OrverLord ─始祖の吸血鬼─   作:ブラック×ブラック

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 今回は、アニメの雰囲気だけでは無く、ナザリックNPCについても調る事が出来ました。
 感想でも教えて下さり、ありがとうございます!
今回も独自設定ありありです!

 お楽しみ頂ければ嬉しく思います。


第二章 揺籃
第十六話 グリモワール大迷宮ー5


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  大 迷 宮  入 口

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 二年後─。

 眼前に広がる大迷宮の規模に息を飲む。

この拠点は、ただ広いだけの迷宮とはまるで違う。

プレイヤーであり嘗てギルドマスターを務めていたアインズだからこそ解る事がある。

大迷宮は、間違いなく三千レベル級規模の拠点である事が見て取れた。

 

 嘗ての世界ユグドラシル──。

拠点設定可能なダンジョンが幾つもあり、当然難易度もそれぞれ異なる。

あの世界におけるグリモワール大連合の規模を考えると当然の事なのだろうか…。

 

 

 正式名称『原初の大迷宮ノストラーゼ』

 

 

 長期滞在型のダンジョンで、数ギルド合同攻略となれば『ホームの占有権』入手をどのギルド

が取得するのか揉める事が多くなる。

長期滞在型の攻略ダンジョンならではの物で、攻略時は意気揚々とダンジョンに挑むが、慣れな

い環境、長期に渡る他団体との力関係。

 始まりは、回復アイテム等の消耗品の分配から始まる。プレイヤー間トラブルは、ストレスと

なり徐々に疲労が蓄積され、更なる軋轢(あつれき)を生み追い詰められる。

高難易度のギルドホーム系ダンジョン攻略を考えるプレイヤーが攻略を一度は躊躇(ためら)う。

 

 『原初』を冠するダンジョンは、全部で七つあり『原初シリーズ』と呼称されていた。

攻略を試みようと考える者はいなくなり、ネタで入ってみた等と言う記事や動画は有ったが、

ほんの少し入る程度に留まる物ばかりである。

 

 アップデートを重ね、世界が広がるにつれ比較的短時間で占有権を得られるダンジョンが増えた

事、原初シリーズの下方修正が一向に行われない事、現実時間とプレイ時間の兼ね合い等諸々の状

況もあり、誰が言うでも無く観光名所と化し、廃れた経緯を持つそんなダンジョンである。

 

 原初シリーズの難易度は下方修正される事は無く、運営の悪意とも取れる公式サイトコンテンツ

未攻略ダンジョン一覧が追加され、他の高難度ダンジョンと肩を並べ名を連ねていた。

 そして、サービス開始から約五年経過した頃になると、公式サイトから次々に原初シリーズの名

が消え、攻略された事が示されていたが、今更感もあり誰しも興味を持つ事はなかった。

 

 ただ、そこに眠っていた秘宝の存在が明らかにされた時、公式サイトは大炎上したのだ。

 

 バランスブレイカーとなるソレに対する運営陣の姿勢は、観光名所として秘宝を眠らせる選択を

取ったのはプレイヤー達の意思であり、ごく一部のプレイヤーが攻略に成功し秘宝を得たと説明。

原初シリーズに眠る秘宝については仕様、今後下方修正や調整は行われないと対応を一貫して、

公式サイトで発表された。

 

 大炎上の原因となるその秘宝は、公式チート秘宝の中で最悪なものである。

 

 その名は『原初素体』と言われるワールドアイテム全七種。

世界の始まり、最も古き強者にして永劫の猛者達と言う設定である。

それぞれが、原初の火・水・風・地・星・光・闇の属性を持つ『ワールドアイテム素体』だ。

 

 ゲーム開始時に誰もが自由に選択し、自由度の高い細部にわたる迄創り込みが出来る。

ユグドラシル内では、自身の分身として鍛え各々に愛着があるアバター。

有料でイメージ通りのアバターを作成する人気作家までいた。

原初素体は、使用時にそのアバターに溶け込み、攻守に優れたバランスブレイカーとなる。

それだけで無いのは当然だ…。

運営がここまで頑なに下方修正を行わなかった理由があった。

 

 それは、アバター種族の未公開を含む最上種への進化覚醒が可能となり、通常攻撃であっても、

貫通能力のオン・オフ機能とステータス、所有スキル・魔法の頭には『原初の』と追加された。

防御面では、物理、魔法はレベル九十五以上で無い限り攻撃されてもダメージやデバフを無効化す

る所謂『コワレ』であった。

 

 大炎上だ。

 ワールドエネミーは除外されるが、モンスター、対人共に相性関係なく無双である。

 

 仮に虚数の彼方に勝てる見込みが合り勝利したとする。

アバターに溶け込んだワールドアイテムはドロップされない為、奪う事が出来ないのだ。

使用者が相手を指定し譲渡すると言う形で、このアイテムの所有権は初めて変わる仕様である。

長い時間をかけ原初シリーズを攻略し、原初素体を所有するプレイヤーは全コンテンツにおいて、

無双となる筈だった。

 

 

 

 

 しかし『タイトルホルダー』は存在しない。

 

 当初調整無しとしていた運営が多くの意見に譲歩する形で、素体持ちに対する新実装コンテンツ

ワールド公式大会の参加権剥奪が発表されると大炎上も次第に収まり、彼等は、公式大会に参加で

きない最強プレイヤーとなった。

 

 ただ、余りにも酷である。

彼等の気の遠くなる様な冒険が、タイトル戦への参加権剥奪…。

 運営の原初コンセプトチームと携わった開発チームが納得しなかった。

歪な熱が入りコンセプトチームと開発陣は、更なる『コワレ機能』を追加し、従来通り下方修正は

一切無く更なる上方修正迄もが決定され容認された。

 

 属性に見合う最高水準特殊スキルと魔法が一日当たり七回迄使用できる。

通常魔法やスキルは、リキャストタイムは無く、無詠唱が標準完備された。

 これは、長い冒険で得た一部アイテムを所持した末に公式大会に参加できない。と言う不合理を

解消する救助作となり、今後新たに追加される全てにおいて最上水準が保たれると告知し、内容は

公式サイトからは発表しないとされた。

こうして歪な熱は、誰しもが思わぬ方向へ進みゲーム自体の天井が決定付けられる事で終結した。

 流石に『救助作』と銘打たれてはアンチも激減する。

 

…過度な上方修正は、彼等を退屈させてしまう物でしかなかった。

 ゲームにおける無双程つまらない事は無いだろう。

 運営チームも他プレイヤー達もこの事に気付く事無く、サービスは終了された…。

 

((まさか、グリモワール=ファミリアで独占している何て事は流石にないよな…。

 ヒルデリアのバグったようなステータス値…アレの可能性は高いのか…。

 仮にそうだとして、NPCであったヒルデリアに使用する物か?))

 

 しかして、百年間の無双の虚しさを味わいながらも、因縁により起こるこの世の現象が常に変化

し不変なるモノでは無く、自分だけが選ばれたとは微塵も考えていない事を知りながら、中には、

例外も存在する事を知る男が一人…。

 アインズ・ウール・ゴウン魔導王は、大迷宮の入り口前にて一人、呼び掛けがある迄静かに佇み

部下達の事を想うと共に、あの日の出来事を振り返っていた。

 

 強烈な一撃。

だが、『ようやく』と言う思いもあった。

決してマゾヒズム的な意味合いでは無く、この憂いを共感し或いは超越する存在の出現に対する

素直な感情なのかも知れない。

 魔導王は、ナザリックの危機的状況と相反する想いを自身の内に抱いていた。

 

 

 期日半年前─。

 大迷宮よりナザリックへ書簡が届いた。

その内容は、現在のシャルティア、コキュートスの詳細な記述…そして映像データである。

映像データを見れば、充分伝わる内容であり緊急性が高い物だと理解出来た。

 

 『新制ナザリック』にあの二人は不可欠な存在である。

そこで、件の二名引き渡しについての詰め合わせと、復興猶予期間延長を交渉すべく一人訪れた。

 

(( 始祖と対峙し、実感した事…。

 守護者達には、始祖と一定の距離を保つ事を徹底させなければ成らない。

 無理な要求以外は可能な限り対価に見合う交渉をし受諾する事。

 不可能であれば、皆で考え代案を用意し、俺が交渉する。

 ナザリック最大戦力であれ、確実な勝利絵図が描けない現状では、あちらが油断や隙を見せ情報

 漏洩でもしない限り組織として戦うべき相手では無いだろう。

 少なくとも今のナザリックでは、対等な友人として関わる事が出来ない危険な存在。

 

 あの時、本気で俺を滅ぼそうとしていた。

 そして、それも可能だっただろう。 

 あの目を見れば、その程度の事誰にでもわかる…。

 ヒルデリアは、なぜそれを邪魔するような形を取ったのだ…。))

 

 そろそろこちらの存在に気付いて貰わなければ困ると考えていると、視界の隅に解放された大迷

宮地獄の門内側に立つ男の姿を捉えた。

 

 バハルス帝国最後の皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。

 

 出会った当時の若々しい姿をした最後の皇帝がこちらを見ているのに気付き、大迷宮入口へ歩み

寄る魔導王にジルクニフが一礼する。

 

「魔導王陛下、御久しぶりと言うべきなのだろうか…。

 私の葬儀に参列下さったと聞いている。

 感謝するよ。」

 

「当然では無いか。

 我々は友人だったわけだしな。

 旧友との再会程嬉しく思える事は無い。

 …本当に久しぶりだ、ジルクニフ殿。 

 

 聞くところによると真祖の吸血鬼に覚醒したそうだな。

 私と同じアンデッドになった訳だが、気分はどうかね?」

 

 ヴァンパイア特有の紅の瞳と白い肌。

デミウルゴスの報告通りであるが、二年の歳月を経て未だ自身の変貌には慣れていないと言った

複雑な表情を浮かべている。

 

「ふむ…。

 人として生を全うした私には、酷であり難しい質問ではある。

 回答は、しばらく保留とさせて貰うが構わないかな。

 

 すまないが、先に訪問理由を訪ねたいのだ。聞かせてくれるだろうか?

 そう仰せつかっているのだ。」

 

 ジルクニフは親指を後ろの大迷宮へ向ける。

魔導国へ属国化を宣言した事で彼は、魔導王との争いを回避する事が出来た。

この世の全ての重責を背負っていたかのような心境で魔導王と対峙していた。

だが、それも心配する事が無くなり、肩の荷が下りどこか気が抜けた雰囲気さえあった。

嘗ての自信家であった男とは異なり、亜人種の友人が出来たと聞いた時は驚かされたものだ。

 

 しかし、眼前に立つ最後の皇帝は、真祖の吸血鬼へ覚醒を遂げ種族が変わった事による影響なの

か、属国後のつまらない男とは明らかに異なっている。

何か大切なモノを取り戻し、鮮血帝と呼ばれ歴代最高と称えられた皇帝の本来あるべき姿を取り戻

したのだろうか…。

魔導王に脅える素振りを見せる訳でも無く、堂々とアインズと向き合い問いかけてきた。

 

「あぁ…そうだったな。

 始祖殿に御会いし、詰めたい話があるのだが可能か?」

 

 ジルクニフは、王都復興事情を知っているかのような笑みを浮かべ大迷宮へ向かい、胸の前に左

手を当て軽く腰を折り一礼すると、アインズを見やる。

 動作を模倣しろと言う合図だろうと理解したアインズもジルクニフと同じ姿勢をとる。

すると元から解放されていた入口奥の迷路が、何者かの手により形容し難い動きを見せた後、最奥

へ通じる一直線のレンガ道が現れた。

この最奥に城か邸宅があるのだろうが、この場から確認するのは難しいようだ。

 

 御屋敷と呼ばれる敷地迄は、この道を進み更に数日かかるので途中で休む事になると説明を受け

た折に転移等の魔法使用は出来ないのかと問うが、凡その答えは解っていた。

ジルクニフが大迷宮内で移動魔法が使用出来るのは一部の者だけだと困ったように言う。

ナザリックではそれが当然であり、ジルクニフの様に不満を口にする者はいない…。

魔導王が考え事をし歩いていると察し、しばらく両者の間で言葉が発せられる事は無かった。

 

 先程迄歩いて来た道は、迷宮と化し綺麗に消失している様子を確認する魔導王。

更に、隙だらけのジルクニフに一切手出し出来ない程、強制力のある何者かの視線。

先に口を開いたのは、後続のアインズだった。

 

「ジルクニフ殿、私の部下達は無事なのだろうな?」

 

 ジルクニフが彼の魔導王が部下想いである事に対し意外そうな表情を浮かべている。

 

「それについて確認しておきたい事がある。」

 

 過去の皇帝では考えられない魔導王に対する応答である。

質問に対して、何か確認を取るような事は嘗て無かったのだから…。

 

「なんだ?」

 

 その変貌に魔導王は、若干の苛立ちを覚えたのか短く答えジルクニフの言葉を待った。

 

「魔導王陛下の部下。

 フールーダ・パラダインは私が殺害した。

 問題あったかな?」

 

「あぁ…確認と口にするから何かと思ったぞ。

 その事か…。

 いや、構わないさ。

 元は、帝国宮廷魔術師だ。

 君も良く知る通り、アレは魔法の事となれば見境が無くなってしまう。

 あの様な行為は、誤解を招くだろう。

 誤認(・・)であれ、君は、裏切者へ然る死の鉄槌を降しただけだ。

  そんな事より、私の部下は無事なのかと聞いているのだ。

 私は、君の主人の名さえ未だ知らされていないのだ。」

 

「誤認だと?

 …下らない挑発は私だけに止めておいた方が身の為だとは告げておく。

 魔導王陛下、これは同じ時代を生きた者としてのよしみとして受け取って欲しい。

  それと始祖様の名は、自分で尋ねた方が良いだろう。

 部下達の話も同様だ。

 私の今回の仕事は魔導王陛下の先導。

 ただ、それだけだ。」

 

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  大 迷 宮  庭 園

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 二日後─。

 御屋敷敷地に入るとそこは美しい庭園であった。

ここまで来てようやく始祖が住まう邸宅を確認する事が出来た。 

 

 廃都となった王都を復興し、美しい街並みはどうにか取り戻せた。

ただ、未だ入居者は八割に満たない。

こちらは要求を完全な形で応じる事が出来なかったのだ。

 邸宅前の門で、ヒルデリアが左手を胸に当て軽く腰を折り魔導王に一礼する姿が確認出来た。

ジルクニフに案内役を任せた執事服を纏った女が労いの言葉をかけ、何やら指示を受けている姿

を見て魔導王は、改めてジルクニフが始祖の配下である事を認識させられたのだ。

 

「ようこそ、魔導王陛下。

 御主人様が、陛下との面談を待望しておりますわ。

 こちらへ。」

 

 そう言うと、ヒルデリアが先導をはじめた。

ヒルデリアは、隔離され彫刻が施された石の柱と鍛造鉄門の前に立つと、女の細腕では到底開く事

すら出来ない巨大な門を難なく開く姿は、とても不均衡に映る。

ナザリックに訪れた際に確認した女のステータスは異常な数値を示していたが…。

 

「こうした時は、何か会話があった方が良いと思うのだが、どう思うね?」

 

 アインズは、あり得ないであろうが確証が得られない事を確認しておきたかったのだ。

最悪を想定した可能性について、確証を得たかった。

そこで会話と言う方式で情報を引き出せないかと考えたのだ。

 

「御主人様について、わたくしの口から申し上げる事は御座いませんわ。」

 

 ジルクニフと違い、初めにナザリックへ訪問した頃と何一つ変わらず、全く隙が無いが優雅に歩

を進める優美な姿である。

 

((ヒルデリアの創造主は、尻フェチだろうな…。))

 

「私は、始祖殿の名すら知らないのだ。

 会談とも成れば、相手の事をどのように呼べば良いか知る必要があると思うのだ。

 どのように呼ぶのが適切だろうか?」

 

 遠回りだが、邸宅迄は幾分か余裕がありそうなので、不明な点を可能な限り引き出したい。

 

「なるほど…。

 そうで御座いましたか。

 先程の『始祖殿』でよろしいのでは無いでしょう?」

 

((ナザリックで見せたあの危険な挑発の微笑みだ。

 始祖について何も語る気無しか…。

 しかし、ここで挑発する意味は無いだろうに…。

 別の切り口からよくある会話の如く原初シリーズについての確認へ話を切り替えるか…。))

 

「それにしても、始祖殿の大迷宮は立派だ。

 私が元いた世界にも似た様な場所があったのだよ。

 確か名を『原初の大迷宮ノストラーゼ』だったか…?

 そちらも立派な迷宮だったよ。」

 

 ノストラーゼの名を出した一瞬だ。

あの完全無欠の執事の歩みが常人では見抜けない僅かな程度に乱れた。

 

「左様でございましたか。

 わたくしは、存じ上げません。

 そのような場所があるとは世界は広いですわね。」

 

((決まりだ。

 この大迷宮は、原初シリーズで確定だろう。

 そして先導する執事の女ヒルデリアは、『原初の大迷宮ノストラーゼ』の名を知っている。

 ヒルデリアは、対探査系魔法等でステータス情報操作を行っている訳では無い。

 すると、始祖はどうなる…。))

 

 

 ここから、一切気の抜けない領域である事を改めて思い知らされる。

次いで第二、第三の門を経てようやく邸宅へ到着するとレベル一の使用人達がずらりと並び、魔導

王訪問に対し一糸乱れず軽く会釈を取り出迎えた。

 

 執事ヒルデリアの手により、原初の大迷宮ノストラーゼ邸宅の扉が開かれる…。




 大迷宮の正式名称を考えていたら、掲載がとても遅れてしまいました。
ノストラーゼに意味は無く、自分的に響きがそれっぽい!と思えた名称です。
 原初シリーズに関しては、強いだけでは無くゲーム時代に公式試合参加権剥奪と言うデメリットを与える事で調整を取った形になります。

お楽しみ頂けたなら嬉しく思います。
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