遊戯王GX 徒然アカデミア日記   作:mobimobi

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書いてたら長くなってしまったので二話に分けての投稿になります。
今回はデュエルがないので、興味ない方は飛ばしてくださいまし。


第三話 原作キャラと遭遇なう

あの後で何回かデュエルをしてみたところ、ライフ4000と言う環境も相俟ってバーンで大半のライフが吹っ飛ぶと言う事が続出した。

そうでない場合はロンファで呼び出され、上手く倒してもロードポイズンから繰り返し現れるギガプラと椿姫様に圧殺されるのが規定路線。……そう言えば現実で植物族って長らく不遇だったもんなぁ。まともな上級がギガプラくらいだったし。

だからこそのロードポイズンか。ほぼ戦闘破壊オンリーなこの環境ではチートすぎワロタ状態である。

 

アマリリスビートバーンもあんまり良くない。800バーンがマジで強すぎる。五回で勝負決まっちゃうとか。

 

その結論に至ると俺は協力頂いたデュエリストたちに礼を言い、後はまた少年たちにアドバイスをねだられたりして過ごした。

 

その中で、最近切り込み隊長の効果から切り込み隊長、場合によっては荒野の女戦士の特殊召喚から自爆特攻による切り込みロックを食らうんだけど、どうやって破ればいい? と言う質問をいただいたのがちょっぴり嬉しかったり。

なんかなあ、アニメ見てるとこの世界、アカデミアですら自爆特攻(笑)みたいな意識が抜けてないんだよな。そんなんで大丈夫なのか、デュエリストとしての水準?

いや、1:1交換が出来るモンスター除去が制限されていたり、物によっては結構なレアカードだったりする分だけ高ステータスモンスターを置いておけば安心、と言う風潮が蔓延していたり、ライフが少ないせいなのかも知れないが。

とりあえず少年にはコントロールを奪っての処理や、攻撃強制効果を持つカードを薦めておいた。立ちはだかる強敵とかはリクルーターに使えばちょっとした防御効果もある訳だし。守備表示にされたら困る? シールドクラッシュ使いなさい。あれは守備モンスター処理用なせいか、制限されてないようだし。

 

こういった小技を上手く使えるデュエリストが増えてくれたら、きっとこの先も楽しくなるんじゃないかなーと思う俺だったりする。

尚、切り込みロックとは“このカードが居る限り他の○○族モンスターに攻撃できない”、“他のカードが存在する限りこのモンスターに攻撃できない”などの効果を持つモンスターを並べたりする事での攻撃制限の通称である。

まあ、実際は切り込みの部分は可変するんだが、メジャーどころなので。……あえて命名するのであれば攻撃誘導ロックといったところか。何かイマイチしっくりこないけれど。

昆虫族への攻撃制限効果を持つ植物族モンスター、棘の妖精とDNA改造手術を組み合わせた棘ロック、他に炎族が居る限りこのカードに攻撃できないという効果を持った炎族モンスター、プロミネンスドラゴンを並べるプロミネンスロックなどが存在したりするがその辺りは余談と言う事で一つ。

 

……プロミネンスロックには良く焼かれたなー。セイコさん、絶対初心者じゃねえよ。この世界でもあのデッキ使うんだろうか。

 

うん、絶対に売店の店員には喧嘩売らない。

 

 

 

 

 

そんな事を考えている俺の現在地はアカデミアに向かう船の上である。しかし、なんでアカデミアは絶海の孤島にあるんだったっけ? 三幻魔の封印目的で上に立てたんだったっけか?

ともかく、とっても不便な場所にあるというのは確かだ。見るべき場所が何にもない。休みの日とか、本気で暇そうである。――原作組と関係すると、逆に暇がなくなりそうだけれど。

トラブルと冒険を量産するからなあ、十代は。そこが面白いと言えばそこまでの話だけどさぁ。それに折角この世界に来たんだったら、主役である彼らともデュエルしてみたいし。ううん、悩む。

 

と、海を眺めながら物思いに耽っていると、不意に背後から声が掛けられた。

 

「君は確か……受験番号23番、倉沢克己くんだね」

 

何か聞き覚えがある声だ。そう思って振り返ると、イエローの服を着たあの人が。デッキ破壊のブレオさんと同じ声を聞くに、間違いない。

 

「そう言う君は三沢大地くん」

 

受験番号一番の彼である。散々空気呼ばわりされてネタにされていたあの人だ。と言っても、今はライバルキャラ始めました、ってな時期だったはずだが。

 

「君もラーイエローだったのか。……いや、考えてみれば当然だな。三体の生贄を必要とする重量級のモンスターを、君は巧みに操っていた」

 

「そっちこそ、守備に重点を置いていたはずの試験官を綺麗に倒してたじゃないか」

 

確か相手は超防御デッキとか言うのを使っていたはず。正直、記憶としてはおぼろげだったが。――いや、だって所持品チェックに忙しかったんだもの。

 

「攻撃をされなかった分、落ち着いたデュエルが出来たのも勝因の一つだろうからね。そう褒められたものでもないさ」

 

そう言って謙遜してみせる三沢。――やだ、こいつイケメン。だが恐らくその癖のないイケメン具合のせいでこの先、新キャラたちに飲み込まれ――、……いやこいつも大概アレだったな。全裸ダッシュとか。

アニメ内でのあれやそれを思い出したせいか、無意識の内になんか微妙な目になっていたのかも知れない。ふと気付いたら怪訝そうな視線を向けられていた。とりあえず弁解を図っておこう。

 

「あ、すまん。ちょっと最近あった事を思い出してたんだ。――んーっと、それで、何か用でも?」

 

「あ、ああ。実は君のデュエルを見せてもらった時に気になった事が……」

 

三沢が言うに、やはりモンスターの裏側守備表示は気になったらしい。まあ、そうだよな。アニメでは殆どの場合、表側守備表示でモンスターを召喚してる訳だし。セットされてたのってデスコアラくらいじゃね?

その疑問に対して、俺は幾つかの実例を挙げて応じた。表側表示のカードに効力が限定するカードでメジャーどころと言えば、ライトニングボルテックスや地割れ、地砕きなどが存在する。

ピラミッドタートルは戦闘破壊をして欲しいモンスター。表側表示で出すとそれらの除去によって効果破壊される可能性がある。悪ければ強奪や洗脳などを食らい、上級モンスターの生贄にされて処理されるかも知れない。

裏側守備表示なら、それは防げる。無論、正体不明のモンスターと言う事で敬遠され、破壊してもらえない可能性もあるがそれらのメリットに比べればそう大した問題でもない、と――まあ、そんな感じに。

三沢は理論家肌なだけあって、その説明だけであっさりと納得してくれた。その後はリバース効果を持ったモンスターと戦闘破壊される事に意義があるモンスターを混ぜ込んで、裏側守備表示を徹底的に生かすデッキも面白そうだな、なんて話題にシフト。

サイクルリバースモンスターの存在にも会話の矛先は及び、結構楽しい会話が出来た。この世界では一般的ではない裏側守備表示に関しての話題だったのもあって、基本に近い部分があったがそれはそれでよきかな、である。

フェリーがアカデミアに付くまでに、俺と三沢はお互いに気安く呼び合える程度には親交を深めていた。

 

この世界での、初めての友達が出来ました。――なんかちょっと嬉しい。

あ、それと強奪はこっちでも禁止カードだそうです。仕方がないね。

 

 

 

 

 

そんなこんなで現在、イエロー寮なう。

 

特にすることもなく普通に歓迎会に出て、普通に部屋に居る。そしてそんな状況でする事と言ったら――。

 

「まあ、デッキ弄りなんだけど」

 

他に誰もいない部屋で一人、そう呟いた。

 

一応は新しいデッキも幾つか作り上げてある。

例えば、光属性メタのA・O・J。破滅の光、サイバー流とこの世界では光属性をメインとしたデュエリストが強かったりするので二種類組んでおいた。

 

除去カードとしてハングドマンとデビル、スートオブソード Xが存在するアルカナフォース相手なら、光属性を問答無用で破壊するコアデストロイと効果破壊への対策カード、ストレングス及びチャリオットのコントロール奪取対策をそれぞれ大量に仕込み、おまけにフィールド魔法対策すら施してメタりにメタった無情仕様。

 

だって、こんなカードがほぼメリット効果で、デメリット効果も場合によっては使い分ける形でフィールドにぽんぽん出てくるんだぜ? メタらないとやってられないだろ。

 

《アルカナフォースⅤⅢ-STRENGTH》

効果モンスター(TF3以降改定)

星5/光属性/天使族/攻1800/守1800

このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、コイントスを1回行い以下の効果を得る。

●表:相手フィールド上のモンスター1体のコントロールを得る。

●裏:このカードを除く自分フィールド上のモンスター1体を相手が選択してコントロールを得る。

 

《アルカナフォースⅩⅡ-THE HANGED MAN》

効果モンスター(TF3以降改定)

星6/光属性/天使族/攻2200/守2200

このカードの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、コイントスを1回行い以下の効果を得る。

●表:自分のエンドフェイズ時、自分フィールド上の表側表示モンスター1体を破壊し、

自分はその攻撃力分のダメージを受ける。

●裏:自分のエンドフェイズ時、相手フィールド上の表側表示モンスター1体を破壊し、

その攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

《アルカナフォースⅩⅤ-THE DEVIL》

効果モンスター(アニメオリジナル)

星7/光属性/天使族/攻2500 /守2500

このカードは特殊召喚できない。このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、コイントスを1回行い以下の効果を得る。

●表:このカードの攻撃宣言時、フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して破壊する。

この効果で破壊されたモンスターのコントローラーは500ポイントのダメージを受ける。

●裏:このカードの攻撃宣言時、フィールド上のモンスターを全て破壊する。

 

《スート・オブ・ソード Ⅹ》

通常魔法(TF2)

コイントスを1回行い以下の効果を適用する。

●表:相手フィールド上のモンスターを全て破壊する。

●裏:自分フィールド上のモンスターを全て破壊する。

 

出すだけで永続コントロール奪取確定とか、インチキすぎるぞ運命力全開STRENGTH。ソードはサンダーボルトだしなぁ。

しかも相手フィールド上にモンスターが存在しない場合は破壊不確定なので、スタダで防げない。正直に言って、面倒すぎるカードだ。

何はともあれアルカナフォースを擁する斎王相手の場合、俺が洗脳されたらやばいカードが色々と流れてしまうので万一にも負ける訳にはいかない。まあ、まだ一年は先の話だけどさ。……部下には氷関係のカードが使われてたようだし、忘れない内に水属性メタも作っておかなければなるまい。

 

さて、それはそれとして。残ったデッキはアマリリス軸ビートバーンと邪神デッキ。

前者はビートダウン全盛のこのご時世ではちょっと受けが良くないし、後者は――何と言うか、ビートダウン環境ではハードアームドラゴンをリリースして召喚したドレッドルートやアバター一枚でデュエルが終了しちゃう可能性があるんだよね。

 

ハードアームドラゴンをリリースして召喚された邪神は効果破壊への耐性を得る。そしてドレッドルート、アバターはそれぞれが戦闘に置いて無比の強さを持つモンスターだ。

 

アバターに関しては言うまでもない。フィールドに存在するモンスターの能力を必ず上回る効果を持っているのだから、効果を無効にでもしない限りは戦闘破壊は不可能。

 

そして、ドレッドルート。これもまた厄介すぎる効果を持っている。

ドレッドルートの攻撃力、防御力の半減効果は必ず一番最後に処理されるのだが、それの何が面倒かと言うと――突進やリミッター解除、オネストなどのその時点の数値に対して能力を増減させるカードが発動した場合の処理が曲者なのである。なんと半減状態からの強化・弱体化の処理が終了すると、そこから更に攻守を半減させてくるのだ。

装備魔法、永続魔法に関してはその処理が終わった時点での攻守を半減させるのに、どうしてこうなったし。

 

リミッター解除を使ったのに攻撃力が上がらなかったとか、スカイスクレイパーの効果で攻撃力を上昇させる事で倒せるはずが、攻撃力が下がって逆にぶちのめされていたとか……なんかもう、ねえ?

 

その上、基本的に彼らの除去手段は破壊効果。原作組に関しては相手モンスターをバウンスできるカードがそれこそ鬼畜モグラくらいのものなのだから、ネオスが出るまでは本当にもうどうしようもない。楽しいデュエル(笑)。

本来攻撃力8000のパワーボンドサイバーエンドドラゴンを出しても最高で相打ちまで。そんな代物をぶつけてのワンサイドゲームとか、なんか色々と……。それに俺も楽しくないし……。一応、十代ならミラーゲートや英雄変化でライフを削ることはできるけどさぁ。

 

まあ、そんな訳なので彼らは暫くお蔵入りである。

 

あ、カイザーの場合は光属性モンスターの攻撃力を500上げるフィールド魔法、シャインスパークを使っていたらパワボンエンドでドレッドルートは倒されるな。

十代の場合は……現状だと、ヒーローが19枚墓地にある状態でのシャイニングフレアウィングマンくらいか?これで攻撃力8200だ。いや、流石に無理だろうけどさ。

まあどっちにせよ、アバターが降臨したら彼らのカードでは恐らく太刀打ちできない。

 

……済まない、俺のフェイバリットたちよ。絶対に負けられないデュエルではお前たちの助けを借りるけれど、――普段使うにはお前たちは余りにも戦闘において強すぎた。

 

ぽん、と邪神デッキに掌を置くと、改めて考える。

さて、それじゃあ何を使うべきか。……出来れば被らないようなテーマデッキが良いんだがなぁ。いっそ地縛神でも使おうか。全種積んで。

 

……考えてみたらハードアーム地縛神祭りとか、この環境だとそれなんて無理ゲ?状態だった。戦闘が出来ない分だけ邪神より性質が悪いわ。原作と違って無視してダイレクトなんて真似も出来んし。

 

これも没。と、なると――…。ここはこいつらを使うべきか。ホルダーから六枚のカードを引き抜いて、見据える。

一体一体は低レベル、低ステータスのモンスターだ。こいつらを使いこなせば、多少はステータス至上主義な風潮を抑える事もできるだろう。

 

いや、実際は単にソリッドビジョンでこいつらを見てみたいだけなんだけどね!とりあえず、今日は寝よう。

部屋の電気を消すと、俺は静かにベッドへと潜り込み、目を閉じた。

 

 

 

 

 

で、そんな具合にデッキを作り上げた後はまったりと調整をしながら数日を過ごした。

授業の方は特別、言う事もなし。細かい裁定に関して補足があったりするので、結構面倒ではあったけれど。

調整の相手をしてくれたのはラーイエロー寮の方々である。そこそこ以上に成績が良かった連中なので、デッキ調整に関しては話せる事も多い。

まあ、理論家肌っぽい連中以外はフィーリングで良いんだよ! って感じだったが。で、そう言う奴に限って引きが良いのよね。

おかしいですよ大地さん!

 

「いや、俺に言われてもな」

 

で、現在。授業終了後にデュエル場へと向かっている。

同行者として三沢がいるのは、これから最終調整を兼ねてのデュエルを行うからだ。

三沢は各属性のデッキを所持しているので調整相手としては実に得難い。いや、本当にね。見た事ないモンスターも見れるし。

そんな感じでデュエル場に行ってみると、数人で集まっている人々が視界に入った。

 

――原作主人公と弟分、そして男前ヒロインとそのお付の方々である。

ついに遭遇してしまった。いや、三沢と仲が良い時点で何時までも無関係でいられるとは思ってなかったが。

まあ、出会ってしまったものは仕方がない。とりあえず、と……こいつらが一緒に居ると言う事は既に覗き事件は終結したと言う事か。

制裁タッグデュエルの話は聞いた事ないし、テストもまだだし。うむ、大体時期は把握した。

 

「おーい、三沢ー! ……と、誰だ?」

 

おっと、向こうも気付いたらしい。三沢の名を叫びつつ駆け寄ってきた十代が、きょとんとした目をこちらに向けてくれたのについつい苦笑が漏れた。

しかし、人懐っこい犬みたいな目をしてるなぁ。こりゃあ憎めんわ。後、デュエル脳だってのも雰囲気で分かる。

 

「ああ、十代。こっちのは俺の友人の倉沢克己と言う。克己、こいつが十代だ。お前にも話したことがあっただろう」

 

「どうも、倉沢だ。三沢の言う通り、話は色々と聞かせて貰ってるよ、一番くん。なんか随分ライバル視されてるようだが――こいつ、対策立てるの上手いから気を付けろよ?」

 

実際三沢、アニメだと封魔の呪印とか使ってたしね。融合封じに。嫌がらせかと。

更に言うと俺も一回メタられて憤死しました。デッキそのものをメタられたら調整にならんだろうがこの野郎!? って叫んだのは秘密。

涼しい顔で、そう言う状況での対応策は必要だろう? とか言われたがな。ごもっともだよ本当によ!

 

まあ、それ以降は自重してくれているが。苦い記憶を思い返して、眉を顰める。

が、そこは流石のデュエル大好き人間、遊城十代。全く臆する事なく、逆に目を輝かせる始末だった。

 

「むしろそっちの方が燃えてくるぜ。よろしくな、克己!」

 

「ああ、こちらこそ。…と、悪い。ちょっと用事があってな。んじゃ、三沢」

 

何と言うアグレッシブさ。思わず笑ってしまう。……っと、会話ばかりに時間を掛けていても仕方がないんだった。

今回はデッキの調整に来たのだから。忘れてしまわない内に隣の三沢に声を掛けた。

 

「そうだな。そろそろ始めると――、……ん、いや……。……なあ、克己」

 

「何だよ、なんか用事でも思い出したか?」

 

「そう言う訳じゃないんだがな。俺とはもう何度かデュエルをして、お互いに手の内も読めてきているだろう。せっかくだし、調整に付き合ってもらったらどうだ?」

 

――…のだが、三沢の奴が突然に相手の変更を提案してきた。

まさか三沢の奴、十代の情報収集のために俺をぶつけるつもりじゃあなかろうな。

何を言いだすんだとばかり、視線に力を込めて見詰めてやる。すると、――三沢はにやりと笑ってみせた。やっぱりか、こんにゃろう。

けれど、それでこっちも毒気を抜かれてしまった。

……まあ良い、貸し一って事にしといてやるよ。そんな想いを込めて、こちらも肩を竦める事で応じると、口を開く。

 

「ん、良いなそれ。なあ、良かったら相手してくれないか?」

 

と言う訳で、俺からも十代にお誘いをかけてみた。多分、釣れると思うんだが……っと。

 

「お、良いのか?丁度デュエルしたかったところなんだよな!」

 

ほら、やっぱり。まあ、チートドローな十代に勝てるとは思えんけどな。ここは一つ胸を借りる気持ちで行くとしよう。

――なら頼む。十代の背中越しに声が聞こえて来たのは、そう答えるべく、俺が口を開こうとした瞬間だった。

 

「待って。――私にやらせてくれないかしら?」

 

ヒロインさん、割り込みながらの登場である。……って、なんで割り込み?別に目を付けられるような事して、――ああ、してたね。普通にしてたわ。試験会場にいたもんね、あんたも。

 

「明日香?」

 

「明日香さん!?」

 

「あらあら、驚きですわー」

 

だがしかし、遅刻した十代と、今しがた追い付いてきたお付のジュンコ&ももえはそれを知らない。それ故のこの反応なんだろう。

――とりあえず、俺としては異存はない。ぶっちゃけ身から出た錆びだしなぁ。とは言え、邪神様目当てならば期待には応えられないのだが。

 

「いいのか? 俺、今日はあのデッキ使わないけど」

 

「構わないわ。あなたがカードパワーだけで突き進んできたのか、確かな実力があってのあの結果なのか、それも確かめたかったところだから」

 

……ふむ。邪神様が目的でないと言うのならその辺りも問題なしと。

ちらりと十代に視線をやると、ちょっぴり残念そうにしながらも“明日香がやりたいんだったらしょうがないぜ”と笑っていた。三沢の方も、まあ仕方がないな、といった様子で苦笑している。

だがしかし、明日香様親衛隊の内、ジュンコの方はそうも行かなかったらしい。

何か色々と騒いでいたが――結局、明日香の“私の手で実際に確かめてみたいのよ”と言う台詞で押し切られていた。……お疲れさん。

 

「ところで君誰よ?」

 

「丸藤翔っす。追い付いた頃には蚊帳の外になっちゃってて…」

 

「――強く生きろ」

 

まあ、知ってたけどね。無視されっぱも可哀想だしね。

 


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