OrverLord ─始祖の吸血鬼─   作:ブラック×ブラック

18 / 19
お楽しみ頂けると嬉しく思います。

なかなかUP出来ず申し訳ないです!


第十八話 不死者達の会談ー1

───────────────

 グリモワール大迷宮 邸宅 

───────────────

 彼の始祖が住まう館は想像していた、おどろおどろしい建造物とは異なり古典的ではあるが洗練

されたゴシック建築の美しくも重みある佇まいである。

先導する執事の手により、邸宅の重厚感あふれる扉が今ゆっくりと開かれた。

 

 ナザリックは、嘗ての仲間達と作り上げ階層ごとに異なるコンセプトで作成された。

それぞれの階層は仲間達の手により完成度高く仕上げられ、全体として一定の均一化が図られつつ

多様性豊かな仕上がりとなった素晴らしい拠点である。

 一方、大迷宮は細部に至る迄統一された美を感じ取る事が出来た。

外観から感じられた通り内部も細部に至る迄洗練され、どこか(おごそ)かな雰囲気をかもし出している。

 

 この地で最初に美しいと心から素直に感じたのは、数多の星々煌めく満天の星空だ。

それは、銀河と言う名の万物の創造主。

魔導王は、この地の星空を『宝石箱の様である』と形容し素直に称賛した。

 嘗ての仲間ブルー・プラネットにも観て貰いたかった。

ロマンチストな彼であれば、この美しい大自然をどのように形容しただろう。

誰の言葉も耳に届く事無く、時を忘れ満足ゆく迄眺めていたに違いない。

そんな風に感じたものだ。

あの日の出来事を魔導王は、今も覚えている…。

 

 そこにあるのが常である事に、人はいつ迄も同じ感情を抱く事が出来るのだろうか…。

嘗ていた世界と同じ道を辿らぬよう、この大自然を脅かすモノ全てを排し守るべき『宝』である。

 ユグドラシルよりの来訪者であれば共通した認識を持てる筈なのだが…。

残念ながら今の魔導王にも、美しく広がる大自然や夜空を眺め心動かされ、星空を宝石箱と例えた

あの時と同等の感動を覚えるのは、難しくなっているのかも知れない。

残酷な百年そして、更に続く悠久なる時…。

 

 魔導王は、最大限の警戒を忘れる事無く、改めて転移後の百年を振り返る。

その間、遭遇した様々な出来事を回想し邸宅へ足を踏み入れた。

優雅に先導する黄金色の長い髪をなびかせる男装の麗人であり執事でもある女に続くのだが…。

邸内は、外部入邸者の侵入を掴む無数の亡者が(まと)わり付く嫌な負荷を感じさせられる。

亡者達の妨害を受け僅かに歩幅調整を強いられる事となる。

些細な隙すら見せる事は出来ない。これを悟られない様に後に続かなければならない。

 

 随分長い廊下だと振り返る…。

 

 するとそこは入邸時、執事の手により開かれたあの扉があり、それを背にしていた。

魔導王は、瞬時にこれが邸内に配備されたギミックの一つであると理解した。

理解はしたが…。

こちらは、曲がりなりにも邸内に招かれ身だ。

流石にこの扱いは無礼であろう。

どう言う事か執事に問い質そうと向き直ると、その姿は遥か遠くにある…。

 

 発動条件は、単純な動作における物だろう事は推察できる。

ナザリック防衛時の責任者デミウルゴスもこうしたギミックをナザリック地下大墳墓の各所に配備

していたので、これも同様の物であると悟る事が出来たのだが違和感を感じてしまう。

 

 今回の様な訪問形式であれば、ギミックの発動は解除し手の内を隠すのが定石だ。

防衛の観点から誰しもが、初めにそれを行う筈である。

だが、敢えて手の内を晒す様な愚行とも取れる真似をしているのは何故だ…。

魔導王は、違和感の正体を暴く事を考え、慎重に成らざる得なかった。

他に無ければ、敢えてギミックの存在を晒す必要は無いのだから…。

 

 自分が行い、執事が行わなかった事。

考えている間にも、執事は歩幅を緩める事無く一定の速度を保ち進んで行く。

そして、ついには角を曲がり、その姿を完全に見失ってしまった。

 そもそも先導者が後続の遅れに気付かないのも不自然極まりない。

優秀な執事であるのか判断は出来ないが、その能力や練度を魔導王は高く評価し警戒している。

 

 この行為には、何か深い意味がある。

 

 その可能性を留意し魔導王は、待合室を兼ねた玄関ホールに留まり次の一手を考えてから

先へ進む事にした。

 

───────────────

 大 迷 宮  邸 宅 応 接 室 

───────────────

 最近では、私室の前を誰が通り過ぎ、立ち止まったのか。

ノックの強弱等に至る迄、邸内の者であれば解る様になっていた。

それは、この応接室にいても同じ事。

この歩幅と力強いピンヒールの歩行音、ノックの具合は間違えようがない。

 

*コン・コン*

 

「御主人様、魔導王陛下をお連れ致しました。」

 

 この地で目覚めたその折に傍らにいたのも彼女であった。

あれから、随分時が流れた様に感じられるが、まだ二年しか経過していない。

大気汚染や未知のウィルスの脅威に脅かされ、仕事を終え帰宅しても出迎えてくれる家族もない。

そんな過去の現実世界。

孤独で淀んだ生活の中、唯一つ闘争に明け暮れ仲間達と共に充実した時を過ごせた場所。

仮想空間ユグドラシル。

あんな現実世界より遥かに、この地で過ごす日々は充実している。

 

「ヒルデリアだね。どうぞ。」

 

 主の短い入出許可の言葉を聞き終えてから、ドアノブに手をかけ応接室の扉を開いた。

室内には、珈琲の良い香りが漂っている。

豪奢な椅子が配されたその場で、黙然と腰を落ち着かせている我が主。

御主人様が魔導王の訪問に合わせ威風堂々と立ち上がり、わたくしを見て呆気に取られている。

そして、何故か微笑んでおいでだ。

何か非礼でもあったか思考を巡らせるが、思い付く事がない。

 

「いや、すまない。ヒルデリア。

 君が連れて来てくれたと言うその魔導王陛下の姿が見えないのだよ…。」

 

 ヒルデリアは、ハッとし邸内のギミック解除を忘れていた事に今気付いたようで、それを主人に

報告し謝罪すると、慌てて邸内ギミック操作班へメッセージを送っている。

 

「御主人様、申し訳ございません。

 直ちに魔導王陛下の元へ戻り、ここへ連れて参ります。」

 

「今回は、こちらの不手際だよ。

 直接、魔導王陛下の元へ行き、手違い(・・・)を詫びる必要があるだろうね。」

 

 ヒルデリアが申し訳なさそうに下を向き、分かりやすく落ち込んでいる。

きっと、後でギミック班の皆に差し入れをし、詫びに行く事迄考えているのだろう。

この二年で、彼女も随分と変わった気がするが、それは悪い意味では無い。

落ち込む彼女の肩に手をあて『一緒に行こう』とバルディアが声をかけると、先程迄の曇っていた

表情を一変させ、気を引き締め理知的な美しい表情を見せてくれた。

 

───────────────

  大迷宮 邸宅 玄関待合室 

───────────────

 違和感の正体…。

次の一手は何が最適か考えながら今回のこれは、ただのミスだと判断し迎えが来るのを待つ事にし

たのだ。

ゴシック邸宅の玄関は、ドアを望む待合室としての造りも兼ねており、快適に彼等の訪れを待つ事

が出来るだろう。

 ギミックに囚われ自滅するような事態に陥らない為でもある。

そうした可能性が僅かでもある場所で無駄に動き回るべきでは無いだろう。

魔導王が、現在地から得られる情報を全て記録し終えた頃、始祖と執事が迎えに現れた。

始祖か或いはこの執事か、意外に抜けた所があるのだと人間味ある所に少し安心する。

 

「申し訳ない魔導王陛下。

 どうも、こちらに手違い(・・・)があったようでね。

 無事で何よりだ。

 彼女を責めないで頂けると非常に助かるのだけどね。」

 ((魔導王は、変わらず慎重な男でいるようだね。

  邸内を歩き回って貰えると面白かったのだけど、そんな真似はしないか…。))

 

「あぁ。

 責めはしないさ。誰にだってミスはある。

 もし、次があるならその時は気を付けてくれれば、私は一向に構わない。」

 ((当然か、ギミックは他にもある。

  何の為にと言う疑問は残るが、ただその一端を見せた。と、言った所なのか?

  自尊心が強いだけの男では無いだろう。今回の会談で全て見せて貰うぞ。))

 

「助かるよ、魔導王陛下。

 さて、ここで立ち話と言うのも何だろう。

 応接室でゆっくり、話しを聞かせて貰えるかな。」

 

 魔導王が用心深く慎重な男である事は、誰の目にも明らかであり充分に理解出来た。

この慎重な姿勢こそが、魔導王アインズ・ウール=ゴウンと言う人物の神髄なのだろう。

後は、二年前の約定を守る事が出来たかどうかで、今後の付き合い方も変わってくる。

 先程迄の会話で始祖は、謝罪を口にしつつ、その実魔導王を観察していたのである。

それは魔導王も同じ事。始祖の言葉、仕草、全てを観察し記録していた。

 

 会談は既に始まっているのだ。

 

「あぁ。だが、その前に一つ確認しておくぞ。

 シャルティアとコキュートスは無事なのだろうな?」

 

 魔導王は、語彙を強め同格である事を強調し、囚われ理不尽な目にあい苦しんでいる仲間二名の

安否について問うたがその返答は意外な物であった。

 

「その質問に対して、私は答える事が出来ないのだよ。

 その件については、応接室で初めに彼女から説明があるだろう。

 さぁ、行こうか魔導王陛下。」

 

───────────────

 大 迷 宮  邸 宅 応 接 室 

───────────────

 室内には、珈琲の香りが漂い豪奢で落ち着きのある雰囲気がある。

 応接室中央には、先程迄始祖が座していた会談用の豪華な椅子と長机が配置され、魔導王は下座

に案内された。

始祖がゆっくり着席し、遅れて魔導王も着席した。

 

((下座か…。))

 

だが、今問題なのはそんな程度の低い話しでは無い。

 

 双方着席後ヒルデリアが起立したまま、早々にシャルティア、コキュートス二名の身柄について

魔導王に対し語りだした。

 それによると、コキュートスは始祖の手により滅ぼされる寸前であった事。

それをここにいる執事、そして大迷宮に属する他二名が、思い留まるよう進言した事で二人の身柄

が現在ヒルデリア預かりとなっている事を粛々と語る。

 今の所、彼等の生命活動が危機に晒される事は無いが、それも魔導王の復興事業報告を踏まえ、

改めて主が定める事になると説明を終えると主の脇へ移動し控え、次は貴方の番だと言わんばかり

に魔導王を見据え報告を待つ。

 

((始祖からコキュートスに誘いがあったのか…。

 その誘いに乗った。武人である彼が断る事は無いだろう。

 おそらく、そこで始祖の力の一端を暴こうとでもしたのか。

 しかし、暴く事叶わず滅ぼされる寸前迄陥ったと…。)) 

 

「始祖殿、加減は出来なかったのですかな?」

 

「加減はしたよ。

 私は、スキル一つ使わず片腕を使っただけだ。

 充分加減した筈だよ。

 そうだね、ヒルデリア。」

 

 魔導王の問いが詰らないのだろう。

 始祖は表情無く答えた。

 

「左様で御座います。

 御主人様は、最大限力を抑えておいででした。

 しかし、彼の者が脆過ぎたのです。

 彼の者達は、わたくし共が預かり現在身の安全は保証されておりますわ。

 彼等の身柄を案じるのであれば、先ずは二年前交わした我が主との約定。

 その成果を報告なさった方が宜しいですわ。

 魔導王陛下。」

 

((…なんだ、この関係性は…。

 事実『百年の絆』で確認できる二人のステータスに異常は無い。

 するとNPCが主の行いに異を唱えたと言う事になるのか?

 それを是とし、受け入れる始祖…。

 なんだこの関係性は…。

 正直羨ましくも思うが、今は復興状況の報告…だな。

 気が重い…。))

 

「それは何より。

 ヒルデリア殿とその言を受け入れて下さった始祖殿には感謝しよう。

 配下が無礼を働いたのであれば、謝罪もしよう。」

 

「無礼か…。

 …そうだね。

 あの脆さは、無礼だね。」

 

「なかなかな辛辣な…。

 当人も精進の至らなさを反省している筈だ。

 部下の失態は、主である私の失態でもある。

 始祖殿と渡り合えない部下ではあるが、大切な仲間でもあるのだ。

 申し訳ない。」

 

 なかなか旧王都の話を進めない魔導王に対し、始祖の瞳が二年前見せた物に変貌しつつあり、

退屈な表情を浮かべている。

 

「では、始祖殿。

 先ずは、謝罪させて頂きたい。

 望まれた美しい都市の景観。

 その復興は期間内に問題無く完了した。

 だが、入居者は八割程度に留まっている。

 現在も入居者募集中とし活動を行っている段階だが難しいだろう。

 この内容で納得して頂きたいのだが、可能だろうか?」

 

 始祖の表情が少し和らぎ、その(まぶた)が静かに閉ざされた。

こちらの感情は、この頭蓋から読み取る事は出来ない筈だ。

この表情は、満足していると理解して良いだろうと、魔導王は胸を撫でおろす思いである。

 

 閉ざした(まぶた)がゆっくりと持ち上げられ、その双眸が魔導王を射る様に見据えた。

二年前に見せたあの時の瞳。

アレが子供騙しであったかの様に遥かに禍々しい別の何かである。

 

「…二年。

 私は君にそう伝えた筈だよ。

 …………………魔導王陛下。」

 

 本来であれば白い筈の眼球結膜(がんきゅうけつまく)が漆黒と化し、異様な物へ変貌を遂げている。

緑の瞳孔がより際立ち、その輝きは宝石のようだ。

 始めて見る、この変調が明らかに不味い物である事は理解できる。

更なる不吉の予兆であり、ソレを迎えてはならないと直感した魔導王は、慌てて言葉を続けた。

 

「確かに二年もの猶予を頂いた。

 それに応じる事が出来なかったのは、私の落ち度である事に違いない。

 だが、始祖殿は三百年前より眠りにつき、覚醒したのは二年前だと言うでは無いか。

 私がここへ来た百二年前と比較し人口は随分減ったのだよ。」

 

 圧倒的な暴力を携えた眼差しである。

先程迄の柔らかな表情は、その双眸の変調だけで相反する物となっている。

始祖は、変わらず微笑んでいると言うのに…。

 

 

 

                『闇』

 

 これは、属性等では無く闇そのもの…。

『原初の闇』が始祖である事を魔導王は確信する事になる。

原初素体は、属性ではなく文字通りのモノなのか…。

 

「誰が減らした?」

 

 漆黒の闇に輝く緑の眼差しが魔導王に注がれ、次なる言葉を邪悪な笑みを浮かべ待っている。

嘗ての現実世界で感じた事のある、額から滲み出る何かを感じた。

 

「嘗て、旧王国と帝国の戦争があった事はご存知であろう。

 この地で静かに暮らしていた我等だが、面倒事に巻き込まれてね。」

 

 ヒルデリアも同じような事を言っていたとバルディアは想起する。

しかし、バルディアは知っていた。

魔導王が語る面倒事が自作自演による物である事をロベルトが調べ上げ、ジルクニフからの言も得

ていたからだ。

 フールーダ・パラダインを使い情報操作を行った上で、皇帝へ墳墓探索を進言した。

全ては、ナザリック地下大墳墓の活動領域、支配領域を拡大させる為である事を…。

 

「当時の帝国皇帝。

 私の友人(・・)でもあり、現在は始祖殿の御家族だと聞いているジルクニフ殿。

 彼に国を興してはどうかと提案されたのだ。

 その為であれば、帝国は助力を惜しまないと迄約束してくれた。

 これは私の推察だが、帝国は長年に渡る戦争の終結を早期に望み王国併合を望んだのだろう。

 そこで開幕の一撃に、私の最大魔法をと皇帝から申し出があったのだ。

 誰しもが平和を願う。

 違うかね、始祖殿?」

 

 魔導王は、この会談における絶望的な状況から何とか脱する為、過去の出来事と始祖の新たな

家族であるジルクニフを結び付け、大虐殺についての正当化を論じ復興への猶予期間を得ようと

考えていた。

 

「つまり世直しだと?」

 

 魔導王は、直感していた。

始祖が会談において知るべき事は全て知っている。

ここで下手な嘘の歴史を語れば、シャルティア、コキュートス、そしてナザリック地下大墳墓も

無事で済む筈が無い…。

 

「…少し違う。

 確かに、あれは我々の自作自演によるものだ。

 フールーダ・パラダインを使い、皇帝に魔導国建国への道筋を作った。

  だが、誤解しないで欲しい。

 力の一極集中を成さなければ、嘗ての我々の世界と同様の末路を辿る。

 あの環境がやがて訪れる事は何としても避けたかったのだ。」

 

「それが世界征服を行う理由か?」

 




なかなかUP出来なくて申し訳ないです。

お楽しみ頂けたなら嬉しく思います。

アインズ様の『百年の絆』について。
 お忘れの方もおいでだと思いますので、説明させて頂きます。
ゲームで言う所のパーティーメンバーのヒットポイント、マジックポイントを意識を向ける事で状態が解る、百年目にして得たスキルのようなものです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。