大洗整備士の名に懸けて   作:天空 海翔

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罰ゲームのアンコウ踊りを懸けた戦いが始まる(急)


VS聖グロリアーナ女学院 練習試合

いよいよ始まった練習試合。

みほ達は各戦車のキャプテンに今回の作戦についての大まかな概要を再度説明し、各地予定の場所へと向かわせた。

 

愛宕「みほちゃん、絶対に勝とうね!」

 

みほ「はい、皆で勝ちましょう。」

 

愛宕「では小山先輩、先程お伝えした場所へ向かって下さい。」

 

小山「分かりました。」

 

GGG…BRRRRR!!!

 

愛宕達が乗車する38(t)はエルヴィン率いるⅢ突に続いて大雑把な一列縦隊を作りながら目的地へと向かい始めた。

 

河嶋「良いのですか、会長。愛宕を車長にしても。」

 

角谷「愛宕ちゃんの戦い方がどの様なモノなのか確かめたいから、私は別に構わないよ。」

 

角谷は相変わらずといった感じで干し芋を頬張った。

愛宕はキューポラから辺りの景色を見渡すと、何もなかった荒野から一見変わって山岳地帯へと入り、ゴツゴツとした大きな岩が多くなっており、戦車の振動も穏やかではなくなってきた。

 

愛宕「ここまで敵の捕捉は無し…一応作戦通りにはいっているみたいだね。」

 

接敵が起こらないかとヒヤヒヤしながら戦車を動かしていたが、どうやらこの山岳地帯にはまだ敵は来ていないようだった。その時、みほから通信が入った。

 

みほ「敵戦車を捕捉しました。敵は愛宕さん達が向かっている山岳地帯へと向かっている様です。このままだと接敵すると思われます。時間を稼いでおくので、皆さんは愛宕さんの指示に従って準備を整えておいて下さい。」

 

そして通信が切れると同時に遠くで砲撃音が響いた。どうやら敵は山岳地帯に入る所まで攻めてきていたようだった。

 

愛宕「こちら愛宕、今から皆さんに指示を送るのでみほさんが時間稼ぎをしている間に配置を済ませましょう!」

 

そして通信は切れた。

 

 

――一方敵戦車隊長――

 

 

?「仕掛けてきましたね。どうしますか、ダージリン様。」

 

ダージリン「そうね…この距離なら致命傷を負わせる事は出来ないから、大人しく敵の作戦に乗ってあげましょう。」

 

ダージリンは紅茶を一啜りし、伝令した。

 

ダージリン「全車、敵戦車の方へと一列横隊…」

 

ゆっくりと…かつ正確にみほ達の戦車へと向きを変えた。

 

華「すみません…当てられなくて…」

 

みほ「ううん、大丈夫。私達の本来の目的は時間稼ぎだから。」

 

みほ達の戦車も、敵戦車が此方を向いたのを確認してから動き出す。

 

ダージリン「フフフ…相手はあの西住流の妹さん。どんな作戦を練ってくるか楽しみですわ。」

 

西住流の期待を胸に高鳴らせながら目を閉じて紅茶を一啜りする。

 

ダージリン「全車、砲撃準備…」

 

?「お言葉ですがダージリン様。相手の出方を探る筈だったのでは?」

 

ダージリン「安心してペコ、勿論そのつもりよ。けど、相手はあの西住流…この砲撃の嵐をまずはどう切り抜くか見ておきたいの…」

 

カチャリッとカップをお皿にゆっくり乗せる。

 

ダージリン「全車、砲撃…開始。」

 

DDDDDAAAAAAMMM!!!!!!

 

みほの戦車に砲弾の嵐が降りかかってきたのであった。

 

みほ「麻子さん、ジグザグ走行で被害を最小限に食い止めながら合流地点へと向かって下さい!」

 

麻子「分かった…」

 

GGYuuBRRR!!! DDDOOOONNNnnn!!!!!

 

麻子の操縦により、直撃は免れた。みほ達はそのまま愛宕達率いる合流地点へと走行した。

 

みほ「愛宕さん、準備は出来ましたか!?これから敵を引き連れて合流地点へと向かいますので砲撃準備をしておいて下さい!」

 

敵戦車が迎え撃っているか後方確認しながら愛宕に指示を送る。

 

愛宕「準備は出来ているよ!いつでも打てる!」

 

愛宕の方では砲弾の着弾音が次第に近づいてくる。どうやらみほ達の戦車は砲弾の嵐に吞まれながら進行しているようだった。

山岳の道は更に険しく、道幅も狭くなっていき。次第にみほ達の戦車に砲弾が掠るようになってきた。

 

沙織「だ、大丈夫なの!?私達、ここで終わらないよね!?」

 

優花里「西住殿を信じましょう!私達で愛宕殿へと繋げるのです!」

 

華「その言い方だと…やられちゃうのでは…?」

 

麻子「道幅が狭くて砲弾が集中してきているからな。だが、メリットもある。」

 

次第に道幅は戦車2台あるかないかぐらいの幅となり、敵戦車の砲弾の数は少なくなっていった。

 

ペコ「凄い作戦ですね。道幅がわざと狭い所へ誘って、砲撃の数を少なくさせちゃうなんて。」

 

ペコはムスッとしていたが、ダージリンはその様子を可愛らしく思いながら告げた。

 

ダージリン「フフフ…曲射を狙っても前の戦車で狙えませんし、どうやら私達が思っている以上に期待はさせてくれそうですわね。」

 

みほの戦車は開けた場所に出て急停止を始め、敵戦車の方へと車体を向けた。

まるで私達を打って下さいと言わんばかりの姿勢であった。

 

ダージリン「ふふ、その様な単純な囮作戦は生憎と通じませんの。ここから撃ち抜かせて頂こうかしら。」

 

ゆっくりと砲塔をみほ達の戦車に向けていた矢先、通信が入った。

 

「ダージリン様!後方から敵三両です!」

 

ダージリンがキューポラを開け、後方を望遠鏡で見つめると、他の敵戦車が一斉に砲撃している様子が伺えた。

 

磯辺「幾ら命中率が低くても…」

 

エルヴィン「的が止まっている状態で打ちまくれば…」

 

澤「当たるんだから!!」

 

BBBAAAAAMM!!! GGBAANnn!!!

 

「ダージリン様!このままでは私達はやられてしまいます!!」

 

ダージリン「落ち着いて狙いなさい。良い?相手は戦車道を復帰されたばかりが集まった素人チーム…掠りはしますが致命傷までには至りませんわ。」

 

ダージリンの冷静な指示により、敵チームは落ち着きを取り戻して砲塔をエルヴィン達の戦車に向けてきた。

 

佐々木「敵チーム全くひるんでないよ!」

 

磯辺「まだまだぁ!根性で打てぇ!!」

 

カエサル「この戦車だと致命傷を負える筈なのに・・・」

 

エルヴィン「我々の命中精度が足りないのだ!もっと打てぇ!」

 

山郷「こっち向いているよぉ!」

 

宇津木「いやぁぁあぁ!助けてぇ!!」

 

大野「逃げようよぉ!」

 

阪口「あいー!!」

 

澤「慌てちゃ駄目!西住先輩がせっかく稼いでくれた時間を無駄にしちゃ駄目!」

 

一年チームがパニックになっている中、澤は皆を落ち着かせようと取り組んでいた。

 

丸山「…来る…」

 

「えっ??」

 

DAAGAAMM!!!! パシュッ!

 

砲撃して来ない事で狙われたのか、致命傷を負わせられて白旗が上がった。

 

澤「ううぅ…西住先輩…申し訳御座いません、やられてしまいました。」

 

みほ「ううん、大丈夫!皆、怪我はない!?」

 

みほはやられてしまった事よりも、人員が無事かどうか確認してきた為、澤は一年全員が無事かどうか確認した。

 

澤「全員無事です!西住先輩、頑張って下さい!」

 

みほは後輩に喝を貰ってから通信を切った。皆が無事で何よりだとホッとしたのも束の間、敵側のチームが依然有利なのは変わっていなかった。

 

ダージリン「これは此方が先に敵の頭を取った方が先決ですわね…ゆっくりと前進して確実に仕留めさせて頂きますわ…」

 

GGG…BRRRR…

 

敵戦車は確実に仕留められるように、ゆっくりと距離を詰め始めた。

 

Dadadada!! Kakakaka!!

 

それを嫌がったのか、またはパニックを起こしてしまったのかはいざ知らず。機銃で打ち始めたのである。

無論、機銃で戦車に致命傷を負わせる事は不可能なので、構わず進み続けた。機銃から打たれる銃弾が無慈悲にも右往左往へと飛び散った。

ダージリンは相手が万策尽きたと判断し、紅茶を一啜りしてから戦車の内部へと腰を下ろした。

 

ダージリン「大洗女子学園の西住流…少しは楽しめましたわ…」

 

ようやく肩の荷が下りたのか、表情が先程よりも柔らかくなった。

 

ペコ「しかし…それにしてはお相手の敵さんはこうも簡単に諦めますかね?戦車の数にも違和感がありますし…」

 

ダージリン「こういう敵の行動って負け犬の遠吠えとも言うじゃない?最後まで相手の好きにさせてから倒すのも一興…」

 

しかしペコの言葉にダージリンは違和感を覚えずにはいられなかった。

味方から通告を受けた時、敵車両は三両…そして目の前にいる車両を含めば四両…そういえば、試合開始前に集まった戦車の中で一際目立つ金色を纏っていた戦車が見当たらなかった。

結論に辿り着いた瞬間。ダージリンは叫んだ。

 

ダージリン「今すぐ戦車を止めて!!」

 

「打てぇ!!!」

 

BGAAAM!!! GGGSHAAANNnnn…!!!

 

戦車全体が急に揺れ、車体は大きく傾き、それと同時に持っていたティーカップを落として割ってしまったのであった。

 

ペコ「いっっ…一体何が…?」

 

ペコは頭を打ったのか、手で頭を押さえていた。

 

ダージリン「意識の外からの急襲…彼女達の機銃の狙いはこれでしたのね…」

 

隣の瓦礫が崩れ、中から出てきたのは38(t)戦車であった。

ダージリンは体勢が崩れたまま迎撃の指示を出そうとすると、車内に再度大きな揺れが生じた。

今度はⅣ号戦車が砲撃し始めたのである。

 

角谷「まさか周りの岩を使って隠すなんて、案外うまくいくもんだねぇ。」

 

小山「バレないかと心臓バクバクでしたよぉ…」

 

河嶋「どうだ!思い知ったか!!」

 

車内では陽気の歓声で溢れていたが、愛宕は喜んではいなかった。

 

愛宕「本来の予定ではここで隊長車を倒して、後はゆっくりと時間を掛けて倒していく予定だったのですが…致命傷を与えられていないようです。何とかこの岩をズラシて次の場所へ向かわないと…沙織さん聞こえる?こちら38(t)は履帯の詰まりにより現在動けません、先に目的地へと向かっておいて下さい!」

 

愛宕はキューポラから戦車を降り、原因を確認する。どうやら予定通りにいかなかったが為に次の作戦を行いたいのだが、戦車をカモフラージュする際に置いていた岩やら小石やらが砲撃の衝撃で履帯に入り込み、詰まっている様だった。みほ達のⅣ号その間も果敢に打ち続けていた。

 

沙織「どうやら由衣達動けないそうだよ!」

 

みほ「分かりました。由衣さん以外のチームは市街地へと向かって下さい!」

 

エルヴィン・磯辺「分かりました!」

 

砲撃を止め、回れ右をして逃げる。みほ達も逃げ道は用意してあったので、その道へと走行を開始した。

 

「ダージリン様、敵戦車が逃げて行きます!!」

 

ダージリン「すぐに追いかけて頂戴。私達もすぐに後を追いますわ。」

 

GGGYYyy…GGBRRRR!!!!

 

ダージリン「さぁ、残りの戦車を纏めて倒しにいきますわよ。」

 

ゆっくりとバックを行う。どうやら履帯は損傷していないようだと安心した為、車体の向きを変え、前進した。

 

ペコ「ダージリン様、良いのですか?あの38(t)を倒しておかなくても。」

 

ダージリン「ペコ、こんな言葉をご存じ?」

 

ペコは目を閉じて優雅に微笑んでいるダージリンに目を向けた。ダージリンはその様子を薄めで確認しながら告げた。

 

ダージリン「美味しいものは、最後まで取っておくものよ。」

 

ペコ「はい?」

 

ペコはダージリンの迷言に、なんとも間抜けな声を出してしまったのであった。

 

ダージリン「あの様子だと復帰は難しいでしょうし、何より私達の脅威は目の前の隊長車、無視しても影響には至りませんわ。」

 

代わりのカップティーをペコに注ぎ直して貰い、至福の一時を嗜みながら後を追った。

 

――市街地――

 

獣道だった地面が次第に人工によって整えられてきた頃、山岳地帯を抜けて大洗の市街地へと向かうみほ達であった。

 

みほ「それでは、第二の作戦を説明します。皆さん、良く聞いておいて下さい。」

 

建物が入り浸る中、狭い道をも果敢に突き進む。ここに入ったら最後、彼女たちの独壇場となるのだろう。

しかし、ダージリンは怖気づく様子を見せず、ただ淡々と告げる。

 

ダージリン「市街地に誘い込んで有利な状況へと持ち込みに行きましたか…ならば、こちらもお受け致しましょう。」

 

ダージリンは無線を使って皆に作戦を通達した。

 

BRRRRRRRR…

 

段差を超える度に僅かながら揺れる道路。

市街地である故に射線はあまり通りにくいので、後方確認は怠らないようにしながら駆け抜けていった。

 

みほ「敵戦車との距離はそう遠くはない筈なので、なるべく急いで所定の位置に着いて下さい。」

 

みほ通信を切って車内に入り込んだ。

 

沙織「由衣達大丈夫なのかなぁ、あれから連絡一つくれないんだけどぉ。通知切っている彼氏みたいだよぉ。」

 

華「彼氏、居ませんのに?」

 

優花里「愛宕殿ならきっと大丈夫であります、まだ撃破報告もされていないって事は見逃された可能性があります。」

 

麻子「見逃された理由が時間差で撃破判定となる場合ならそろそろ連絡が来るぞ…」

 

みほ「由衣さん達を信じて、とにかく私達が出来る全力を相手に与えましょう!!」

 

「おー!!!」

 

BAM!!

 

激励で皆の気持ちが整った瞬間、砲撃音が響いた。どうやら敵戦車は既に市街地に潜り込んで来ているらしい。

 

みほ「麻子さん、ジグザグ走行で敵を引き付けて下さい。」

 

麻子「分かった。」

 

「敵戦車捕捉しました!Ⅳ号です!!」

 

ダージリン「意外とあっさり見つけられるものね…では、全車前進…」

 

GGG…GYuBRRRRR…

 

Ⅳ号の後追うように一両が動き始める。

みほは敵戦車が付いて来ている事を確認しながら指示を送る。

 

みほ「敵一両、此方に来ました、今からエルヴィンさん達の元へと誘導します!麻子さん、敵が私達を見失わないように速度を緩めながら走行して下さい。」

 

市街地の道を右へ、左へと射線を切りながら進んで行く。みほはその間もチームの指示を続けていく。

 

みほ「そろそろ目的地到達します、エルヴィンさん。任せましたよ!!」

 

BRRRRRRR!!!!

 

直線に入り速度を上げる。敵も負けじと速度を上げて食らい付く。

 

DGAAAMM!!! GGGYYuuGHAAMmm…‼ パシュッ!!!

 

敵戦車は大きく揺れ、大きくコースを外れて壁へと車体を突っ込ませ、白旗を上げた。

 

「我が車両真面に砲弾を食らってしまいましたぁ!敵戦車の姿も、確認出来ておりません!!申し訳御座いません!!!」

 

被害を確認すると、致命傷ではなかったが後部辺りが酷く損傷を受けており、移動面で少しばかり影響が出るぐらいの被害を被った。まるで真横から攻撃されたかのようにその部分は酷く損傷していた。すると、戦車の履帯音が何処からか聞こえてきた。

 

brrRRRGggGYUUuuuu…!!!

 

なんと旗の所からⅢ突が出てきたのだ、旗をカモフラージュにして、みほ達の戦車だけに注意を逸らして私達を迎撃したのだとダージリンに告げた。

 

ダージリン「どうやらお相手の西住流は自身を囮にして、迎撃する時に更に敵の注意を自身に逸らす行動を取る可能性がありそうね…ふふ、ますます面白いじゃない。」

 

ダージリンはティーカップを飲む素振りをして微笑みが止まらない口を誤魔化す。

普段戦車道を行っていて、ここまで奇抜な作戦を行ってくる相手はそうは居ない。

ダージリンは全力で相手を叩きのめす事を決意した。

 

ダージリン「全車に告げます…敵のⅣ号戦車は主に囮として誘導をしております。もし過剰に誘ってくる場合がありましたら、念入りに周囲を見渡すように厳重警戒を施して下さい。

 

通信を切り、体幹を屈曲して深呼吸をする。

 

ペコ「随分とお疲れの様ですね、ダージリン様。」

 

ダージリン「あら、そう見えるかしら…?」

 

ペコ「はぁ…お言葉ですがダージリン様。私からはお疲れの様にしか見えません。」

 

ペコが逆に溜め息をついた。見た目だけでは自身のチームが倒され、精神的にも押され気味なのではと感じていたのだ。

 

ダージリン「まだまだ展開は分からない状況で疲れる訳がないじゃない。」

 

そのままダージリンを乗せたチャーチルは大洗の市街地をゆっくりと進行していった。

 

みほ「敵車両発見、引き続き誘き寄せます。磯辺さん、砲撃準備をお願い致します。」

 

一方みほ側は敵戦車を発見しては囮として市街地を周り、味方車両に迎撃させる行動を取っていた。

 

みほ「磯辺さん!後は任せましたよ!!」

 

Ⅳ号戦車は速度を上げて敵との距離を取る。敵戦車もそれに乗るように速度を上げているかのように見えた。

 

磯辺「皆、スパイクを打つ準備は出来ているか!狙いとタイミングは根性で行うぞ!!」

 

狭い車両の中で円を作るようにして作戦を伝えていた。皆の闘志は絶賛漲っていた。

 

河西「良いアタックをお見舞いしてやりましょう!!」

 

佐々木「頑張りましょう!!」

 

近藤「西住さんの為にも!!」

 

「えいえいおー!!」

 

全員で手のひらを重ね、気勢を上げる。

 

BRRRRR!!!!

 

みほ達のⅣ号戦車がかなりの速度で過ぎ去っていったのを確認し終え、皆は静かに相手が来るのを待つ。

 

磯辺「さぁ、来い!!」

 

・・・・・・

 

しかし、相手の戦車は一向に来る気配はなかった。聞こえてくるのは自身の戦車のエンジン音と自身の心臓の鼓動だけであった。

明らかにおかしいと気が付き、通信機を取ろうとした矢先。

 

BGAAMM!!! パシュッ‼

 

自身の戦車が大きく揺れ、白旗が上がる。

覗き見していた磯辺は頭を車体に思いっきり打ってしまう。

磯辺以外にも身体を車内に何処かにぶつけたのか、皆痛がっていた。

 

近藤「すみません西住さん…やられてしまいました…」

 

近藤は腕を摩りながらみほに通達する。

 

みほ「怪我はしていない!?」

 

近藤「皆ちょっと痛がっていたけど、気にする必要はないと思われますぅ!」

 

近藤との通信を切り、安堵するのと同時に焦りを生じていた。

相手の対応力の速さ、何よりその作戦の逆手を取って見事迎撃したのは予想外であった。

 

みほ「私達の作戦がどうやら相手に完全にバレてしまったようです。このままでは負けてしまわれるので、次の作戦を行う為に行動してもらいま」

 

DDDOOOMMmm…!!!

 

作戦を伝えようとすると、遠くから砲撃が響いた。それと同時に通信が入る。

 

エルヴィン「申し訳ない!移動していたところを挟み撃ちでやられてしまった!!相打ちに持ち込むことは出来た。」

 

味方が一気にやられてしまい、焦りに拍車が掛かるみほであったが、深呼吸をして冷静に告げる。

 

みほ「分かりました、お怪我はありませんか?」

 

エルヴィン「大丈夫だ、皆無事だよ。後は頼んだ。」

 

通信が切れる。残りの敵は三両、何とかこの絶望的不利を覆さねばと、みほは必死に考える。

 

麻子「このまま立ち往生していてもいずれバレるし、移動した方が良いんじゃないのか?」

 

沙織「ピンチだよぉ、三股の修羅場みたいだよぉ。」

 

華「修羅場、味わったことがあるのですかぁ?」

 

優花里「西住殿、このままでは我々も成す術なくやられてしまいますぅ。」

 

みほ「そうですね、では。此処の路地を通って市街地から一旦抜けましょう。」

 

みほは地図を取り出し、指でなぞって指示を出す。

麻子はそれに頷いて戦車を動かし始める。

 

沙織「いいの?相手が沢山いる中こんなにも大胆に動いちゃって。」

 

みほ「停止して敵の動きを確認しているよりは、素早く移動して的を絞らせない方が得策かなぁって。」

 

だが、的を絞らせないメリットがあるが、デメリットもお墨付きである。

 

「敵戦車発見しました。凄まじい速度で市街地を進行しております。

 

ペコ「良いのでしょうかね、派手に動いて私達に居場所を伝えるなんて。」

 

ダージリン「じっと待っている方が、少なくとも私としては不利だと思うのだけどね。もし接敵して敵戦車が近くに二両あったら負けが確定してしまうもの。」

 

ペコにそう告げたダージリンはゆっくりと紅茶を啜る。

 

ペコ「だから、敵に位置を晒してでも良いから的を絞らせないようにしていると…」

 

ダージリン「まぁ…それは悪くまで憶測に過ぎないのですけどね…」

 

残り二両を敵戦車へ追い掛けさせ、ダージリン達の戦車はゆっくりと進んで行く。

 

みほ「敵戦車二両が此方に向かってくるのが見えました。どうやら私達の行動は知られたようです。」

 

華「アクティブに動いていますからねぇ…」

 

沙織「本当にこのままで大丈夫なのぉ!?」

 

麻子「私は取り敢えず目的地まで向かうだけだ。」

 

優花里「しかし、この辺りは道幅狭いですし、何よりもこの辺りは。」

 

DAMM! BAGSHAANN!!

 

すぐ近くで砲撃が聞こえたかと思いきやすぐ近くの民家が砲撃され、木屑やガラス片が飛び散る。。

 

みほ「麻子さん、少々遠回りしても良いので左に曲がって下さい。」

 

麻子「了解。」

 

麻子が右に曲がって直進し、急ブレーキを掛けた。

 

沙織「ちょ、ちょっと麻子ぉ。なんで止めちゃうのよ。」

 

麻子「行き止まりだ。」

 

華「一本取られましたね。」

 

優花里「この状況は非常に不味いですよぉ!!」

 

優花里は天パでモシャモシャしていた頭を更にモシャモシャする。

 

戦車の前に置かれていたのは、道路陥没による整備工事が行われている看板が立て掛けられていた。地図にはこの情報は載っていない為、袋小路に追い詰められたのである。

 

みほ「すぐに方向転換を!地図上ではこの辺りに小さな路地が近くにある筈です!!」

 

みほはすぐに麻子に伝令し、戦車を方向転換していたが、敵戦車に追いつかれてしまった。

 

BRRRrrrGGgg…

 

ガシャンッとキューポラから出てきたのは相手の対戦校のリーダーである、ダージリンの姿が見えた。片手にお皿、片手に紅茶を持って優雅な態度を振舞っていた。

 

ダージリン「貴女が今回の作戦を考えた御方かしら…?」

 

片眼を開いて大洗のリーダーを見つめる。その姿は西住流の姉の姿と酷似していた。

 

みほ「は…ハイ…」

 

おどおどとしながら向こうの顔色でも窺うようにモジモジしながら返答して来た。

 

ダージリン「ウフフ…西住流の妹さんだとは知っていたけど。随分お姉さんとは違いますのね。性格も…作戦も…」

 

ティーカップを持った手で微笑みを隠して笑った。その間にダージリンのチームの敵三両が主砲回旋を始めた。

 

ダージリン「今回の親善試合でまさか私達の戦車が二両もやられてしまうのには予想外でしたわ。西住みほさん…でしたっけ。貴女、こんな言葉をご存じ・・・?」

 

ダージリンはニコッと此方に笑顔を向けたが、その笑顔の裏にある闘争心という名の気迫は鎮まっておらず、みほはその気迫に押され気味でいた。

 

みほ「は…ハイ…?」

 

ダージリン「All is fair in love and war…恋と戦争は…手段を選ばない!」

 

笑顔から一転して表情を大きく変えた。キリッとした眼差しを此方に向け、紅茶をお皿に戻して大きく手を振り上げる。

 

ダージリン「みほさん、今日の親善試合は存分に楽しませて貰いましたわ。この一撃で…仕舞いですわ。」

 

そして、大きく振り上げた手は重力に沿って大きく落下していった。

 

ダージリン「全車砲撃…かいs」

 

BRRRGGGGGYYYUUU!!!!

 

大きな走行音が辺りに響き渡った。

ダージリンが気になって後ろを見ると、泥に塗れながらも輝かしく太陽の反射を浴びながら突っ込んでくる戦車が飛び出してきた。

 

ダージリン「えっ!?」

 

優花里「おぉ!!愛宕殿の戦車ですぅ!!」

 

沙織「やったぁ!遂に来てくれたのね!!」

 

華「随分と速度を上げておりますが、大丈夫なのでしょうか?」

 

角谷「愛宕ちゃんなら問題ないでしょ。」

 

と、通信機越しで返答が来た。どうやら無線が近距離だと通じるらしい。

 

愛宕「距離を出来る限り詰めて!一撃で決めるよ!!」

 

38(t)戦車は砲塔を真っ直ぐに定めながら豪快に距離を詰める。

 

ダージリン「今すぐ砲塔をかいs…っ!」

 

砲塔を回転させようと指示を出そうとしたが、反射で間に合わない事を悟った。ダージリンの表情が愛宕達の戦車が近付くにつれて徐々に歪んでいく。

 

ダージリン「全車砲撃!目標はⅣ号戦車!!」

 

愛宕「みほちゃあん!動いてぇ!!」

 

みほ「麻子さん!前進して下さい!!」

 

Ⅳ号戦車が発進すると同時にダージリン達の戦車が一斉砲撃をした。

 

BBBGKHANnn…!!!

 

ダージリン「しまった…!」

 

Ⅳ号戦車が前進した事により、ダメージは与えられたものの致命傷とまではならなかった。

 

愛宕「打てぇ!!」

 

BGAAAAAANNNN!!!!!!

 

ド近距離で放たれた砲弾はチャーチルの装甲にめり込み、煙を上げていた。しかし、白旗は上がらなかった。

 

愛宕「な、この近距離でもダメか…。えぇい、ならばもう一度打つまでだ!!」

 

河嶋が次弾装填を行う。しかし、角谷が手伝ってくれないので余計に時間が掛かっている。

 

ダージリン「フフフ…おやりになるわね…」

 

相手戦車を見ると先程の衝撃で紅茶を零してしまったのか、服が染みている。

ダージリンはそのショックで怒れば良いのか、はたまた私をまだまだ楽しませてくれていることに喜べば良いのか少々混乱気味であった。

 

BAAMM!! パシュッ!!

 

すぐ後ろで砲撃が響いたところ、みほ達のⅣ号戦車が先に周りの戦車を撃破し始めた。

 

みほ「これで2対2です!愛宕さん、一旦引いて攻撃のチャンスを…」

 

愛宕「みほちゃん、今なら追い詰められるよ!隊長車を!!」

 

しかし、ダージリンはずっと隙を曝け出す訳にはいかない為、戦車を動かし始めた。

 

河嶋「愛宕、我々は此処からどうすれば良い!?」

 

愛宕「隊長車以外の戦車を撃破して!!」

 

ゆっくりと砲塔を回旋させる。

 

しかし、相手もジッとはしてはくれない、みほ達のⅣ号戦車に狙いを定める。

みほもその様子には気が付いており、何とか履帯を動かしてダメージを減らそうとするが、先程の砲撃のダメージで動きが拙く、まさしく格好の的である。

 

愛宕「相手戦車に戦車をぶつけて!!」

 

GGYUUBRRRRGKAN!! BKAAM!!! GHASHAAANN!!!

 

愛宕の戦車が敵戦車にぶつかり、その振動で軌道がズレ、致命傷は回避された。

しかし、それと同時に38(t)の様子がおかしくなる。

 

愛宕「あらら…まだ小さな石や砂が入り込んでいたか…」

 

ぎこちない動きを醸し出しながらゆっくりと戦車を動かす。

 

ダージリン「貴女達…本当に素人寄せ集めの即決チームなのかしら…?」

 

みほの作戦もそうだが、それよりも明らかに38(t)の金ぴか戦車の異常な動きが際立つ。

山岳地帯の砲撃もだが、先程の自戦車をぶつけて軌道を変えるという荒行は見た事がなかった。

 

みほ「打て!!」

 

BGAM!! パシュッ!!

 

そうこう考えている間に、戦車はダージリンのチームだけになり、しかも後ろに弾丸をめり込ませている重傷状態で挟み撃ち。絶望的な状況であった。

 

ダージリン「ここまで追い詰めた事は褒めて遣わしますが、まだ終わってはおりませんわよ!!」

 

勢いよく前進し、みほ達の戦車に激突する。

 

GWOooonn!! パシュッ!!

 

みほ・愛宕「あっ!?」

 

3両の戦車に致命傷ではなくとも諸にダメージを食らわされ、ギリギリの状態で戦っていたので衝突の衝撃で白旗が上がったのである。

 

ダージリン「1対1…ですわね…」

 

ニンマリと口角を上げ、再び空気は不穏に包まれる。

愛宕達の戦車も、履帯が先程から調子を崩しており、弾を回避するどころか立ち往生状態であった。

 

河嶋「装填完了したぞ!!」

 

愛宕「打てぇ!!」

 

BKAAM!! ヒュルルルル…

 

次弾装填した弾は悲しくなるぐらい相手に損傷を加えられる事が出来ず、装甲反射であらぬ方向へと飛んで行ってしまった。

次弾装填で再度砲撃を試みようとするが、相手の戦車の砲塔は既に此方を向いており、どう鑑みても避ける事も出来ない、反撃も間に合わないの詰みであった。

愛宕は両手を上げ、降参の意思を示した。

 

GARRSHAAANnn!!! パシュッ!!

 

それと同時に履帯が外れ、戦車は傾き白旗が上がった。戦車自身も負けを受け入れるかの様な動作を行った。

 

ダージリン「ふぅ…」

 

それと同時にダージリンも大きく溜め息をついてホッとした。

 

愛宕も緊張の糸が途切れたのか、重力に従うように体を折り曲げた。

 

愛宕「負けた…悔しいなぁ…」

 

そっと、誰にも気付かれないくらいの小声で胸の内の本音を漏らした。

 

大洗女子学園VS聖グロリアーナ女学院の試合は幕を閉じた。

 




大変遅くなって申し訳御座いません。
モチベと展開考案による相乗効果で思っていた以上に時間が掛かってしまいました。
次話がモチベによってどれくらいで投稿出来るかは分かりませんが、長い目で見て頂けると幸いです。(誤字脱字や展開矛盾があるかもしれませんが、ご了承くださいませ。)
それでは、次回もお楽しみに!!
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