ごめんなさい!
「はぁ」
いつものように素材狩りのルーティーンをこなしギルドに帰還したモモンガは溜息をついた。
そんなモモンガにすれ違うNPCであるメイド達は頭を下げる。
そうしてその姿そのままに力なく幽鬼のように進み。
ナザリック地下大墳墓最奥。玉座の間にたどり着いた。
「えっ?」
そこでモモンガは固まった。
NPCアルベド控える玉座に茶色いモフモフが存在したからだ。
それはモゾモゾと動き座り心地を確認していたのかもしれない。暫くするとモモンガからの視線に気づき、そちらも固まった!
「よ、よお!」
その茶色いモフモフは取り繕うようにモモンガに声を掛けてきた。
「あ!は、はい!えーと、あなたは?」
「ボクか?ボクはウォールナット!」
よく見れば茶色を主体にいくつもの縞模様を持つ、ネズミのようだ。
そのような獣人種族はいたのだろうか?モモンガは首を傾げた。
「はあ。こんにちは。ウォールナットさん。私はモモンガといいます」
とりあえずモモンガは挨拶をし頭を下げる。
「おっ!ああ、こんにちは。おまえ、骨のくせに礼儀いいなー」
「いえいえ。オンゲで挨拶は基本ですよ?」
「あ?やーまあそうだな。じゃーよろしくな?モモンガ。えーっと悪い。誰も居ないようだったから、お邪魔していた」
「……それは。ギルド侵攻ということですか?」
ウォールナットのその言葉に、オーバーロードの窪んだ眼窩の奥。赤い光が燃え上がる。
「ん?いや違う違う!そんなつもりはない!」
「……」
一転、剣呑な圧を発するモモンガにウォールナットは慌てて否定した!
ウォールナットはそういったゲームの事情も理解していた。拠点侵略は最大の敵対行為となることを。
「ボクは迷い込んだだけだよ!お前らをどうこうするつもりはない!」
両手を上げ降伏の意思を全面に伝えつつ、玉座からゆっくりと移動する。
「そうですか。それならいいですが」
オーバーロードであるモモンガからの凄まじい圧が消え、ウォールナットはふうと息を吐いた。
「それはそうとギルド認証を受けてない状態でここまでよくこれましたね?」
モモンガは疑問を口にする。
「まあそれはね。それはともかく。いろいろ見て回ったけど、ここの拠点は凄いな!」
「あっ!そう思います?」
ウォールナットの言葉にモモンガのテンションが跳ね上がる!
「うん。どの階層もこれでもかって素材と資金をかき集め、限界ぎりぎりまでの馬鹿みたいなこだわりでNPCも造り込まれてて。これはすごいな!悪くない」
「ふふっ!そうでしょう?そうなんですよ!このナザリックの全ては、仲間達のやり込みの結晶ですから!」
こぶしを握り力説するシマリスに、リッチは大きく頷く!
「だろうなぁ!そいつらとも、話してみたいぜ!」
「あっ……」
その言葉に固まるモモンガにウォールナットは首を傾げた。
「ん?」
「実は私以外はもう、しばらくログインできてなくて……」
「え?あーんー。そうか。それは悪い事いっちゃったな」
「いえ……」
オンラインゲームではよくあることだ。ウォールナットはその事情を察し、モモンガの肩を優しく叩いた。
「んー」
「ウォールナットさん?」
そのまま視線を彷徨わせるシマリスに、モモンガは首を傾げた。
「んー。なるほど、なるほどね。なあモモンガ。次はボクのダチを連れてきてもいいか?」
「え?はい。もちろんですよ!」
「よし!まずはボクとフレンド登録しようぜ?」
「はい!」
「じゃあ、またな!」
「はい!また!」
そうしてウォールナットはログアウトし消えた。
だがモモンガはそのまま動かず。いやひさしぶりの人とのやりとりに心が乱れしばらく動くことができなかったのだった。
*****
「んー。『ユグドラシル』?しらんなー。どんなマイナーゲームよ?まあいいか。モモンガはいい奴だったし、またからかいにいってやろう!」
VRヘッドセットを外したクルミは、大きく伸びをしつつ呟いた。