OrverLord ─始祖の吸血鬼─   作:ブラック×ブラック

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ルビ機能を使えるようになりました!
コキュートスさんが使用したスキルの読みが異なるものにつけていこうと思います。
他にも色々んな機能がありそうですね!

ご拝読ありがとうございます!

今回
前回の話しの結果を知らされたイビルアイちゃんとジルクニフさんのお話になります。

お楽しみ頂けると嬉しく思います。


第十二話 グリモワール大迷宮ー4

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   大迷宮 南西パレス

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「本当なのか?…信じられないぞ…

 …

 本当に間違い無いのだな?

 やってくれたのだな!?

 

 おぉぉぉ~~~~!!!

 

 やってくれたぞ!!!

 … 

 ……スゴイ、スゴイゾ!!素晴らしいじゃないか! 

 本当に魔導国の一角をやっつけたぞ!!!!」

 

待機命令を受けていたイビルアイは、興奮していた。

大声を上げ、小さな体で”ピョンピョン”と跳ねては大声を上げるを繰り返す姿を見て、ルゥちゃんも同じように喜びを表す事があるのだからと、彼女が落ち着きを取り戻すのを待つ事にした。

彼女の長く惰性(だせい)で生きてきたモノクロ世界は、バルディア達と出会う事が刺激となり彩りを取り戻していた。

そして今回受けた知らせは、その世界に奥行と言う幅を取り戻させるに充分な結果だったのだ。

 

*ドゴゴゴゴゴゴゴゴ*

 

そんな二人のいる南西パレスが突如、地響きと共に地震のような揺れに襲われた。

突然の天災にイビルアイは、慌ててヒルデリアを見るとパレスの外へ出るように出口へ向け指をさしている。

それを指示し一切動じる様子の無い彼女は、誰かとメッセージの魔法で通信しながらイビルアイの後に続く。

 

先に外へ出たイビルアイがなぜか立ち止まっている…。

ヒルデリアは、迷わず彼女の小さな体を小脇に抱え、パレスから一定の距離を取り振り返った。

 

そこに広がる光景を目の当たりにし、小脇に抱えていた小さな吸血鬼の存在を忘れてしまったのだろう…。

突然地面に落ちる事になってしまったイビルアイが『バフッ!』と何とも言えない声を上げたが、文句を言うでも無くヒルデリアの視線を追う。

そして、眼前に広がるその光景を眺め息を飲んだ。

これまで、パレスに名を付けるでもなく生活空間以外特に注文を付けなかった堅牢な要塞。

 

その要塞の外壁には『茨』が所狭しと巻き付いている。

 

「…イビルアイ。…これは、貴女が?」

 

この光景には、流石のヒルデリアも驚いている。

茨に覆われた要塞、その茨は、一つ、また一つとつと(つぼみ)をつけはじめたのである。

そして咲き誇るのは…

 

 

数多の蒼薔薇

 

 

この花を象徴する特別な想いが彼女にはあるのだ。

地面に落ちた衝撃で仮面が外れ、その下の素顔が露わになっていた。

その瞳から、自覚は無いのだろう自然に涙が溢れている。

嘗ての仲間達アダマンタイト級冒険者チーム『蒼の薔薇』

 

 

「い、いや…”グスン”…違う…私では無い…と思うが…。

 …

 ただ、素晴らしい出来事が続く事もあるのだな!!」

 

 

ヒルデリアには、イビルアイの言葉が理解出来なかった。

イビルアイから『蒼の薔薇』と言う名の冒険者チームの事は、出会ったその日に聞きこの大迷宮でも訓練の休憩中に時折話していたので覚えている。

彼女の核は、それなのだろうと言う事も理解できる。

大切な『想い』は誰にでもあるのだから…ヒルデリアにもそれは理解できる。

だが、この現象は彼女による物で無いと言う。

こんな事、大迷宮に前例が無い。得体の知れない茨と蒼薔薇がパレスに巻き付いているのだ。

何が素晴らしい事なものか…。

 

「…そうですか。

 貴女では無いと言う事であれば得体が知れません。

 焼却します。」

 

あたかも当然の如く焼却処分すると言う、ヒルデリアの言葉にイビルアイは…

 

「おい!まてまてまてまて!!!!

 見ろ!このナ・ミ・ダ!

 

 ワタシうれしい!

 

 わかるか?

 わかるよなヒルデリア?」

 

「大迷宮に害なすものは、ルゥちゃんが滅しま…

 ルゥちゃんの防衛システムが機能していない?

 …

 …イビルアイ、貴女の涙の意味、あの花への思いは理解しているつもりです…。

 しかし、前例が無く大迷宮に害を成すかも知れない物を私は放置出来ないのですよ。」

 

焼却するしないの問答が続く中、連絡を受けていたルゥ=ルゥとロベルトが到着した。

庭師のロベルトの答え一つで、この美しく咲き誇る蒼薔薇の運命が決まってしまう。

だが、ロベルトの知識の中にそれは無かった。

突如出現し、あっと言う間に蕾をつけ咲き誇る植物等ない…。

それこそ、自分達と同じ部類に属する『モノ』ではないのか…。

 

焼却を決定付け実行に移そうとするヒルデリア、それを止めようとなんとか足にしがみ付きもがくイビルアイ…。

その様子を見てルゥ=ルゥがケタケタと笑っている景色はとても平和だとロベルトは感じた。

 

ロベルトが旦那様なら或いはと三人に告げ、この南西パレスへ足を運んで頂く事になった。

主人が訪れると言う事もあり、その場は一先ず落ち着きイビルアイがヒルデリアに何やら言っている。先程の続きだろうと。ロベルトは、改めて家族が増えたのだと実感する。

 

しばらくすると、バルディアが現れ眼前に広がる光景に目を細め微笑んでいる。

新たな出来事と言うものは誰の胸にも刺激を与えてくれるものなのだ。

 

「これは、美しいね。

 これの正体を答える事は出来るけど、それでは詰まらないだろう?

 考えてごらんよ。

 ヒルデリア、害は無いから安心して良いよ。

 いつも、ありがとう。

 ロベルトも、よく報告してくれたね。

 ルゥは驚いたかい?

 

 イビルアイ、これでパレスの名は決まったのではないかな?」

 

「あぁ。そうだな!

 このパレスに命名する『蒼薔薇の棺邸』だ!

 

 どうだ!!

 

 カッコいいだろ!?」

 

単純に『蒼の薔薇邸』とか『蒼の薔薇要塞』等ならわかるが『棺邸』とは何だ?

余りにも弾んだ声で命名したので何か意味があるのだろうと三人は考える事にしたが…。

ルゥは、イビルアイと似た感性を持っているようで、イビルアイに親指を立て”ニカッ”と笑っている。それに応じるようにイビルアイも親指を立てルゥ=ルゥと向き合った。

 

「そ、そうか…素晴らしい名だね…。」

((どうなんだロベルト?わかるか?))

 

「本当に素晴らしい、まさにこの景観に相応しい名ですね…。」

((わかる筈ないですよ!

 ヒルデリア殿はイビルアイと過ごす時間も多いですし当然分かりますよね?))

 

「棺邸とは、つまり『アレ』ですよね。素晴らしい響きだと思いますよイビルアイ…。」

((わかりませんよ!

 『アレ』とは言ってみましたが何て言うかこう…ルゥちゃんは分かるのですよね?))

 

「蒼薔薇の棺邸!!カッコいいぞ!!」

((カッコイイ!あるじ~、ヒルデ~、わんころ~、カッコよくないか?))

 

ルゥの問いに三人は、何も答える事が出来なかった。

かくして、ここ南西パレスは『蒼薔薇の棺邸』と命名される事になったのである…。

 

───────────────

   大迷宮 南東パレス

───────────────

最後の皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスの元にも魔導国の一角を打ち破ったと言う一報はロベルトによりもたらされた。

彼の魔導国…。その守護者コキュートスをバルディアが打ち破り、彼の生殺与奪は大迷宮の主が握っているのだ。

 

ジルクニフは、イビルアイの様に喜ぶ事は出来なかった。

『過去のトラウマ』と言う生ぬるい一言で簡単に片付けられる問題では無いのだ。

彼にとり『アインズ・ウール・ゴウン』は恐怖の対象でしかなく、関わりたく無い存在として深層心理に刻まれている。

 

ただ、押し黙り豪奢な椅子に腰かけ考える。

彼は、この大迷宮の中で唯一魔導王の恐ろしさを肌で実感してきた男なのだ。

今回の件を黙って受け入れる魔導国では無い事も想像に難くない…。

人として生きたジルクニフは、魔導国と長く付き合ってきたので『コキュートス』の存在も当然知っている。加えてヤツが部下達の事を『過去の仲間達の子供』として預かっているのだと話していた事を思い出していた。

その内の一人『コキュートス』の生殺与奪を握る等…

正気の沙汰では無い!

 

((これは、ただでは済まないぞ…また、魔導国の大量虐殺が始まるのだな…ここは住みやすく良い

 場所なのだが…))

 

 

 

南東パレスのリフォームも終え、その命名をジルクニフは決め兼ねていた。

帝国旗は、盾のエスカッシャンに翼ある獅子がサポーターとして向き合った物だったが…。

 

((同じ轍を踏んでなるものか!

 あれは敗者の印なのだ!))

 

このパレスは、嘗て住まいとしていた帝城よりも煌びやかで豪華絢爛。豪華な家具や調度品の品々は、どれをとっても超一級品である。

この地の資産家達から見ても贅の極みを尽くしたジルクニフの私室が完成していた。

だが今の彼は、その部屋に相応しくない程に戦々恐々としている。

 

パレス入り口、その大扉が開かれ二つの影がジルクニフの私室へ向かっている。

ピンヒールの歩行音、そしてその背後の存在…。

今回の事件を聞かされる前のジルクニフであれば、この二人の前でたじろぐ事も無かった。こんな情けない姿を晒すような事も無かったのだ。

 

 

 

*カツ・カツ・カツ・スタッ*

 

 

 

「ジルクニフ、バルディア様が御見えですよ?

 …

 ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス!!」

 

怯えて椅子の上で両膝を抱え(うつむ)くジルクニフにヒルデリアは、冷ややかな目で彼を見下し大迷宮の主の到来を告げる。

 

「…し、失礼しました。始祖様、ヒルデリア殿…。

 あ、あの、コキ────。」

 

コキュートスの件について事実確認をしようと問う言葉は、途中で遮られ『脅え切った少年』に目線を合わせるようにバルディアが腰をおりジルクニフに問う。

 

「何に脅えている?」

 

心に響き染み渡る少し低い声。

その質問に対して目の前にいる銀髪の男に顔を引きつらせる事しか出来ない。

何もかも見透かしているかの様な不思議な緑の双眸だ。

答えられないジルクニフを中心にゆっくり円を描く様に歩きだした大迷宮の主は、私の回答を待っているのかそれとも他に何か意図があるのか…。

この状況は、アイツと対峙している時に似た…いや、より恐ろしい何かだ。

勝手に追い詰められたと思い込み、何か良い一手が無いものかと深読みしすぎる悪い癖が出てしまう。ただ、これは当然の事なのかもしれない。

ロベルトと訓練を重ねてもジルクニフは、まだ『真祖』としての自覚が足りないのだ。それ故この程度の事で脅えてしまう。

 

「あの話を聞いたのだね。

 アインズ・ウール・ゴウン…。そんなに怖いのかい?」

 

((聞きたくも無い名前!

 記憶から消し去りたい!

 アレが存在していると言う事が恐ろしい!))

 

ジルクニフが散々な目にあってきた事は誰もが知るところだ。

故に彼は、嘗ての記憶から目を背けようとする。

ロベルトとの訓練内容と成果は聞いている。

そして今の彼に最も必要な事が何であるかも解っている。

 

「ジルクニフ、帝城へ行こう。」

 

「はっ?」

 

突然の言葉に間の抜けた声を出してしまったが、次の瞬間には三人は帝城前にいた。

 

((転移魔法か…。

 相変わらず、何を考えておられるのか分からない御方だ。))

 

城を守護する兵士達が、突如現れた三人に警戒し大声を張り上げ身分を明らかにするよう叫んでいる。彼等は彼等の仕事をしているだけだ。

バルディアとヒルデリアは、そんな兵士達の声を気にする様子も無く、長い白銀色と金色の長い髪をたなびかせ、颯爽(さっそう)と城へ真っ直ぐ向かい歩き出した。

公衆の面前で、いつまでも情けない姿を晒すわけにはいかない。

ジルクニフも皇帝だった男なのだ。

直ぐに威厳ある姿勢と気迫を取り戻し二人の後に続いた。

ジルクニフの気配が僅かに変わった事を感じ取り、前を歩く二人が笑みを浮かべる。

 

「止まりなさい!ここから先は一般の方々が立ち入る事は出来ません!

 入城許可書は御持ちでしょうか?

 失礼ですが、御名前を頂けますか?

 こちらの手違いかも知れませんので直ぐに確認します。」

 

仕事なのだから怪しい人物の身元確認は、兵士として当然の事だ。

目の前の不審な三名…。

怪しいとは言え、豪華な身形に見合った畏怖堂々たる佇まいから、兵士達の言う『一般の方』では無い事ぐらい誰にでも想像がつく。

 

「必要ない。」

 

バルディアのこの言葉は、流石に兵士として看過出来る物ではなく、それ相応の対応で怪しい人物達を即座に取り押さえなければ成らない。

兵士として当然の仕事なのだが、身動きが取れないのである。兵士の誰一人として指の一本も動かす事すら出来ない。

立ち尽くす兵士達を余所に三名は、優雅に入城するのであった。

 

「始祖様、ところでなぜ帝城なのですか?」

 

「フールーダ・パラダインは生きているよ。」

 

「…で、あろうな…。奴は、魔術に魅入られた化け物だ!」

 

「それだけかい?

 君は、裏切者を放置するのかい?

 

 優しいのだね。

 私はね、裏切りと言う名の行為を嫌う。」

 

「……私にフールーダを殺せと?

 …

 無理だ!

 あんな化け物どうにか出来る者など、ヤツとその配下ぐらいだ!

 私は、そんなに強くないぞ!」

 

「御覧、城の中は、ほら、デス・ナイトだ。」

 

バルディアが指さす方向を見ると、ヤツがいとも容易く作り出した伝説級のアンデッドである

デス・ナイトが見回り兵の様に巡回している。

当然、侵入者に気付いたデス・ナイトは襲い掛かってくる。

 

「大丈夫。君の方が化け物だから心配ないよ。」

 

そう言うとバルディアはジルクニフの背中を押しデス・ナイトの前に立たせた。

人であった頃の記憶では、デス・ナイトは伝説級のアンデッドだ。

それが、帝城内で見回り兵の代わりにをしている。

笑えない冗談だ。

ジルクニフにデス・ナイトの剣が容赦なく浴びせられた。

 

((始祖様により吸血鬼として蘇り、デス・ナイトに殺されるのか…。

 なんて言うか、もうどうでも良いな…。))

 

「……」

 

デス・ナイトの剣は、確実にジルクニフの首を捉え、勢いよく振り下ろされたのは確認した。

 

「どうだい?

 君も随分な化け物っぷりじゃないか?」

 

((剣が振り下ろされるのを確認した?あの速度で振り下ろされた剣が見えていたのか…。

 それに…。))

 

そう。ジルクニフの首が落とされる事は無かったのである。

その状況を即座に理解し、ロベルトとの訓練で習得した拳による一撃を叩きつけると跡形も無く

デス・ナイトは粉砕され消え失せていた。

 

彼の中で何かが変わった。

変わらずにはいられなかったのである。

 

「この城は今、君を裏切った男が牛耳っている。

 君も君自身の内にある力の一端を理解出来ただろう?

 伊達にロベルトと訓練をしていたわけでは無いのだからね。

 

 

 さぁ、狩りを始めよう!」

 

ロベルトとの訓練の日々がジルクニフに『真祖』として最低限の力をつけさせていた事は解っていた。

彼に足りなかった物。根底にある恐怖を払拭できる事は何であるか、ジルクニフにとって、この城は丁度良い狩り場になるだろう。

後は、彼の本領の目覚めを待つだけだとバルディアはほくそ笑む。

 

自身が何に怖れていたのかさえ、今のジルクニフにはどうでも良い事だった。

伝説級アンデッドを一掻きする程度の力で迫り来るデス・ナイト共が掻き消えていく。

余りに容易いので先へ先へと進むジルクニフは、いつの間にか嘗て四騎士達と過ごしたあの部屋に辿り着いていた。

そして、目の前で読書に勤しんでる男…。

 

「フールーダ・パラダイーン!!」




お楽しみ頂けたなら嬉しく思います。

次回は、爺とジルクニフの戦いになります!
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