ダイワスカーレットと異世界勇者トレーナー   作:グリングリン

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遅れてすみません。第4話です。






ダイワスカーレットとメイクデビュー

 ウオッカとの勝負から時間が経ち、スカーレットのデビュー戦があと3週間と近づいてきたある日。今日も今日とて日課である、東京23区に夕刊を届けるトレーニングをやっていた。

 

「おっけい!一旦、休憩な。だいぶ慣れてきたんじゃないの!感心、感心。」

 

「フウー……ええ、本当に。誰かさんのおかげでね。」

 

 最初は時間内に走り切るのが精一杯だったが、今では背負う甲羅も50kgに増え、時間も半分ほど短縮できるようになっていた。

 

「でもこのままで大丈夫なわけ?デビュー戦までもう時間はないのに、基礎トレばっかでレースに関するトレーニングしてないわよ?アンタのことだから、何も考えてないってことはないでしょうけど。」

 

 スカーレットの言うように、レースに対してのトレーニングは一切行っていない。それでもそこまで不満を言ってこないのは、先日の勝負に勝ったことで少しは信用してもらえているからだろうか。だとしたら、ふつーに嬉しい。

 

「まあな、そこんとこは心配しなくていい。今俺たちがやっていることは、この先やることになる、さらに厳しいトレーニングに向けて体を作り変えている段階だ。この状態でさらに負荷をかけると、体のバランスを崩しかねないからな。だから、しばらくはこのままこれ以上、他のことはあんまやる気はねぇな。だけど──」

 

「……だけど?」

 

「その体を作り変えている状態ですら、今のお前はそこらのウマ娘と次元が違うくらい、強くなっているはずだ。それこそ、G1レースで勝ち負けができるくらいはな。」

 

「!!」

 

 そう、今のスカーレットは相当強い。俺とのトレーニングで、眠っていた力と才能が呼び起こされ、徐々に力と体が合致し、馴染んできた頃合いだ。すでにスカーレットの能力は、同じ時期の同世代の娘たちと比べて、2、3倍はあるだろう。

 

「ま、そんなわけで正直、次のデビュー戦でおめーが負ける事はないだろうな。だから次のレースは、自分自身の力がどんなもんか確かめてこい!別に本気で走らなくてもいい、今の力を確認するだけで十分だ。……他の娘たちを舐めてるわけじゃねぇけど、それだけで余裕で勝てちまうだろう。それぐらい、圧倒的な差があるんだ。」

 

「わかったわよ。アンタがそう言うんじゃ、きっとそうなんでしょうね。でも悪いけど、アタシは本気で走るわよ。他の娘たちを圧倒して、アタシの力を魅せつけて、鮮烈なデビューを飾るわ。1番になるウマ娘が誰なのか、知らしめてやるんだから!」

 

「ははっ!それもそうだな!よし、そしたら時間余ってるし、ウイニングライブの練習でもしとくか!」

 

 圧倒的な力で勝利することを宣言したスカーレット。そうしたら今やるべき事は、勝った後の事。つまりウイニングライブの練習だな。レース後のライブも、ウマ娘にとって重要なもの。レースもライブも完璧にこなしてこそ、一流のウマ娘、だそう。

 

 ダンスや歌のレッスンなら、体にも余り負荷はかからないし、気分転換にもなるからちょうどよさそうだな。

 

「それはいいけどアンタ、ライブのレッスンなんてできるわけ?一応、授業と空いた時間でやってはいるから、アンタの指導なんていらないくらい完璧よ?」

 

「まあ、待ちな!この、最強超絶究極天才敏腕トレーナーの俺が!歌とダンスのなんたるかを教えてやるぜ!」

 

「いや、不安しかないわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなわけで、ダンススタジオにやってきた俺達は、さっそくレッスンを始めることにした。今回やる楽曲は『Make debut!』。デビューしたウマ娘たちに贈られる始まりの楽曲らしく、トゥインクル・シリーズを代表する一曲だ。

 

 とりあえずスカーレットが通しで踊ってくれているが、自分で完璧と言うだけあってかなり洗練されている。……どうしよ、マジで俺の出番ないかも。

 

 それでも!俺はトレーナーなのだ。どこか、どこか無いのか。小さな事でいい、俺がスカーレットに指導できるとこ。血眼になって、それを探す自分と、何やら視線を感じながらも笑顔を絶やさず踊るスカーレット。そんなこんなで、曲が終わった。

 

「夢の〜先ま〜で〜……ふふん、どう?文句のつけようがないくらい、完璧な出来でしょ?アンタもアタシのダンスに釘付けだったみたいだし、これは本番も期待できそうね!」

 

「……ええ、確かに良かった。ダンスも歌も素晴らしいものだったわ……。でもね!それだけじゃダメ!!貴女には決定的に足りないモノがあるッ!!」

 

「何その気持ち悪い口調。頭でも打ったわけ?で、アタシに足りないモノって何よ?」

 

 ヒステリックな口調で話す俺に、呆れながら続きを促してくるスカーレット。必死になって探した、スカーレットのライブパフォーマンスに欠けている部分、それは──

 

「それは、愛よ!スカーレットさん!貴女には愛が足りないわッ!!」

 

「……愛?」

 

「いいこと?まず、ウイニングライブは一体誰に向けて行うのか……。そう!レースを観て声援を送ってくれた、ファンのみんなよ!!遠い所から貴女たちを応援するために、わざわざ会場まで足を運んでくれたファンのみんなに、感謝の気持ちを伝えるためのライブなの。その人たちが楽しめるよう、貴女はありったけの愛を、心を、歌とダンスに込めなければならない。込める義務があるのよッ!!」

 

「アンタの言い分はわかったわ。要するに、ファンのことを考えて、もっと気持ちを込めろってことね。」

 

「そゆこと〜」

 

 ファンの方々はレースだけではなく、ライブも楽しみにしている。トゥインクル・シリーズにとって、ライブもなくてはならないもの。ならばこちらにも、レースと同じぐらいの熱量で挑まなくてはならない。歌や踊りが完璧だからといって、気持ちが伴ってなければ観ている側も楽しくないだろう。

 

「じゃあ次は、もっと本番を意識して、アタシの想いを目一杯込めてやるわ。他にもアドバイスある?ないなら、また通しでやっちゃうけど。」

 

「もう一個だけあるぞ。今度は動きについてだな。もっと体を大きく動かしてもいいと思うぞ。具体的には上半身だな。今のままでも良いんだけど、もうちょいこう、グワッーって感じで……」

 

「?……こういう感じ?」

 

 俺の動きをマネして、素直にスカーレットも体を動かす。上半身もさらに大きく動かすことにより、元々目を引くほど大きく育った胸が、殊更強調されて──

 

「そう!それでいいぞ、スカーレット!ああ、もっとこう、体全体を真上に揺らすような感じで……そう、それでいい!それがベストッ!!これならファンの視線を釘付けにすること間違いなしっ!特に男性ファンは喜ぶこと請け合いだな!いやぁ、ナイスおっぱ──ぶべぼっ!!」

 

「こぉんのっ!変態トレーナー!!最低!最ッ低よ!!アンタのアドバイスなんて聞くんじゃなかったわ!!」

 

 怒りに震えたスカーレットの渾身の右ストレートが、俺の顔にめり込み壁までぶっ飛ばされる。ったく、可愛いジョークだったってのに。スカーレットだって途中まで、ノリノリだったんだけどなぁ。ま、いいもん見れたし、そろそろおふざけはこの辺にしてと。

 

「いちち……悪かったって。それだけスカーレットが魅力的だったってことで、許してくださいな。」

 

「ふん、今のアンタに言われても嬉しくないわよ!」

 

「と、ともかく!次は本番を意識して練習すんだろ?ならより臨場感を出すために……よっ、と。」

 

 少し力を込めると俺は、2人に分身した。

 

「…………は?え?……ちょっ、ふぇ!?」

 

「じゃ、俺は横で踊るから、スカーレットはさっきと同じで、センターのポジションで踊ってくれ。よし、それじゃ曲かけるぞー」

 

「いや、説明しなさいよっ!?なんでアンタが2人になってるの!?いろいろ展開が早すぎて理解できないんだけどっ!」

 

「まあ人間なんだし、そういう日もあるだろ。あんま気にすんな、ハゲるぞ。」

 

「気にするわよっ!!馬鹿ッ!!」

 

 結局、理解することを諦めたスカーレットは、分身した俺と共に本番さながらの環境で、日が暮れるまでレッスンを行ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やってきたなー、京都レース場!ここから始まるんだな、俺たちのトゥインクル・シリーズが。」

 

 ここ京都レース場で今日、スカーレットのデビュー戦が始まる。小雨が降ってはいるが、バ場状態は良らしく、普段通りのパフォーマンスを発揮できるだろう。

 

「にしても、G1レースでもないのにこの人の入りよう、ほんっとすげぇな」

 

 観客席は満席とはいわずとも、かなりの人が入っていた。さすがは、アイドル的人気を誇るウマ娘といったところか。この世界でのトゥインクル・シリーズの注目度が窺える。

 

 一通り会場内を見て回った俺は、スカーレットが待機している選手控室に向かう。会場入りは一緒だったが、スカーレットが「アンタといると集中しづらい」とのことで、しぶしぶ1人で歩き回っていたのだ。

 

 まあ、初めてくるレース場に興奮して、都会に来た田舎の中学生ぐらいテンションが上がっていたから、文句は言えないけど。

 

「おーい、スカーレット。入っていいか?」

 

「ええ、いいわよ。」

 

 ドア越しにスカーレットから許可を得て、部屋に入る。そこには体操服を着て、準備万端といった様子の彼女がいた。

 

「もう、大丈夫みたいだな。落ち着いてるみたいだし。」

 

「おかげさまでね。バッチリよ!今日はもう、1番以外になる気がしないわ!」

 

「そうか。なら安心だな。……にしても。」

 

「なっ、何よ?ジロジロこっち見て。なにかおかしいところある?」

 

「いや、ブルマ初めて見たんだけどよ……。超エロ可愛いな!スカーレット、似合ってるぜ!」

 

「……アンタってセクハラ発言しかできないわけ?」

 

 上は半袖の体操服に、ウマ番が書かれたゼッケンをつけ、下はブルマというスタイル。ブルマから覗く、程よく筋肉がついた白く綺麗な足に、俺の視線が吸い寄せられる。

 

 つーかこれ、パンツだよね?エロだよもう。この世界の男はなんなの?これを見て何も思わないわけ!?こんな少女たちに着させてさぁ!最高だよ、異世界!ありがとうございますだよ!

 

「はあ……。まあいいわよ、もう時間だからそろそろ行くわね。」

 

「おう、行ってこい。……スカーレット!ぶちかましてこいっ!!」

 

 フッと笑い、手をひらひらと振って控室を後にするスカーレット。彼女を最後まで見送ってから、自分も観客席の方へと移動する。すると、そこには見知った顔があった。

 

「あれ?たづなさんじゃん。お疲れ様!たづなさんも来てたんだな。」

 

「お疲れ様です、大神さん。デビュー戦はなるべく観に来るようにしてるんです。彼女たちにとって大事な、初めてのレース。この目に焼き付けておきたくて。」

 

 ウマ娘を誰より愛し、見守ってきたたづなさん。レース場を眺める彼女の目は、とても暖かく、どこか寂しさを感じさせるものだった。

 

「そういえば、ダイワスカーレットさんはどうですか?今日のレース、なかなかに強敵が揃っていると思いますが。」

 

「そこんところは安心してくださいな!他の娘には悪いけど、うちのスカーレットがぶっちぎりで勝ちますよ!」

 

「ふふっ、それじゃあ楽しみにしてますね。」

 

 たづなさんと会話をしていると、選手達の本バ場入場が始まった。スカーレットも落ち着いた様子で入場している。彼女が負けるとは微塵も思ってはいないが、やはりどうしても緊張してしまう。

 

 実況席から各ウマ娘の紹介が入ると、いよいよゲート入りが始まる。スカーレットは3枠3番、何事もなくゲートに入り出走を待つ。全員がゲートに収まり、一瞬の間の後、レースがスタートする。

 

『各ウマ娘一斉にスタート。綺麗に揃いました。ハナを取ったのはやはり、ダイワスカーレットです。』

 

 いつも通りスカーレットは1番前を走る。スタートの練習は特にやってはいないが上手く飛び出せたのを見るに、生まれ持ったセンスがそうさせているのだろう。

 

『おっと、ダイワスカーレットかなり飛ばしています。後ろとの差は5バ身程、距離は持つのでしょうか?』

 

 実況が驚くのも無理はないが、スカーレット的には特に飛ばしている気はないはずだ。普通に走ってあのスピード。この時点で勝負が決まったといっても過言ではなかった。

 

『少しづつ差が縮まって、第4コーナーに入ります。先頭は依然、ダイワスカーレット。おおっと!?ダイワスカーレットここで仕掛けてきたか!?一気に差が広がっていく!まだスタミナは持つのか!?後ろからコンテストライバル、リボンエチュードも追い上げているが!直線、まだ伸びる!まだ伸びます!ダイワスカーレット、他を一切寄せ付けません!圧倒的な力で今、堂々と、ダイワスカーレット、ゴールイン!』

 

 2着との差は、8バ身。1番を目指す彼女のデビューに相応しい、華々しい勝利だった。観客達もあまりのレース内容にどよめき、そして、新たなスターウマ娘の誕生を確信した。

 

「すごい……。ここまで強いなんて……。一体どんなトレーニングをしたんですか?」

 

「なははっ!でしょ!すごいでしょ、うちのスカーレット!でもまさかあそこまでとは、俺も驚いてますよ。トレーニングに関しては、たづなさんにも教えられないですねー」

 

 たづなさんに言ったら絶対怒られそうだし、あのトレーニングは。「そうですか」と笑うたづなさんが、急にレース場の方を指差す。そこには真っ直ぐこちらを見つめる、スカーレットの姿が。

 

「行ってあげてください、大神さん。彼女が待っています。」

 

「ああ!ありがとな、たづなさん!」

 

 たづなさんと別れ、観客席からスカーレットのいる場所まで急いで走る。人混みをかき分け、たどり着くとそこには、無表情を装っているが明らかに喜びを隠し切れないといった様子のスカーレットが立っていた。

 

「見てた?アタシの走り、アタシが1番になるところ。」

 

「おう、もちろん。」

 

「ふふん♪ならいいわ。……始まったのね、アタシが……アタシたちが1番を目指す道のりが。」

 

「あんまのんびりしてっと置いてっちまうぜ?」

 

「こっちのセリフよ、ちゃんとついてきなさいよね?」

 

 軽口を言い合い、自然と笑みが溢れる。2人してレース場を眺めていると、心地よい風が吹いた。走ったばかりのスカーレットの体には、一段と気持ちの良いものだろう。

 

「じゃあ、アタシ行くわね。この後ライブもあるし、急がないと。」

 

「そうか、ちゃんと汗拭けよ!」

 

 スカーレットが走りだしたのを見て、俺もその場を離れようとする。が、スカーレットは立ち止まって、こちらを振り向いた。

 

「トレーナー!」

 

「ん?」

 

 スカーレットは人差し指だけを立てた手を突き出し、今日1番の笑顔で宣言する。

 

「次も、その先も、全部勝つわよ!!」

 

「ああ!!」 

 

 

 

 その後のライブもスカーレットは完璧にこなし、次の日のスポーツ新聞各社の紙面を、彼女が独占した。こうして、ダイワスカーレットは鮮烈なデビューを果たしたのだった。

 

 




この作品のダイワスカーレットは、アプリで自分で育成したものを基準にステータスが決まっています。メイクデビュー時点でスピスタ賢が200後半、パワ根が200近くといった感じ。他のモブ娘と比べるとだいたい2倍くらい差があるので、普通に圧勝します。この先もゲーム基準でステータスが上がっていくので、目標レースはほとんど余裕で勝っていきます。そこのところはご了承いただければ。

どうでもいい話ですが、投稿が遅れた理由は、ライザのアトリエをやっていたからです。太ももに釣られて買ったわけですが、面白すぎる!面白すぎるんですよ!RPGは!ドラクエやFFもやりたくなってくる始末。モンハンもアプデが来ているし、ゲームもっとやりたいんじゃあぁあああああ!
執筆もそれに負けずに頑張ります。
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