それは、ある冬の日の午後だった。
「待てよルナ! 待てったら!」
天気は生憎の曇り空だった。手編みのマフラーが風になびく。秘密の帰り道、私はルナを全速力で追いかけていた。
木陰の中を縦横無尽。テンション最高潮のルナは学校終わりの疲れもどこ吹く風に、一心不乱に駆けていく。
「そんなに走ったら危ないだろ! いったん止まれよ!」
防寒ブーツは底が厚くて地面の感覚が分かりづらい。おまけに、枝葉に邪魔されて薄くしか積もらなかった雪は、踏みつけると氷の板になって滑りやすいったらありゃしない。
私は何度も止まってこけながら追いかけていたが、ルナは天性の才能を生かして転びやすい箇所を事前に察知し、的確な足取りで最短距離を進んでいく。才能の無駄遣いって、きっとああいうことを言うんだな。
「早くしないと! 時間がかかるんだ!」
しかし、神速の足運びもそれまでだった。
森を抜けるとしばらくレンガの道を進んでいく。しかし樹木の遮りのないそこには山のように雪が積もり、さらに畑主さんがお休みだったことも相まって、雪かきされず白いクッションが放置されていた。
そして、土を蹴り上げレンガの道を踏んだ瞬間。ルナはちょっと信じられないようなスピードで盛大にすっ転ぶ。頑丈なウマ娘じゃなければ、多分保護者が心配してるレベル。
そしてそのまま等速直線運動で雪の塊に頭から突き刺さる。追いかけてきた私もルナの足につまづいてすっ転び、畑の中に大きな杭が2本刺さった。
「ぷはぁ!」
「ぶはぁッ!」
頭を引き抜くと、ルナさんに貰ったニット帽もマフラーも雪まみれでびしょびしょだ。
おまけに先の道には庭まで厚さ50cmほど雪がこんもり積もっている。
「……ルナ」
「……行くしかない」
ここまで急いだ手前、引き返す選択肢はない。
私とルナは大股で雪をかき分け、雪中行軍のように庭まで進んでいった。
だから当然、家に着くころには全身真っ白けで、そんな雪だるまになった私たちを、キッチンで準備をしていたルナさんは出迎えた。
「二人とも、今日は随分早かったわね。おかえりなさい」
「ただいま! 母さん、売ってたよ!」
挨拶も早々に、ルナは嬉々としてランドセルからりんごを3つ取り出した。
ルナさんはその1つを手に取ると、顔に近づけたり軽く叩いたりして品定めする。
「うん、色良し、大きさ良し、それに……硬さ良し。大丈夫よ」
「やった!」
合格のサインを貰って、ルナは小さくガッツポーズをした。
同時に、私はあーあとため息混じりに肩を落とす。
実は今日は午前授業だからと、おやつにルナさんがパイを焼く手はずだった。
そこで旬のりんご、それも大きくて硬くて酸味のあるパイ向きのものが手に入れば、今日のおやつはアップルパイに。無ければカスタードパイにする約束していたのだ。
ルナはりんごに目が無かった。そして、りんごを愛するが故に小学生にして並々ならぬこだわりを持っていた。
まず、品種はふじ以外認めない。ジョナゴールドも紅玉もダメ。青りんごなんてもっての外だ。更に、りんごを食べるときは必ず紅茶を淹れて、そこに角砂糖を2個溶かすのだ。曰く、『酸味を和らげ引き立てる黄金比』らしい。
その至高のティータイム実現のため、ルナは学校が終わるとあちこちの青果店を回ってお眼鏡に適うりんごを探していた。そのせいでかなりの遠回りをして、気づけば焼き上げ時間ギリギリになっていたというのが事の真相だ。
「それじゃあ、手伝ってくれる人は手を挙げて~」
「はいっ!」
無事目的を果たしたルナは勢い良く手を挙げる。
散々買い出しに付き合わされ疲労困憊の私もルナに手首を掴まれ、強制的に手を挙げさせられた。
「ありがとう、まずは着替えて濡れたコートを干してくること。それが終わったら、手を洗って集合!」
「はーい!」
「はーい」
嬉々とした返事と棒読みの返事が被る。とりあえず雪に濡れた服は重くて仕方がないので、私はルナに連れられるまま2階に上がっていった。
数分後、私とルナはエプロン姿に着替え、キッチンに降りる。
大きなテーブルには調理器具が並び、各々位置についたら作業開始だ。
まず、冷蔵庫からパイ生地を取り出して常温に戻す。その間にりんご2個を薄切りにして、片手鍋の中で砂糖と無塩バターで煮ていく。レモン汁を加えて中火で水分が無くなるまで混ぜたら、下地となるコンポートの完成だ。コンポートを鍋ごと冷蔵庫で冷やしているうちに天板にキッチンシートを広げたら、パイ生地を敷いて円形に切っていく。この作業は何故か毎回ルナがやりたがるのでルナにやらせるとして、私はちまちまと切れ端を加工していく。網模様になる細い板状の生地と、三つ編みの縁飾りになる棒状の生地と、厚みを出すための土手になる生地だ。土手になる生地は切れ端をまとめるだけでいいのだが、板状の生地と棒状の生地は寸法が決まっていて中々大変。ちょっとしたパズルみたいだ。ここはルナさんが考えてやるので、私は大人しく土手をこねることに専念する。各々のパーツが仕上がったらオーブンを200℃に予熱し、いよいよ見慣れたパイの形を組み上げていく。円形の生地の上に冷やしたコンポートを乗せ、端に飛び出さないよう均一に広げていく。鍋が空になったらこねた生地で土手を縁取り、板状の生地を格子状に組んでいく。最後に三つ編みにした生地で縁飾りを作ったら、全体に溶いた卵黄を縫って艶を出す。そしてオーブンで40分ほど焼き上げたら、ルナの大好物、ふじりんごのアップルパイの完成だ。
「シリウス、降りておいで。焼き上がったわよ」
ルナさんの声に耳がピクリと揺れ、私はキッチンに戻る。
一方ルナはというと、パイが焼き上がるまでオーブンの窓に張りついていたらしい。見てて飽きないのかよ。ホント不思議だ。
ミトンを使って窯から天板を取り出す。熱気を帯びるそれを布越しにテーブルに乗せると、ぶわりと小麦とバターの香ばしさと焼いたりんごの芳香が部屋を包んだ。
ちなみにウマ娘は鼻が利くのでシナモンはあまり入れない。普通の人よりきつく味を感じてしまうからだ。
粗熱が取れたころ、ルナさんは棚から長いパン切り包丁を取り出してパイを割っていく。
サクサクの生地を割ることなく綺麗に6等分に切り分ける手捌きに、私とルナは毎度感心していた。
「列強諸国の中国分割みたいだ」
「ルナ、歴史の資料集の見過ぎ」
包丁の引いた切れ目から金色の中身が覗くと、ピーッと汽笛を鳴らしてケトルが湧く。
「さて、後は紅茶を淹れて、誰がお皿を取ってくるかな?」
「右の棚にあるやつでいい?」
ルドルフがよいしょと皿に手を伸ばす。手の余った私はフォークと紙ナプキンを引き出しから取り出すのだった。
「それじゃあ、二人ともよく働きました」
「「「いただきます!」」」
3時を知らせる鳩時計がポッポと鳴き、私たちはティータイムとしゃれこんだ。
紅茶は相変わらず美味しい。いい茶葉はいい淹れ方をすれば、それに応えてくれると誰かが言っていた。
しかし、フォークにはなかなか手が付けられない。ルナはそんな私の様子を見て、頬を膨らませたまま話しかける。
「シリウス、食べないのかい?」
皿の上にはまだ手つかずのアップルパイが二切れ残っていた。
私がアップルパイ作りに乗り気じゃなかった理由がこれだ。
私はアップルパイ……というか、火の通した果物が全般的に好きじゃなかった。
個人的に果物の良さはその彩り、食感、みずみずしさだと思っている。その良さを全て潰してしまう〝加熱〟という調理法が、私には自然への冒涜に思えてならなかった。
それでも、自分で作ったものな以上責任持って一切れは口にするのだが、りんごのシャキシャキ感は皆無だし、ジャムとグミの中間のような食感は口の中で潰れて不快だ。それに、混じり気が多すぎて薄まったりんごの風味が更に感じられない。ルナさんの腕を借りているから美味しい部類に入るのだろうが、ジャンルごと苦手な私にはとても美味しいとは思えなかった。
「……ルナ、私がアップルパイあんまり好きじゃないってこと知ってるだろ」
「うん、だから一切れ貰えるかなって」
「それも計算の内かルナッ! まぁいい、一切れやるよ」
「やりぃ」
「うっせぇ!」
ルナもきっと、そんな私を気遣ってるんだろう。一切れを頂戴するのは決まって私がもう一切れを完食した時だ。
「こんなんなら、いっそのことカスタードが入ってりゃ少しはマシなのに……」
ルナが駆けずり回らなければ食べられたはずのカスタードパイを想像して曇る。
「なんだって!?」
すると、その呟きが聞こえていたのか、ルナが突然声を荒げた。
「なんだ?」
「カスタードが入ったアップルパイはアップルパイじゃない! 何というかそれは、りんごが入ったただのカスタードパイだ!!」
ルナは顔をしかめていた。謂れのない訴えが私を襲う。
いや初耳なんだが。お前のその飽くなきこだわり集。
「それを言うなら、私はそもそも果物に火を通すのが間違ってると思うけどな」
「あの透き通った金色がいいんじゃないか!」
ルナがまた頬を膨らませる。でも、今度中に入ってるのは空気だな。反論の空気だ。
「二人とも、喧嘩はおしまい」
ルナさんはニコニコ微笑みながらカップを揺らしている。
アップルパイは苦手だ。でも、こんなじゃれ合いは嫌いじゃない。
そう思いながら紅茶をすする。酸味がふわっと花を通り抜けて、いい気分を温めていく。
また、冬にこんな日が来るといい。ただし今度は、カスタードパイで。
心の中で、誰にも気づかれないよう呟いた。
本当は、声に出しておくべきだったのかもしれない。
だって、そんな日はついに二度と来なかったのだから。
* * * * *
それは、ある夏の日の午後だった。
「見ろシリウス、ケーキが白い!」
「はいはい待ってるから早く進め」
「ティラミス、ティラミスあった!」
「ブームはもう終わってるけどな」
「あっ、にんじんケーキ最後の1個だ」
「次のが来るって! あと一度にそんな皿に盛んな!」
夏休み最初の週末を迎えた8月某日。
多くの親子連れで賑わうの駅ナカのバイキングの一角で、ひと際はしゃぐ帰国子女の姿がそこにあった。
隣から感じる女帝の視線が痛い。
「シリウス」
「言うな」
「なぁシリウス」
「言うなって」
「あれが本当にお前の姉貴分なのか……?」
「まぁ、するかしないかで言ったらあぁいうことする奴だよアイツは……」
「魔窟だな、シンボリ家」
「うるせぇよ」
24度を超えた息苦しい外の空気に比べ、館内はレジャー施設ということもあってか冷房が行き届き、涼しく快適な非日常を来客に提供していた。
「そういえば、何故ティラミスなんだ? 今の流行はパンナコッタあたりだと思うが……」
「アイツ、春までアメリカいたから流行疎いんだよ。たぶん」
1990年、平成の世を迎えた日本ではイタリア料理……いわゆる「イタ飯」ブームの最中、雑誌で特集が組まれたことによりティラミスが大流行。戦後初の本格的なスイーツブームだった。
その後93年のナタデココや94年のパンナコッタ、04年と18年のタピオカドリンクなど、90年代以降スイーツにはメガヒット級の流行が度々起こったが、その後大衆文化に根付いたのはティラミス程度だったことを思うと……盛者必衰だな。
——まぁ、こんな話をしたところで、喜ぶのはメジロのお嬢さん程度しかいないと思うが。
「シリウス、付け合わせはスープにしたんだな」
「甘いもんばっかだと舌が痺れる。ていうかルドルフ、相変わらず紅茶なんだな。ここのおすすめはコーヒーだぞ?」
「アイスティーだから、話は別だ」
4人掛けのテーブル席に座ると、ルドルフは自然と私の向かいに腰を落とす。
それを見計らってかエアグルーヴは私の隣に座り、おおよそ無難な配置が完成した。
「それでシリウス、その隣に座っている彼女が私に紹介したいっていう……」
「改めて、エアグルーヴです。シンボリルドルフ先輩……でいいんですよね?」
「あぁ、学年的には君の1年先輩だからね」
エアグルーヴは右手で前髪を整えると、膝に手を置きぺこりとお辞儀をする。
こういう所作は相変わらず出来た奴だ。クラスの中心になることだけはある。
「しかし、エアグルーヴというと……あのダイナカールさんの娘さんか!」
「母を知ってるんですか?」
「あぁ、クラスメイトの1人と少し繋がりがあってね、よく話を聞くんだ」
——そういえば、猫舌って上の子とか一人っ子に多いらしいな。
「そうですか……相変わらずお母様は目立ちたがる」
「え、なんか言ったか?」
ボソッと聞こえた声に辺りを見回したが、薄紅の唇は開かず。
「あの、つかぬ事をお伺いしますが、先輩はアップルパイお好きなんですか?」
「えっ、あぁ、母がよく焼いてくれてね。好物なんだ」
「ふじりんごと角砂糖はコイツのマストアイテムだからな~」
「ふじの持つあの果肉の重さと濃厚さ……あれに勝るりんごなど無い」
「ただし、カスタードの入ってないやつ限定。だろ?」
「当然だ。カスタードなんぞ眼中之釘。リンゴとバターの風味を邪魔する異物に過ぎない」
「はいはいそれじゃ私は次の皿取ってくるからな」
クラスメイトの疑問に補足を挟むと、あっという間に二人の世界に没入していく。
次のケーキを取りに立つと、隣の席でエアグルーヴは親指を唇に当てくすりと笑っていた。
「シリウスと本当に仲がいいんですね。うちの妹を思い出しました」
「あぁ、あの子とは叔母と姪だからね。昔からのよしみさ」
年齢差にワンクッション挟んだ、悪くない空気感。
こうして雑談は3人で始まった。はずだった、のだが……
「——それで、館シリーズが父の書斎に置いてありまして……父の仕事を待つ間、よく読んでいたんです」
「小学生で綾辻行人を読破するとは……私は小川洋子が愛読書だよ」
「最近直木賞取りましたからね……村上春樹は?」
「悪くはないが、直感的すぎるのはね。もう少し理論的な物運びの方が趣味に合うかな」
「同感です。海外作家ですがマイケル・クライトンも中々」
「あれはいい。作者の教養が伺えるよ」
凄い。全くついていけない。
席に帰ってきて早々、非常にハイコンテクストな会話が異次元のスピードで展開されていく。
コイツらの頭のカバーを外して、中のフロッピーディスクを覗きたいくらいだ。
その模様はとても和やかなものだが、手元のケーキとカップに全く手を付けない程に議論は白熱している。
私はなんとなく面倒くさそうだったので、ブリュレとコーヒー片手に気配を消していた。が——
「そういえば、シリウスはどうなんだい?」
あえなくルドルフに話題を振られてしまった。鋭い眼光が品定めするよう、私に突き刺さる。
「私か!?」
「そうだ、お前は先輩と長く一緒にいたそうじゃないか。誰かいないのか?」
そう言われたところで思いつく奴はいない。私は特定の作家を好きになるということが無かった。
別に小説が嫌いなわけではない。
作家では無く、作品を愛する。感じたことを、感じたままに、色眼鏡なく。
私と小説はそういう付き合い方なのだ。
記憶の索引をペラペラとめくって、適当な作家名を探す。
しかし、作家の名前と顔は紐づいても、その先が繋がらない。
思えば生い立ちとか作風とか文体とか、そういう切り口で本を読んだことは今までなかった。
……いや、一度だけあったかもしれない。
それは本を読む面白さを、作品を通じて人と繋がることの楽しさを私に教えてくれた——
「ベアトリクス・ポター……ピーターラビットの」
眉をひそめ、聞こえるか聞こえないかのか小声で呟いた。
優劣をつけるつもりはないが、小説や純文学のジャンルに比べ、この歳で絵本は幼稚に見られるかもしれない……と思ったからだ。
右隣と向こう正面を向く。ルドルフもエアグルーヴも、呆気に取られている様子だった。
言わなきゃ良かったと下唇を噛む。気を紛らわそうとガトーショコラを口に運んだ時、エアグルーヴが口を開いた。
「成程……児童文学か! 確かに、ポターの単語数を極限まで減らした洗練された文、解剖学を駆使した挿絵や湖水地方の自然への真摯な姿勢には目を見張るものがある! 盲点だった!」
耳をピンと立て、驚きと悔しさをフォークを握る指先に滲ませる鹿毛。
ホッと息が抜け、安心した背中が背もたれのクッションにもたれ掛かる。
「覚えてくれてたんだな、シリウス」
紫の瞳はおおよその答えを予想していたように、赤い瞳に目くばせをした。
「え、そんな驚くやつだったか今の?」
「当たり前だ! ベアトリクス・ポターは後のくまのプーさんのA・A・ミルンやきかんしゃトーマスのウィルバート・オードリー牧師に影響を与えたという、イギリス児童文学界重鎮中の重鎮! 真っ先にその名が出てくるのなんて目の付け所がいいな、シリウス!」
「え、あぁ、ありが……とな?」
私としては印象深い作家を挙げただけなのだが、右隣のコイツにとってはいい刺激になったらしい。
酔ってもいないのに私の左肩に腕を回してぶんぶんと揺らす様を、ルドルフは少し寂しそうな笑顔で見ていた。
「いい友達を持ったな、シリウス」
その時、ハッと思い出した。今日ここに2人を引き合わせた目的に。
友達のいないルドルフ、友達のエアグルーヴ。
「友達作りを手伝ってやる」。そう約束したのだから……
私は腕を払いのけて、シリマナイトの輝きを見つめた。
「それでだなエアグルーヴ、今日はお前に——」
「そうだルドルフ先輩! また会うことってできますか!? 夏休みも始まったばかりですし、今度時間が会う時にでも!」
「っ遮んなよ! 今言いたかったのに!」
「あぁいいよ、いつにする?」
「お前も早いなルドルフ!」
驚天動地、シュラシュシュシュ。
電光石火の勢いで築かれた交友関係が次回の予定をサクサクと決めていく。
駅で配っていた地図をテーブルに広げながら、赤ペンが流行りのスポットに次々とマーカーを打っていった。
「……火木はパスな。教官の夏期講習がある」
私は諦めてメモ帳の予定をゲロり、最後に取っておいた苺をかじって皿を空にする。
ルドルフと意見を交わすエアグルーヴの横顔はとても眩しかった。
尖った線の顔は少し微笑んでいても威厳を感じさせる。実際はかわいい系の顔立ちなのに眉だけで誤魔化しているルドルフとは違う、本物の美形だった。
「そろそろおかわり行きません? 時間も結構経ってますし……」
「っ忘れてたぁ! シリウス、行こう!」
「話ばっかしてるからだろ。荷物は持ってけよ」
「次は何を取ります? 私はチーズケーキが結構気に入ったんですが」
「パンナコッタ試したいな、ルドルフは?」
「ん、アップルパイ」
「変わんねぇな……」
嬉しそうな敬語が音頭を取り、カチャリと音を立て、テーブルの端に皿が4枚積み重なる。
私達は通りがかりの店員が回収をするのを見計らって、それから人溢れる戦場に向かった。