遊戯王GX 徒然アカデミア日記   作:mobimobi

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明けましておめでとうございます。

気の赴くままに書いてたらTFキャラが出ていた件。TFで一番好きなキャラクターだったりします。
なぜかどこでも見ないんですよね、この子。使いやすいキャラだと思うんだけどなぁ。

今回、デュエルなしです。待たせてこれかよ! と思った方、本当に申し訳ございません。勘弁してくださいまし。


九話 カードをトレードしてみよう

「ダイダロスを切り札として運用するなら一枚じゃ足りないと思うんだよな」

「……分かってるわよ。けど、レアリティが高すぎて手が出ないの。これだって偶然買ったパックから出ただけなのよ」

「うん、それは分かる。パラレルじゃあな……。あー、ダイダロス以外に最上級は?」

「入れてないわ。……レベル8じゃいまいちコンセプトに合わないし」

「じゃあ、上級モンスター」

「幾つか入ってるけど」

「レベル5だよな?」

「当然でしょ」

「ま、そうだな。んじゃ、ロックパーツ使って一方的に殴るスタイルは合わないか……。コダロスはどうよ?」

「聞いた事ないけど。……そんなのいるの?」

「海をコストに相手のカードを二枚墓地に送れる奴。ミニダイダロス的な感じ」

「持ってないわ。トレードできる?」

「あー、まあいいか。じゃあ、ドローボーがあるならそれで。1:1で二枚までなら出せる」

「いいわ。それにしても変なカード欲しがるのね、あんた」

「いや、作ってみたいデッキがあって。決まれば強いだろ、あれ」

「決まればの話でしょ? 相手のデッキの一番上を当てるなんて条件じゃ無理がありすぎるわよ」

 

前回のデュエル終了後、顔を突き合わせての反省会に突入し、現在に至る。

大体の構築は想像できたので、とりあえず知識にあるカードを提案してみたのだが――…コダロス、珍しいのか? ノーマルレアだったりするんだろうか。

とりあえず、雑談を交えながらトレードのお話をしている。他にニードル・ギルマンやアビス・ソルジャーの事も話題に出してみたのだが、後者は結構なレアカードらしく、手に入らないとの話だった。

前者に付いては強化効果を持っていても1300でしょ、と言っていたのでちょっと勘違いしていたようだ。

俺にも覚えがある誤解なのでつい苦笑が漏れた。全体強化効果って、特別何も書いていない場合は自分自身も対象に入るのよね。ハーピィ・レディ1とかもその手合いだ。

というわけで、グリズリーマザーから手軽に出せるし、と言う点も合わせて伝えてみたら、今度使ってみると言っていた。

他に薦めたものと言えば、ウォーターハザードくらいだろうか。既に入っていたようなので意味はなかったけれど。

 

……しかし、ううん。これだけまともなデッキだったらアカデミア上位に食い込んでても良さそうなもんなのになぁ。

それだけドローパワーってのは重要なんだろうか? 際物を使ってる奴の方が強いのか? 今度リサーチしてみたいものである。

 

まあ、そんなことは今はどうでも良い。

本当に重要なのはトレードを承諾してもらったカードの方だ。ついに――ついにっ!

 

ついに ねんがんの ドローボー をてにいれられるぞ!

 

いや、一枚は持っていたんだけどね。

ドローボー。このカードはアニメに置いて大山平と言うドロー中毒者が使用していたカードである。

「カードの名前を一つ宣言して発動し、相手にカードを一枚ドローさせる。相手が宣言したカード名と同じカードをドローした時、相手のフィールドと手札に存在するカードを全てデッキに戻す」と言うとんでもないリセット効果を持っている。

はっきり言おう。ぶっ壊れカードだ。

相手のデッキトップを言い当てるなんて無理だ。そんなもの、発動したって当たる訳がないと言う人も居るだろう。確かに単体で使うならその通りだ。

だがしかし、コンボカードとして扱えばどうか。デッキトップに相手のカードをバウンスした後にぶっ放せばそれだけで的中率は100%になる。

適当に生贄を用意して風帝ライザーを召喚、相手のカードをバウンスした後にドローボー。

あるいはデッキを裏返す永続魔法、天変地異を発動してデッキトップを確認した状態でドローボー。

はたまた、伝説の柔術家を攻撃させて己に回った時にドローボーとか、鳳翼の爆風でバウンスしてドローボーでも良い。

幾らでもルートがあるのに決まればほぼ勝ち確の凶悪コンボだ。

いや、次のターンでバブルマンから強欲とか、天よりの宝札ぶっぱとかそう言う事されると困るんですがね。

まあ、それもドローしたカードを墓地に送らせる強烈なはたき落としなり、ドローフェイズ以外でのドローを禁止する神殿を守るものなりで対策しとけばどうにでもなる。

攻撃力2400のライザーが居座っているのだから、トドメまでさして時間は掛からないだろうし。

でも強欲な瓶とかのドローカードのチェーンだけは勘弁な!

 

早速、天変地異コントロール風味・爆風ライザーバウンスハンデスデッキを作ってドローボーを三枚突っ込もう!

 

――この時に俺が正気だったならどう考えても事故るだろ、と言う自己ツッコミをしていたのかも知れない。

だがしかし、夢が広がりまくってにやけ面になっていた俺を正気に戻してくれる優しい人は、残念ながらこの場にはいなかったのであった。

 

その後、戻ってきた神楽坂と明日香がデュエルし、神楽坂が僅差で敗北していた。

ざっと洗い直しただけのデッキで良くもまああそこまでやれるもんだよ、本当に。神楽坂ぱねぇな。

バトルロイヤルはなしになったものの、俺たちは次の週末に約束の物――トレードするカードを持ち寄ることにして、その場は別れることになった。

 

 

で、次の週。

俺と神楽坂が約束の場所へと足を運ぶと、そこにはジュンコとももえ、そして後一人、明日香の代わりに見慣れない女子がその場に居た。

まあ、明日香とは別に約束してなかったしな。ももえはジュンコとペア組んでるような状態なんで、一緒に来たようだが。

しかし、減る理由は思いついても増える理由はさっぱりである。なんで知らない人が来てるのか。

内心で首を捻りながらも、俺たちは彼女らに向けて歩みを進めた。

 

「早いな、おい。こっちも余裕見て出て来たつもりなんだが」

「まあね。結構楽しみにしてたから」

「カードを?」

「当然でしょ。……ももえ、何か言ってやんなさい」

「モブ顔からイケメンになって出直してきて欲しいですわー」

 

うるせえよ!? 俺だって好きで冴えない面してる訳じゃねえやい!

そんな風に心で泣いている俺を尻目に、神楽坂はお目当てが何処かにいないかと視線をあちこちに向けている。

お前……、友達が凹んでるのにフォローもなしとか。男の友情なんて儚いもんだって事をよくよく知らされたぜ畜生。

 

「て、天上院さんはいないのか……?」

「明日香さんなら遊城十代のとこよ」

 

崩れ落ちた。ざまあ。

っとと、そんな事よりも約束を果たさねば。

腰のカードケースから二枚のカードを取り出して、ジュンコに差し出す。

その二枚を受け取った後、ジュンコもまた同じ枚数のカードをぞんざいに突き出してきたので、有難く納めさせてもらった。

カードを確認。――うむ、確かに。

 

「どうも。品物確認した」

「こっちもね。……ありがと」

「どういたしましてだ。――ところで」

 

お互いに一声掛け合った後、視線をぐるりと巡らせる。

凹んでる神楽坂? スルーで。イケメンはもう少しそこで沈んでりゃあ良いんだよ。

行儀良く待っていたもう一人の女の子へと目を向けて、俺は口を開いた。

 

「……そちらの方はどなたさま?」

 

正直、気になっていました。

暗い緑色の髪にボブカット。そして、眼鏡。アニメには居なかったキャラだと思うのだが。

アニメ以外で、と言うなら多少の心当たりはある。あるのだが、――本当に合っているかどうか。

 

「ま、初対面よね。もういいわよ、用事済んだから」

 

ジュンコの言葉に応じるように、一歩踏み出してきたその子をじっと見詰める。

生真面目な表情、きびきびとした仕草、溢れ出る優等生の雰囲気。もしかしたら、この子は。

 

「――はじめまして、倉沢克己くん。私は原麗香と申します。今日はあなたにお話があって参りました」

 

その思考を裏付けるように、すっかり耳に馴染んだ音色で、覚えのある名前が紡がれた。

やはりだ。この声はもう何度も耳にしてきた。タッグフォース2から6まで、通してDPを稼ぐ際に、俺が最もお世話になってきたキャラクターに違いない。

 

――いいんちょ! いいんちょじゃないか!

 

彼女を前にして俺がまず最初にしなければならなかったのは妙な方向に振り切れてしまったテンションを元に戻す事と、口を衝いて出そうになる悪乗り全開の台詞を飲み込むことだった。

 

 

原麗香。プレイヤーからの通称は委員長。

登場はアニメではなく、タッグフォースシリーズ。

真面目な言動に眼鏡を掛けた、絵に描いたような委員長気質のキャラクターである。

使用デッキはフルバーン。魔法・罠・モンスター効果を駆使して徹底的に相手のライフを削るスタイルのデッキだ。

対策をしておかないと太刀打ちが難しい難敵なのだが、味方に付けるとその頼もしさは半端ではない。タッグデュエル時、揃ってフルバーンにしておけば手札10枚で開始したのとほぼ同様だ。相手のライフは一瞬で焼き払われる。

ライフ2000制でのフリーデュエルで稼ぎを行う場合、委員長に任せておけば良い、と言われる便利屋でもあるため、誰しもが一度はお世話になったのではなかろうか。

 

いや、まさかいらっしゃるとは思わなかった。

となるとあれか、帝&お触れホルスの石原姉妹とか、属性デッキ6人衆とかもいるんだろうか? ……今度探してみようか。

 

と、それはそれとしてだ。

流れからして俺に用があるらしいが、一体なんの用事なのだろうか。

これでも真面目にやってる優等生だし、委員長がわざわざオベリスクブルーからやってきて注意してくるような真似は多分、きっと、していないはずなのだが。

 

「……え、あ。はじめまして。えーっと、すみません。正直、全く心当たりがないんですけれども、何かやらかしてしまいましたかね?」

「いえ、そういう用事ではなくてですね。そう畏まったことでもありませんし、発端となったのも私の方ですから、楽にしていてください」

 

そうなん? と、視線でジュンコたちに確認。

頷きを貰ったので、ちょっと安心した。ふう、と溜め息を吐いて改めて向き直る。

 

「それじゃあ、まあ、お言葉に甘えて。……それで、お話と言うのは?」

「はい。――…倉沢君」

「は、はい?」

 

そうして弛緩した俺とは逆に、背筋を伸ばし、ぴしっとした姿で向かい合う委員長。

思わず釣られてしまう俺。台詞まで鸚鵡返しとか格好悪すぎて困る。そのまま、数秒の沈黙。

 

「ラーイエローではあなたが中心となって、自主的に実技を学んでいると聞きました」

「はあ、まあ一応――、……そうなんですかね?」

 

いや、ただデュエルして反省会をしてるだけでして。

学んでいるなんて言い方されると違和感が炸裂するんですが。

 

「ジュンコさんたちから話を聞いてみると、カードへの造詣もかなり深いようだ、と。座学でも優秀な成績を修めていますね」

「あー……まあ、それなりには」

 

好きでやってたゲームだしなぁ。そりゃあそこそこの知識は持っているけれども。

でもそれが一体何に繋がるのかがさっぱり分からないんですが。

今の自分の頭の上にはでっかいクエスチョンマークが出ているんでなかろうか。

その様子を見て取ったのか、不意に委員長がくすりと笑った。あら可愛い。

 

「すみません、ついつい回りくどくなってしまって。単刀直入に言いますと、ちょっとした勉強会を主催してみませんか、と言う用事なんです。最近、イエロー生の成績が上がっているのはこちらでも噂になっているのですが、知っていますか?」

「はい、その辺りはジュンコから聞いてますよ。イエローの座敷童って呼ばれてるんですってね、俺」

「ええ。そのお話を聞いて、どんな勉強法をしているんだろう、と私個人としては気になっていたんです。そこに今回ジュンコさんがちょっとした親交を持ったと聞きまして、渡りに船とばかりに付いて来させてもらったのですが……どうせなら身になる形で確かめたいな、と」

 

ふむ、見えてきたかな? 詰まるところ、気になっているのは成績が伸び始めたラーイエローと、その原因であるらしい。

真面目な優等生である委員長としては、効果的な勉強の仕方に興味津々なのだろう。それをより良い形で身に付けたい、そして他の人たちにも身に付けさせたいので、勉強会と言う形を取りたい、と。

 

「なるほど、それで勉強会ですか」

「はい。あまり大人数だと負担も相応になってしまうと思いますが、少人数でなら準備も然程必要ではありませんし……あ、もちろん倉沢君が良ければ、のお話ですよ」

 

瞳を伏せて、少し考えてみる。勉強会、自分にできるだろうか?

仲間内で学んでいるとは言っても結局のところ、俺たちがやっているのはデュエルとその感想戦に過ぎない。

座学に関しては割と投げっぱなしである事を考えると、そちらの方面で期待に添うことは難しいように思えた。

と、その辺りを素直に口にしてみると、委員長は指を一本立てて、言い聞かせるように言葉を返してくれた。

曰く、座学に関しては私は一家言あるつもりだから心配は要らないし、言い出したのは自分なのだから全て任せ切りにするつもりはない。あくまで普段通りにしてくれればいいのだ、と。

であれば、断る理由も特にはない様に思える。俺は一つ頷いて、答えを返した。

 

「分かりました、やってみます」

「――そうですか。ありがとうございます、倉沢君」

 

委員長の表情がほんのりと綻んだ。

きりっとした生真面目な雰囲気のする人だけに、柔らかい表情をされると視線が吸い寄せられそうになる。が、そこを何とか堪えて、さりげなく目を逸らす。あんまりじろじろと見たら委員長にも失礼だろうしね。礼儀、礼儀。

深呼吸を一つ、二つ。そうして気を落ち着けると、とりあえず、細かい点を詰めに掛かる事にした。

 

「いえいえ、こちらこそ。人数は何人くらいを予定してるんですかね?」

「それぞれ三、四人ではどうでしょう。これくらいでしたら、あまり広いスペースは必要にならないと思います」

「了解です。人選は適当に決めちゃって良いんですか?」

「はい、お任せします。ただ、学ぶ意欲を持っている人、でお願いしますね」

 

学ぶ意欲、ねえ。……こりゃ、内容は伏せたままでこっそりと募るしかないか。

ブルー女子と合同の勉強会やるぜ! 行きたい奴はこの指止まれ! とかやったら指をへし折られるほどの人数が殺到しそうだし。

とりあえずの候補としては三沢、神楽坂辺りだろうか。委員長と三沢が揃えばそれこそ座学では全く心配は要らないように思える。神楽坂もデュエルに関しては真摯な奴なので、まあ問題ないだろう。

 

……問題、ないよな? 幾ら神楽坂でもブルー女子が強かったからって女子の制服でコスプレとかし始めないよな?

 

一抹の不安が脳裏を過ぎる。それを払拭するべく、さっきまで神楽坂が居た方へと視線をやるとそこには誰も居なかった。

代わりに背後から、気合の入った声が聞こえる。“デュエル!”、と。……うん、大丈夫だな、あいつなら。

 

「了解しました、と。それじゃあ、相談はこの辺にして神楽坂たちのデュエルでも見ますか」

「――ジュンコさんが相手のようですね。早速新しいカードを使うようですし、そうしましょう。細かいところについては端末に連絡を入れますので」

 

 

その言葉に、俺は頷くことで応じた。

アカデミア生徒には、それぞれ一つずつPDAが配られている。生徒の名簿も入っているし、そこからメールも送れるし、電話もできる。連絡手段には事欠かない。

委員長はマメな性質なようだし、仮に俺が暢気してたとしてもケツを引っ叩いて働かせてくれるだろう。俺は安心して日々を過ごせる。

 

さて、今はライバルの新しいデッキを、そして戦術を、心行くまで鑑賞させてもらうとしよう。その後は俺もデュエルして、と。後は――…。

 

休日はまだ始まったばかり。残りの時間をどう使うかを考えながら、俺は彼らの元に足を向けるのだった。


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