スーパーロボット大戦The Inheritors   作:oneshot<a>man

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接触

 オクスナーが会議を終え事務所に戻ると、オフィスには既に『猟犬』…ジャコビアス・ノードが待ち構えていた。

「ずいぶん、緊急の要件のようで」

「ああ、急を要する」

 対面する席に座りながらオクスナーはジャコビアスを見据える。

 眼光鋭いこの男は、形式上はオクスナーの文字通り猟犬として働くものの、決して気を許していい相手ではない。

「ジョニー・ライデンの件だ」

「ライデンの…?」

「ああ」

「それは例の決起放送の件で?それとも…」

 ジャコビアスがそこで言葉を切り、オクスナーの様子を伺う。

 魑魅魍魎の跋扈する政治の世界で生き、首相補佐官であり次期首相候補にまで上り詰めた男だ。

 眉のひとつも動かす様子はなかった。

「あなた方がジョニー・ライデンの名を監視のための一種の符丁とし、網を張っていたのは知っている。それがライデンを名乗る新たなDCの誕生で瓦解したことも含めてだ。だが、その警報は結局一度も鳴らなかったと聞くが?」

「…実は警報は一度だけ鳴ったことがある」

「なんですと…?」

「ごく最近、そのたったの一度きりだ」

 オクスナーが一枚の写真を取り出し、示す。

「警戒網はもう一つあったのだよ。連邦のシステムとリンクしたMSが、ジョニー・ライデンの『兆候』が見られたパイロットを察知した場合にあるテストを仕掛ける。そのテストを切り抜けた者こそ」

「ジョニー・ライデンの、可能性があると?」

「この約10年間、一度たりともその領域に達する者はいなかった。その中であって、唯一の反応だ。無視するわけにもいかん。何よりライデン決起の直前という、狙いすましたようなタイミングも気になる」

「なるほど、この男が?」

 ジャコビアスは示された写真を手に取る。

「ああ、レッド・ウェイライン。連邦軍所属のMSパイロットだ。現在はFSSに出向している」

 写真の金髪の男を見る。

「何かわかるか?」

「これだけでは、なんとも」

「だろうな…彼らは今、極東方面に向かっている」

「極東方面?」

「ああ。こちらにも、もうひとつ無視できない事情がある。詳しい資料はスモリアノフから受け取ってくれ。君には『表』の業務でもやって貰いたいことがあるからな」

「やれやれ…それでは、『猟犬』として『剣』として動かせていただく」

「頼んだ」

 立ち上がり出口に向かいながら、ジャコビアスは振り返らず訪ねた。

「私を向かわせる、ということはあの放送を行った『火星のジョニー・ライデン』。補佐官…あなたは奴が偽物であると判断している、そう解釈しても?」

「…そうだ」

「なるほど。では」

 口の端を吊り上げ、ジャコビアスは部屋を後にした。

「そうだ、直接確かめて欲しい。元キマイラの、おまえの目でな」

 

 

「信一さん。『G』の修理、やっぱり難しいんですか?」

 ネイザーのドッグ内、パイロットである號が姿を見せた。

 見上げる先のロボット。『G』は戦闘から丸一日が経過しているにも関わらずまだ完全な修復が完了していない。

 各部の整備パネルは解放され、吹っ飛んだ右手もそのままで配線はむき出しになっている。

「號、怪我はいいのか?」

「ええ。軽い捻挫。この程度平気です」

「そうか、なら良かった。おまえの言う通り、『G』の修理に必要なG鉱石が不足している」

「くそぉ…奴らがまたいつ来るかわからないってのに!」

「まあ落ち着け號。翔たちメカニック班も頑張ってるんだ。信じてやらなくてどうする」

 信一が怒りにわななく號の肩を優しく叩く。

 それで號も少し落ち着きを取り戻したようだ。

「はい…ところで、あのアートだかエートだかってロボットの」

「ART-1」

「ああ、そうですそれそれ。あれのパイロットは?」

「…機体は持っている輸送艇で自動修復できるらしいが…パイロット、女性のマーガレットさんは平気だが」

「あの男の子の…」

「ああ。ベル君だったか…彼は消耗がひどい。集中治療室で今でも意識不明だ」

「あの子のおかげで俺も『G』も勝てたんだ…頑張ってくれよ」

 

 

「なんですと!?『G』を、新しいゲッターロボに!?」

 ネイザー所長である橘博士は、訪問者であるリミアの提案を聞いて愕然とした。

「いえ、あくまでそういう強化プランもある。と提案しに来ただけです」

 リミアは資料を提示しながら言葉を続けた。

「あの『G』…正式名称GT-R PT・1は、現在地球圏において、DCに与していない唯一フルG鉱石製のロボットです。それを武装化、強化改造しゲッターロボにするという案です」

「確かにあの『G』は、早乙女博士のゲッターロボの理念に感銘を受けて開発したものです…ですが、それはあくまで本来の宇宙作業用…平和利用のためのロボットなのです。G鉱石を使ったのも、宇宙空間という環境下で耐えうるためなのですよ」

「…わかっています」

 リミアも眉をひそめながら返す。無理を言ってるのは自分でもわかっていた。

「申し訳ない…失礼ですが、ここはお引き取り願えないでしょうか…」

「いえ…急な訪問で失礼いたしました」

 リミアが資料をまとめ、退室する。

 橘博士は自分のデスクに肘をつき、壁面に飾られた完成したばかりの頃の『G』が写されたパネルを見つめた。

「戦闘用ロボット…ゲッターロボ…か…」

 

 

「はああ、疲れたわ…」

 所長室から出たリミアは、ロビーのソファーにドカッと身を預けた。

 FSSの要請とはいえ、相当な無茶ぶりをしている自覚はあったのでとにかく精神的に疲弊している。

「お疲れ様」

 そのリミアに缶コーヒーを差し出される。

「スコット!?あなたもこっちに?」

 それはFSSの同僚のスコットだった。

「ああ。もし要請が受け入れられたら、搬送作業が必要になるから後追いでね。もし決まればアシュレイの手伝いさ。レッドは?」

「暇だからそこら辺ぶらぶらしてくるって」

「やれやれ相変わらずだな…隣いいかい?」

「どうぞ」

 スコットはリミアの隣に腰かけ、自分の缶コーヒーを開ける。

「それにしても、どうしてFSSが民間団体に協力要請するのかしら」

「ああ、そのことかい」

 スコットは少しばつが悪そうに続ける。

「このネイザーは連邦政府とは人材面でも資金面でも繋がりのない、完全な民間施設だからね。主な出資元は波瀾財閥と神重工業だったかな…そんなところに連邦政府が圧力をかけて、保有するメカを戦力として接収するのはいくらこの状況下でもまずい。後々どんな突っつかれ方するかわかったもんじゃないしね。かといって、地面に頭を擦り付けて協力をお願いするのも体面上よろしくない…そこで一応は独立した外郭団体である俺たちFSSにお鉢が回って来たってことさ」

 それを聞いてリミアは大きく息を吐いた。

「大人の事情ってやつね…」

「理解が早くて助かるよ」

 スコットはにっこり微笑みながら、ファイルを取り出し中身を示した。

「それと、この機体…こいつもここにあるようだしね」

 取り出された写真には、ART-1の姿が映っていた。

 そこに一人の男が近寄って来た。

「失礼。あなた方はFSSの?」

「あ、はい!あの、ええっと」

「申し遅れました。私はこのようなもので」

 男が名刺を取り出す。

「『テミス』…民間軍事会社ですか。そちらの社長さん?」

「ええ、ジャコビアス・ノードと申します」

「失礼ですが、なぜこちらに?」

「営業活動です。こちらに、わが社を防衛戦力として雇わないか、と」

「防衛戦力?」

「ここは形はどうあれDCに喧嘩売っちまったんだ。遅かれ早かれ、あの『G』がある以上は狙われる可能性がある。その時のための備えってことだろう?」

「レッド…あんたいつの間に」

「集まってきな臭い話してりゃいやでも気になるさ」

 頭を掻き、飄々としながらもその仕草には妙な緊張感がある。

 それを見て、リミアにはジャコビアスの表情がほんのわずかに変わった気がした。

「こちらの方は、パイロットで?」

「え?ええ。よくわかりましたね」

「職業柄、ですかね」

「?」

 

 

「翔、調子はどうだ?」

「兄さん…いえチーフ」

 信一に声を掛けられた翔がバイパスチェック作業の手を止め、顔を上げる。

「二人の時は兄さんで構わんよ」

 信一は妹を気遣い、優しく微笑む。

「『G』…やっぱり難しいのか?」

「うん…一応右手の予備パーツは用意できたけど、それでG鉱石の残りは0…動かすためのジョイント部のパーツが足りてないわ」

「そうか…とにかく少し休め。寝てないんだろう?ほら、コーヒー持ってきてやったぞ」

「兄さん…ありがとう…」

 翔が受け取った途端、ドッグ内にけたたましい警報音が鳴り響いた。

「ええ!?」

「まさか、敵か!?」

 

 

「ベル…」

 施設内の集中治療室の前で、マーガレットはずっとその眠り続ける姿を見守っていた。

(わたしに力がないから…あなたに頼り過ぎたから…)

 何度となく胸の中で繰り返す。

 容体はだいぶ安定したようだが、いまだに目覚める気配がない。

 病棟スタッフから休むよう促されるが、それでも離れる気になれなかった。

 その耳にも、警報音が聞こえマーガレットは顔を上げた。

「敵…!?」

 

 

「我々は戦力を展開します!よろしいですな!?」

 ジャコビアスが備え付けのインカムで橘博士に確認を取る。

「状況を逐次送っていただければ…ええ」

 ジャコビアスはインカムを置き、リミア達に向き合った。

「失礼。大変申し訳ないが、FSSに協力を要請したい」

「協力、ですか!?」

「我々も戦闘を想定していたわけではないのです。人員…MSのパイロットが不足している。そちらのレッド・ウェイライン氏に、是非とも手を貸して頂きたい」

「レッドに!?」

「つまり、営業プレゼン用に機体を用意しちゃいるが、そいつに全機乗れるだけのパイロットまでは連れてきてないってことだろ」

 レッドがため息をつきながら立ち上がる。

「いいの?」

「しゃーねーだろ?リミア、おまえも来てくれ。たぶん俺用に機体のセットアップがいる」

「さすがパイロットだ…決断が早くて助かる。さあこちらへ」

 

 

 マーガレットが輸送艇に戻ると、ART-1の修理と補給は完了していた。

 そして、前回はまだ組み立て中だったライフルもすでに完成している。

 それをセットし、ART-1のコクピットに滑り込む。

「ベル…行ってくるわ…今度はわたしが守る番よ」

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