スーパーロボット大戦The Inheritors   作:oneshot<a>man

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幻獣部隊

 マーズDC対策会議のため議事堂を訪れたオクスナー・クリフは、呼び出しを受け議長室を訪れていた。

 オクスナーの正面に座るゴップは笑みこそ浮かべているが眼光は鋭い。

「大切な会議の前に、忙しいだろう首相補佐官の君を呼び立ててすまないね」

「いえ…」

 オクスナーは気圧されることなく言葉を続けた。

「ジョニー・ライデン…のことですね?」

 それを聞き、ゴップの口の端がかすかに吊り上がる。

「君のそういうところを、私は高く買っているよ」

「ありがとうございます」

「ならばいらぬ駆け引きなどなしだ。改めて確認するが、幻獣部隊…『キマイラ』。そして『ジョニー・ライデン』。この二つの情報が流出した痕跡はない、と見ていいな?」

「勿論です」

「我々が幻獣どもを確保した時以来、徹底的に秘匿し、そしてこれらのワードそのものを、一種の警報装置とした。連邦の内外を問わず網を巡らせ、不穏な動きを監視するには持って来いだったからな」

「その警報も約十年、一度も鳴らず内心ほっとしておりましたが」

 オクスナーが目を伏せる。本音であった。

「だが、現実にジョニー・ライデンが動き出した…これをどう見るか、だ」

 ゴップの言葉に厳しさが増す。

 事実、ジョニー・ライデンを名乗るものが表れてしまってはもはや警報装置の意味などなさない。

 ライデンを名乗るものが真にジョニー・ライデンであろうとも、なかろうとも。

 それが大きな問題であった。

「ジョニー・ライデン。そしてライデンの指揮するキマイラは存在そのものがDC内部ですら隠されていたと聞いております」

「まさに幻獣だな。さすがにビアン・ゾルダークやシュウ・シラカワ辺りは存在を認識していただろうが、今となっては確認する手立てもない」

「調査した限りでは、キシリア・ザビが結成したのは間違いないでしょう。キシリアは別に親衛隊も保有していたようですが、恐らくこれはDCの中でもキマイラの隠れ蓑だったと考えられます」

「しかし妙なのはその部隊を動かした痕跡があまりにもないことだな」

 オクスナーの言葉を受け、ゴップが積年の疑問を口にする。

「DC戦争はおろか、ザビ家そのものの危機となった『インスペクター事件』の時ですらキマイラを動かそうとしなかった…元キマイラですら、その詳細は分からぬのだろう?」

「キシリアの部隊、とされていますがキマイラの命令指揮系統そのものは、内部に委ねられていたようです。最終決定権を持つ数人の意志で、部隊は動かされていた、と」

「その一人が、ジョニー・ライデン、か」

「キマイラの指揮官にしてトップエース…部隊内では『真紅の稲妻』、もしくは『紅い稲妻』というコードネームだったようです」

「赤い彗星との類似といい、あえて誤認を誘導させるような意図を感じるな」

「事実、私たちの情報網にノイズとして混じることもありました。シャア・アズナブルがそれをどこまで認識し、利用していたかまではわかりませんが」

「その幻獣を我々は幸運と偶然の重なりで手にすることができた。だが、我々の手にしたキマイラは約半分…そしてその中にジョニー・ライデンは含まれていない。つまり残り半分の何かが今回の事態を引き起こした可能性を、私は最も恐れているのだよ」

「残り半分、と言いましても手元に置いていないだけで常時監視の目を光らせてあります。存在さえ知られていない元最強部隊…上手く二分できたとはいえ残りの半数でも野放しにしていては充分な脅威となります」

「では、元キマイラも含めて、ジョニー・ライデンの所在が掴めていなかった。そう考えていいと?」

「はい」

 正面を見据える。それはゴップの鋭さをさらに増した眼光にもいっさい怯むことはない。

「ふむ…私も君と協力する見返りにキマイラの分け前を手にした身だ。ある程度はスケール感の予測もできている…。しかし君の持ち分と合わせ半分。これはきっちり二つにわかれたわけではなく、バラバラになった断片をかき集めそれを分け合ったにすぎん」

「おっしゃる通りでございます」

「これではパズルに例えるなら互いの持ち分のピースを並べたところで、空白地帯があまりに多すぎる。我々の知らぬところに、思わぬ絵が隠れている可能性も充分に考えられる。オクスナー君、私は君がこの空白を埋める大きな断片を最近手にしたのではないか、そう疑念を抱いているのだよ」

「議長…失礼ながら、そうお感じになった理由を伺っても?」

「勘…などと言っては怒られるな。冗談だ」

 ゴップはグラスを取り出し、水を注ぐ。

 そうしてカプセル剤を取り出し一息に飲んだ。

「この通り、私もすっかり薬が必要な年寄りだ。だが常に武器としてきたもの…つまり情報を使った戦い方にはまだまだ自信がある。根拠は、半年前の『リング事件』…その時の君の元部下たちの動きだ」

「あの艦隊は、特にあの事件に関与しては…」

「ではなぜ、後方にいながらMSが一機損耗している?」

 オクスナーはこの日初めて言葉に窮した。

 それでも動揺を見せることなく、視線を逸らさず耐えた。

「今は、まだお話しできる段階にはございません」

「否定はしない、か」

 もはや俗人めいた仮面を捨て、ゴップは狡猾そのものといった顔で笑みを浮かべる。

「君が言うならそうなのだろうな」

 そうとだけ言ってゴップは葉巻を取り出し並べ始めた。

「長々とすまなかったね。もう結構だ」

「いえ…それでは失礼いたします」

「ああそうだ」

 扉に手をかけたオクスナーの背中にゴップは声をかける。

「『ダブルG計画』のことだ。本来はこちらが本題だったのだがね…ガンダム再建計画は私の方で進める。君には、もう一つの『G』の確保をやってもらいたい」

「承知しました」

「首相選の票集めは任せ給え。実現すれば、地球連邦軍から初の首相誕生だ。平時ならいろいろうるさく言う連中もいるだろうが、この混乱状態だ。民意の支持も得られやすかろう」

「はい。ありがとうございます」

「期待しているよ」

 葉巻の煙を背中に浴びながら、オクスナーはようやくこの恐ろしい部屋から出ることができた。

 

 

「スモリアノフ、私は一度オフィスに戻る」

 オクスナーは秘書のスモリアノフにそう告げ、足早に議事堂を出る。

「ですが、会議は」

「なるべく急ぐ。できれば少し開始を遅らせてくれ…それと、『猟犬』に連絡だ」

「…!承知しました」

「会議が終わり次第、私のところに来るよう伝えるんだ」

 オクスナーの様子に、スモリアノフも事態が呑み込めたようだ。

 専用車に乗り込むと、オクスナーは備え付けの受話器を取り出し、専用回線をコールした。

「フーバーか」

 

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