OrverLord ─始祖の吸血鬼─ 作:ブラック×ブラック
楽しんで頂けたら嬉しく思います!
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大迷宮中央 御屋敷 邸宅前
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あの日、二人をグリモワール大迷宮へ招き入れた日
イビルアイが奇跡的に真祖へ覚醒を遂げ、彼女が一段階種族として上位の存在となった日
その一段は、天と地程のひらきがあるとイビルアイ自身がその感覚を話してくれた。
ジルクニフは、大迷宮を目指すのでは無く別の道を選択する可能性も大いにあったが、この地へ訪れるように上手く興味を引けたのではないかと仰せになられていた。
彼の真祖覚醒については、その話の中で知らされていたのでその動向を見張るようロベルトさんにお願いしていた。
こうして、この地でバルディア様は二人の『真祖』を創造なされたのである。
あの夜は、大迷宮のほぼ全ての者達が集い『歓迎の宴』が催され大騒ぎで大変だった。
ジルクニフとイビルアイは、過去の関係性や出来事を語り合いネタにしながら打ち解けており順応性の高さが伺える。
これも始祖である御主人様の御力なのだろう。
ルゥちゃんは、仕事柄不参加なので後で様子を教えてあげると目をキラキラさせていた。
あの二人は『真祖』の能力、力について御主人様から御教授賜れたそうで、不明な点があったら
その都度質問する事を許されていた。
御主人様と同族である事が羨ましく思えてくる…。
以前シャルテイアがここへ訪れた時、彼女が御主人様と同族である事に何も感じなかった。
ただ、いざ身内に…『グリモワール大迷宮』に…御主人様の美しい血液を賜り真祖となったあの二人には多少複雑な思いがあり、胸のあたりが”モヤモヤ”する。
知らない間にデバフ攻撃を受けたのかと心配になり、その違和感を打ち消す事も出来ず持て余している状態なのだ。
((どうして私は、吸血鬼ではないのだろう…。))
そんな憂いを頭の外へ追いやる事が出来るのは、彼女が執事としてプロフェッショナルな仕事をこなし忙しく過ごしている時だけなのだ。
そして、今日も全ての仕事を終え明日の予定を確認する。
大迷宮の四方にある南東パレスをジルクニフの拠点、南西をイビルアイの拠点とし御定めになられた。
パレスとは、このグリモワール大迷宮の四隅に点在する要塞である。
大迷宮の迷路を通らなければ到達出来ない要塞であり、このパレスもルゥちゃんの管理下により守護されている。
御主人様達がこの大迷宮を支配された折に『パレス』と呼称されるようになったもので現在は、彼等が住みやすいように内装の再構築(リフォーム)現場監督として指揮を執っている。
過去、これらの要塞には『中ボス』なる存在がいて、御主事様達はそれを四方から同時に陥落させる事で、中央の御屋敷へ通じる道が出現したと話して下された。
そこで、『ボス』なる存在を降し膨大な金銭をユグドラシル世界に支払う事で、大迷宮の所有権を得たのだと教えて下さった。
大迷宮は、他の方々『プレイヤー達』には不人気で攻略対象と言うより観光名所的な場所だったと聞かされた。
((300年前のあの騎兵達のような存在が大迷宮を取り囲んでいたのだろう…。
バルディア様、今の私であれば全てを一掃致して御覧に見せますとも!))
ユグドラシル内の変化は、定期的では無いにしろ世界の意思『アップデート』なる現象を引き起こす事で新たな地図が発見されたり、希少アイテムが入手出来るダンジョンが発見される等と随分と変化に富んでいたそうだ。
そんな変化の中で、大迷宮は地味な施設として訪れる者も少なくなったのだと仰せになられていた。
((ルゥちゃんは、当然『パレス』と呼称される要塞を守護しているのだから存在は知っているで
しょうが、あそこで何があったのか迄は知らない筈です。
この大迷宮で、御主人様が教えて下さった私だけが知る秘密なのです。
決して教えてあげませんよ。))
そうして、二人の要望を聞きながら住まいとしてパレスを完成させた所で一段落。新たな仕事だ。
((さて、二人にはこれから地獄を味わって頂きましょう。))
新たな仕事として、イビルアイの能力向上を目的とした訓練を私が受け持ち、ロベルトさんにはジルクニフの担当が任されたのであったが…。
二人は、成長に苦戦していた。
正しくは、力の制御に苦戦していた。
獲得した膨大な力(ステータス上昇)は、彼等を戸惑わせるだけの物だったらしい。
特にジルクニフに関しては、種族が変わった上に私の調べでは彼自身『暴力より知略』を活かしてきた人物である。
初めて剣を振る少年のようなものだ。
彼は、今自身の得意分野を活かす為に何をすべきか悩んでいるとロベルトさんが話していましたが、既に答えが出ている状態で何を悩む必要があるのか理解に苦しむ。
ただ、それがこちらの人間達にとって必要な儀式で、その行為事態に意味があるのだろうと考え、口を挟むのを止める事にした。
彼の知略も魔導国に敵わなかったようだが、真祖となり大幅に能力が向上した今の彼であれば少なくともナザリック地下大墳墓、玉座の間にいた間抜けな赤いスーツの男と同程度には成長するのは確実だ。
イビルアイは、『極大級魔法詠唱者』や『国堕とし』等と本当に大それた異名を持っている。
これをイビルアイに言うと大声でそれを否定し何やら恥ずかしそうに”ワタワタ”と暴れる、そんな彼女の仕草が面白い。
戦闘の才に関して言えば、確かに得た力を正しく行使する事が出来たならその異名は真実の物となるだろう。
順応さえしてしまえば早いのでしょうが、そこに至るには彼女が生きてきた時間と同様の時が必要なのかも知れない。
ただ、私の受け持ちである以上は半端な事は出来ない。
毎日ボロボロになる彼女を見ていると、どうしてこんなに弱いのか不思議でならない。
彼女の場合センスはある。小柄であると言う事で受けるダメージも大きいのだろうか聞いてみると単純に私の攻撃を防ぎきれないのだそうだ。
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大迷宮中央 バルディア私室
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「以上がジルクニフ殿の現状となっておりますが…。」
「ありがとう、ロベルト。
ところで、ジルクニフの努力だけどね。間違った方向へ進んでいないかな?」
「と、言いますと?」
ロベルトの報告を聞く限り、真祖の基本能力は既に備えている事だろう。
だが、ジルクニフに求めているのは特化した能力だ。
大迷宮には、ヒルデリアを筆頭に、ルゥ、ロベルト他にも素晴らしい人材がそろっている。
真祖の基本能力だけであれば、気は進まないが代えは幾らでもいる。
代えの効かない存在になって貰いたい。
ジルクニフはそうあるべき人材だと願っている。
バルディアは『鮮血帝』と謳われた彼を尊敬しているのだ。
そんな彼を使い捨ての雑兵程度の存在として扱いたく無い。
人としての脳内処理能力の限界値には到達出来ていなかった。
従者を従えた裏切者の方が彼の遥か上だろう。
だが、現在の彼は人間種では無い。伸びしろはまだまだあるのだ。
寧ろこれからが進化の時と言っても良い。
「…そうだねぇ。
彼は、知略を活かしてきた人物だろう?
ステータ…能力の割り当ては、個々が得意とする分野の成長を促した方が良いのではないかな?
ただ、真祖として最低限の『力』は維持してもらわないと困るけどね。」
「なるほど、確かに旦那様の言葉を聞けば腑に落ちます。
ジルクニフ殿は統率者…。
しかし、そんな事をしたら旦那様…。
彼は、覇権的な思想の持主です。反旗を翻す恐れはありませんか?」
「ロベルト、本当にそんな事があると思うかい?
彼は、頭が良い。
早晩、その答えに辿り着くだろうね。
彼が成長を遂げたなら、それこそ私など『知略』において足元にも及ばないよ。」
「!!旦那様!それは、過大評価にも程があるのでは!?
…
……
………それを口に出来ると言う事は『始祖と真祖』の関係にあるのでしょうか?」
その質問に旦那様は、優雅な振る舞いと共に笑みを浮かべた。
旦那様は、あれから私室で過ごす事が多く何をされているのか分からない。
聞いてみると『フレイバーテキスト効果』なる物の改変とその実証実験だとかで、私にはさっぱりだ…。
旦那様の不思議な瞳は、生物を含む様々な物を見ると、それがどのような物であるか分かってしまうそうだ。
そこにあるのが『フレイバーテキスト』なる物だと言う。
その解明は、更なる力の獲得も期待できる重要な事案だそうだ。
以前、旦那様とテラスで過ごした折、旦那様は物造りを生業にしていたと教えてくれた。
制作物に対する背景や設定等に異常なまでに執着し拘りを御持ちだったそうだ。
周囲からは、『変わり者』だの『変人』だの囁かれていた事を御存じだったそうで、その様な声にどんな心境をお持ちになったか尋ねると、それは誉め言葉だと笑っておられた。
((いま行っている実験が実を結ぶ事をグリモワール=ファミリア大迷宮一同が祈ってますよ。))
次は、ヒルデリアの報告だ。
こちらは屋敷の管理やその他多くの仕事を任せているので時間がかかりそうだけど…。
ヒルデリアはうつむき、何か言いにくそうな表情を浮かべている。
「ロベルト、ジルクニフには、南東パレスの命名と発展も彼の責任の元で行うように加えよう。
その為の使用人は、現地の人間を雇用する事にしようか。
一度、この大迷宮に入れば彼等が生きて出る事は不可能だからね。
ジルクニフによる意図的なもの以外、情報漏洩を気にする事は無いので安心して良いよ。
彼の『鮮血帝』は、どのように人間を使うのかな。
食事にしても良いのだけどね、まぁ、どうなるか楽しみだよ。
そう、ジルクニフに伝えて欲しい。
それを伝えたら、今日は休んでくれて良いよ。
おやすみ、ロベルト。」
「御意!
お先に休ませて頂きます。おやすみなさいませ旦那様。」
次は、ヒルデリアの報告だ。こちらは屋敷の管理やその他多くの仕事を任せているので時間がかかりそうだけど…。ヒルデリアはうつむき、何か言いにくそうな表情を浮かべている。イビルアイに関する報告を受ける準備を整え自作の資料を取り出し、これ迄の状況に目を通しながらヒルデリアの報告を待った。
私は、日記も付けている。そう言う人間、今は吸血鬼なのだ。
「先ずは、イビルアイに関する報告を聞かせてくれるかな?」
「バルディア様、『恋』とはどの様な物で御座いましょうか?」
…
……
「…ん…?」
……
…
ヒルデリアの思いもよらない質問は、バルディアを動揺させるだけの威力があった。
『恋』をした事は当然あるし、『愛』も一般教養として知っているつもりだ…。
私は、家族愛を欲していた。
だから、ギルド名に『ファミリア』と言う単語を付けた。
しかし、今ヒルデリアが聞いているのは『恋』と言う事で、それとは話は違う。
一体なぜ彼女がそのような言葉を口にし疑問に感じているのか…。
「いえ、イビルアイと戦闘訓練後の休憩中に話していたのです。
御主人様の事を考えると胸の辺りがモヤモヤとして何者かからデバフ攻撃を受けていると…。
すると彼女がそれは『恋』だと笑うのです。」
((イビルアイめ…私を困らせる事が目的なのだろう。
未だに真祖覚醒時の事を強要のネタにするとは。
ヒルデリアの言葉は、さぞ良い素材だった事だろうね。
ただ、私はモテない男では無かった。
そう!普通に恋だけは出来たと思う…。))
「賢いヒルデリアは『恋』と言うものが何であるのか既に調べているのだろうね。
難しい質問だね。
((全く難しい質問だ…))
恋か…。
((……これだな!))
恋を経験したのは私も随分と昔の事でね。
だから正確に恋の正体を今は答える事が出来ないんだ…。
ただ、これだけは言えるよ。
それは君自身の思いであって、デバフ攻撃等を受けたからでは無いのさ。
だから、安心して良いのだよ。
それと、ありがとう。
君が私にそうした思いを抱いてくれている事をとても嬉しく思うし光栄だよ。」
そう答えるとヒルデリアは、顔を真っ赤にしているがデバフ攻撃では無い事に安心した様子を見せると、いつもの理知的な顔を取り戻しイビルアイの報告をはじめた。
イビルアイはオリジナル魔法が使えるそうだ。
((ユグドラシル由来の魔法では無いのだよな?))
そのオリジナル魔法は上手く使える。
その魔法を駆使し設置型の魔道具を作れないか打診しているのである。
私室の隅でササッと動く黒い影をみた時にはまさかと思った。
そう…この世界にもいるのだ…。
あの黒い恐怖の一族ゴキブリが!
快適空間である棺の中に入ってきたら嫌だし、あの空間でアレが疾走する姿を想像するだけで身の毛もよだつ思いだ。
逸早い魔道具の完成を願うしかない。
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大 迷 宮 入 口
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**あるじ~シャルティアきたぞ~。なんかデカイのもいる~あいつブッコロスか~?**
**ルゥはぶっ殺すのが大好きなのだね。
…そうだねぇ…
彼の武器を全てこちらに預け敵意が無い事を証明させてみよう
従わないようなら、ルゥの好きにして構わないよ。
それと、ジルクニフとイビルアイにはそれぞれのパレスで待機するように伝えて欲しい。**
**あいわかった~ジルと赤い子わたしがまもる~**
シャルティアは、あの四者協議で落ち着いていたように見えたコキュートスを付添人として同行させる事の許可をアインズに求めた。
誰を付添人に指名するか悩んでいたアインズにとっては渡りに船であったのだ。
「シャルティア ワタシガ、ツキソイデヨカッタノカ?」
シャカシャカと音を立てながら話す、同僚の守護者コキュートスがシャルティアに声をかけてくるが、どうやらお互いに何か話していないと落ち着かないようである。
ここへ来てコキュートスに落ち着きが無いと悟るシャルティアだった…。
シャルティアは、前回の礼状とナザリックへの招待状を届ける為に今ここにいる。
だが、嘗て訪れた時と同じ人物の存在は、遥かに巨大な物へと変貌していた。
加えて、シャルティアと同格程度と考えられる吸血鬼の存在が二つ。
おそらく『真祖計画』は既に開始されているのだと考えた。
以前ナザリックに単独で訪れたあの執事の存在も感じられる。
「そんなの、わかる筈無いではありんすか。
勉強はしているでありんすよ?
ただ、アインズ様の域迄考えが及ぶかどうかと言えば答えはお互い同じでありんしょ?」
コキュートスが大きくうなずく。
そして、とんでも無い事を口にしたのだ。
「アノ、シツジ…カノジョ ト タタカエルダロウカ?」戦う事を目的としてここに来ているのではない。
友好関係の構築とナザリック侵攻にくさびを打つ事が目的であるにも関わらずだ、この武人気質の守護者は…。
「アノ、シツジ…カノジョ ト タタカエルダロウカ?」
「コキュートス!
そんなでありんすから、デミウルゴスに先を越されるでありんすよ?
もっと慎重に考えないとあの時と同じでありんすえ?」
「ムゥ~。」
シャルティアとコキュートスは、訪問先の主からの応答をその場で静かに待った。
入口は解放されているが、この規模の大迷宮である。
二人の攻撃力であればオブジェクト破壊で突き進むと言う選択も或いは可能かも知れない。
ただその場合は、ナザリックがグリモワール大迷宮へ宣戦布告したのと同義である。
ナザリックに世界の生物全てを真祖化した大軍勢が侵攻してくる可能性も捨てきれない…。
そうなればナザリックは崩壊する。
二人は、以前その可能性をアウラ、マーレを加えた四人で導き出している。
相手の正体が不明な分、警戒しなければいけない。
二人の意識を現実に引き戻したのは、場違いとも言える幼女の声である。
「デカイの~敵意が無い事の証明として武器を全て入口におけ~
隠しても無駄だぞ~
言う事聞かないとブッコロスぞ~ブッコロ~ス!
帰る時に返すぞ~心配ないぞ~
ブッコロ~ッス!!」
!!!!
どうすべきかなのか…。
コキュートスの武器、これは全て創造主である武人武御雷様から授かったものだ。
武人として創造主より賜った武器は、魂と言っても過言では無いだろう。
それを一時的とは言え、手放さなければいけないのか…。
コキュートスは頭を抱えている。
シャルティアは、その頭脳をかつて無い程回転させ、この場を切り抜ける手段を方法を何でも良い何か無いか思考する。
…
……
………
考えろ考えろ!!切り抜けなければアインズ様に、ナザリックの皆に!!考えろ早く考えろ!!
………
……
…
「始祖様、本日は前回の御礼状とナザリックへの招待状を我が主アインズ様より受け御届に参った
次第で御座います。どうかお受け取り下さいますよう願い申し上げます。
我々は、主の命によりこれより───。」
シャルティアが考えに考えたこの場から立ち去る策は、最後まで発する事無く幼い声に遮られた。
「あるじに会わないのか~? おまえ~あるじ嫌いなのか~?」
先程とは違う…明らかに声に殺意がある!!!
「め、めっそうも御座いません!!!始祖様は、御多忙な身かと考えた次第で御座います!!!」
凄まじい圧が二人を襲う。
あのシャルティアがここまで恐れる相手…。
甘く見ていた…。
シャルティアばかりに任せておけない。
自分も守護者なのだから…。
創造主へ謝罪し、所持している全ての武器をコキュートスは大迷宮入口へそっと置いた。
**スマナイ、シャルテイア。サイショカラ、コゥシテオクベキダッタ**
武器を置き引き返してくるコキュートスは、メッセージの魔法を使い自身の愚かさをシャルティアに詫びた。
シャルティアは、コキュートスに非が無い事はわかっている。
これは、コキュートスにとり一時的に魂を捧げる行為。
「あるじに会うか~?ど~すんだ~?」
「ゼヒ オアイシタイ。
ワタシノ ナハ、コキュートス。
アインズサマ ノ ハイカガ ヒトリ。
コンカイハ、シャルティア ノ ツキソイトシテ マイッタシダイ。
アナタサマ ノ アルジニ ソゥ オツタエネガエナイダダロウカ?」
「あいわかった~。
武器はオマエが生きて出てきたら返すぞ~。
それ迄は、ちゃ~んと大事に預かっておくから心配するな~。」
「ゴコウイ、イタミイル。」
シャルティアは、信じられないとでも言うかのような表情を浮かべコキュートスを見上げている。
武人の潔さ、それだけでは片付けられない事をやってのけた同僚に感心した。
創造主から賜った武器を一時でも預ける事など考えられないからだ。
だが、コキュートスはそれをした。
それは、ナザリックの為。そして何より、アインズ様の為。
その様子を自室で眺めていたバルディアは、この青い巨体の武人に興味を抱いたので久しぶりの客人と付添人に会う事を決めた。
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大迷宮中央 御屋敷 邸宅前
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「御主人様、シャルティアが付添人のコキュートスと名乗る巨漢の虫と共に遊びにくるそうです。
何でも以前の礼状とナザリックへの招待状を持参し御主人間へ届けに来たそうです。」
ヒルデリアは、シャルティアの訪問を喜んではいるが、その付添人に関しては別のようで僅かに
それを感じ取る事が出来る。
バルディアの前に二人のナザリック階層守護者が並び立つ。
シャルティアが一歩前へ出て主以外の者に頭を下げる。
「始祖様。ご機嫌麗しゅう御座います。」
シャルティアの声が僅かに震えている。膝を折り挨拶を終える、持参した礼状と招待状を側に控えるあの執事の女に手渡している。
その様子をただ眺めていると、突然屋敷の主の顔が眼前にあった。
凄まじい存在感である。
主とおもしき御仁が口を開くと信じられない言葉を口にしたのだ。
「君を創ったのは、武人武御雷か。」
「ナゼ…ワガソウゾウシュサマ、ノ オンナ ヲ!?」
彼の御仁は、それに答える事は無く笑みを浮かべている。
「私はね、君に好感を抱いているのだよ。
この場に訪れる為、君の魂とも呼べるこれらの武器を預けてくれたろう。」
そう言うとアイテムボックスから先程預けた武器を手に取りコキュートスの前に突き出した。
「どうだい、この武器を取り私と戦ってみるかい?
君は、武人なのだろう?」
挑戦を断る事などない。
相手がいかに強大な存在であれ、それはあり得ない事なのだ。
しかし、横でシャルティアが止せと言う表情を浮かべている。
((スマナイ、シャルティア…。ワタシハ、カノゴジント、ト タタカッテミタイ。))
強者からの挑戦…それは武人にとっての誉なのだ。
「ゼヒトモ オネガイシタイ。」
「コキュートス!!!
始祖様!御戯れでございましょう?
…どうかこの戦いおさめて頂くわけには参りませんか!!」
「シャルティアさん、お黙りなさい!
御主人様の御言葉を戯れとは、いくら客人として認められた貴女でも滅ぼしますよ?」
ヒルデリアが”ピシャリ”とシャルテイアの言葉を制す。
最早、シャルティアは沈黙し事の成り行きを見守る事しか出来ないのだ。
始祖の力に抑圧され、眼前にはナザリックに単独で訪れた執事…
周囲からは得体のしれない気配…
大迷宮入口で聞いた少女のものだろう…
慈悲深いアインズ様は、こういった時、撤退するようにと厳命し、私達の事を考えて下さっていたのに大迷宮内部ではそれも出来ない…
目の間で、同僚が滅ぼされるかもかもしれない…
いやだ…確実に滅ぼされてしまう…いやだ…ナザリックの仲間が…
…私はアインズ様に何と報告すれば良いのだろう…
仲間が殺されるのをただ黙って見ていたと報告する事になるの…
コキュートス、武人としてあるべき姿なのかも知れない…でも、ここは引いて欲しかった…
私はまた、ナザリックに不利益をもたらす事になってしまうのだわ…
「恐れる事は無いさ、言ったろう私は君に好感を抱いている
滅ぼしはしない
…
…
…
さぁ、はじめよう!」
彼の御仁は、両腕を大きく広げ、全てを受け入れるかのように優雅に、だが絶対的強者として向き合っている。
おそらく、自身の勝利を確信しているのだろう…
だが、嘗て敵を侮り油断し軍を采配した自分とは全く違う…
力量差は明らかだと感じ取れる…だが、彼の御仁からは、一切の油断や隙を感じとれない!!
((コウエイ ノ キワミ!!))
あの時、情報不足であった事も反省すべき点だったではないか!
彼の御仁は、少なくとも見える範囲で武器の類を所持していない…
一体なんだ…
ここまできて、あれこれ考えるのはよそう
私は武人!
武人武御雷様を創造主とし、アインズ様に仕えるナザリックの守護者なのだ!
「ワガナハ、コキュートス!ナザリックシュゴシャ ニシテ、アインズサマ ノ シモベ!」
コキュートスは名乗りを終え、全ての手に武器を持ち構えると短く咆哮する。
「デハ マイル!!」
次回は、いよいよバルディアの戦闘シーンとなります!
楽しんで頂けたなら嬉しく思います!
コキュートスさんのカタカナのセリフ…
心情だけは、普通に書かせて頂きました。