にどれだけの重荷があるのかは分からないが、これから学園のみんなで少しでも軽くしていけたら嬉しい。
もう少し彼女の傍に居てやりたいが、たづなさんが迫っているので別れの言葉もそこそこに俺は走り出す。
「じゃあな、やよいっち! 理事長頑張れよ!」
「まっ、待って! 少年! 最後に君の名前を教えてくれッ!」
「ハハッ! そいつはまた会った時なー! バイビー!」
大きく手を振って、たづなさんとは逆方向に向かっていく。こうして俺と理事長の秘密の時間は誰にも知られる事なく、密かに終わっていった。
「まったく……、本当に自由な少年だった……」
「あっ! 理事長、ようやく見つけました! そろそろ次のお仕事が……って、何か良い事でもあったんですか?」
「ふふっ、極秘ッ!! たづなには内緒だッ!!」
「やべぇ〜、完全に遊び過ぎたな!? スカーレットのとこ早く戻んねぇと、怒られちまう──ぶぶっ!?」
俺はスカーレットの元へ急ぐあまり、曲がり角から出てくる人に気付かず、衝突してしまう。小さな俺の体は尻餅をつくが、ぶつかった相手は微動だにしない。
ウマ娘だろうか? 顔を上げて謝ろうとするが──
「あらあら〜? あらあらあらあら〜!」
目の前にいたのはスーパークリークだった──。