天皇賞・秋は1番好きなG1で、1番嫌いなG1でもあります。
シャフリヤールもイクイノックスもジオグリフも好きすぎて選べねー!
トレセン学園、練習コース場。今日も今日とてウマ娘とそのトレーナーたちが、様々なトレーニングを行い賑わいを見せている。
「なあ、スカーレット。お前っていつからおっぱい大きくなったんだ?」
「刑務所に行きたいならそう言いなさいよね。ちょっと待って、今警察呼ぶから」
「あれぇ!?弁明の余地すら無いんですかっ!? ちょ、ちょい待ってくれよっ!! 話を聞いてくれぇ!! 頼むからスマホから手ェ離してぇえええええっ!!」
今日も今日とて一人のトレーナーの叫びが、トラックに響くのだった。
「一度だけアンタの話を聞いてあげる。手短に分かりやすく話しなさい」
スカーレットがひどく冷め切った目で俺を見下ろしている。まるで犯罪者でも見るかのように。
どうにか警察を呼ぶのを止めてもらい、反省のために正座をさせられている。そしてここから話す言葉によって、俺の今後の人生が終わるか否かが決まる。
慌てるな。きちんと言葉を選んで喋ればスカーレットも、俺が言いたいことが理解できるはず。よし、行くぞ。
「つ、つまりですね。その、スカーレットさんの大きすぎる胸が負担になってですね、走る際のフォームが身体に合ってないのではと思った次第でありまして……」
「………………それがさっきの発言とどう繋がるのよ」
セーーーフッ!! めちゃくちゃ間があった気がするけど、一応俺が言うことがレースに関係あるって分かってくれたみたいだ。
未だにスカーレットの機嫌は治ってはないが、まあいつも通りのテンションで話しても大丈夫かな。元気を取り戻した俺は、彼女の質問に答える。
「それは、スカーレットがガキの頃から今まで同じ走り方でいたってことが重要になってくる。小さい時にお前が身につけたフォームは、成長することによって大きくなった胸の重さを考慮してねぇ。無意識の内にスカーレットは胸を庇うように走ってる。今のフォームは、色々とでかくなったお前の身体には適してない。だから知りたかったんだよ、いつ頃から胸が成長したかを」
スカーレットは昔からのフォームを変えないために、本人でも気づかない所でおっぱいを支えるように体を使って走っている。
これが最近、俺が気づいたスカーレットの弱点だ。次に走るオークスは2400m。これまでで最も長い距離だ。少しでも体に無理はさせたくない。これが俺が考えていることの全てだ。
「ふーん、なるほどね。アンタの言い分はよく分かったわ。アタシもこの胸どうにかならないかなって思ってたし」
「だろぉ!?俺は徹頭徹尾お前のためを思っての発言しかしないんだ! だから許してくれよ、スカーレット!」
「あっそ。で?本音は?」
「お前のおっぱいが気になって練習に集中できねぇ!!」
「フンッッッ!!」
「あびばぁ!?」
スカーレットの腰が入った右ストレートが、俺の顔面を貫いた。さすがは俺が鍛えたウマ娘、戦闘能力も格段にアップしてやがる……。
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「ま、まあ、実際の所今から走り方を変えるってのは現実的には厳しいだろうな」
「じゃあどうすんのよ?」
「というわけで! 豊満なおっぱいを持ちながらも、その無尽蔵なスタミナで常に結果を残してきた偉大なる先輩ウマ娘! 最強チームレグルスの一人、スーパークリークさんをお呼びしました!!」
「はーい、よろしくお願いしますね〜」
大袈裟な手振りでスーパークリークを紹介する。ニコニコしている彼女の横には、オグリキャップとタマモクロスも立っている。
「付き添いのオグリキャップだ」
「なあ、オグリ。なんでウチもここにおるんや?」
「先輩たち!?なんでここに?」
困惑するスカーレットとよく分かってない様子のタマモクロス。スカーレットに対してスーパークリークは、優しく説明を始める。
「なにやら胸の事でスカーレットちゃんが困っていると大神さんから聞いたので、この間のお礼も兼ねて私がお役に立てると思ったんです。きっとアドバイスできることがあるはずですから、先輩の私にどーんとお任せくださいね」
「私も何か手伝えるかもしれないからな。クリークと一緒に来たんだ」
「そうだったんですね、ありがとうございます! クリーク先輩、オグリ先輩!」
「なあ、やっぱウチがいる意味あるんか? 胸の話ならなおさら、ウチいらんやろ」
スカーレットが先輩たちの好意に目を輝かせている裏で、タマモクロスは未だここにいることに納得がいっていない様だ。正直俺も、彼女がいる理由は知らない。というか初めて会ったし。
「タマ」
「ん?なんやオグリ?」
「タマもそのうち胸が大きくなるかもしれないからな、聞いておいて損はないだろう。たぶん、きっと、来るはずだ、成長期が」
「嫌味かっ!! ウチにこれ以上成長期が来るわけないやろっ! 自分で言ってて悲しくなるわ、アホッ!!」
あ、これ、ただ友達をイジりたいだけだわ。ただの仲良しさんですわ。笑い合う3人組を見ていると、長年積み重ねてきた親友同士の絆がどれほど強固なものか分かる。
「そういうわけでクリークに来てもらったってこと。俺よりも、同じウマ娘で胸がでかいクリークの方が話しやすいだろうし、色々と教えてもらえることも多いだろ。女の体については分かることの方が少ないしな、俺」
「アンタ……、ただ胸が好きな変態野郎じゃなかったのね」
「ちゃんとスカーレットちゃんの事を考えてあげてるんですね。とっても偉いですよ、大神さん。いい子、いい子〜」
スカーレットの俺に対する認識にツッコミを入れたかったが、クリークが急に手を伸ばして俺の頭を撫で始めたのでその考えはぶっ飛んだ。
皆の目があって恥ずかしいはずなのに、どこか落ち着くし、安心感がある。年が近いとはいえ年下の女の子に母性を感じるというか、バブみを感じてオギャるというか、私の母になってくれるかもしれない女性というか。
「でへへ〜〜」
「……なにデレデレしてんのよ」
「デレデレしてんじゃねぇ!! バブバブしてんだっ!!」
「アンタ反省って言葉知ってる?」
さすがにスカーレットとタマモクロスの視線が痛いので、名残惜しいがクリークから離れて話を進めようと彼女に促す。
「スカーレットちゃんはいつ頃から胸が成長し始めたんですか?」
「えっと……、この学園に入った頃だから2年前?ぐらいだったはずです」
「う、ウソやろ……!? たった2年でそこまで大きくなったっていうんか……?」
「タマは6年あっても変わらなかったからな」
思ってた以上におっぱいの成長スピードが速いな。そりゃ無理した形で走ることになるわ。体の急激な発達に、アジャストしていくのが間に合わなくなっていたんだろう。
「そうでしたか〜。それだったら、スポーツブラのサイズは合っていますか? なかなか合うものも見つからないんじゃないでしょうか?」
「そうなんですよ。すぐにサイズが変わって、キツくなったりしちゃって。その度に新しいのを買ったりしてるんですけど、これといったものがまだなくて」
「なるほどな、そしたらクリークはどうしてんだ?」
クリークもスカーレットに負けず劣らずってか、それ以上に強力なおっぱいをお持ちだ。単純にその胸をどうやって対処しているのか気になる。
「私の場合は行きつけの専門店があるんです。ウマ娘専用にスポブラなどを仕立ててくれて、とってもいいお店なんです。オグリちゃんやタマちゃんもそこで作ったものを着ているんですよ」
「ほえ〜そんなとこがあったんか」
「はい。少し値段は張りますけど、その子の体に合わせたものを調整して作ってくれます。普段使いのジャージとかも取り扱っていますから、まずはここに行ってみるのが良いと思います」
スポブラの専門店か。よくよく考えてみれば、スタイルのいい子が多いウマ娘にとってそこら辺は死活問題のはず。少し調べればすぐに分かるはずだし、これは俺のミスだな。
「あそこの店なぁ……、確かにいいもん売ってるんやけど……。ウチはあんまりおすすめせえへんで……?」
「確かに、変わった店ではあるが行った方がいいのも事実だろう。それに慣れれば面白いぞ」
「アンタは慣れたんか?」
「いや、全然」
「慣れてへんのかいっ!!」
オグリとタマモッティーがなにやらその店に対して不安を口にしている。一体何のことなのか聞きたかったが、クリークがまた話し出したのでそれは叶わなかった。
「それと私はサラシを軽く巻いてるんです。ブラの前にサラシを巻いて胸を固定してます。あんまりキツく締めちゃうと良くないので、本当に軽ーくですけどね。その上でブラを着ければ揺れもほとんど無くなりますし、重さもかなり軽減されます」
「そんな手があったんですね……! ありがとうございます、クリーク先輩! 早速試してみますね!」
クリークに尊敬の眼差しを送るスカーレット。やっぱり彼女を頼ってよかった。これでこの問題も解決できそうだしな。
というか、スカーレットのそんな目初めて見たんだけど。俺にそんな目線向けたことないよね。俺ってそこまで慕われてないの?
それにいつの間にか俺抜きで会話始まって盛り上がってるし。スカーレットなんてめちゃくちゃキラキラした目で話聞いてるし。4人共楽しそうだな、ちくしょー。
「せや! せっかくやし、ウチらと併走でもせえへんか? 世代最強の力をこの脚で測ったる!」
「いいんですか!?」
「あら〜それはいいですね、タマちゃん。一緒に走りましょ、スカーレットちゃん」
「タマも偶にはいい事を言うな」
「それギャグで言っとんのか、オグリィ」
タマモッティーの提案でこれから一緒にトレーニングをしてくれるみたいだ。シニア戦線の最強角の3人とやれるなら、スカーレットにもいい刺激になるだろう。
どうでもいいけどみんながタマモクロスのこと、タマ、タマって言うからなんてゆーか。
「タマモッティーよ」
「いや、なんやねんタマモッティーって。クセありすぎやろ」
「今度からキン◯マモクロスに改名しない?」
「…………スカーレット、コイツ殴ってもええ?」
「いえ、タマモ先輩。先輩の手が汚れるのでアタシがやります」
「あらあら、今のはちょっといけないですよ〜」
「やっ、冗談だって今のは! 悪かったです! もう二度と言いませんから、ゆるし──」
「はあぁああああああっ!!」
「ばべぇ!?」
この後、俺抜きで始まったトレーニングはとても充実したものになり、スカーレットも今までで1番清々しい表情で練習を終えたのだった。
ちなみに、スカーレットに殴られた顔はクリークがこっそり治療してくれた。マジ天使。
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「ここがクリークが言ってた店か」
ウマ娘専門スポーツショップ『ファンロン』。商店街から少し離れた場所にあるこの店に、俺とスカーレットはやってきた。
「外観はふつーにオシャレな店だが……」
「何ボケッとしてんのよ。さっさと入りましょ?」
「あ、ああ。そうだな」
タマモッティーとオグリが何か不穏なことを言っていたのを思い出し、少し警戒しながら扉をくぐる。
外と同じく内装も綺麗に纏まっており、まともな印象を受ける。見れば見るほど、どこかおかしい所など見当たらない。
2人は一体何に怯えていたのか。腑に落ちず色々と考えていると、1人の店員が俺たちに気付きこちらにやってくる。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなあぁアアアアアアアアアアアアアァアアアア!? アッ、アアアアァアアアア!?」
「「!?」」
「あなっ、貴女、ダイワスカーレットちゃんよねっ!? キャアアアアァァアアアア!! 本物っ! 初めて見たわ!! なんて可愛いの、なんて美しいの、なんてカッコいいのぉお!! この前の桜花賞も見てたわよ、もう、すっっっっっごっく強かった! あんなの見たら惚れちゃうに決まってるわ!! いつかウチの店に来てくれないかなって妄想してたけど、本当に来てくれるなんて!! ファアアアアアアアアァアアッッッ!!」
「あっ、いやっ、ちょっと……」
絶対こいつだわ。この店の欠点。なんかもうすんげぇ形相でスカーレットに詰め寄っている、眼鏡を掛けたブロンド髪の女性店員。
限界オタクを超えた限界突破オタクな彼女が落ち着くまで、スカーレットはその熱量を一身に浴びた。
途中興奮しすぎて、スカーレットのツインテを握ってブンブン回していた。楽しそうだった、俺もやってみたい。
「なあ、そろそろいいか?」
「はっ! 私ったら興奮しちゃって、申し訳ございません!」
俺が声をかけると冷静さを取り戻し、これまでの様子が嘘のように変わり、丁寧に腰を折り自己紹介をしてくれた。
「ここ『ファンロン』を経営しております、すきよ、と申します。本日はどのようなご用件でしょうか? ダイワスカーレットさん、それと大神トレーナーさん」
「ん? スカーレットはともかく、俺のことも知ってたんか?」
「それはもちろん。貴方ほど規格外なトレーナーさん、トゥインクル・シリーズを見ていたら知らない人はいないと思いますよ?」
「マジ?」
「マジよ」
スカーレットが呆れた顔で肯定する。この世界のSNSは殆ど触ってこなかったため、俺なんかの知名度がそこそこあるなんて知らなかった。後で調べておくか。
「ま、いいや。今日はスカーレットのスポブラを作ってもらいたくてさ、クリークに紹介されてここに来たんだ」
「クリークちゃんが……。今度お礼を言わないといけませんね。それで、スポブラでしたよね? スカーレットちゃんの胸の大きさだとサイズが合うものがなくて大変だったでしょう? 採寸からやっていきますので、少し時間がかかりますけどよろしいですか?」
「ああ、よろしく頼みます」
「げへへ……、それじゃあスカーレットちゃんはこちらのお部屋へ。へっへっへっ……」
女の子がしちゃいけない顔をして、スカーレットに近づくすきよさん。すると、スカーレットがガシッと俺の腕を強く掴んできた。
「どっ、どうした?」
「なっ、なんか、この人から身の危険を感じるわ……。今日はやめとかない? なんなら別の店でも……」
スカーレットが珍しく怯え切っている。よく見ると耳も尻尾もピンっと逆立って、毛もブワッと広がっているし、顔も青ざめている。
「ゔぇへへ……」
確かにすきよさんからはヤベェ人の匂いがプンプンするが、クリークが紹介したんだし腕は本物なんだろう。となればスカーレットには悪いが、ここは我慢してもらう他ない。
「スカーレット……。ここで体に適したスポブラを作って貰えれば、お前の走りに負担はなくなり、今までの倍以上に走りやすくなるだろう。そうなりゃ、お前の強さはさらに絶対的なモノになるはずだ……。だからよ、スカーレット。お前は未来のための犠牲となれ!」
「アンタァッ!?」
スカーレットの腕を引き剥がし、すきよさんの方に彼女を押し出す。それを待ってましたといわんばかりに、気持ち悪いぐらい蠢くすきよさんの指に絡め取られ、スカーレットは捕まってしまう。
「ぐへへ……。さあ、スカーレットちゃん。私と一緒に『楽しい事』しましょうね〜、うぇへっへっへっ……」
「アンタ! 後で覚えてなさいよぉおおおおおおぉぉぉぉぉ…………!」
すきよさんに連れられて別の部屋に消えてゆくスカーレット。ありがとう、ダイワスカーレット。ここの支払い俺が持つんだからこれぐらいは許してくれや。
そして──
『ダイワスカーレット! ダイワスカーレットだ!! 後続の差が縮まらない! 何バ身開いているのか、これは圧倒的! これほどまでに強いのかっ! ダイワスカーレット、今悠々とゴールイン! 樫の女王も緋色の女王! ダブルティアラだ、ダイワスカーレット! 世代最強は格が違った!!』
ぶっちぎりの大差勝ちで、スカーレットはオークスを制したのだった。
「うおおおおおおおおおおおおお!! スポブラすげぇええええええええええ!!」
「…………なんか納得いかないわよっ!!」
「なあ、クリーク。いつの間にあのトレーナーと仲良くなってん?」
「大神さんのことですか?」
「せや。こないだオグリを助けてもらったって話は聞いたけど、それだけであそこまで仲良しにならへんやろ」
「それが、この間買い物中に通り過ぎたゲームセンターで……」
『なはははっ! 弱いなあ、ガキども!! そんなんじゃいつまで経ってもこの俺には勝てないぞぉ!!』
『うわーん!! にいちゃん、ひどいよぉーー!!』
『ずるいぞっ、にいちゃん! そんなレアカードばっかり使って!! 勝てるわけないだろ!!』
『はっ! 素直に負けを認めないと大人になれないぜ、君たちぃ!!』
「と、子供たち相手に大人気ないことをしていたので、メッ、ってしたんです。それから、偶に会ったりしてました」
「何やってんや、あのトレーナー……。だとしても、少し入れ込みすぎやないか? その後も何回か会っとるんやろ?」
「……あの人にはもっと幸せになってもらいたい、ならなきゃいけない気がするんです。だから……」
「…………惚れたんか?」
「ちっ、違いますっ! 違いますよっ!? からかわないでください、タマちゃん!!」
「はあ……、まさかウチらのトレーナーより先に、クリークに春が来るとはなぁ……」
「なあ、タマ」
「なんや、オグリ?」
「キン◯マモクロス」
「オグリィィィィッッッ!!!」