ダンジョンと隠居   作:柑橘系饅頭

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鴨は美味しい。


依頼と登録

時は金なり。

再開した翌日には、彼はダンジョンへ向かう方針でいるらしい。

 

「ところで、君は此処のダンジョンについてどれくらい知ってるんだい?」

 

翌日、朝食を済ませた後に聞く。

 

「概要程度には。ただ、情報屋を通していないので正確な事はあまり知りません。」

 

平然とした顔で言う。

あの後もしこたま酒を飲んでいたようだが、二日酔いの兆候すら見せない。

こいつ、更に酒に強くなったんじゃないか?

 

「成程、じゃあダンジョンに向かいながら話そうか。」

 

ラヴニソミのダンジョン。

言わずと知れた超巨大ダンジョンであり、早期に発見されながらも未だにどこまで探索できたのか不明のダンジョンである。

 

10階層刻みにがらりと変わる環境や、0が付く階層毎に居るフロアキーパーの影響で、その攻略は中々に進んでいない。

 

幸いにして、金を払えば使える10階層毎の転移門がギルドによって設置されている為、行き来は楽なのだが。

 

「まずはギルドで登録するのが良いね。転移門は登録者しか使えないし、素材の買い取りもあそこが一番楽だから。」

 

「ギルドの建物はわかるね?ダンジョンに続く大路の中で一番大きな建物だ。」

 

彼は気恥ずかしそうに言う。

 

「そこまで言われなくても分かりますよ。もうあの頃のような、小さなガキでは無いので。」

 

 

 

 

男達の騒音と、ジョッキがガチャガチャとぶつかる音で満ちる。

飯は不味いが、安酒が飲めるギルドは、いつも誰かしら知り合いが居る。

『硬き盾』の連中なら言わずもがなだろう。

 

「いや〜、今日は稼ぎましたね!先輩!」

 

「ああ、いつに無く豊作だったな。」

 

この新人の影響もあって、最近は仕事終わりにギルドでひっかけてくのが習慣になった。

 

「チャージボアにドリルディアー、ビッグスネークまで一度に狩れたからな、暫くは安泰だろうさ。」

 

「ですね!自分、今日の稼ぎで新しいナイフ代が揃うんすよ〜。いつもの店の奥の奴です。前から欲しかったんですよね〜。」

 

「ああ、あれか?お前が使うにはちとデカい気がするが...ベルトも変えた方が良いんじゃ無いか?」

 

こいつとの他愛無い会話も、酒が入れば楽しくなる。

 

ガチャリと騒音の端で入店の音が聞こえた。

ドッドッと歩く音は聞こえ慣れない物であり、見てみると筋骨隆々の如何にも戦士って見た目をした男が受付に向かっている所だった。

 

「先輩先輩、あの見慣れない人デッカいっすね〜。背負ってる大剣もデカいっすよ。『硬き盾』の新メンバーですかね?」

 

酒が入った後輩が言う。

気づけば、酒場は普段の熱気は何処へやら、男共が雁首揃えてヒソヒソ話し込んでいた。

 

「違うだろうよ、あのネックレスを見たか?ありゃ、『ジャイアント・キリング』の紋章だ。おそらくダンジョン目当てだろうよ。」

 

「えっ!?あの『ジャイアント・キリング』っすか!?てことはあの人スゲー強いって事っすよね...。」

 

後輩が小声で驚きながら話す。

そんな器用な真似出来たのかお前...なのに罠作りは苦手なのかお前...。

 

「まあ、俺たちにゃあ関係の無い話さ。ほら、もっと飲め。金は今しか無いぞ。」

 

「あっ!俺の肉取らないで下さいよ先輩〜...まったく...。すいませーん、ボアステーキ2枚追加でお願いします。」

 

 

 

 

 

 

 

外から聞こえた喧騒は、中に入ると妙に小さく聞こえた。

まあ、いい。

ギルドに登録しに来たのであって、酒を飲みに来たわけでは無いからな。

 

「此処がギルドですか?登録をしに来たのですが。」

 

受付と思しき女に声を掛ける。

 

「はい。登録希望の傭兵の方ですね?こちらの用紙に記入をお願いします。それと、登録費用として、100ゴル必要になります。」

 

名前。

ギガリア・ダニゾエル。

職業。

傭兵。

クラン(加入している場合はご記入下さい。)

ジャイアント・キリング。

 

滞りなく記入し、受付に金と共に渡すと、何処か驚いたような雰囲気がした。

 

胸元のネックレスを見て納得した顔をして

 

「はい、ギガリアさんですね?確かに承りました。ギルドの使い方についての講習はお受けになりますか?」

 

「ええ、お願いします。」

 

「では、担当の者を呼びますので、あちらでお待ち下さい。」

 

頷いて、受付を離れる。

どんな所でも、一度説明を受けるのは大事だ。

特に、これから何度もお世話になるだろうギルドについてなら、尚更だ。

 

 

 

 

 

 

鳥の声、連続して何羽か撃ち落とせばバサバサと逃げる音がする。

 

「1、2、3...良し、依頼の量は充分だね。」

 

撃ち落とした鳥の羽を処理しながら数える。

今日は店主からの依頼で、23層に鳥撃ちに来た。

23層は綺麗な湖があり、鳥だけでなく、他の動物も寄ってくる狩場だ。

此処では鴨が取れる。

スープにすれば出汁が出て美味いし、焼いても美味い、黒い小鳥亭御用達の鳥だ。

自分用を鞄に収納しつつ、納品用の鴨をチャッチャッと捌いて収納する。

 

「内臓は店主も使わないし埋めておくかな。」

 

土魔法。

最近、魔法を戦闘に使っていない気がする。

そもそも最近戦闘したっけ?訝しみながらも、店のスープの味を楽しみに、地上に戻る事にした。

 

 

 

 

 

 

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