戦車が保管されている場所に到着して、まず最初にやることは、戦車でお湯を沸かして紅茶を飲むことでしょ。
「柳田、どの種類の紅茶にするか?」
「キャンディはありますか?」
「あるよ」
「それでお願いします」
日本の戦車に電気ケトルなんて本当は付いてないが、今の日本軍ではコーヒーを飲んだりする為に付けてもらっている。
何なら隣にはIHコンロもある。人数減らせる分だけ使えるスペースが広くなるからな。
まぁチトの中を見たらタッチパネルがあったり、自動追尾機能が搭載されていたりと、もはやチトでは無い。
どっちかと言うと10式戦車の装備を付けたよくわからない戦車となっている。
とりあえず坂さえ登れれば何でも良い。
「このケトル少し遅いんだよな。改良型が欲しい」
「蓄電して持ち運び出来るところは便利ですけどね」
「この戦車、燃費が心配になってきたわ」
「さて戦車に所属と番号を振らないといけないのか」
「番号はどうするんですか?」
「安着にチト1号にしようかな」
そんな話をしていると沸いたので、ポットにお湯を入れる。
即席のもあるんだけど、時間がある時はこっちの方が良い感じ。
そしてポットからカップに紅茶を注いだ。
柳田にも渡して飲んでみるとやっぱ美味しいな。
戦車道してた時も、ポットあったな。
マジで寒い北海道の冬によく活躍していた。
「柳田、ペンキってどっかにあるか?」
「私は分からないです」
「そうか、なら後で買いに行くか」
「まさかですけど、手書きなんですか?」
「そうだぞ。今までの部隊の戦車の過半数は俺が手書きで書いてた」
「プロに頼んでるのかと思ってしました」
「プロに頼んでも良いが、戦車なんて頼めない」
「確かに戦車は頼めませんね」
そんな会話をしていると携帯に連絡が来ていた。
田邊から連絡が来てるみたいだな。
内容を見てみると、日曜日に学園に迎えに来てとの事。
また、横浜まで行かないといけないのか。
「携帯見て面倒くさそうな顔をしてますけど、どうしたんですか?」
「田邊が迎えに来てって連絡をしてきた」
「聖グロ学園までですか?」
「そうだ、田邊拾うなら車で行くか」
「まぁそう言う時もありますよ」
「…運転面倒いが、とりあえず戦車でも動かすか」
「やっぱり後一人ほど欲しいですね」
「この戦車さ、運転するだけなら一人でいけそうだな」
「操縦席の前のモニターで360度見えるようになってますね」
「ここまでハイテクなら、新しい戦車をいちから開発すれば良いのに」
「チハよりは使えそうですけどね」
「機動力上げたチハは占領の時に使い易いんだけど、それ以外がな」
「威力が無さすぎて、どうしようも無いですよ」
陸軍が出来てとりあえず戦車を作ろうとした時に最初に作ったのが何故か、新規開発の戦車ではなく帝国陸軍のチハであった。
その頃に上層部にまだ戦車開発の経験を持った人が居なかった為に、チハは帝国陸軍時代よりも稼働制以外の性能が悪かった。
何なら数台は暴発した。
途中から戦車開発の経験を持つ東雲さんを引き抜いてきたから、よくなったがな。
「てかどう言う仕様なのか全く分からないんだが」
「仕様の説明書が欲しいですね」
「とりあえず中入るか」
紅茶を片付けて中に入って配置に着く。
てかイラン戦線の他に行くところあるのか?
この戦車使ってもやる事がなきゃ、意味ないし、防衛だけなら自衛隊だけで良いしな。
「中佐、戦車を動かします」
柳田がそう言うと、戦車が動き始めた。
坂を降りて平面な場所に向かっている。
「車長の所でも外がモニターで見れるって本当にこの戦車すごいな」
「この戦車いくらするんでしょうね」
「考えたく無い金額が掛かってそうではある」
多分柳田は、動物だろうが人だろうが避ける気はなく何も考えずにフルスピードで走っているが、この学園は敷地が広いと言う事がわかった。
北海道にいた時は学校は普通の学校だったからな。
その代わり平野が広がってたけど。
「前に他の戦車がいるな、戦車道の奴らか」
「どうします?」
「別に
「承知しました」
流石に、敵意の無い奴に砲撃するほど落ちぶれてはいない。
てか戦車道用の実弾はこちらには無いので、一般の実弾で撃った場合に相手の戦車と乗組員がどうなるのだろうか。
戦車道用の戦車には乗員室に装甲材が設置されている。
戦争用の実弾で戦車道用の戦車に撃った事がないので、少し気になるが、廃棄する戦車を何処かから貰って試してみるか。
「こちら側に戦車が急回転し始めました」
「了解、砲撃の準備をする」
自動装填でも砲手がいなければ撃てない。
てか砲手の前にもモニターあるんだが、この戦車何を目指してるんだ?
こんなに電気食うものばかり置いてあるが、燃費は大丈夫なのか?
ガソスタ行くのめんどくさいんだけどな。
「中佐、相手の戦車の履帯が切れたようで、止まりました」
「……はい?履帯切れる事があるとは思うが、そんな簡単に切れるか?」
「多分ですが整備をしていなかったんだと思います」
「助けに行った方が良いかこれ?」
「もし素人なら混乱している可能性があるので、助けに行った方が良いかと思いますよ」
「しょうがない、助けに行くか」
俺と柳田は、戦車から出て、確かM3中戦車の方へ向かう。
向かってる途中に相手の戦車から煤で服が汚れた学生が出てきた。
あの服、洗うの大変そうだな。
M3戦車から合計6人も出てきたんだが、そんなに乗れるのか。
なんか、イランで捕虜捕まえてる時もこんな感じだったな。
「一応君達を助けには来たんだが、思ったより無事だな」
「一応怪我人は居ません。ありがとうございます」
「中佐、この子達どうします?」
「集合場所とかあるはずだから送っても良いんだが、乗れきれなくないか?」
「出来れば送ってもらえるとありがたいです」
「タンクデサント出来る?」
「タンクデサント?」
「戦車の上に乗って移動するやつ」
「この様子だと出来なさそうですね」
6人はそんな事やるの?って顔をしてこっちをみている。
そんな顔されても補助席使って四人しか乗れないしな。
「中佐、この人達に戦車を操縦させれば良いのではないですか」
「にしても二人余るんだよな」
俺は別にタンクデサントで移動するのは慣れているし、何ならそのまま戦闘になった事もあるから良いんだが、柳田は慣れているのかは俺は知らない。言うて乗るだけだし、落ちたら応急手当てすれば解決するからなんとかなるか。
「この戦車に乗らしてもらっても良いんですか」
「別に良いが二人ほど外だけど良いか?」
「私は良いよー」
「私も大丈夫!」
「私はどっちでも良いよ〜」
「……」コク
「梓が良いなら大丈夫」
「なんか全員良さそうだから、乗るのは……車長、操縦手、砲手、通信手かな」
「チトの操縦の仕方は、M3よりやり易いとは思いますよ」
「とりあえず入る人は入ってもらって残った2人は直接戦車に乗れそうか?」
「……」コク
「これって落ちたらどうなるの〜」
「走って頑張って乗ってきてくれ」
「怪我する事は無いの?」
「怪我はしても、直ぐには死なないから大丈夫」
「中佐って、死ななきゃ何とかなるって思ってますよね」
「流石にここが日本だからそう思ってるだけだぞ」
「流石にそうですよね。私の同僚も出血からの感染症で亡くなりましたし」
「実際人間が死ぬのは、伝染病とか飢えだよな」
「紗希ちゃん、この人達は一体どう言うところにいたの」
「この子って紗希って名前なんだな」
「名前も教えてなかったのにくっ付いていたの?」
「……」コク
「多分ですけど、殺されても文句言えない不審者でしたね」
「そりゃそうだけど、流石に殺しはしないぞ」
「この人達ちょー怖いんだけど」
そんな会話をしていると戦車が動き始めた。
この戦車の後方部に初めて乗ったが、戦車の上から九七式自動砲が打てるように窪みがある。
この窪み、元の設計には無いが、上層部が良かれと思いチハにも存在はしていたがチハは小さすぎて使いずらかった、なんなら戦車の上から撃たんしな。
「柳田、九七式自動砲って持ってたっけ?」
「私は持ってないですね」
「柳田が最初に配属された場合にはあったか?」
「無かったですね。何なら銃も統一されていませんでしたし」
「どこに配属だったんだ?」
「佐渡大尉の所でした」
「あの歩兵の所か、そりゃ銃も統一されてないよな」
今はとりあえず銃弾が同じであれば何でも良くなってきてるが、最初は
89式5.56mm小銃を改造した六八式(6.5mm)歩兵自動小銃と三八式歩兵銃を基にした、六七式(5.56mm)歩兵自動小銃を作る予定であったが、生産能力が追いつかなかった為、そこに加えて蔵から出してきた三八式や四式自動小銃、九九式小銃とその他、とりあえずあった物や警察が暴力団から押収したAKなどを使っていた。
ただの歩兵用の銃だけでも不足気味だったので、拳銃なんてとりあえず打てればよかった。
それが今でも続いている。
「私が貰ったのは六八式でした」
「こっちの戦車部隊には出来るだけ歩兵用に六七式配備して貰ってた」
「……?」
「沙希ちゃん、私達には分からない話だよ〜」
話をしてる間にまた戦車は進んでいく。
最高時速まで出してるおかげで、多分落ちたら追いつかないし、普通に怪我する。
この子達だけでも良いから落ちないようにするか。
沙希って子は、落ちそうで怖いのか分からんが、柳田の服を掴んでいる。
こんな事になるなら、予備燃料のドラム缶をつけておけばよかった。
「次の戦車から手すりを多めにつけてもらおう」
「ここまでスピード出さらなら簡易的な人員輸送も戦車で良いですよね」
「後は、生産能力をどうにかしてほしいくらいかな」
「イラン戦線から撤退する時も、銃弾が不足してましたよね」
「米軍と同じ弾の六七式は有難い存在って事が分かったな」
「スピード速すぎる気がするけど大丈夫だよね?」
「多分大丈夫だと思います」
「正直に言うと俺たちも数回しか乗ってないから分からん」
「死なば諸共ですね」
「なんか私達、大変な人にお世話になってるかも?」
「新しい戦車に乗れることなんて滅多に無いから、貴重な体験だと思うけどな」
「その貴重な体験が死にそうになるじゃん」
「まぁそう言う時もありますよね」
多分このチトは試作車1号とかだと思う。
量産車も多分だがあまり変わらなそうではあるが、改善点は特に無さそうだし強いて言うなら、新規で開発してほしいくらいである。
「そろそろ着くんじゃないか?」
「倉庫が見えてきたので、もう直ぐですね」
まだ他の人は来てないようで遠目から蝶野さんしか見当たらない。
人が居なければ、そこまで長居する可能性も少なくなると思ったが、一番引っ付いてくる奴が、柳田の隣にいたわ。
そんな事を思っていると戦車が止まった。
後何話後に完結するんでしょうか。
心配になってきました。