生徒会の犬となりまして   作:秋月月日

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 二話連続投稿です。


My Song:1

 

 この世界には、Girls Dead Monsterと呼ばれるロックバンドが存在する。

 岩沢というメインボーカルがリーダーを務めているバンドで、メンバーの四人は全員女子生徒。いつもいつも生徒会とか教師たちとかの目を盗む形でゲリラライブを行う事で悪名を轟かせている。一応、一般生徒達に絶対の人気を誇っている。そういう生徒会所属の俺もファンの一人だったりするのだが……これを生徒会内で公にするわけにはいかないしなぁ。立場ってモンがある訳だし。

 

「オタクである事を隠して生活するってこんな感じなんだろうなぁ」

 

「そうなのか? 俺にはよく分からないが……」

 

「そりゃそうだろ、お前記憶喪失だし」

 

 というか、音無って生前はオタクじゃなさそうだから、どっちにしても気持ちなんて分からねえだろうけどな。

 ――とか言ってみたり。

 そして言うのが遅れたが、現在、俺と音無は学校の廊下を歩いている。俺と音無の身長が違いすぎるから分からないかもしれないが、これでも俺たちは同級生の三年生だ。……今チビって言った奴表出ろ。

 コーヒーを飲みながら俺の言葉に相槌を打っていた音無はチラッと俺を横目で見る。

 

「そういえば前から気になってたんだが、春野とゆりって知り合いなのか?」

 

「ああ、そうだけど? どうした突然」

 

 音無は気まずそうに「えっとー……」と言い、

 

「ゆりが春野をどうしてあんなに嫌ってるのか、ちょっと気になってな……」

 

「あー……確かに、何も知らねえ立場じゃ気になっても仕方ねえよなぁ」

 

 でも、あんまり人には話したくねえんだよなぁ。俺とゆりが敵対した理由を知ってるのって、この世界では俺とゆりを除けば日向だけだし。あんまり聞いて気持ちがいい話でもないし……というか、全面的に俺に否がある訳だし……。

 そんな事を考えていたのが表情に出てしまっていたのか、音無は慌てたように手を振って来た。

 

「べ、別に話したくないというなら無理して話さなくてもいいんだ! ただちょっと、気になったってだけだからさ」

 

「まぁ、話したくねえのは本当だし……その時になれば自ずと話すだろうから、ちょっと待っててくれねえか?」

 

「あ、ああ」

 

 ……ったく、やっぱり俺にシリアスな空気は似合わねえな。時々キレてると勘違いされるぐれえだし、そろそろなんとかしなきゃだなぁこの性格……。

 と、ここで話題を変えよう。

 そもそもの問題として、どうして俺と音無が二人仲良く廊下を歩いているのかというと。

 

「それにしても、まだガルデモの連中とノーコンタクトだったとはな……挨拶巡り遅すぎじゃね?」

 

「最近はいろいろと忙しかったんだよっ。トルネードとかギルド降下作戦とか……」

 

「その全てに俺は関与してるわけだがな。っつーか主に敵側として」

 

 そして全く止める事が出来ない訳だ。本当、死んだ世界戦線は無駄にしつこくてしぶといから厄介なんだよ、もう。

 音無が死んだ世界戦線に入ってから少しが経ったわけだが、コイツはまだガルデモこと陽動部隊の連中に挨拶はおろか顔出しすらしていないらしい。よくそんなんでトルネードを順調に達成できたな、と皮肉を言ってみたが、アレは指示通りに動いただけだから、という面白くもない返答をされてしまった。もっとアドリブ頑張れよ新入りくん。

 角を曲がり、階段に足をかける。

 

「ガルデモの連中はいろんな意味で癖があるかんなぁ……あんまり嫌われねえようにしろよ?」

 

「それは誰に対しても気を付けてるけど……お前の方はどうなんだよ。ゆりが『あいつは戦線の裏切者なのよ!』って言うぐらいだし、相当嫌われてるんじゃないか?」

 

「うーん、それはどうなんだろう……」

 

 まぁ確かに、嫌われていても仕方がない訳ではあるな。立場的には敵同士だし、別に普段から親しいって訳でもねえ。良く言えば程良い距離感を保ってるって感じなんだろうが……向こうがどう思ってるか、だよなぁ。

 ガルデモの歌はどれもこれもが大好きだから、ファンとしてなら受け入れてもらえるかもしれねえけど。

 ――と、そんな会話で時間を潰していると、いつのまにか目的地に到達していた。少し開いた扉の向こうからはギターやドラムなどのビートや歌声なんかが響いてきている。今は一応授業中なわけだから注意した方が良いんだろうが……まぁ別にそこまでとやかく言う必要はないだろう。教師陣も動いてねえしな。

 おそらく『Crow Song』であろう曲が終わったところで扉を開き、教室内へと足を踏み入れる。

 

「久しぶり―。新入りくんが挨拶してえっつーんで連れて来てやったぞー」

 

「あ、ゆりの婚約者だ」

 

 どうしよう、岩沢の言っている意味がよく分からない。

 

「誰が婚約者だ誰が。俺とアイツは敵同士、そしてアイツは別に俺の事を好いちゃいねえ。それなのに俺がアイツの婚約者? ハッ、冗談も大概にして欲しいな」

 

「そうなのか? だけどこの間、あたしにゆりについて熱弁してきたじゃないか。あれ、えーっと、何だったかな……ゆりのリーダー性とか性格だとか、他にも可愛さとかスタイルについても話してきたっけか」

 

「あ、それってこの間の事か? 確かに春野、あの時はやけにゆりについてべらべら喋ってたなぁ。いやまぁ、あれはあたしたちが酒を飲ませまくってたせいかもしれねえけどさ」

 

「まぁ、ひさ子先輩もあの時は結構大胆でしたけどねー」

 

「うん。覚えてないかもしれないけど、平気で下着姿になってたよね」

 

 ふむふむ、ひさ子の下着姿とな?

 

「関根さんや、それについての話をもうちょっと詳しぶべらぁあっ!?」

 

「死ねぇえええっ!」

 

 見事な右ストレートだった。俺の左頬を完璧に捉え、尚且つ捩じり込むように抉り込むように撃ち込まれた右拳は俺の身体を宙に浮かばせ、凄まじい勢いで俺の身体を教室の壁まで弾き飛ばした。――直後、激痛に支配される俺のボディ。

 どがぐしゃぁっ! とでも言えばいいのか、とにかく凄い物音を立てて壁にぶつかった俺は力なく床へとダウン。気絶するまでにはいっていないが、手足がぴくぴくと痙攣してしまって上手く動いてくれない。これはあれだ、気絶した方がマシっていう感じの状態だ。

 殺虫剤を掛けられたゴキブリ状態な俺から視線を外し、加害者――ひさ子はパンパンと両手を払う。

 

「ったく……これだから男ってのは油断ならない……」

 

「そうなのか? あたしは音楽しかやってこなかったからな……男についてはよく分からない」

 

「ああ、岩沢はずっとそのままでいてくれればいいんだ」

 

「ひさ子……」

 

「岩沢……」

 

 何だこの百合展開。やっぱりお前らガールズラブなのかよ。

 

「因みにあたしはみゆきちとラッブラブだよ!」

 

「も、もう、しおり~ん!」

 

「あ、そっちはどうでもいいんで。どうぞ好き勝手にラブラブしてろ」

 

「「春野先輩ぃぃ!?」」

 

 がーん! と露骨に悲しむ後輩が二人。いや、お前らって絶対的な弄られキャラじゃんかよ忘れたのか?

 うわーん、と泣きついてくる後輩二人を引き離しつつ、俺は傍で呆然としている音無に声をかける。

 

「っつー訳で、こんな変態集団が戦線の陽動部隊こと『Girls Dead Monster』のメンバーだ。別にあえて仲良くする必要はねえと思うが……まぁ今後の作戦の為にも知り合いにぐれえはなっといて損はねえと思うぜ?」

 

「何で春野が作戦に有意義な事を勧めるんだ? 一応お前、俺たちの敵なんだろう?」

 

「うーん、それはそうなんだがな……俺は個人的にゃあガルデモのファンだから、なるたけガルデモのライブの成功のために動いてやってるんだよ。因みに、ガルデモが正規のライブをするときはほとんどが俺頼みだよ」

 

「そうなのか?」

 

 音無の疑問の声に百合空間から帰投したひさ子が「ああ」と返す。

 

「こいつは戦線から抜けた奴だが、何だかんだで味方みたいなもんなんだよ。――で、普通にライブがしたいときはコイツに頼んで生徒会と教師に掛け合ってもらってるって訳だ。この学校じゃあ生徒会は結構権利を持ってるから、生徒会さえ納得させちまえばこっちのものなのさ」

 

「いつも無理ばっかりさせられる俺の身にもなってほしいんだがな」

 

「あははっ。あんたはゆりの為になる事だったら喜んでやってくれるから、こっちとしても頼みやすいんだよ」

 

「…………うるせえよ」

 

 本当、俺がゆりの事が好きだっつーのはどこまで広まっているんだかなぁ。本人にだけは知られねえでほしいんだが……それも時間の問題かもしれんね。

 ――と、そこで、そんなタイミングで。

 よいしょっ、と岩沢がギターを持って教室から出て行こうと動き始めた。

 

「あれ? 岩沢、どっかに行くのか?」

 

「ん。ああ。ちょっと知り合いのところにね」

 

 そう言って、岩沢は教室からフェードアウトした。何か急いでいるようにも見えたが……気のせいか?

 そんな俺の心を読みとったのか、何故かニヤニヤしているひさ子がこんな爆弾発言を投下した。

 

「岩沢に男がデキたんだよ」

 

 ……………………Pardon?

 

 




 感想・批評・評価など、お待ちしております。

 次回もお楽しみに!
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