OrverLord ─始祖の吸血鬼─ 作:ブラック×ブラック
お楽しみ頂けると嬉しく思います。
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大 迷 宮 ルゥの秘密基地
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そこには、背の高い常緑の茂みがあり、茂みの奥中央には寝転ぶと空を仰げる快適な茂みライフ
を満喫できるそんな場所があった。
この広大な大迷宮の何処とも知れない場所にひっそりと。
ドライアドである彼女にとって、広大で緑豊かな大迷宮内に限り、凡そ距離と言う概念は無く、
自由に行き来できてしまう。
バルディアの邸宅や他のどこへ行くにも、てくてく歩けいて行ける距離と変わらないのだ。
この茂みは、ルゥのお気に入り空間であり、ここから大迷宮の全てを管理する事が出来る。
大迷宮の中で、この場所を知るのはルゥ=ルゥの他にバルディアしかいない。
ルゥがこの二年の間、時折訪れるバルディアと共にお喋りや、食事、昼寝等、多くの事を共有し
過ごしてきたそんな場所である。
残忍な大迷宮管理者ルゥ=ルゥの笑顔を見る為だけに土産を持ち大迷宮の主が訪れる事もあった。
その中に、ルゥのお気に入りの品が出来た。
こちらの世界で似た物を見付ける事が出来たと、あるじが喜んでいたそれは、珈琲と言う名の飲み
物を作る為に必要な種である。
あるじが前世とか言う場所で好きだったと教えてくれた。
それをジワジワと甚振る様に焙煎し、正確な分量を取り、あるじの道具で種を挽く。
*ガリ・ガリ・ガリ*と、音を立て種が粉みじんになる。
ルゥは、あるじと種を挽くこの工程が大好きなのだ。
そこから今度は違う道具を使い、粉みじんになった種にゆっくり熱湯地獄湯を滴らせるのだ。
これを『ドリップ』と言い、大切な工程であるとも話していた。
ゆっくりジワジワとだ。
すると…ドス黒い液体に変わったのだ。
最初に出来た珈琲を見て『流石は、あるじ…飲み物まで黒とは!』と内心驚きながら、その禍々
しく黒い液体を小さなカップに入れ、勧めてきた時にはあるじが鬼に見えた。
だが、その禍々しい黒の飲料は、実に魅惑的な『深みある良い香り』を漂わせているのだ。
ルゥは、あるじの様な大人を気取らせてくれるであろう黒い液体を一緒に飲む事を決意した。
カップを受け取り口に含むが『ニガイ!』としか言えなかった。
「フッ…あれも今では、良い思い出なのだ。」
今では、ルゥがコーヒーノキと言うアカネ科の植物を育て、実った果実が赤く熟した頃に収穫し
種をとる事でグリモワール大迷宮産の珈琲が頂けるようになった。
これは、ルゥの新しい仕事と言うより趣味になっている。
ルゥ=ルゥがこれを初めた時、バルディアは大喜びしただろう。
今では、ルゥの方が上手く珈琲を入れる事が出来る。
この茂みで過ごし、あるじと一つ一つ様々な遊びをしてきた場所と思い出がルゥの宝物なのだ。
ここは、ルゥとあるじ二人だけの秘密基地。
そのお気に入り空間で、珈琲片手に大人気分を味わいながら、魔導王立ち入りの許可を出した。
ジルクニフを守護し何かあれば、あるじは『ブッコロして良い』と言っていた。
これは、暇を持て余していたルゥ=ルゥの曲解である…。
バルディアが鼻息荒くする大迷宮の小さな守護神に伝えたのは『拘束し報告するように』と娘を
甘やかす親そのものの姿でしかなく、ルゥの頭を撫でお願いしていた。
((あるじは、強いし、カッコイィ、大好きだっ!
ルゥの知らない外の世界や他の色んな話も聞かせてくれる。
遊んでくれるし、昼寝だってした!
新しい趣味も出来た!
頭も撫でてくれるしなっ!))
そんな事を考えながら、徐々にルゥ=ルゥ本来の『ブッコロス思想』が、あの死神の如く不吉な
存在へ注がれる事となり、その時が訪れるのを固唾をのみ待ち望んでいる。
結果。アインズは、正体不明の得体の知れない何者かの視線、或いは大迷宮に設備された機能の
一部である事を警戒し、下手な行動を取らなかった。取れなかったの方が正しいのだが…。
ルゥ=ルゥの予定ではこうであった。
ジルクニフが苛められ、ルゥが魔導王を虐めて『成敗!』とカッコ良く決める。
当然勝利のポーズも忘れない。
成敗した魔導王の上に立ちカッコよく親指を突き立てジルクニフに向けニヤリと笑って見せる。
この大迷宮内であれば、彼女にはそれが可能なのだ。
彼女を抑止出来るアイテムや魔法は存在しない。
グリモワール=ファミリア大迷宮へ立ち入ると言う事自体が、生殺与奪の権利をルゥ=ルゥに無条
件で託すのと同義であると言っても過言では無いだろう。
ただ、当の本人は難しい事は考えていない、至って単純にブッコロス思考がそうさせるのだ。
唯一つ、対抗する魔法の言葉と呼べるかも知れないモノは存在する。
ルゥ=ルゥの親であり彼女自身が大好きな『バルディアのお願い』と言う何とも単純な事。
彼女を抑止するにはバルディアに頼る他無く、他の手段では困難極まりないだろう。
その小さく愛らしい少女の姿をしたドライアドにして、大迷宮管理者の虐めは、愛らしい見た目
から想像を絶する程考えが及ばない残忍な手法で、それを目にした大迷宮の誰しもが口を揃えこう
言う『お相手には心底同情します』それほど凄惨な物になる。
庭師にして、外では諜報活動をこなすロベルトが本能的に恐れていたのもそれが理由だったが、
外の仕事帰りにお土産や外の話をし二人の時間を持つ事で、その関係は変化しつつある。
外の世界へ対する憧れに似た感情を抱く様になったのも、バルディア、ヒルデリア、ロベルト達
が、大迷宮から外に出る事が出来ないルゥ=ルゥに対し良かれと思い『土産話』をする様になった
事も関係しているかも知れない。
この地へ転移して直ぐ、三百年前の出来事からルゥ=ルウは、大の人間嫌いになっていた。
だが、その土産話の中には刺激的で興味深い事も沢山あり、その中で最も多く登場する人物。
『魔導王』
その魔導王が、大迷宮へやって来たのである。
ルゥ=ルゥは、興奮せずにはいられないのだ。
「ブッコロ~ス…ブッコロ~ス…ふっふっふ~あれは固そうだ!」
しかし、その魔導王は、不審な動きを見せる事無くバルディア邸へあっさりと入館した。
ルゥの視線がそうさせていた事にも気付かず、期待外れだと不貞腐れている。
仕方なく彼女は、バルディア邸付近の大樹の陰へ移動し、会談が終わる迄待つ事にした。
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大迷宮中央 御屋敷 大樹下
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そこへ、外の仕事を終え帰還したロベルトがルゥの姿を見付け、その横に腰掛け土産を渡そうと
顔を覗き込むと、その表情から機嫌が悪い事だけは理解できた。
グリモワール大迷宮の小さな管理者にして守護神は、今や小さな魔王といった雰囲気で、とても
危険な状況である。周囲の生命維持を強制的に停止させるのでは無いかと思える程の負のオーラを
放ち、邸宅を睨め付けているのだ。
「ルゥ殿…。どうなさったのです?」
「ワンコロかっ!
あの死神つまらんぞ!
暴れてくれれば、ルゥの出番なのに何もせん!」
「あぁ…魔導王ですか…。
彼の御仁は聡明にして万年先を見通す叡知を御持ちだとか…。
ついに大迷宮へやって来たか…。
最近の魔導王は、表舞台から姿を消しているようで情報入手は困難でして…。
それでルゥ殿、魔導王は実際どんなヤツでした?」
「つまらん骸骨だっ!ルゥの作戦が台無しなのだ!」
この時点で、ワンコロと呼ばれた人間種で言う所の中年男性の姿に変身しているワーウルフであ
り庭師のロベルトは、ルゥ=ルゥが陸でもない事を考えているとのだと理解した。
「その作戦ですが、ルゥ殿。少しお聞かせ願えませんか?」
作戦概要を聞き、旦那様の指示は『万が一の場合は拘束』と言う事を聞き、ルゥ=ルゥが曲解し
た物であるとロベルトは理解した。
実際、ロベルトの理解は正しいのだ。
「ルゥ殿、それはお手柄でしたな!
ルゥ殿が魔導王にいたず…。
魔導王を成敗しなかった事で、旦那様と会談は上手くいく筈ですよ。」
ルゥは、ロベルトの『お手柄だ』と言う言葉の響きが気に入ったのだろう。
先程迄の鬼の様な形相はすっかり消え、ニカッっと笑い立ち上がるとふふんと腕組みし、腰掛ける
ロベルトと視線の高さを同じにした。
「そうだ!お手柄なのだ!
そして魔導王、あれは、なかなか固いぞ!」
「左様ですか…。
私等は、戦闘が始まった途端に消滅しているでしょうな。
ハッハッハ…。
…ところで、ルゥ殿は何かお悩み事でもあるのですか?」
ルゥ=ルゥとの付き合いで、多少は彼女の心情が理解できるようになっていたロベルトが尋ねて
みると思い掛け無い答えが返ってきたので困ってしまった。
外の世界を見てみたいと言う事だが、ルゥ殿にしか出来ない重要な仕事が大迷宮にはある。
大迷宮を管理守護する事。それがルゥ=ルゥの仕事であり役割なのだ。
人間嫌いな彼女がなぜこの様な考えに至ったかを聞いてみると、自分達がルゥ殿へ持ち帰る外の
世界の土産話を楽しそうに話しているからだと言う。
確かに、知らない事があり、外へ出る自分達はそれを実際に見聞きし知る機会に恵まれている。
我々の中で、疎外感に苛まれる事もあったのかも知れない…。
座り込み、困り果てたロベルトの頭にポンと小さな手がおかれ少女が笑顔を見せた。
「大丈夫だ!
ルゥは、このグリモワール=ファミリア大迷宮の管理者なのだからなっ!」
珈琲の話が長く説明的ではありましたが、ナザリックのNPC達が、人間を虐げる事以外の趣味を持つ事に苦戦?している様に感じました。
そこでグリモワールのNPC達にはそれぞれ趣味を持たせたいなと考えた次第です。
短めですが、お楽しみ頂けたなら嬉しく思います。