OrverLord ─始祖の吸血鬼─ 作:ブラック×ブラック
忙しくなる前に、彼女達がどのようにしてこの300年と言う長い時を過ごしてきたのか興味があるし、聞いておかねばならない事でもある。
長くなるだろうが最初の300年前の話を聞かされ、驚かされたが僅かな情報を得る事は出来た。
千の騎馬兵等想像もつかないが、ヒルデリアが一掃出来るのであれば自分にも異なる方法ではあるが可能だと確信した。
しかし、大量虐殺を成した女に対し嫌悪感を全く感じない。
むしろ誇らしく楽しんでいる自分自身に驚かされるのだから本当に愉快だと心底思う。
それにしても、この外見で千の騎兵を一掃したって信じられない話しだけどNPCいや今は命ある者なのだろう。いずれにせよ彼女が自分に嘘をつく道理は無い。
自分で作ったとはいえ、間近で見ると可愛いと言うより美人の部類だと改めて思う。
スタイルも良く容姿に関して文句の付け所が無い。
NPCビルドに力をいれていた過去の自分を誉めてやりたい気分である。
まじまじとヒルデリアを見ていると、彼女の顔がみるみる紅潮してしまったので別の事を考える事にした。
先ずは、現状において良い点が幾つあり、それがどの程度の物かを考える事にした。
拠点がそのままこの地に転移している事について、ワールドアイテムや財産と資材もそのまま転移してきたようだ。宝物庫と資材置場の中の確認を済ませた後ヒルデリアの手により封印されたと聞く。
ルゥ=ルゥの防衛システムが機能している事で、外敵の進入は皆無と言って良いだろう。
ルゥは、大迷宮場所縛りにした分ワールドアイテムも保有し防衛に特化したビルドだ。
ワールドアイテム等で侵入出来たとしても無事ではいられない筈だ。
ユグドラシル由来のスキルと魔法が使えるのも喜ばしい事だ。
万一戦闘になった時、使えなければ意味が無い。
自身が所持しているスキルや魔法、ステタース、ヒットポイント、マジックポイントも意識をそちらにむけると全て確認できる。
ユグドラシル最終日、寝落ちしてから変動はない様だ。
ルゥ=ルゥにも後で会いに行こう。
設定どおりだとヤバイガキだけど、私の覚醒を喜んでくれるだろうか何だか少し不安だが楽しみである。
ロベルトが周辺諸国の情報収集を行っていると聞き一抹の不安を覚えた。
あれは庭師の筈だが、ヒルデリアの話では問題ないとの事だが…。
あのサブマスが作ったNPCだから予想できない。
その方が楽しめると考えると良いのかも知れない。
情報収集は上手くいっておりその報告によると、どうやら歴史上(プレイヤー)の存在を書物や
口伝等で確認したそうだ…。
この時点ではまだ情報不足なので極端な行動は避けるべきだと判断しよう。
ただ、大迷宮の誰か一人でも害を受けたなら話は別だ。
帝国の大貴族か…。
これはどうなのだ?
面倒事に巻き込まれないだろうか?正式な返答をしなくてはならないのだったか…。
気が進まないが一度帝都へ出向く事にしよう。
アインズ・ウール・ゴウン魔導国への対応だが頭が痛い。
かつてユグドラシルの仲間達と集めたデータをヒルデリアが所持している。
ナザリック地下大墳墓に挑んでみたいと言う思いからモモンガや他のメンバーの情報を買ったりも
したが、実行される前にギルドメンバーが次々に引退していったのだから、一人では敵わないだろう。デュエルと言う形であれば、問題ない筈だがこの世界でデュエル戦は問題ないのだろうか…。可能であるならお手合わせ願いたいものだ。
問題なのはNPCの方だ。
データが一切ない。ワールドアイテム持ちNPCは、悪手を取らず確実な方法で攻撃してくる。
そこに隙があるのだが、その隙を放置しておくようなギルドでは無いのは何となく解る。
ロベルトは後で誉めてやろう。あんななりだが、今は頼れる庭師兼諜報員なのだから。
彼の情報収集力を侮っていた事を深く反省した。
そう言えば、100年前魔導国はこの大迷宮に侵略行為を行わなかったのだろうか?
これについては、ヒルデリアも少し苦笑いをし当時の皇帝の判断が比較的早く亡国『リ・エスティーゼ王国』と異なる姿勢を取る事により自治権を認められた形で属国化したそうだ。その後、表面的には良い関係を築いているとの事だ。であるなら、これは大貴族の話は立ち消えていると考えた方が良いだろう。
帝都には行ってみたいし、その時に確認すれば良いだけだ。
大貴族というものに興味は無いしなりたいとも思わないので問題ないが、約定を違えたと意地悪を言う程度の楽しみはありそうだ。
若干不鮮明な点もあるが良い報告だと思う。
後は自分で確かめるしかないだろうな。
「庭園はどうなっているのだろう?」
ロベルトの情報収集の仕事に関心しつつ、ふと庭園の事が気になりぽつりと呟くと同時に
ルゥ=ルゥからメッセージが入る。
何でも客人らしく『シャルル』と名乗る少女だと言っている。
気配は真祖の吸血鬼か。この地で従属化した者はいない。
「真祖か。目覚めたばかりだと言うのに面倒だね…。」
「ご命令とあらば、いつでも私が滅ぼして御覧に入れます。」
冷静に恐ろしい事を口にする彼女にこちらに来るように手で合図し頭を撫で落ち着かせ話を続けた。
「だめだよ。一応同族だしね。
ここへ来た目的も不明なまま滅ぼせば後の対応も出来ないだろう?
それとあれが帰るまで私の名を呼んではいけないよ。」
「御意のままに。では、何とお呼びすれば宜しいのでしょうか?」
「お好きにどうぞ。では客人を出迎えるとしよう。」
前を歩く主様は、威風堂々とし御美しい御姿である。我々グリモワール=ファミリアの主様の
下僕一同が、この日をずっと待ち侘びていたのだ。
使用人達は作業の手を止め、主様へ深々と腰を折り忠義の意を示しその表情は満たされているではないか。
艶やかな白とも白銀色ともいえる長い髪が歩を進めるたびに輝き揺らめく。
黒を基調とした御召物、夜空を切り取ったかのような漆黒のロングコートは気品があり、天空に輝く星々を閉じ込めたかの様な輝きを時折みせ、見る角度によっては本当の夜空のようにも見える。端正なお顔立ちと不思議な緑の瞳は猫のようでもあり、魅了の効果でもあるのではないかと感じさせられる程魅力的だ。物腰は柔らかで、我々下僕達に分け隔てなく接して下さる。そんな主様にお仕えする事こそが我等の至上の喜びである。どこまでもお供致しますと心の中で今一度かたく誓い、それを脅かす者には慈悲無き制裁を与えてやろうとも誓った。
客人を迎える道中で主様は吸血鬼について教えて下さった。
なんでも、吸血鬼には格があるそうだ。
我が主は始祖と呼ばれ吸血鬼の頂点に座しておられる存在である。
やはり主様は素晴らしいお方だ。(えっへん)
始祖様の血を分け与えられ、それに耐える事の出来る者のみが真祖と呼ばれる吸血鬼となり、
その総数は生まれ持った適正等からかなり少なく希少種であるとの事らしい。
真祖は吸血し、その才ある者達が人間達の世界で知られる一般的な吸血鬼という事らしい。
吸血鬼社会は、貴族社会のようなものだと仰られる。
数少ない真祖達が貴族にあたる。
彼等が実質吸血鬼達をまとめているそうだ。
真祖となった者達が再び始祖様に会う事は非常にまれでありほぼ無いそうだ。
真祖が吸血鬼社会に害悪と判断される行為をとった場合にのみ、主様はその個体や組織を滅ぼしに行くそうだ。
グリモワール大迷宮へ訪れたのは真祖の吸血鬼。
主様の真祖ではないので、丁重にとの事なのでそうする他ない。
それにしてもこれが真祖なのか?ありんすありんすと少々煩いけど我慢すると致しましょう。
応接室で御待ちの主様に粗相が無いように質問には素直に答える事だけは忠告して差し上げましょう。怪訝な顔をしているが、構わず応接室の扉を開くと突然背後にいたシャルルなる真祖が跪いた。
主様は上座にある一段高い場所に設置された玉座に腰を下ろしておいでだ。
なんと御美しい御姿か…。
しかし、なんだこの真祖は、主様に礼を尽くすその態度は良いが表情が一致していない。
「まず、君の名は?どこの者か話しなさい。」
シャルルは、圧し潰されそうな重圧を感じている。
自身の主と似て非なるもの…意に反して体が勝手に跪きひれ伏している状況に気付いたのは名を問われてから少し時間が経過した頃だろうか…。
危険信号が鳴り響く…。
シャルルは主人にまた迷惑をかける事になると考えると不安と恐怖、過去に犯した罪からくる罪悪感が蘇りそれに苛まれる。『それだけは嫌だ』その思いだけが強い意志となり何とか意識を保たせ情報を得る事だけに徹しようと判断する事が出来た。
以前聞いた事がある吸血鬼の始祖なる存在なのだろうか。自身の主人以外の者にひれ伏すなど考えられない。
私の創造主はぺロロンチーノ様であ・り・ん・す!そして至高なる我が主はアインズ様ただお一人だけ!自分は『始祖様』の眷属等では無いと何度も強く否定した。
この私を見下した態度も気にいらない…名を聞かれた?シャルルと答えた筈だ、偽名である事が既にばれているのか?
今更だが、ここまで案内してくれた執事の女が質問には素直に答えるようにと忠告してきたのを思い出した。偽名を名乗るのは得策では無いと瞬時に理解した。
「ア、アインズ・ウール・ゴウン魔導国所属、シャルティア・ブラッドフォールンと申しんす。」
真祖である自分自身が一番よく分っている筈だった。
『嘘は禁物だ』だ。更に圧し潰されそうな重圧がシャルティアを襲う。
そんな中、歯をガチガチと鳴らせシャルテイアは今尚、情報を引き出そうと試みている。重力系のスキルか、魔法だろうか?
一体この状況は何なのか、偉大なる御方以外の『御方』にひれ伏す等あってはならない。『始祖様』は何もしていないようだ…。
先程から『始祖様』と呼んでいる事にシャルティアはハッとした。
「シャルルは偽名なのだね。随分と早いお出ましだ。
アインズ・ウール・ゴウン…ペロロンチーノ…誰の指示だい?」
「!!!ど、ど、ど、独断であ、ありん……ご、ございます!」
シャルティアは一度も口にしていない彼女の創造主であるぺロロンチーノの名が出た事に驚愕し
完全に冷静な判断が出来ない状況に陥ってしまった。
バルディアにとっては、なんて事はない。ぺロロンチーノはパワープレイヤーだ。何度かPvPで対戦する機会もあった。偶然、本当に偶然ぺロロンチーノの事を思い出しただけなのだから。
だが、シャルティアにとっては違った。頭の中を覗かれていると誤認してしまったのだ。
「来訪の目的は?」
「ど、同族のつ、強い気配を感じ、き、興味を持ち、アインズ様の許しを得た上で参りん…
参らせて頂きました…。」
そう答えると先程迄シャルティアに圧し掛かっていた重圧が嘘のように消えた。シャルティアは思う。ナザリックの情報を引き出そうと敢えてそうしたのだと…。
しかしなぜと言う疑問は残る。頭の中を覗けるなら敢えて質問する意味は無い。しかし、下手の嘘は逆効果になり、アインズ様やナザリックの皆に迷惑を掛けてしまうのではないか。頭を空にしなければならない。そして問われた事だけに答えるように努めるように決意する。
だが、その決意も次の質問で瓦解してしまう。
「ところでアインズとは誰の事だい?モモンガでは無いのか?他に誰がいる?」
((アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターはモモンガだろ?誰がアインズ・ウール・ゴウンを
名乗っているんだ…))
アインズ様の真名をご存知だ!!ぺロロンチーノ様の事もご存じであらせられた。アインズ様と同格の存在であると考えるべきでなのだろう。
シャルティアは完全に動揺してしまっている。暴力ではなくただの言葉だけでここまで追いつめられるとは思い至らなかったからだ。
他と言うのは至高の41人の方々の事であろう…。
しかし、流石と言ったところだろう。100年前にこの世界の覇権を握った者の配下としての意地をみせた。
シャルティアは自らの意思で、この情報だけは漏らしてはいけないと確信のようなものを得ていた。
「…も、申し訳御座いません始祖様。
お答えして良いものか私には判断致しかねますので、なにとぞご容赦頂きたく存じ上げます。」
「そぅ…だね。残念だ。
まぁ良い、同族の来訪嬉しく思うよ。
魔導王陛下には近く御挨拶に伺うと伝えてくれるかな?
それと君達と敵対する意思は今の所ないと言う事も付け加えておくれ。
また来ると良い、もう帰って良いよ。」
「し、失礼ながらお尋ねしたい事がありん…ございます。」
「私に答えられる事であれば、どうぞ。それと、私にとっては初めての客人だ。
もっと楽にしていいよ。」
シャルティアは、自分より遥か上位に座する吸血鬼の存在について興味があった。ヴァンパイアの始祖様…。
真祖として創造されたシャルティアにとっては、始めて会う存在である。
ぺロロンチーノ様はバードマンと呼ばれる種族だ。
創造主の事を話すNPCは本当に嬉しそうに語るものだと驚かされる。ルゥ=ルゥやヒルデリアも同じなのだろうか…。ぺロロンチーノさんも来ているのかな。来ているなら君の事を語る今の彼女を見せてあげたいものだ。
話しを続けようと言い始祖様は語りだした。
始祖以外から真祖が誕生するのは珍しいと言うより、あり得ないそうだ。
勿論、これはバルディアのちょっとした意地悪であるが、そんな事を今のシャルティアには理解できない。
シャルテイアの表情がコロコロと変わり楽しませてくれるので、バルディアはすっかり気に入っていた。
NPCビルドの種族選択で設定すれば真祖を作る事は可能である。
始祖は種族Lv最上位といくつかの条件で得られる隠し要素なので余り知られていない上位種であるが、これは秘密だ。
シャルティアが無条件でひれ伏し重圧を感じたのも、この種族間序列が関係し上位者は無意識なので何も感じていない。むしろシャルティアが膝を折る姿を見て礼儀正しい子だと感心している程だ。
魔導王陛下の御許可を頂き時間に余裕があるようなら、遊びにきて良いと伝えるとシャルティアは意気揚々と帰って行った。
((伝言大丈夫だろうか…あれだけ礼儀正しい子だ、きっと大丈夫に違いない。))
「ヒルデリア、あの子は酷く緊張していたようだけど、どうしてだろう?」
その問いに答える事無く、ヒルデリアはなぜか誇らしく、それでいて飽きれているかのように微笑んでいる。どういう事だろう…。
何かやらかしてしまったか?シャルティアを緊張させてしまうような事を何か言ったのだろうかと反省する事になるが、客人と言うのは良いものだと感じた。
外でルゥ=ルゥが屋敷の中を心配そうにうかがっているようだと知らされた。おぉ…想像した通り可愛いじゃないか…。ヒルデリアにも当てはまるが、創造したNPC達は想像を上回った存在となっている。この300年苦労したのだろうな…。
さぁ、ルゥに遊んでもらうとしようかな。
本当の家族を知らない自分にとって、ギルドメンバーの皆が家族であると感じていた。
今NPC達、いや命あるグリモワール=ファミリアの者達に対する感情はかつての仲間達とはまた別のもの。家族とはこう言うものなのだろうかとふと思うバルディアだった。
シャルティア様の登場です。
今後、シャルティア様との交流も記していければと考えております。
お楽しみ頂けたなら嬉しく思います。