ナザリック地下大墳墓最奥、玉座の間。
現れるその気配にモモンガは視線を向けた。
「よう!」
「はろー!はろはろー!!」
荘厳な玉座の間に相応しくない浮かれた言葉が投げかけられた。
「あっ!ウォールナットさん!チサトさん!こんにちは!」
ログインした二人にモモンガも挨拶を返した。
「ところでウォールナットさん。そろそろチサトさんのレベルあげなんて、どうです?」
モモンガはさりげなくウォールナットにだけ聞こえるよう、話しかけた。
『ユグドラシル』はオンラインRPGであるから、戦闘をこなしてのキャラ育成と、強くなれば行ける場所が増えていくという冒険。そういったところが醍醐味ではないかと思っていたからだった。
「ん?あーそうなー」
「ここらは高LV対象エリアですからね。やっぱりゲーム開始時の街からがいいと思うんですよ。転移ですぐですし」
「なるほど。あとはまーチサト次第だな……」
二人の視線の先。チサトは玉座の間をきょろきょろしつつ、ふらふらとさ迷っていた。
「ほーほーほー。しっかしここはほんと立派ねー!どこぞのお城?」
柱に手を触れつつその周りを回ってみたり。観光客のノリ全開であった。
「いえいえ。ここは城ではなくてですねー。我らがギルド拠点『ナザリック地下大墳墓』となります!」
そんなチサトの問いにモモンガが答える。
「なざりっく、ちかー、だいふんぼー!お?」
「ふうん。ここは墓なのか」
モモンガの答えにチサトとウォールナットはそれぞれの反応を示す。
「ええ!そうなります」
「お、お墓なの?あー。ピラミッドとかー古墳的な?」
「地下というからにはカタコンベかもな」
これだけ豪華で荘厳な玉座の間。それが巨大な墓の奥のものといわれると、やはり見方も変わるというものだ。ウォールナットとチサトは改めて見まわしつつ、ゆっくりと息をもらした。
「あー!それでモモさんは骨なんだ?」
がってん!っと手を打ちチサトが声を上げる。
「え?!いやーちょっと違いますかね……。私の仲間達もアンデットばかりってわけでもないですし……」
モモンガは慌ててチサトの言葉に訂正をいれた。
「ふーん。そうゆうことならリコリスはうってつけだったな」
「?」
その横でのウォールナットの呟きにモモンガは首を傾げる。
「モモンガは知らないのか。ほらこの花だ」
ウォールナットはいつの間にか手に持つ赤い花をモモンガに見せた。
細いいくつもの赤い花弁が中央の花を囲うように上へと弧を描く。まるで静かに燃える炎のような花だった。
「わー!すごく綺麗な花ですね!」
モモンガは興味深そうにそれを見つめる。
(ブループラネットさんなら知っていたのかな?もしかすると六層に生えているのかもしれないな……)
モモンガは友人に思いをはせた。
「リコリス。彼岸花さ。こいつはよく墓地に植えられる花なんだ」
「それは何故です?」
「こいつは有毒でな。墓が動物やらに荒らされないようにと、その守りだったわけさ」
「!」
「天上の花という意味で曼殊沙華とも言われるが、墓花、地獄花、死人花なんて不吉な呼び名もある。だから口に入れるなよ?絶対!絶対だからな?ダチョウ的なんじゃなしに公式に絶対な!」
「なるほど。それで墓所にうってつけ、なんですね」
なんだか盛り上がるウォールナットの解説にモモンガは「公式?」などと呟きつつ、大きく頷いた。
「ええー!じゃあ私、種族毒花の精?ちょっとー!」
その解説にチサトが大きく声を上げる!
「やだもうー!花言葉は『食えないやつ』『本心の吐露(嘔吐)』『思考停止(脳死)』とかなんだー!」
チサトは両手を頬に当て「アッチョンプリケー!」などと叫ぶ!
「ちがうわ!んーいろいろあるけど『情熱』『あきらめ』『転生』『再会』。それと『また会う日を楽しみに』ってところか?」
「…………」
ウォールナットのその言葉に騒いでいたチサトが静かになり。モモンガも押し黙った。
「?」
二人の反応にウォールナットは首を傾げる。なにか気になる事があったのだろうか?
「お、おい。モモンガ?チサト?」
「え?あああー!ごめんごめーん!」
ウォールナットの問いかけにチサトはいつもの調子で答えた。
「そうなるとー、モモさんがナザリックさん?」
「えっ?違いますよ?」
唐突なチサトからの問いにモモンガは首を振る。
「じゃあここに埋葬されているのがナザリックさん?」
「えっ?!や、そうゆうわけでは……」
「むむむ?するとナザリックってとこにあるから?」
「え?いえ、地名でもないですね?」
「じゃーそのナザリックってー、なんなん?」
「な、なんなんでしょう……」
チサトの質問攻めに、モモンガもハッとする。そういわれれば、どうなんだったっけと。
「なんかかっこいいからじゃね?」
ウォールナットが面倒くさそうに答えた。
「ナザリックさんのお墓じゃないなら、誰のお墓なの?」
「ああ。それならわかります。このナザリック大墳墓は……」
チサトからの問いにモモンガは小さく言葉を漏らす。
――ギルドメンバー四十一人の夢の亡骸。それが眠る墓所……。
モモンガはかつての日々を思いつつ、心の中で呟いた。
*****
「千束。最近クルミとなにをしているのです?」
喫茶リコリコ。
営業終了し着替えている時、井ノ上たきなが千束に声を掛けたのだった。
「えーとねー。ゲームしてるんさー」
「どんなゲームなんです?」
「んー。墓場で骨なモモンガさんとお話してるんだ」
「?」
千束の言葉にたきなは眉をよせる。
「骨のモモンガ……?妖怪ものですか?」
「妖怪?なのかなー」
「骨だと飛べませんよね?」
「うん。飛ばないねー」
「……飛べないモモンガ?」
たきなは口元に手を当て、視線を下げた。
「たきなー?」
「千束。それはそういった哲学的なジャンルなんですか?」
「哲学?んー。まあ人生、毎日テツガクよなー」
「もう!はぐらかさないでください!」
「にゃはは!」
二人はじゃれ合いつつ、更衣室を後にする。
そして、冒険ははじまらない!
検索した範囲では『ナザリック』わからなかったのでのネタにしてみました
ご存じの方、教えてください
彼岸花は毒があり、これを食べた後は「彼岸(死)」しかないという危険な植物だそうです。口にしちゃダメ!絶対!(公式)
でも絵的にあれはアリだったのにー。ボツられるのは残念ですね……
そんな彼岸花ですが食物不足で飢餓な際は、球根を毒抜きして食べられていた救荒植物なんだそうです(まめしばー
死者を守り、生者も救ってくれる……
彼岸花はそんなありがたい花なんだなって思うと、リコリコの尊さが増し増しした気になりません?