ナザリック・リコリス   作:ぶんた

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その5

 ナザリック地下大墳墓最奥、玉座の間。

 現れるその気配にモモンガは視線を向けた。

 

「よう!」

「はろー!はろはろー!!」

 

 荘厳な玉座の間に相応しくない浮かれた言葉が投げかけられた。

 

「あっ!ウォールナットさん!チサトさん!こんにちは!」

 

 ログインした二人にモモンガも挨拶を返した。

 

「ところでウォールナットさん。そろそろチサトさんのレベルあげなんて、どうです?」

 

 モモンガはさりげなくウォールナットにだけ聞こえるよう、話しかけた。

 『ユグドラシル』はオンラインRPGであるから、戦闘をこなしてのキャラ育成と、強くなれば行ける場所が増えていくという冒険。そういったところが醍醐味ではないかと思っていたからだった。

 

「ん?あーそうなー」

「ここらは高LV対象エリアですからね。やっぱりゲーム開始時の街からがいいと思うんですよ。転移ですぐですし」

「なるほど。あとはまーチサト次第だな……」

 

 二人の視線の先。チサトは玉座の間をきょろきょろしつつ、ふらふらとさ迷っていた。

 

「ほーほーほー。しっかしここはほんと立派ねー!どこぞのお城?」

 

 柱に手を触れつつその周りを回ってみたり。観光客のノリ全開であった。

 

「いえいえ。ここは城ではなくてですねー。我らがギルド拠点『ナザリック地下大墳墓』となります!」

 

 そんなチサトの問いにモモンガが答える。

 

「なざりっく、ちかー、だいふんぼー!お?」

「ふうん。ここは墓なのか」

 

 モモンガの答えにチサトとウォールナットはそれぞれの反応を示す。

 

「ええ!そうなります」

「お、お墓なの?あー。ピラミッドとかー古墳的な?」

「地下というからにはカタコンベかもな」

 

 これだけ豪華で荘厳な玉座の間。それが巨大な墓の奥のものといわれると、やはり見方も変わるというものだ。ウォールナットとチサトは改めて見まわしつつ、ゆっくりと息をもらした。

 

「あー!それでモモさんは骨なんだ?」

 

 がってん!っと手を打ちチサトが声を上げる。

 

「え?!いやーちょっと違いますかね……。私の仲間達もアンデットばかりってわけでもないですし……」

 

 モモンガは慌ててチサトの言葉に訂正をいれた。

 

「ふーん。そうゆうことならリコリスはうってつけだったな」

「?」

 

 その横でのウォールナットの呟きにモモンガは首を傾げる。

 

「モモンガは知らないのか。ほらこの花だ」

 

 ウォールナットはいつの間にか手に持つ赤い花をモモンガに見せた。

 細いいくつもの赤い花弁が中央の花を囲うように上へと弧を描く。まるで静かに燃える炎のような花だった。

 

「わー!すごく綺麗な花ですね!」

 

 モモンガは興味深そうにそれを見つめる。

 

(ブループラネットさんなら知っていたのかな?もしかすると六層に生えているのかもしれないな……)

 

 モモンガは友人に思いをはせた。

 

「リコリス。彼岸花さ。こいつはよく墓地に植えられる花なんだ」

「それは何故です?」

「こいつは有毒でな。墓が動物やらに荒らされないようにと、その守りだったわけさ」

「!」

「天上の花という意味で曼殊沙華とも言われるが、墓花、地獄花、死人花なんて不吉な呼び名もある。だから口に入れるなよ?絶対!絶対だからな?ダチョウ的なんじゃなしに公式に絶対な!」

「なるほど。それで墓所にうってつけ、なんですね」

 

 なんだか盛り上がるウォールナットの解説にモモンガは「公式?」などと呟きつつ、大きく頷いた。

 

「ええー!じゃあ私、種族毒花の精?ちょっとー!」

 

 その解説にチサトが大きく声を上げる!

 

「やだもうー!花言葉は『食えないやつ』『本心の吐露(嘔吐)』『思考停止(脳死)』とかなんだー!」

 

 チサトは両手を頬に当て「アッチョンプリケー!」などと叫ぶ!

 

「ちがうわ!んーいろいろあるけど『情熱』『あきらめ』『転生』『再会』。それと『また会う日を楽しみに』ってところか?」

「…………」

 

 ウォールナットのその言葉に騒いでいたチサトが静かになり。モモンガも押し黙った。 

 

「?」

 

 二人の反応にウォールナットは首を傾げる。なにか気になる事があったのだろうか?

 

「お、おい。モモンガ?チサト?」

「え?あああー!ごめんごめーん!」

 

 ウォールナットの問いかけにチサトはいつもの調子で答えた。 

 

「そうなるとー、モモさんがナザリックさん?」

「えっ?違いますよ?」

 

 唐突なチサトからの問いにモモンガは首を振る。

 

「じゃあここに埋葬されているのがナザリックさん?」

「えっ?!や、そうゆうわけでは……」

「むむむ?するとナザリックってとこにあるから?」

「え?いえ、地名でもないですね?」

「じゃーそのナザリックってー、なんなん?」

「な、なんなんでしょう……」

 

 チサトの質問攻めに、モモンガもハッとする。そういわれれば、どうなんだったっけと。

 

「なんかかっこいいからじゃね?」

 

 ウォールナットが面倒くさそうに答えた。

 

「ナザリックさんのお墓じゃないなら、誰のお墓なの?」

「ああ。それならわかります。このナザリック大墳墓は……」

 

 チサトからの問いにモモンガは小さく言葉を漏らす。

 

 ――ギルドメンバー四十一人の夢の亡骸。それが眠る墓所……。

 

 モモンガはかつての日々を思いつつ、心の中で呟いた。

 

 

*****

 

 

「千束。最近クルミとなにをしているのです?」

 

 喫茶リコリコ。

 営業終了し着替えている時、井ノ上たきなが千束に声を掛けたのだった。

 

「えーとねー。ゲームしてるんさー」

「どんなゲームなんです?」

「んー。墓場で骨なモモンガさんとお話してるんだ」

「?」

 

 千束の言葉にたきなは眉をよせる。

 

「骨のモモンガ……?妖怪ものですか?」

「妖怪?なのかなー」

「骨だと飛べませんよね?」

「うん。飛ばないねー」

「……飛べないモモンガ?」

 

 たきなは口元に手を当て、視線を下げた。

 

「たきなー?」

「千束。それはそういった哲学的なジャンルなんですか?」

「哲学?んー。まあ人生、毎日テツガクよなー」

「もう!はぐらかさないでください!」

「にゃはは!」

 

 二人はじゃれ合いつつ、更衣室を後にする。




 そして、冒険ははじまらない!

 検索した範囲では『ナザリック』わからなかったのでのネタにしてみました
 ご存じの方、教えてください

 彼岸花は毒があり、これを食べた後は「彼岸(死)」しかないという危険な植物だそうです。口にしちゃダメ!絶対!(公式)
 でも絵的にあれはアリだったのにー。ボツられるのは残念ですね……

 そんな彼岸花ですが食物不足で飢餓な際は、球根を毒抜きして食べられていた救荒植物なんだそうです(まめしばー
 死者を守り、生者も救ってくれる……
 彼岸花はそんなありがたい花なんだなって思うと、リコリコの尊さが増し増しした気になりません?
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