スーパーロボット大戦The Inheritors 作:oneshot<a>man
「これがわが社の持つ最高の機体だ」
レッドとリミアはジャコビアスの所有するガウ級の格納庫でその機体と対面した。
「これは…ジムの改修機にしてもこんなの見たことないぞ」
「レッド!これジーラインじゃないの…ジムとは別系列の機体よ」
「あ?」
その機体、ジーラインを見上げ興奮気味にリミアがまくし立てる。
「ジムシリーズと違ってガンダムの廉価版ではなく、ガンダムそのものの性能を引き継いで量産を目指した機体ね。コストとか色んな理由で試作機が少数だけ作られて計画が中止になったって聞いてるわ」
「なんだってそんなレア物を民間軍事会社が持ってんだ」
「そんなことわかんないわよ…でもわたしが知ってるジーラインよりさらに改修されてる感じね…思ったよりいけるかもしれないわ」
「お気に召しましたかな?私も自分の機体の準備があるので失礼する」
ジャコビアスがそうとだけ告げて奥に去った。
「あのおっさんもMS乗りか…」
その背中を見ながら、レッドも覚悟を決めた。
「とりあえず乗ってから考えるか…」
*
パイロットスーツに着替え、ジーラインのコクピットに入ったレッドは目を見張った。
「リミア、こいつ全天周囲モニターにリニアシートまで付いてるぞ」
<こっちも確認したわ…電子系統もジェネレーターも最新とまではいかないけどかなり改修されてるわね>
「ますますどうなってんだ…」
新品の感触がするシートに身を預けながら、レッドは機体のシステムに火を入れた。
*
<来たな。状況を説明する>
レッドのジーラインがガウを出ると、ジャコビアスから通信が入る。
<敵MS部隊は山間部を抜け陸路で接近中だ。我々テミス第一小隊が最前線に展開。ジーラインは指定ラインでの中距離支援を任せる>
ジーラインのシステムに周辺マップと指定座標が送られてくる。
<私の機体はサブジェネレーターと冷却システムを僚機に分担している。ガウで上空警戒を行いながら援護射撃を行う>
「了解」
ジーラインのスペックを確認すると、背面にはビームキャノンが二門搭載されている。
それに加えてルナチタニウム製の弾丸を装填されたショットガンに、大型ビームライフル。これなら多少はG鉱石にも対抗できるだろう。
「…!あのおっさんの機体、ゲルググか」
機体に登録されたジャコビアス機の情報を見て、レッドは呟いた。
なんだか自分以外の何かかがこの状況を利用し、動かしているような気がする。
戦闘前に嫌な感触に囚われ、レッドは舌打ちしながらヘルメットのバイザーを下げた。
*
<飛行している機体。そちらは我々と連携の意思があるか確認したい>
突然入った通信に、マーガレットはマイクのスイッチを入れた。
「こちらはネイザーの防衛のため独断で出撃しています。部隊を展開されるのでしたらそちらの指揮に従います」
<了解した。私は民間軍事会社テミスのジャコビアス・ノード。協力に感謝する>
「データリンクします。IFF(機体識別番号)の割り当てお願いします」
すぐさまART-1にデータと各機の識別番号が送信される。
通信先のジャコビアスがデータ越しにマップのネイザー本部の前方を示した。
<施設と隣接した湖は砂州によるラグーン(潟湖)のため水上から直接の強襲は考えづらいが、無警戒というわけにもいかん。航空戦力は一機でも多い方がありがたい。ネイザーのバトルヘリと共に警戒と攻撃支援をお願いする>
「了解。ですがこちらは可変機です。状況によっては近接戦闘を行います。それでも?」
それを聞いたジャコビアスが少し笑ったようにマーガレットには感じられた。
<承知した…頼もしいお嬢さんだ>
通信が終わり、データを再度頭に叩き込み機体をさらに上昇させる。
ベルのいないART-1でどこまでやれるか、未知数だがやるしかない。
覚悟を決め、ART-1を旋回させた。
「…このジーライン…これわたしが『リング』内で見付けて連邦に渡した機体じゃないの」
半年前、あのベルと出会ったときにリングで乗っていた機体がなぜかここにある。
連邦へ引き渡す前に念のため個別のID番号を控え、ART-1にも登録していた。
それにテミスから送られてきたIDが一致している。
「いったい何が起きてるの…?」
*
戦端を開いたのはテミスの部隊だった。
ジムクゥエルがビームライフルでけん制する。
ビームの雨を受け、ザクを中心とした部隊が飛び出す。
ザクマシンガンを構え、狙いを定めた瞬間に全身をワイヤーネットが絡み付く。
後方のジムクゥエルの放ったクレイバズーカ搭載のワイヤーネット弾だ。
それによって動きの鈍ったザクマシンガンに、ビームの直撃が入った。
ジャコビアスが放った高出力ビームライフルの一撃だ。
さらにそのビームが数発直撃し、ザクはついに沈黙した。
同じような戦法でテミスは次々と敵機を捉えていった。
*
「なるほど自信満々なわけだ。あのおっさん、やるじゃないか」
テミスのパイロットはかなり訓練されているようだ。レッドの目から見てもだいぶ動きがいい。
といってもG鉱石製の機体に決定打が足りていないのも事実だ。
レーダーで捕捉しているうち、数機がこちらの防衛ライン上に向かってきている。
「このまま抜けられるのはまずいな…こっちに引き付けるか」
ビームキャノンを展開し、射線が目立つよう横に薙ぐように撃つ。
進行していた部隊がレッドの存在に気付いたようだ。
レーダ光点が進路を変え、レッドの方に向かっている。
「よしいいぞ…来い」
大型ライフルを構え、エネルギーをチャージする。
ジェガンの強化プラン用の大型高出力ライフルの試作品だ。
なぜこんなものをテミスが持っているわからないが、ある物は最大限に利用するしかない。
木々の間から見える機体を狙い、最大出力でライフルを撃つ。
それに貫かれ、ザクが倒れるのが見える。
森を抜けてグフがマシンガンを構えホバー機動で迫る。
ライフルを撃つがその厚い装甲に容易くはじかれる。
「くそ!チャージしないと無理か!」
レッドはジーライン膝からビームサーベルを取り出し構える。
ブースト機動で接近。
そのまますれ違いざまにサーベルを振るうも、わずかに動きを止めただけ。
しかし、そのわずかな動きをレッドは見逃さなかった。
「これなら、どうだ!」
至近距離でチャージの済んだライフルを発砲する。
腹部を撃ちぬかれ、ドムが膝をつき倒れ込んだ。
だが安堵したのもつかの間だった。
さらに後続部隊の接近を告げる警報が鳴る。
「動きが早いな…」
ビームライフルをチャージし、構える。
三機のグフ部隊が見えた。
目標を捉え、トリガーを引く。
「!?オーバーヒートだと!」
連続使用した高出力ライフルが過剰加熱で警告音を発していた。
「まずい!」
すぐさまビームキャノンに切り替え撃つも、シールドであっさり防がれる。
「ええい!」
ショットガンを構えた瞬間、戦場に青い雷光が走った。
「何…!?」
目の前のグフ全てが一瞬にしてビームに貫かれ、さらにビームサーベルの刃で切り裂かれあっという間にスクラップと化していた。
「青い…ゲルググだと…!?」
レッドは自らの窮地を救った存在を見て、全身の血が逆流するような凄まじい緊張感を覚えていた。
(こいつ…やばいぞ…!)
「ユーマか!」
その姿を精密射撃用ゴーグル越しに見たジャコビアスは叫んでいた。
奴が現れた。
それが意味することはただ一つ。
「やはり、あのレッド・ウェイラインは…」