ナザリック・リコリス   作:ぶんた

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その7

「ふあーー!」

 

 見上げるチサトの視線の先。

 数多の星が輝く満天の星空が広がっていた!

 

「きれい……」

 

 チサトはうっとりと夜空を見つめる。

 そんなチサトをモモンガは得意げに見守っていた。

 

 ナザリック地下大墳墓六層。

 ここは様々な動植物が育まれるジャングル。そして夜空に眺めることのできる眩いばかりの星の海。

 失われてしまったそれらの自然を愛するブルー・プラネットが渾身で制作したものだ。

 その美しさに共感してくれるチサトに、大切な仲間であるブルー・プラネットが高く評価されていることをモモンガは誇らしい気分で喜んでいたのだった。

 

「ミルキーウェイ?これはー……。なかなかの再現度だな……」

 

 闇に輝く幾多の星々の河。チサトの隣で見上げるウォールナットも呟く。 

 

「ふふふ!」

 

 二人の様子にモモンガも思わず笑みを漏らす。

 

「この星の配置は……。デネブ、アルタイル……。夏の大三角形なのか……?すると……」

「どうしたんです?」

 

 ブツブツとつぶやくウォールナットを見つめ、モモンガは首を傾げた。

 

「あ?いやーなんでもない」

 

 夏の大三角形。ウォールナットはそれにまつわる七夕の逸話を思い浮かべていたのだった。

 出会いを制限される織姫と彦星の物語。作成者であるというブルー・プラネットはこうしてこれなくなる別れを想定していたのだろうか?

 いや。具体的な材料がないうちに、論を立てようとするのは判断をゆがめるおそれがある。

 感情にひっぱられている自分を自覚し、ウォールナットは大きく息を吐き感情を落ち着かせた。

 

「で、そのキャラは?」

 

 ウォールナットは、モモンガに従うNPCに目を付け質問した。

 

「ああ!これはですねーこの階層守護者であるアウラ・ベラ・フィオーラとマーレ・ベロ・フィオーレです!」

「へー」

「ダークエルフの双子の姉と弟なんです!ぶくぶく茶釜さんの力作ですよ!姉はここに住まう動物を使役するビーストテイマー!弟は自然を利用するドルイドといったビルドです!まさにぴったりでしょう?」

「ほうー」

 

 ウォールナットは得意げなモモンガに従う二人の従者NPCである小柄な褐色の二人を観察する。一人は短髪でズボン姿。もう一人はおかっぱで杖を持ち、スカートを身に着けていた。

 

(えーと。えええ?ズボンが姉で、スカートが弟?んーなるほど。そうくるか……!)

 

 すかさず判断材料たっぷりのそれぞれのフレーバーテキストをチェックしたウォールナットは、その製作者というぶくぶく茶釜の性癖に唸る。

 

「お墓の中に、こんなものまであるなんて……」

 

 星空を見上げていたチサトがぽつりと呟いた。

 

「こうして記憶に残ってくれるなんて、いいな。うらやましいな……」

「えっ?」

 

 いつも能天気なチサトらしくない呟きにモモンガは驚く。

 

「モモさんは、こんな思い出を忘れないために骨になってまでいてくれてるの……?」

「え……?」

 

 星空を背に真っすぐに見つめてきた寂しげなチサトを、モモンガも見つめかえす。

 

「でも。でも、それって。残されたモモさんは……」

 

 チサトはモモンガを見つめた視線を下げ、俯き言葉を詰まらせる。

 

「え!ええーとー!今日はいいもの見せてもらって、ありがとうでした!でー、ごめんなさい!えっと、ほんとごめん、私……。うにゃー!今日はおちますね!おつかれさまー!」

 

 次の瞬間。いつもの調子で騒ぎ立て、チサトはそのままログアウトしてしまった。

 

「チサトさん、どうしたのでしょう?」

「さてな?よくわからん。なんか思うところがあったのかもな。まー気にするな。じゃあな」

 

 珍しいチサトの態度におろおろと呟くモモンガに、ウォールナットは声を掛けログアウトした。

 

 

*****

 

 

「千束。どうかしましたか?」

 

 たきなは千束に小さな違和感を感じて聞いてみた。

 

「え?うん?どうもしないぞ?うん?なんか変だったー?」

 

 千束はいつもの調子で、たきなに明るくおどけてみせた。

 

「ええ。なんとなく……ですけど」

 

 たきなは口元に手を当て、じっと千束を見つめた。

 

「なんとなく?!なんとなく、かー……」

「はい」

「ふふ!なんでもない!なんでもないってばー!」

 

 そういって千束はたきなに思いっきり抱き着いた!

 

「ちょっ!」

 

 その勢いにたきなは驚きつつも、倒れることなく千束を受け止める。

 

「ありがと。ごめんね……」

 

 千束のその小さな呟きは慌てていた、たきなの耳には届かなかった。

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