スーパーロボット大戦The Inheritors   作:oneshot<a>man

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始動(後編)

 ロボット怪獣…メタルビーストギルガの放ったミサイルが上空を旋回し、ART-1に迫る。

「メグ!」

「わかってるわ!」

 ART-1の頭部バルカン砲が唸りを上げ、迫り来るミサイルを撃ち落とす。

「ミサイル全弾破壊…やっぱり回避運動が制限される街中じゃ長引くとこっちが不利ね。一気に決めるわよ」

「うん!」

 HGリボルヴァーを構え、胸部に向かって連射する。

 その全弾がヒットするも、ギルガの動きに変化はない。

「もう!ライフルの調整間に合わなかったのが痛いわね」

「仕方がないよ。メグ、ドムの時と同じやり方で」

「ええ」

 右腕にチェーンソー・トンファーを展開し、構える。

「あれに真正面から…は、ちょっと勇気がいるわね…」

 ギルガの体躯はART-1より一回り以上大きい。

 しかもかなりの重武装だ。

 マーガレットは意を決し、スロットルを一気に押し込む。

 凄まじい推力と共にART-1がギルガに迫る。

 この行動はギルガに搭載された人工知能にも予測不能なものだったようだ。

 ミサイルか、主砲か、はたまた接近に合わせ鎌で迎撃か。

 一瞬、ほんの一瞬だけ挙動の遅れが生じていた。

 その隙を逃さず、ART-1がギルガの胸元に飛び込んだ。

「このお!」

 ギルガの胸部に、高速回転を伴ったチェーンソーの刃が叩き込まれる。

 凄まじい火花を散らしながらG鉱石の強固な装甲を削っていく。

 しかしその装甲はドムの物よりも遥かに分厚く、強固であった。

「く…届かない…!?」

 駆動系が限界に達し、チェーンソーの回転が止まる。

「メグ!まだだ!」

 ベルの叫びに呼応し左腕に装着されていたシールドがパージされ、その下からチェーンソー・トンファーが展開する。

「T-LINKリ・コンタクト!T-LINKブレードナックル!」

 再度チェーンソーの刃がギルガの装甲を抉る。

 そのベルのパワーをさらに上乗せしたブレードは、ついにギルガの装甲を貫通し胸部の駆動部を露にした。

 次の瞬間、ギルガが右の鎌を構え振り下ろす。

 すぐさまART-1はウィング形態に変形、上昇しそれをやり過ごした。

「上手くいった!」

「でも決定打が足りてないわ。同じ手が通じる程、相手の人工知能もやわじゃないはずよ」

「メグ、今出した戦闘モーションを試してみよう」

 ベルがコンソールを操作し、ある機能とそれに伴う戦闘マニューバを提示する。

 それを見たマーガレットは思わずギョッとした。

「え…これって……そうね、これしかなさそうね」

 覚悟を決め、操縦桿を握り直す。

 ART-1が上空を旋回する。

「ベル!ターゲットサイトにアイツを捉えたらモード3でロックをかけるわ!いいわね!」

「うん!こっちがタイミング合わせる!メグに任せるよ」

「よし…いくわよ!」

 機体が急降下し、ART-1が再び正面にギルガを視界に収める。

「モード3セット!ターゲットロック!」

「T-LINKフルコンタクト!」

 ART-1が光に包まれ、さらに増速し突き進む。

「T-LINKクラッシュソード!」

 まさに光の剣と化したART-1がギルガに直撃する。

 その切っ先は破壊した胸部を的確に捉え、そのまま内部構造を破壊しながら突き進み、完全に貫いた。

 ボディを支える主要構造を失ったギルガは、バランスを崩したかと思えばそのまま内部の火薬に引火したのか爆発を起こし、跡形もなく消し飛んだ。

 ART-1がPTモードに戻り着地する。

 その拍子に機体がバランスを崩し、その場に膝をついた。

「ちょっとジェネレータを強引に回しすぎたわね…出力がダウンすれすれになってるわ」

「でも…なんとか倒せたよ…。ッ!?メグ!いけない!」

「え!?」

 突如として目の前のビルが吹き飛んだ。

 その衝撃に撒かれ、ART-1も大きく吹き飛ばされる。

「…!フィールド全開!!」

 機体をはじく衝撃と降り注ぐ構造物から展開したフィールドが防護する。

 なんとか体勢を立て直そうとマーガレットは機体を操作する。

 しかし限界まで出力を絞り出した機関はついにダウンし、ART-1はそのまま倒れ込んだ。

「何…が…」

 機体をなんとか起き上がらせようとしながらモニターを見る。

 するとそこには、破壊したはずのギルガが無傷で姿を佇んでいた。

「な、なんですって!?」

 見るとギルガの武装が先ほどまでのものとは鏡に映したように左右が反転している。

「まさか…伏兵…?」

 

 

「ふうぅぅ…キモを冷やしたぞ」

 その様子をモニターするヤシャの左の顔が息を吐く。

「くくく、念には念を入れておくものだぞ弟よ」

 右の顔が得意げに告げ口の端を吊り上げる。

「さあギルガよ!その生意気なロボットを徹底的に破壊するのだ!」

 

 

「まずいわ…とにかくいったん機体を起こさないと…ベル!ジェネレータの再始動はできる!?…ベル?」

 その時、マーガレットは前方シートのベルの異変に気付いた。

 反応がない。顔は見えないが意識を失ってるのは明らかだった。

「ベル!そんな…しっかりして!」

 ART-1にギルガがゆっくりと迫ってくる。

「くっ…!」

 最悪の場合、ベルだけでも生き残る方法を取らなければ。

 しかしどれだけ頭脳をフル回転させてもその答えが見つからない。

 ギルガが右腕の主砲を向ける。

 覚悟を決めた直後、何かがART-1とギルガの間に立ちふさがる。

 そのまま主砲の直撃を受け、大きくその体を揺らす。

「な…!?」

 マーガレット達をかばった影がゆっくりと立ち上がる。

「青い、ゲッターロボ…?」

 そのシルエットを見てマーガレットは呟く。

 その全身ブルーのロボットは確かにゲッターロボを思わせる面影があった。

 しかしその体躯はオリジナルのゲッターロボの半分以下。

 ART-1とほぼ同じ大きさだ。

 さらに特徴的なマント状のウイングもなく、メイン装備であるトマホークもない素手であった。

「いったい、どこのロボットなの…?」

《大丈夫か!?》

 目の前のロボットから若々しい青年の声が響く。

 通信ではなく外部スピーカーで話しかけているようだ。

「ウソでしょ…」

 これでは相手に自分の状況が丸聞こえだ。まるでど素人ではないか。

《おまえこそ大丈夫か號!》

 見ると上空に二機のヘリの姿がある。

 どうやらこのロボットの仲間のようだ。

《ダメージの表示は出てない!凱!そっちから見てどうなんだ!》

《外見上の損傷は見られない!だけど気を抜くな!》

《おう!》

《號!会話は通信機でやるんだ。今から送る周波数に合わせろ》

 先ほどの声とは別の声が響く。こちらは幾分か落ち着いた響きがあった。

《あ…冗談冗談!信一さん、すぐに合わせます!》

《そっちのロボットのパイロット、聞こえますか?そちらにも情報送ります!》

 信一と呼ばれたヘリからの声に合わせ、データリンクで通信の周波数情報が送られてくる。

「ありがとう。こちら…ええっとART-1!現在機体が停止して動けないわ」

《通信確認。状況はわかりました。そっちも聞こえてるな號!》

《ああ!そのアートだかなんだかを守って戦うんだな!》

 ロボットが構えると、ギルガが鎌を振るう。

 それが直撃するが、ロボットの装甲を破壊するには至らない。

「なんて防御力…まさか、あのロボットG鉱石製…だとしたら」

《號!》

《くぅ…!まだ大丈夫!》

《G鉱石同士では限界がある!とにかく隙を見て反撃しろ!》

《わかってるって!》

 ロボットが両腕をクロスした防御態勢のままじりじりとギルガに迫る。

 するとロボットの強固さに人工知能は攻撃方法の変更を選んだようだ。

 主砲を構える。この近距離で一気に吹き飛ばすつもりだろう。

《いかん!》

 ヘリから先ほど凱と呼ばれた男の焦った声が響く。

《うおおおおお!!》

 號の叫びに呼応するように、ロボットが駆ける。

 まるで人間のようにしなやかに前転し、主砲を避けるとそのままギルガに飛び掛かった。

 ギルガは再度鎌を振るうが、左にステップしそれを回避し、主砲を抑え込む。

《これでどうだ!》

 ロボットが右腕を主砲の中に叩き付ける。

 行き場を失ったエネルギーが主砲内で誘爆し、主砲と、そしてロボットの右手を巻き添えにして大爆発を起こす。

《號ー!》

《まだまだぁ!》

 吹き飛ばされ、右前腕の半分を失ってなお、ロボットは闘志を失わず立ち上がる。

《號!奴の胸だ!さっき上空でART-1の戦いを見ただろう!胸の装甲を破壊し、攻撃するんだ!》

《よし…行くぞ!》

 信一の声に押され、ロボットがギルガの胸装甲を掴み、一気にもぎ取る。

 しかしその無防備なボディにギルガの大鎌が直撃する。

《うわあああああああああ!》

 ロボットが大きく吹き飛ばされる。

《號!大丈夫か!》

 ヘリがミサイルを発射し援護する。

 しかしその攻撃が当たってもギルガの装甲は物ともしていない。

《ま、まだ平気!けど、これ以上は…》

「なら、次で、決め、よう…」

「ベル!?」

 ベルが震える体を無理やり起こし、モニターを見据えていた。

「メグ、ウィングモードに…」

「ベル、無茶よ!」

「まだ、だよ…僕が、やるって決めたんだ!」

「ベル…」

 ART-1が機能を取り戻していた。完全ではないが、しばらく動かすことはできるはずだ。

 マーガレットはART-1をウィング形態に変形させる。

「T-LINK…リ・コンタクト…」

 ART-1が上昇、旋回し、立ち上がったばかりの號のロボットの背後に近づく。

 するとまるで磁力で吸い寄せられたように背面にぴったりと張り付いた。

《な、何が起きてるんだ!?》

 號の戸惑いをよそに、ART-1を背負ったロボットが上昇、接近する。

「お願い、します。僕も…もう限界が…」

《ああ、必ず決めてやる!》

「ベル…!」

 上空でドッキングが解除され、ロボットが再び地面に引っ張られる。

 ギルガのミサイルが迫る。それを避け、ロボットがキックの体勢で突撃する。

 ギルガが最後の抵抗に鎌を振るうが、それをすり抜け、胸部にロボットの体重全てをかけたキックが直撃する。

 胴体に巨大な穴を穿たれたギルガは、最後の咆哮を上げ爆発した。

 

 

「な、なんだとぉ!?」

 ヤシャが驚愕に目を開く。

「弟よ、すぐに戻りランドウ様にご報告するのだ!」

 右の顔は緑の顔に汗を流し、モニターに映る光景を睨みつけた。

「我々に抵抗しうる、ロボットの存在をお知らせせねば…!」

 

 

「ベル!ベル!返事をして!」

 マーガレットが前方のシートに移動し、ベルを抱き上げる。

 意識が無いだけではない。呼吸は浅く、その全身はまるで血が通っていないかのように冷たい。

《ART-1!どうしたんですか!》

 ただならぬ様子に、信一のヘリから通信が入る。

「ベル…同乗者の意識がありません!それに…とても危険な状態です!」

《…!我々は国際航空宇宙技術公団ネイザーの所属です!輸送ヘリで我々の医療施設に負傷者を搬送します。付いてこれますか!?》

「はい!」

《先導します!》

 ベルを膝に乗せ、マーガレットはART-1の操縦を前方シートに移し、機体を上昇させた。

(ベル…)

 

 

 ヤシャの報告を聞いたランドウは、狂気の目を細めた。

「新たなロボットだと…」

「は!ですが奴らもすでに満身創痍…どれほどの脅威となるか…」

「いいや、油断はならぬ。だがよく戻った。我々の勝利で飾れなかったのは無念だが、今日はついに決起の時だ」

「な、なんと!ではついに」

「ああ!我々の存在を、全世界に示すのだ!」

 

 

《地球圏の諸君。すでに我々のことは知っているだろう。そう、連邦軍基地を襲ったオールズMS。そして私の作り上げたロボット怪獣メタルビーストだ!》

 その放送は地上、宇宙を問わずすべての場所に一気に流れ始めた。

 狂気の科学者プロフェッサー・ランドウが、大きく腕を振り上げる。

《これらはすべて散発的な攻撃ではない!一つの大いなる組織、そしてそれらを束ねる大いなる意思の元に行われたのだ!我々は新たなるDC!マーズDC!》

 ランドウはさらに言葉を続ける。

《私は地球攻撃司令プロフェッサー・ランドウ!そして我らの新たな指導者の声を聞け!

マーズDC総統、ジョニー・ライデンの声を!》

 

 

 FSSのオフィスでその放送を見ていたレッドは、手にしていたコーヒーを思わず離し、派手に床へぶちまけていた。

「ジョニー・ライデン…だと…!?」

 

 それは映像もなく、そして機械合成音と思しき声明であった。

 しかしその異様なまでの力強さは、明らかに血の通った人の意志を感じさせるものだった。

 

《かつて、DCを創設した偉大なる科学者ビアン・ゾルダークは、理想と共に永遠の眠りについた。

道を違えたザビ家、パプテマス・シロッコは、思想を抱き散った。

野望を抱いたメガノイド・コロス、そしてドン・ザウサーは狂気の果てに倒れた。

我々は違う!我々はDCが目指した真の目的のため、再び立ち上がったものだ!

いまだ混迷冷めやらぬこの地球圏を大いなる意思で統一し、新たなる脅威に立ち向かうのだ!

既に我々は、かつて異星人に蹂躙されたこの赤き大地を取り戻し、聖十字の御旗を立てた!

心あらばこの御旗の元へ集うのだ!

私の名はジョニー・ライデン。我々マーズDCは、ここに地球連邦政府へ宣戦を布告する!》

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