「モモさーん!」
「あ!チサトさん、おはようです!」
ナザリック地下大墳墓。玉座の間。
インして挨拶をしてきたチサトに、モモンガは挨拶を返した。
「あれ?ウォールナットさんは?」
モモンガは周りを見回し首を傾げた。
「うん。すぐくるよー。今はーお花摘んでまーす!」
「ちょっ!」
「にっしっし!」
慌てるモモンガに、チサトは人の悪い顔で笑いかける。
「それでー、それでさ。実はモモさんに聞きたい事があったんだー」
「はい?なんですか?」
いつものおどけた調子で、チサトはくるりと回ってモモンガに視線を向けた。
「私はー。私はね?小さい頃に救ってもらえた時の記憶をとっても大事にしててー、さ」
――君には大きな使命がある。それを果たしてくれ。そのために私は、さしずめ救世主になったんだ。
その言葉を想いチサトは小さく俯く。
「……そうして私は救われて。その記憶に助けられてきた。だから私もって思ったの。私を必要としてくれる人にできることをしてあげたい。そして会えなくなった後でもその人の記憶に私が残ったら、素敵だなって。なんて……って思ってたんだ」
(それが私にとっての救世主……。だったのだけど……)
「…………」
モモンガはチサトの話を黙って聞いていた。
身長差のためチサトはそんなモモンガを見上げ。身に纏った豪奢なローブを揺らす死の王であるモモンガがそんなチサトを見下ろす。
モモンガの肉のない骨の顔。そして眼球のない闇の眼窩からはその表情はうかがい知れない。
「でもモモさんは……」
頬が強張る。それを意識しつつチサトはモモンガのしゃれこうべを見つめ言葉を続ける。
「モモさんは……。モモさんはさ。会えなくなった人達のこと……。モモさんを残していなくなっちゃった人らのことを恨んでる?」
「………」
「に、憎いと……思ってる?」
チサトは自分の言葉が震えているのを自覚していた。
……怖い。
モモンガの外見も相まって、チサトには仲間達に取り残された思い出の守り人。そういった存在にしか思えなくなっていて。
……多くの仲間に取り残されたモモさん。あんなにつらそうなモモさん。残された側のモモさん。
自分の望みである記憶に残りたいという行為が、残された側にとって悲しくて辛い迷惑な記憶でしかないのなら……。もしそうなら、今までの自分の全てが否定されることになってしまう。
だからその本意を聞くのが怖い。
でも聞かずにはいられなかったのだ。
その言葉を聞いたモモンガの黒い眼窩に赤い光が浮かび、その口骨がゆっくりと動くのを、チサトは息を呑んで見守る。特殊な視覚のせいで、言葉が発せられるまでが永遠のようにも感じた。
「やだなぁ!そんなわけあるわけないじゃないですか!」
チサトの質問にモモンガは明るい口調で即答した!
「!!」
モモンガの答えにチサトは目を見開き固まる。
「ギルドメンバー全員私の大切な人です!そしてその思い出は全部どれもこれもとても大事なものですよ!彼らには感謝しかありません!」
「っ……」
「私はチサトさんと同じ意見ですよ。ただ、できればー。会えなくなった仲間達にも私の記憶があるといいなぁ。なんて……」
モモンガは「たはは……」と力なく笑いつつ頭を掻いた。
「ある。あるよ!あるに決まってるって!」
「え?」
「モモさんこんなにいいひとじゃん!私の中にもちゃんといるからね!」
「はい!私の中にもチサトさんがいますから!」
「……おーい。なんの愛の告白だー?」
「!!!!!」
突然のウォールナットの乱入にチサトとモモンガは飛び上がった!
「そ、そんなんじゃーねーし!」
「そうじゃないです!」
「ふーん?」
慌てて弁明する二人をシマリスは目を細めて値踏みする。
「おーっとー!わたしー急用!お花摘んで来まース!!」
「ややー?誰か来たかも?私もちょっと離席しますね?」
「んー?なんだなんだ?」
慌てるように離脱する二人にウォールナットは眉を寄せ、不機嫌そうな息を吐いた。
*****
「よーし、たきな!今日もがんばっていこー!」
喫茶リコリコ。
外回りに出掛けるにあたり、千束が腕を上げて大声を張り上げていた!
「千束ー!いつにもまして、やかましいわー!」
すかさずミズキが千束に、大声でツッコミをいれる!
「そうですね。では、いきましょうか」
たきなはそんな千束を見つめ、小さく微笑み答えた。