スーパーロボット大戦The Inheritors   作:oneshot<a>man

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始動(前編)

《宙域データ送信完了。状況知らせ》

「こちらF90Ⅲ、宙域データ受領。予定通り目標宙域に進入する」

 暗く狭いコクピットの中で、レッド・ウェイラインは淡々と答えた。

《了解。F90Ⅲ、ポイントA3まで巡行モード継続…接近警報。MS反応あり》

 同時にコクピット内にも警報音が鳴り響く。

「データリンク途絶。バックアップを要請する」

 ミノフスキー粒子による妨害だろう。通話スピーカーにも雑音が混じり、一瞬だが途切れた。

《レーザー回線に切り替えました。データリンク再接続》

「再接続確認」

《光学観測による敵機解析完了。ザク、3機小隊。後続でドム、3機小隊》

 それを聞いてレッドは頭を抱えた。

「おい、リミア!いくらなんでも敵さんの数多すぎだろ。ちゃんと設定したのか!」

《レッド!こっちだって考えてるわよ!シミュレーションテストなんだしきちんとやりなさい!》

「ったく…」

 通信機越しにまくしたてるリミアの声に辟易し、レッドはこっそりスピーカーを数秒だけミュートにした。

 後からシミュレーター内のログでバレるだろうがその時はその時だ。

 

 

「目標視認」

《現在は従来型のビームライフルが設定されてるから、まずそれで攻撃して》

「了解、攻撃開始」

 ビームライフルが直撃するが、ザクにダメージの様子はない。

「射撃精度優先のヘビーガン型のライフルとはいえ…マジかよ。リミア、これ設定値ミスってないんだよな?」

《交戦データのレコードから割り出した、おおよそのパラメータを反映させてるわ。内部構造まではわからないから、細かいバランスはともかく、装甲強度に関しては信頼できるデータよ》

「こいつは確かに、ジェガンなんかじゃ相手するには苦しいな」

 ザクがマシンガンを撃ってくる。精度の高いデータ所得のため、戦闘行動を取るようにプログラムされているのだ。

「っと、危ねぇ」

 レッドは最小限の挙動でそれをやり過ごす。

《使用弾丸もG鉱石製って報告が上がってるから、それを想定したダメージ数値になってるわ。F90でも直撃したらひとたまりもないから気を付けて》

「もたもたしてたらドムの部隊まで合流しちまうな。リミア、こいつらがやばいのは充分わかったから反撃させてくれ!」

《ええ。ライフルのデータをF90Ⅲのものに変更。変更完了》

「よし」

 コンソールの武装表示がF90Ⅲ専用ライフル切り替わったのを確認し、レッドはトリガーを引き三連射した。

 全弾直撃。先ほどまでの堅牢さが嘘のように三機のザクは一瞬で沈黙した。

「残りはドム…ってもう来やがったか!」

 機体が放つ警報と同時に、F90Ⅲの真横を砲弾が掠め飛ぶ。

 レッドはオーバーブーストをかけ機体を旋回させ、側面からビームライフルを撃つ。

 一発がドムにヒットするが、撃破には至らない。

「耐えやがるか」

 それを確認するや否や、レッドはさらにもう一射を浴びせる。

 今度はドムの巨体を貫き撃破。

「ドムだとこいつのライフルでも二発か。効率悪ぃぞこれ」

《そういうデータ取るテストなの!愚痴んないの。続いて新型のメガビームバズーカのテストよ》

「こいつ人使い荒いよなぁホント」

 レッドはぶつくさ言いながらも武装の変更操作を行う。

 背面ラックに設置された長物、メガビームバズーカを構える。

「FCS(火器管制)の照準補正が甘い。そっちで調整してくれ」

《まだセンサーの現物がないから難しいのよ…はい、補正したわ》 

「コンデンサ電圧安定。メガビームバズーカ、発射」

 射出された巨大なビームの帯がドムのボディを貫いた。

「撃破確認、さすがにこいつなら一撃か」

《続いて、ハードポイント連結。最高出力モードでの試射やってみて》

 メガビームバズーカがF90Ⅲの腰に存在するハードポイントを介し接続される。これによって本体からエネルギーの供給を受け、より高威力のビームを発射できるのだ。

「エネルギーバイパス正常。チャージ完了、出力最大。発射」

 今度は戦艦の主砲を思わせるほどの凄まじいビームが発射され、ドムの姿を跡形もなく消し去った。

「こりゃとんでもないぞ。戦艦用のビームシールドも余裕でぶち抜けるだろ」

《理論上はね。これでテストメニューは終了よ。システムを落とすから少し》

 

 

「おい、待て!敵機の反応が復活したぞ!」

 レーダーに一機分だけ反応が再び表示されていた。

 先ほどライフルで仕留めたザクの一機だ。

《え、何言ってるのよレッド!こっちではそんな》

 そこまで聞こえたところで、リミアの声がぷっつりと途絶えた。

 どうやら通信が切れてしまったようだ。

 慌ててモニターで視界に捉える。すると、ザクだった機体はゆっくりとその姿を変えていった。

 敵と言ってもCGで再現したシミュレーション上のものだ。

 操作さえすればこういう状況も再現できるだろう。

 しかし担当してるリミアがテスト中にこの手の悪ふざけをしないのはレッドもよくわかっていた。

「なんだこいつ…ゲルググ…?」

 ザクだったものが、すっかりゲルググ…しかも深紅にその全身が彩られている。

「赤い彗星の真似っこってか」

 困惑しながらもレッドは照準を合わせメガビームバズーカを発射した。

 迫り来るビームの束をゲルググは機体をローリングさせ避ける。

「まだまだ!」

 今度は本体と連結を解除し、ライフルと交互に連射する。

 雨のごとく降り注ぐビームの猛攻を、ゲルググは流れるように避ける。

 さらに加速し、ジグザクな軌道を描きながらレッドのF90Ⅲに接近する。

「何なんだよこいつは!!」

 紅い閃光の尾を引いて、稲妻のような軌跡を宙に刻み付け、ゲルググがついにレッドを捉える。

「くッ!」

 ゲルググが手にしたビームライフルを撃った。

 そのビームの速度も大きさもレッドの知るゲルググのものではない。どうやら大幅なカスタマイズが施されているようだ。

「クソ!シミュレータがバグってんのか!?」

 レッドが毒づくと同時に、ゲルググのビームがF90Ⅲの右腕をライフルごと撃ちぬかんと迫る。

 しかしレッドはそれを咄嗟に機体のアポジモーターの噴射による姿勢変更でやり過ごした。

 その隙に、眼前まで紅いゲルググが迫っていた。

「う、うおおおおおおおおお!!」

 それは人知を超えた幻獣の反応だった。瞬時にビームサーベルを展開し、完璧な距離と、完璧なタイミングで一閃した。

 サーベルの閃光がゲルググの肩から胸にかけてを切り裂く。

「止まった、か?」

 呼吸を整え、警戒を解かないままモニターを凝視する。

 すると機体にダメージを受けたにもかかわらず。ゲルググはF90Ⅲ…いや、レッドを真っすぐに見据えていた。

<帰還せよ>

「な、なんだって…?」

<帰還せよ、ジョニー・ライデン。我々は、貴方の帰還を待ち続ける>

 

 

 次の瞬間、周囲が完全な闇に包まれた。

 呆然としていると、ハッチが解放されリミアが凄まじい形相で飛び込んできた。

「何やってんのよレッド!!」

「え…あ…リミア…か」

「ちょ、どうしたのよ…まさか頭でもぶつけたの?」

「いや、そういうわけじゃないんだが」

 周囲を見渡す。テスト前と同じ、0G対応の重力制御付きシミュレーションルームだ。

 何も変わっていない。それがかえって不気味だった。

「あのゲルググ、なんだったんだ」

「ゲルググ…?やっぱりちょっと変よレッド」

 さすがに心配げなリミアの声も聞こえぬまま、レッドはヘルメットを脱ぎ、静かに呟いた。

 

「ジョニー・ライデン…いったい、誰のことを言ってるんだ…?」

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