彼と彼女の青い春   作:鉄夜

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第2話

土曜日。

 

恭介は自宅を出て待ち合わせをしている駅前の広場にある銅像の前へと向かっていた。

 

家が隣同士なので恭介が迎えに行くつもりであったが、直前に立花から『恋人感がない』と言われ、待ち合わせをする事となった。

 

(恋人デートねぇ・・・アイツと出かけるのなんてしょっちゅうだし、今更なんか変わんのかねぇ。)

 

恭介の脳裏には、迎えに行くと決まってワイシャツに黒色のパーカーを羽織り、短パン姿で家から出てくる立花の姿が浮かんでいた。

 

(服も見なれてるし・・・やっぱ新鮮味ねぇよなぁ。)

 

そんなことを考えてるうちに、待ち合わせの場所に到着した。

 

(30分前、上等だな。)

 

恭介がスマホで時間を確認していると、背後から声がかかる。

 

「ちょっ!まだ30分前やで!?

この真夏に死ぬ気か!?」

 

「あのなぁ、そりゃあお互い様だ・・・ろ・・・。」

 

立花の声に振り返りるとそこにいた彼女の姿に、京介は言葉を失った。

 

白いミニスカートの半袖ワンピース。

 

普段はポニーテールに結んでいる髪はおろし、その上からニット帽を被っていた。

 

「お・・・おっす。」

 

照れながらも挨拶をする立花に、恭介は我に返る

 

「え・・・立花お前、いつものパーカーは?」

 

「あれは幼なじみと出かける時の服やから・・・。

今日は・・・えっと・・・初めての彼氏とのデートやから。」

 

立花の顔がどんどん赤くなる。

 

「頑張って・・・みた////」

 

顔を真っ赤にして話す立花を見て恭介は、

 

(やべぇ俺の彼女めっちゃ可愛い。)

 

心の中で悶えていた。

 

(はぁ?なにこの可愛い生き物俺こんな奴と幼なじみとか言ってベタベタくっついてたのよく今まで理性持ったな我ながらすげぇよホント俺のためにおしゃれしてくるとか最高かよ今すぐ抱きしめたいマジで生きててよかった神に感謝ハレルヤ!)

 

「恭介!なぁ恭介!」

 

「お・・・おう!」

 

「黙ってないでなんか言うてや!恥ずいやろ!」

 

「いや・・・その・・・うーん・・・。」

 

恭介は腕を組んで考え込む。

 

「今頭の中でおどけたい自分と素直になりたい自分が殺しあってる。」

 

「・・・できれば素直に感想言ってくれると嬉しいねんけど。」

 

「めちゃくちゃ可愛い最高まじで超抱きしめたい!」

 

「いや素直すぎるやろ!ってこら待て抱きしめんのはなし!離れろ!人が見とるやろ!」

 

近づいてくる恭介を引き離す。

 

「ほら、こんな所にずっとおらんとはよ行こうや。」

 

「お・・・おう、そうだな、行くか。」

 

恭介はそう言って立花に手を差し出す。

 

「・・・」

 

「立花?」

 

「おりゃあ!」

 

「うお!?」

 

立花は恭介に飛びついて腕を組んできた。

 

「こっちの方がデートっぽいやろ。」

 

「お・・・お前なぁ。」

 

「なにぃ?照れてんの?」

 

「うるせぇ。

ほら行くぞ。」

 

「はいはい。」

 

2人は腕を組んだまま歩き始める。

 

「さて、まずどこ行こか?」

 

「そうさなぁ、無難に映画でも見に行くか。」

 

「お?カップルらしく恋愛映画でも見る?」

 

「それもいいけど・・・リベンジャーズ・ラストゲームがリバイバル上映中だってよ。」

 

「マジで!?行こ行こ!

あれもう1回劇場で見たかってん!」

 

「そう言うと思ったよ。

ってこらこら、引っ張るな。」

 

急かす立花に腕を引かれ、恭介は映画館へと向かう。

 

#####

 

数分後。

 

映画館に着いたふたりは隣同士の席に座り映画を見ていた。

 

(やっぱいい映画ってのは何回みてもいいもんだな。

・・・それに。)

 

恭介が隣にいる立花を横目で見る。

 

立花はシーンによってコロコロと表情を変えていた。

 

時に楽しそうに笑顔になり、時にハラハラとした表情をし、そして時には瞳に涙を浮かばせる。

 

(いつ見ても飽きねぇな。)

 

そう思いつつ涙を流す立花にハンカチを差し出した。

 

それに対し立花は小さく礼を言うと、涙を拭いて恭介に返す。

 

ここまでは2人にとっていつもの光景。

 

だがここからは違った。

 

映画のラスト、主人公が恋人とダンスを踊る

(この後って確かキスシーンだよな・・・。)

 

恭介が席の手すりに目をやると、立花がそこに手を置いていた。

 

(幼なじみじゃなく、恋人としてのデートか・・・。)

 

恭介は立花の手の上にそっと自分の手を重ねる。

 

そして横目で彼女の様子を確認すると、

 

(・・・っ//////)

 

立花の顔は真っ赤に染っていた。

 

(おいおい・・・それはずるいだろ。)

 

立花の反応に恭介の顔も自然と赤くなり、それを悟られぬように顔を背けた。

 

#####

 

「やっぱり何回みても最っ高やなぁ!」

 

映画を見たあと昼食に訪れたファミリーレストランで、立花は興奮気味に話す。

 

「キャプテン・アフリカが敵軍の群れ相手に諦めんと立ち上がる姿ホントかっこええよなぁ!」

 

「ああ。」

 

「ヒーローが全員集合するシーンもめちゃくちゃ暑いし!」

 

「そうだな。」

 

「味方もやけど敵も普通にカッコええのがたまらんよなぁ!」

 

「だな。」

 

「・・・恭介、なんやさっきから人の顔みてニヤニヤしよって。」

 

「別にー?

さっき手ぇ握られて赤面してた女と同一人物とは思えなくてなぁ。」

 

「なっ!?

あ・・・あれはアンタが急に手を握ってくるからやろ!」

 

「幼なじみじゃなく恋人らしいことしたいんだろ?」

 

「それはそうやけど・・・不意打ちとか卑怯やん!」

 

「いやお前もさっき急に腕組んできたろうが!」

 

「うう・・・」

 

立花は反論できずに京介を恨めしそうに睨む。

 

「これで勝ったと思うなよ恭介ぇ・・・。」

 

「いやなんの勝負だよ。

それにしてもお前・・・。」

 

恭介の視線の先には立花の目の前に並べられた大量の料理があった。

 

「相変わらずよく食うなぁ。

その細い体のどこにそれだけの量が入るんだ?

年相応に太るの気にしたりしねぇの? 」

 

「うち昔っからどんだけ食っても太らへんのよなぁ。」

 

「お前それ絶対クラスの女子連中の前で言うなよ?

俺自分の彼女がバラバラ死体で見つかるなんて嫌だからな?」

 

そんなやり取りを混じえつつ、恭介は料理を食べる立花の姿を頬杖をついてみていた。

 

「〜♪」

 

(ったく、美味そうに食いやがって。)

 

上機嫌で食事を頬張る立花の笑顔を見て、

恭介の頬が自然と緩む。

 

そして、自然と次の言葉が彼の口から出てくる。

 

「立花。」

 

「んー?」

 

「俺お前のこと好きだわ。」

 

「んっ!?」

 

恭介の言葉に驚いた立花の体がビクッと小さく反応したかと思えば、今度は苦しそうに自分の胸を叩き、

水を勢いよく飲んでから顔を上げてこちらを睨みつける。

 

「急に何言い出すんや!

うちを殺す気か!?」

 

「悪い悪い・・・ちゃんと言っとかないとなぁ思ってな。」

 

立花は落ち着いてから、改めて京介に聞く。

 

「好きって・・・いつから?」

 

「多分昔から。」

 

「たぶんて。」

 

「まぁ聞け。」

 

なにか言おうとする立花を手を前に出して制してから、恭介は話し出す。

 

「この間お前に付き合おうって言われた時は正直この女とち狂ってんのかって思った。」

 

「おい。」

 

「でもあの後家に帰ってから、自分でも気持ち悪いほど舞い上がった。

だが最初は形はどうあれ初めての彼女が出来たからだと思ってた。

でも・・・今日お前とデートして、俺の為にお洒落してくれたり、こっちから手を繋いだだけで顔真っ赤にしたり、そうやって美味そうに飯食ったりしてるのを見て・・・それがすごく愛しいってと思った。

これがきっと好きってことなんだろうな。」

 

恭介がそう言うと、何故か立花は顔を伏せる。

 

「アカンよそんなん・・・フェアやない・・・。」

 

「何が?」

 

「アンタはウチのこと好きやのに・・・ウチはアンタに対する気持ちがまだハッキリしてへん・・・。

アンタは気持ちを真っ直ぐぶつけてくれたのに・・・ウチはそれに対して同等なものを返せるか分からへん。

・・・こんなんフェアやないよ。」

 

顔を俯かせる立花のテーブル上に置かれた片手を恭介は優しく握る。

 

「アンフェア上等だ。

俺の事を好きでもそうじゃなくても、答えが出るまでいくらでも待ってやる。」

 

「恭介・・・。」

 

「だからそんなしみったれた顔すんな。

デートはまだこれからなんだぞ?」

 

「・・・うん・・・なぁ恭介。」

 

「ん?」

 

「ありがとうな。」

 

「おう、寛大な俺様に感謝しろよ。」

 

「ふふ、調子にのんな。」

 

恭介の言葉に、立花は自然と笑顔になる。

 

「なぁ、恭介。

次はどこ行く。」

 

「そうだなぁ・・・そこら辺適当にぶらついてからプラネタリウムに行くか。

行きたいって言ってたよな。」

 

「覚えてくれてたんや。」

 

「忘れるかよ。

愛しのハニーのリクエストだからな。」

 

「ははは、ありがと、ダーリン。」

 

そんな風にじゃれ合いながら、2人は食事を楽しんだ。

 

#####

 

数分後、アクセサリーショップ。

 

「どうよ、このサングラス。

なかなか似合ってんだろ。」

 

「ヤクザの若頭みたいやで?」

 

「おいおい、俺はC○I:マイアミのホ○イショイメージしたつもりなんだけど?

好きだろホ○イショ」

 

「嫌いやないけどウチはマ○クの方が好きやな。」

 

「ニューヨーク派だったか。」

 

立花と会話しながら恭介は店の商品を見渡す。

 

「立花、お前こういうの似合うんじゃないか?」

 

「赤い花のネックレス?何の話やろ。」

 

「えーっと・・・アネモネのネックレスだってよ。」

 

「へー、アネモネかぁ。

花言葉は・・・。」

 

立花はスマートフォンでアネモネの花言葉を調べる。

 

「『はかない恋』『恋の苦しみ』『見放された』『見捨てられた』・・・」

 

「プレゼント向きやないなぁ。」

 

「・・・プラネタリウム行くか。」

 

「・・・せやな。」

 

「スマンが先に外に出ててくれ。

ちょっとトイレ行ってくる。」

 

「わかった。」

 

恭介がトイレに行ってる間、立花は店の外でスマホを弄って待っていた。

 

すると、通行人の男2人が声をかけてくる。

 

「ねぇ君、今1人?」

 

「・・・悪いけどウチ、今連れと来てるから。」

 

立花は面倒くさそうに流そうとするが、男達はしつこく話しかける。

 

「じゃあその連れの子も一緒にでいいから遊ばない?」

 

「俺達今暇なんだよね〜、お茶だけでもいいからさぁ。」

 

「・・・はぁ、あのなぁ。」

 

と、立花が怒鳴ろうとした時。

 

「すまねぇ立花、待たせたなぁ。」

 

立花の背後から京介が現れた。

 

「ヒッ・・・!」

 

男達は恭介の姿に怯えた声を出す。

 

恭介は、先程立花と見てい黒色のサングラスを装着していた。

 

普通は脅えはしないだろうが。

 

身長が180センチを超える恭介が黒いワイシャツにサングラスを付けている姿はカタギには見えなかった。

 

「あぁ?なんだぁ?そいつらは。」

 

わざとらしくドスをきかせて話す恭介に、立花は何かを思いついたように彼の腕に抱きつく。

 

「ねぇ恭ちゃん聞いてやぁ。

なんかこの人らが遊んでくれるらしいでぇ?」

 

「えっ。」

 

急に猫なで声でそう言った立花に、男達は顔を引き攣らせる。

 

「・・・へぇ、そりゃあいい。」

 

恭介はサングラスを僅かに下にずらし、男達を睨みつけて話す。

 

「どう相手してくれんだ?兄ちゃん達・・・。」

 

そう言いながら迫ってくる恭介に男達は後ずさる。

 

「えっと・・・その・・・すいませんでしたァ!」

 

男達は走ってその場から逃げ出した。

 

「・・・恭介、そのサングラス結局買うたんや。」

 

「お前が絡まれてるの見て急いで買った。」

 

「あの茶番するためだけに買うたんかい。

てかなんやさっきの、完全にヤクザやないか。」

 

「お前こそ恭ちゃんとか言ってノリノリだったじゃねぇか。」

 

「おもろかったやろ?」

 

「最高だった。」

 

2人はハイタッチをして笑いあった。

 

「ほないこか、プラネタリウム。」

 

「あ、ちょっと待った。」

 

恭介はポケットから小さな紙袋を取りだした。

 

「それ・・・ネックレス?」

 

「開けてみ?」

 

恭介に促され袋を開けると、

中から出てきたのは赤いアネモネのネックレスだった。

 

「これってさっきの・・・。」

 

「トイレついでに調べたんだが、アネモネは色で花言葉が変わるらしい。

赤いアネモネの花言葉は・・・あー・・・。」

 

恭介は照れくさそうに頭を搔いていう。

 

「『君を愛す』って言うらしい。」

 

「・・・」

 

立花は手に持ったネックレスをぼーっと見つめていた。

 

「流石にクサすぎると思ったけど、

改めて俺の気持ちを形で伝えたいと思ってな。」

 

恭介がそう言うと、立花はネックレスを胸の前で大事そうにギュッと握る。

 

(・・・うん、答え出たかも。)

 

「お・・・おい、なんか言えよ。」

 

「恭介、折角やしこれ付けてぇや。」

 

「お、おう。」

 

恭介はネックレスを受け取ると、それを立花の首に付ける。

そしてそのまま離れようとした時。

 

「よし、出来たzッ!!」

 

立花が恭介にキスをした。

 

「・・・」

 

「・・・フフッ 」

 

突然のことに呆然とする恭介をみて、

立花はイタズラが成功したかのように笑う。

 

「えっと・・・立花、今のは。」

 

「よし、ほなプラネタリウム行こか。」

 

「いや、行こかじゃなくて今n」

 

「いやぁ、楽しみやなぁ。

プラネタリウムなんてあんま行ったことないし。」

 

「おい、話聞けって!

ちょっと!?立花さーん!?」

 

自分の言葉を無視して手を引いて歩いていく立花と共に、恭介はプラネタリウムへと向かった。

 

#####

 

数分後、2人はプラネタリウムのカップルシートに仰向けになり、天井のモニターを眺めていた。

 

今回の演目は流星がテーマのようで、

モニターには綺麗な流れ星の映像が流れていた。

 

「綺麗やな。」

 

「ああ、そうだな。」

 

「・・・」

 

「・・・いや、ちょっと待て。」

 

「なんや、どないしたん?」

 

「なんか自然に流されてるけど。

さっきのアレの話済んでねぇぞ。」

 

「チッ、誤魔化されへんか。」

 

「誤魔化せるわけないだろ、あんな不意打ちしといて。」

 

「さっきのは・・・アレや、ネックレスのお礼。

それに・・・。」

 

「それに?」

 

立花は頬を微かに染めて、横になりながら潤んだ瞳で恭介を見つめる。

 

「答え・・・出たから。」

 

「・・・」

 

「な・・・なんか言ってや。」

 

「いや、ファミレスであんな事言ってたくせに案外ちょろかったなぁって。」

 

「ムードっちゅうもんを知らんのか己は。」

 

そう言って顔を赤くする立花に恭介は笑顔を向ける。

 

「・・・立花。」

 

「ん?」

 

「愛してるぜ。」

 

自分の目を真っ直ぐに見つめて言う恭介に、立花は恥ずかしそうに顔を伏せるが、すぐに顔を上げて微笑みを向ける。

 

「ウチも・・・ウチも恭介のこと、大好き。」

 

それから2人は自然に顔を近づけ、少し長めに口付けをする。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

そして少しの間、見つめ合うと立花が口を開く。

 

「これで星がホンモンやったらもっとええねんけどな。」

 

「ムードってもんを知らんのか己は。

ていうかそんなに星好きだったか?」

 

「いや別に。」

 

「なんでここ来たいって言ったんだよお前。」

 

「だって恋人っぽいやん。」

 

「恋人は恋人でもバカップルだけどな。」

 

「ははは、人前でキスしてもうてるからな。」

 

「健人と刹那のこと、もうバカに出来ねぇな。」

 

「別にええんやない、ウチらはこれぐらいが丁度ええんよ。」

 

「・・・だな。」

 

そんな会話をしながら2人は額を合わせて見つめ合う。

 

「まぁ、安心しろ。

これから星なんかよりおもしれぇもん沢山見せてやる。」

 

「フフ、それなりに期待しとくわ。」

 

そう言って再び口付けを交わす2人を、作り物の星空が照らしていた。

 

#####

 

夕方。

 

日が沈み出した頃、2人は腕を組んで町を歩いていた。

 

「遊んだなー。」

 

「せやなぁ。

ええ時間やし、今日は解散する。」

 

「そうだなぁ・・・ん?」

 

突然、恭介のスマホの着信音が鳴り響いた。

 

画面には『母さん』と表示されていた。

 

「おばさんから?」

 

「ああ、すまん、ちょっと出る。」

 

恭介は母親からの電話に出る。

 

「もしもし母さん?

何かあったのか?

・・・そうか、分かった。

あんまり無理するなよ。

それじゃあ。」

 

短い会話をして、恭介は電話を切った。

 

「どないしたん?」

 

「ん?ああ。

母さん今日仕事で帰れないってさ。」

 

「ふうん・・・夕飯とかどうするん?」

 

「今日は適当にコンビニで弁当でも買うかな。」

 

「・・・なぁ、ウチ作ろか?」

 

「え。」

 

「何やその顔。

別にしょっちゅう作りに行っとるやろ。」

 

「確かにそうだが・・・俺とお前は今彼氏彼女だろ。」

 

「それがどうかしたんか?」

 

「正直、あんな雰囲気になった後で襲わない自信が無い。」

 

「はっきり言うたなー。」

 

「流石に付き合って数日で手ぇ出すの気が引けるし、

それに・・・お前も心の準備とかいるだろうしな。」

 

「・・・」

 

「だから安心しろ。

そういうのはもう少し時間をかけてゆっくり・・・って何電話してんの?」

 

「あ、もしもしオトン?

ウチこのまま恭介の家行ってくるわ

そんでそのまま泊まるから。」

 

「え、あの・・・ちょっと。」

 

「それと・・・。」

 

立花は恭介にも聞こえるように、大きめの声で通話口に向かって、

 

「明日の晩飯赤飯な。」

 

そう言って電話を切った。

 

「・・・」

 

その様子を見て呆然とする恭介に、

立花はずいっと近寄って言う。

 

「で、どないする?」

 

#####

 

「はぁ〜、気持ち〜。」

 

「せやなぁ〜。」

 

あの後ドラッグストアに寄って必要な物を買い、

恭介の家でコトを済ませた2人は一緒に風呂に入っていた。

 

立花が恭介の足の上に背中を向けて座る。

 

「・・・ヤっちまったなー。」

 

「ヤってもうたなー。」

 

「・・・はぁぁぁぁ。」

 

「どないしたんや、ため息なんて吐いて。」

 

「いや、自分自身の節操の無さに呆れちまってなぁ。」

 

「付き合って数日の幼なじみの彼女に手ぇ出しただけやろ。

気にせんでええって。」

 

「やめてくれ、自己嫌悪で死にたくなる。」

 

恭介は立花の体を後ろから優しく抱きしめる。

 

「大丈夫か?

体痛くないか?」

 

「うん、大丈夫。

ていうか実際体験して見て思ってんけど・・・。」

 

「どうかしたか?」

 

「エロゲのヒロインみたいには喋れんもんやね。

声出すだけで精一杯やったわ。」

 

「そりゃあリアルでコトの最中にあれこれ喋ってたらただの変な女だからな。」

 

「でもそれがエロゲの味って感じがしてええんやけどな。」

 

「それな〜。」

 

「「はぁ〜」」

 

2人は湯船の中で脱力する。

 

そしてしばらく間をあけてから、立花が口開く。

 

「・・・でも、幸せやったなぁ。」

 

「・・・そっか。

そりゃよかった。」

 

本当に幸せそうに笑う立花に、恭介も小さく微笑む。

 

「さて、風呂上がったら何する?」

 

「とりあえず飯。

ウチ作る言うたけどピザ頼まん?」

 

「いいねぇ、なんか映画見ながら食うか。」

 

「リベンジャーズ!」

 

「何回見るんだよ。」

 

「いい映画は何回みてもええもんやの!」

 

「まぁいいけどな。」

 

「そんでさぁ!それ終わったら桃○やろや!」

 

「何年?」

 

「100」

 

「貴様さては寝かさない気だな。」

 

「冗談やって。

20年で許したる。」

 

「どっちにしろオール確定じゃねぇか。」

 

「なんや、ヒヨってんの?

情けないダーリンやなぁ。」

 

「いやお前が俺にボロ負けしてギャン泣きしねぇか心配なだけだ。」

 

「「あぁ?」」

 

「・・・なんか賭けるか?」

 

「せやなぁ・・・敗者が勝者の言うことをなんでも聞くってのはどうや?」

 

「ほう、言ったな。

吐いた唾飲むなよこの野郎。

覚悟しろよ、どエロいことさせてやるからな。」

 

「上等や、その代わりウチが買ったら腹減ってる時に椅子にしばりつけてM〇Wのアイ〇ーキッチンの動画をループで見せたるからな。」

 

「鬼か貴様。」

 

2人はその後もしばらく湯船に浸かりながらじゃれ合うのだった。

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