スーパーロボット大戦The Inheritors 作:oneshot<a>man
「メグ…?」
目を覚ますと、柔らかな温かさに包まれていた。
「起きた?ちょっと心配したわよ。いきなり立ったまま寝ちゃうし、しかも体温までかなり下がってたんだから」
薄暗い室内に、計器類の灯りだけが見える。さらにエンジンの駆動音がうっすら聞こえてくる。
飛行形態の輸送艇が自動操縦モードで進んでいるのだろう。
その間、マーガレットは操縦席の上でブランケットに包んだベルの体を抱きしめ、温め続けていたようだ。
「もう起きれると思う。心配させてごめん」
「無理しちゃだめよ」
マーガレットは本当に心配した様子でベルの頭を優しく撫でた。
「大丈夫、ありがとうメグ」
立ち上がってみると眩暈もない。
その様子を見て、マーガレットもようやく安心したようだ。
「僕、どれくらい寝てた?」
「4時間ってところかしらね。今ユーラシア大陸の上空から東に向かってるわ」
「大陸の上?」
「ええ」
マーガレットは操縦席の照明を点け、モニターに地図を表示した。
その地図上に赤い光点が多数表示される。
「これはさっきみたいに襲撃を受けた連邦軍基地の場所よ。時間持て余してたから情報集めて全部入力しちゃったわ」
「海岸沿いか、海の近くばっかりだね。あ、つまり残党軍は、MSを内陸に輸送する手段を持ってない?」
「そう考えるのが妥当ね。油断はできないけれど、安心材料ではあるわ。本当なら、ゆっくり海の旅のつもりだったのに」
タイミング最悪っと言葉を続け、マーガレットはモニターの光点表示を切った。
「東、って話してた予定とはだいぶ違うね」
「ええ、いろいろ考えてみたんだけど…」
パネルを操作し、今度は別のものを表示する。
先ほどまで乗り込んでいたART-1の概略図だ。
「コンピュータにいきなり登録されてたわ…いえ、封印が解除されたっていったほうが正確かしらね」
表示されているデータはART-1と、保管されているA-1格納室のリアルタイムの状況のようだ。
「戻ったらデッキ内で勝手にメンテと補給作業が始まったわ。やっぱり、この輸送艇自体がART-1のために作られたもののようね」
モニターを見ると、機体の推進剤や弾薬の補充がすでに完了しているが、輸送艇内のストックのメーター表示がしっかりと減っている。
「とまあ、そういうことよ。幸い消耗品は連邦軍の規格と同じだけど、当然使った分の弾薬や燃料はそのうち補充の必要があるわ」
「けど、武器の弾なんて手に入る?」
「普通じゃ無理ね、こんな状況でもあるし…裏ルートじゃうっかり残党軍にバッタリもあり得るわ。なので、昔のツテを頼ってみるつもり」
「…ねえ、聞かないようにしてたけどメグって前にロンド・ベルとかにいたの?」
「まさか」
それを聞いてマーガレットは思わず噴き出した。
「そのうち機会があったら話すわ。とりあえずの目標は北米よ」
「今ユーラシア大陸を東にってことは…えっと、このままアラスカを経由して北米大陸に入って、陸伝いに南下する、でいい?」
「正解。さすがに太平洋を横断する勇気はないわね」
説明を終え、マーガレットが今度はモニターの表示を完全に落とした。
「ベル…あなたのことだから、自分から言わないってことは、記憶が戻ったとかじゃないのよね?」
「…うん」
一転して静かに問いかけるマーガレットに、ベルは気まずそうに答える。
「A-1格納室のことも、ART-1のことも、思い出したっていうよりも…なんだろう…『わかった』って言った方がいいのかな…状況に合わせて、急に頭に浮かんだんだ」
「そう…」
「信じてくれるの?」
「ベル」
マーガレットは優しく微笑んで、ベルの小さな体を優しく抱きしめた。
「君が嘘をついたり、隠し事をしない子だっていうのは半年一緒にいてよくわかってるわ。いつでも、ベルのことは信じてる」
「メグ…ありがとう」
「さあ、時間もちょうどいいし、夕食にしましょう。食べれる?」
「うん。お腹すいてる」
「よし、じゃあ食べたらシャワー浴びて、今日はもうさっさと寝ちゃいましょう。新しいベッドの寝心地も確かめないと」
*
一方、宇宙での戦闘は激化していた。
ベルフ・スクレットは、激震に見舞われながらも自分の機体へと急いでいた。
ラーカイラム級戦艦エイブラム。『ある物』を受領し、本隊合流を急ぐ最中にDC残党の襲撃を受けていた。
「くっ!旧式ばっかりの連中に、なぜここまで苦戦してるんだ!?」
襲撃部隊の内訳はザクを中心に、隊長機らしきリックドム。
エイブラムに配備されているジェガンでも十分対処できる戦力だ。
しかし先行して出撃した部隊からは悲痛な救援要請が次々と送られてきていた。
不運なことに機密作戦中で無線封鎖を行っているエイブラムには、地球での惨状はまだ伝わっていなかった。
自分のジェガンが視界に映った時、MSデッキに凄まじい爆風が巻き起こった。
「うぅ!」
逃げ帰って来た味方機が爆発を起こしたのだろう。
幸いベルフは廊下に弾き飛ばされ事なきを得たが、MSデッキ内は悲惨な有様だった。
自分が乗るはずだったジェガンはもはや見る影もなく、スクラップ同然に宙を漂っている。
「あ…?な、なんだ…!?」
そのかつてMSの部品もの、艦内構造物の慣れの果てが散乱する中、唯一佇む一機のMSの姿をベルフは見た。
MSデッキ奥に隔絶され、秘匿されていたものが爆風によって姿を見せていた。
そこれこそが、エイブラムが受領し、本隊へと輸送していた『ある物』であった。
「ガンダム…!」
吸い寄せられるように、ベルフはガンダムへと近づき、コクピットハッチを開放する。
「確か、F90…こいつを運んでいたのか」
中へ入り込み、コンソールを操作するとシステムが立ち上がった。
(灯が入る…!)
機体状況をチェックする。ダメージ表示なし。推進剤はタンクいっぱいにまで充填済み。電源も戦闘用のものが投入されている。
ジェネレーターを戦闘出力まで上げる。
「おまえ、戦えるのか…!俺はパイロットなんだ!こんなところで、何もしないで死ぬつもりはないぞ!」
*
「くそ!くそ!なんで墜ちないんだよ!」
ジェガンのパイロットががむしゃらにビームライフルを連射する。
その直撃を受けても、ザクは一切怯むことすらなくマシンガンで反撃を仕掛けてくる。
最初は機動性の差で対処していたものの、次第に追い込まれ、一機また一機と姿を消していく。
じりじりと戦線が押し下げられていく。距離を詰め、残党部隊がエイブラムを射程に収めたその時だった。
突如、エイブラムから凄まじい速度で飛び出した一機のMSがビームライフルを放った。
ジェガンのそれよりもはるかに速い。
それが三撃。最も前に出ていたザクに襲い掛かる。
ひとつ、ふたつと避けたザクだったが、三発目が直撃する。
そのビームがG鉱石で強化されたザクのボディを粉砕し、真っ二つに引き裂いた。
「一機撃墜!ガンダムのパワーなら、こいつらにも通用するのか!」
墜としたザクの間を縫うように、ベルフの駆るガンダムF90が敵部隊の間に割り込んだ。
圧倒的優位を切り崩されたその光景に動揺し、残党の動きがわずかに鈍る。
ガンダムの照準が、次の目標を捉えていた。
*
「久しぶりに良いニュースだ」
エイブラムからの報告を受けゴップは胸を撫でおろした。
自分の計画をこれで推し進めることができる。
エイブラムにはそのまま本隊へ合流を急ぐよう指示を出した、
数日ぶりに愛用の葉巻を取り出し、ゆったりとカットし火をつける。
時間をかけ、口内で香りを堪能する。
その煙にしばらく包まれながら、ゴップはぽつりと呟いた。
「しかし奴ら、どこでそれだけの量のG鉱石を手に入れた…?」