OrverLord ─始祖の吸血鬼─   作:ブラック×ブラック

4 / 19
ナザリック地下大墳墓きました!
本編のイメージを損なわないように注意しました


第四話  ナザリック地下大墳墓-1

──────────────

  第十階層 玉座の間

──────────────

ここに集った階層守護者、プレアデス達はただ静かに待ち続けている。

シャルティアの報告を受けたアインズが『始祖』なる存在の対応を協議する為の緊急招集である。

しかし、玉座に腰掛けたアインズは沈黙を続けていた。

守護者達は、その沈黙の意味を理解していた。

アインズが守護者達の自主的な発言を待ち続けているであろう事に…。

そう、理解は出来てはいるが、ここにいる全ての者が初めて経験する『100年の揺り返し』は知恵者達に迂闊な発言が行えないよう強制させている状況でもあった。

 

 

これより先は未知との対峙。

 

 

より慎重な対応策を熟慮する必要性が強いられている。

誰一人言葉を口にしない、頭の中で対応策を思案し穴があれば再考を繰り返しているが肝心の情報が少なすぎる。

その為かナザリックの知者達がそろって口を噤む事で他の守護者達もおいそれと発言できない重たい空気が玉座の間を支配している。

そんな中、今回の報告をもたらした張本人が元気な声と共に挙手し、発言の許可を求めている。

そんな彼女に一同の目が集まる。

 

 

そして…。

 

 

「シャルティア~~あなた本当に分かっているのかしら?

 今、あなたの報告に対して私達は『始祖』なる存在を『重大な脅威』と認識し熟考し慎重な対応

 に迫られているのよ?

 そもそも、あなたは、いつもいつもいつも!問題事を持ち込んで、アインズ様に対して申し訳な

 いと感じないのかしら?」

 

 

 

アルベドがシャルティアの挙手発言権の許可に対し、通例通りに対峙する。

この通例行事とも言える二人の問答が結果的にその場を支配していた重圧から皆を解放させたのもまた事実である。

 

 

 

「そうだよ、シャルティア。君の報告によるとその『始祖』なる存在だったね。

 その力の一旦は私の『支配の呪言』とは別の…考えたくは無いが更に強大な何か得体のしれない

 ものである事は容易に推察できる。間違いなくそれだけでは無いだろうねぇ。

 

 つまり、我々ナザリックが警戒するに足る『化け物』と言う事さ。

 

 君が託された伝言を思い出して欲しい。

 

 彼の者は、我らが『絶対なる支配者』であらせられるアインズ様に近く挨拶に来ると言うではな

 いか。

 また敵対者であるかどうかと言う事だが…。

 

 …これは我々の出方次第だろうね。

 

 ただ現状で『今の所は敵対の意思が無い』そぅ表明しているのだよ。

 それほどの力を持つ者の言だ。私はその言葉を信じて良いと考えるね。

 

 …シャルティア、先に謝っておくよ。

 君の報告は、今後のナザリックの方針を左右する上で重要な案件である事は明白だろう。

 しかし君が持ち帰った情報だけでは判断を決定付けるには早計であろう事は、アインズ様も既に

 お考えなされているのだよ!

 だから、今まで敢えて沈黙を守り我々の自主性を重んじ議論の場を設けて下さり、更にはその開

 始を忍耐強くお待ち下さっていたのだよ!

 ここは一度相手の出方を見た上で、より建設的な協議を行った方が良いと考えるのだが皆はどう

 だろうか?

 友好関係の構築かそれとも敵対か、そのいずれかを選択するにしても情報が乏しい今の段階で敵

 対するのは愚の骨頂と言えるだろうね。

 速やかな情報収集こそ我々が最優先に行わなければならない事なのさ。」

 

 

 

 

デミウルゴスは、大げさに両手を広げ守護者達に向き合う。

そしてそのまま偉大なる御方に向き直り深々と腰を折りながら主の言を待つのであった。

周囲からは、デミウルゴスの意見に対する賞賛や同意、あるいはアインズが守護者達の自主性を重んじ沈黙を守り続けた慈悲深さ、あるいは数手先を見通す賢智の偉大さに感嘆している。

 

ただ一人、アインズだけは本当にその対応で間違い無いのか今尚決めかねていた。

デミウルゴスは良くも悪くも『力ある者』を過大評価する傾向がある。

相手を侮らないと言う点においては良いが、我々『プレイヤー(人間)』と言う生物はデミウルゴスが考えるような崇高な生物ではないのだ。

本来の姿は、弱くずる賢く卑劣でどうしようもない『クズ』なのだ。

 

100年前のアインズであれば、あの伝言を素直に信じ喜んで出迎えた事だろう。

しかし、今の彼は100年前とは決定的に異なり絶対なる支配者としてあるべく日々研鑽を積んできたのだ。

当然、デミウルゴスの言は正しいし、相手を信じたいと言う気持ちもある。

だが、それは愚者の行いだとも考えている。

 

友好関係を敢えて伝えてきたのはブラフではなかろうか?

そもそもあちらのプレイヤー数、ワールドアイテムの有無、スキルや魔法攻撃手段等、相手の戦力がどの程度なのか何一つ掴んではいない状況である。

 

 

対して相手はこちらの、ナザリックの情報や戦力を熟知しているかのようでは無いか。

その上でのあの伝言だとするならば…。

 

誰でも簡単PK術を見事に実行している相手だ。

 

チェックメイトをかけられた状態と言っても過言では無いだろう。

デミウルゴスの言う通り先ずもって情報収集は必須である。

その手段こそ今考えなければならない筈だ。

 

アインズにとり、ここに集う全ての者達はもはやNPC等ではない。

かけがえの無い大切な存在なのだ。

彼等の為なら数度戦い負けを演じる事は苦でも無いし実際そうしてきた。

ただ、今回ばかりはこの方法が通じる相手ではなさそうだ。

 

 

 

「さすがはナザリック一の知恵者だ。感心したぞデミウルゴス。

 しかし、少し足りないぞ。また『ディスカッション』しようではないか。」

 

「おぉ…流石はアインズ様。私の至らなさをそのような形で補って頂けるとは…。

 このデミウルゴス、アインズ様の賢智に及ばずともしかと学ばせて頂きます!」

 

「アインズ様!私もその『ディスカッション』の参加をお許し願いえないでしょうかぁ!」

 

「ん~~ではぁ~!!んわたくしもぉ~宜しいでしょうか?ん~~~~アインズ様!」

 

 

「良いだろう。アルベドとパンドラズ・アクターも加え、今回の協議進行をデミウルゴスに任せる

 事とする。

 アルベド、パンドラズ・アクターはデミウルゴスの案に対し改善案が必要であると感じた際は、

 デミウルゴスに断った上で協議を一時中断し自身の意見を述べよ。

 無論、私もそうさせてもらおう。

 場所は私の私室、時はこれより二時間後とする。

 お前達、楽しみにしているぞ。」

 

配下の者達の動揺をかき消す一言を残すと絶対なる支配者アインズ・ウール・ゴウンは私室へ転移魔法を使い玉座の間より消え去った。

こうして一度休憩を挟み二時間後に四者協議が行われる事となった。

他の者達もそれぞれ何が出来るか考える事にしそれぞれの階層に戻る事にしたのであった。

 

──────────────

  第六階層 円形闘技場

──────────────

この第六階層に集まったのは、アウラ・ベラ・フィオーラ、マーレ・ベロ・フィオーラの第六階層守護者とシャルティア・ブラッドフォールン、コキュートスの計四名である。

先程迄『玉座の間』で行われていた協議の続きを、彼女達なりに続行しようとしているのだ。

 

 

 

「それで、始祖ってどんなヤツなのさ~。直接会ってるのあんただけなんだよ~。

 なんかこ~もっと他にないの~?」

 

「何かと言われても、そぅでありんすねぇ~。始祖様は…。」

 

「シャ~ル~ティ~ア~~!あんたねぇ~始祖様ってなによ!ほんと大丈夫なの~?

 また洗脳でもされてるんじゃないの?」

 

「ち・が・う・で・あ・り・ん・す!」

 

「フタリトモ、オフザケハソノヘンデイィダロゥ。ワレワレモ、ケンセツテキナキョウギヲオコナ

 ウベキダ。」

 

「ぼ、ぼくもそう思いますぅ~。シャルティアさんは『始祖』って人の事どう感じたのですか?

 良い人でしたか?悪い人でしたか?」

 

「そ~でありんすね~…。

 まず初めに断っておくでありんすけど、私の主は偉大なる御方アインズ様ただお一人だけであり

 んすぇ。

 そこの所はちゃ~んと皆にも分かっていて欲しいでありんす。」

 

「そんなの当然じゃない!で、何が言いたいのさ?」

 

 

 

 

シャルティアは、偉大なる御方アインズ・ウール・ゴウンに報告したように始祖との会談の一部始終を語り終え、『始祖様』と呼んでしまうのは種族間序列によるものではないかと推察を語り、仮にその推察が正しければ本能的なもので今回彼女自身は戦力にならないどころか、自身の意思は打ち消されナザリックに敵対行動をとるかも知れないと付け加えた。

それに対しアウラは種族間序列になるのであれば、他の種族に影響しないので問題無いのではないかと口にしたが、その言葉を制しシャルティアは更に続けた。

 

 

 

その種族が『アンデッド種』であればどうだろうかと…。

 

 

 

これは流石に過大評価しすぎでは無いかと言う意見がしめたが、この時点でコキュートスは自身の勝利絵図を描く事が困難になってはいた。

だが、彼は知っている。強者をも恐れぬ弱者の存在を。

そして今、彼等と同じ強者との一戦を控え武人としての誉を貫き通す決意をする。

何があってもどんな相手であろうとも怯みはしないと。

 

シャルティアは続けた。

 

それは始祖の人となりが寛大であった事、得もいわれぬ圧倒的な存在感があり実力の程は底が見えないと言う事、その姿を目にしただけで強制的にその場にひれ伏してしまった事、嘘が通じず思考は全て暴かれてしまう事、加えて実力ある配下の存在、大迷宮について情報を得られなかった事、彼女が得た出来る限りの情報をはき出していく。

不敬ではあるが主と同格かそれ以上の存在として語られ、いもしない魔王像が彼女達の中に蓄積されていく。

そして、ある恐ろしい結論にたどり着く事になるのである…。

 

 

 

 

 

「…真祖の軍勢…」

 

 

 

 

 

シャルティアの言葉に場の空気が凍てつく。

格は違えど、同種のシャルティアだからこそ導き出せたナザリックにとって最悪なシナリオである。

真祖の軍勢…。力の程は不明だが、真祖の吸血鬼を現地人を使い幾らでも創造する事は容易いだろうと言うとんでもない話しだ。

シャルティアも吸血による下位種の創造が出来る。

始祖の下位種は真祖となる。始祖がそのような行為に及べば吸血鬼の社会は一気に広がるだろう。そうなればこれ迄積み上げてきたナザリック、魔導国100年の歴史の幕は閉じられる事だろう。

 

四人の知者達は、おもに始祖個人の能力に対する対処法を情報の無い状態で考えているのではなかろうか、この恐ろしい可能性を完全に見落としているのではないか?

アウラ、マーレ、シャルティア、そしてコキュートスは血の気の引く思いで互いの顔を見合わせた。

 

偉大なる御方アインズ様だけは違う。

 

しっかりと御考えになられている筈だとここにいる四人は考えていた。

玉座の間でデミウルゴスに発した「すこし足りない」と言う御言葉こそがその根拠となっている。

が、万が一の可能性もある。

偉大なる御方は絶大な力を御持ちだ。だからこその見落とし…。

ナザリックの力無き者達は対処できないだろう。

 

これは偉大なる御方アインズ様に進言すべき事だと確信したした四人は無言で頷き主の私室へ急いだ。

 

 

──────────────

   第九階層 食堂

──────────────

この第九階層にある食堂に集ったのは、セバス・チャン、ユリ・アルファ、ルプスレギナ・ベータ、ナーベラル・ガンマ、ソリュシャン・イプシロン、シズ・デルタ、エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ達戦闘メイドプレアデスとペストーニャ・S・ワンコ、エクレア・エクレール・エイクレアー、シホウツ・トキツ、クラヴゥ、そして一般メイド41人である。

ここでは、セバスを中心に有事に備え各自の役割分担を明確にし確認作業が行われている。

今回戦闘メイド達は、混乱が予想されると仮定し一般メイドの退避誘導を任されている。

一般メイドを先導するのはペストーニャであり、エクレアは退避先の衛生管理を任されて、料理長、副料理長は避難先でナザリック同様の仕事をこなせるだけの準備に追われている。

そしてセバスは一般メイドとその誘導にあたっているプレアデスの護衛し終わり次第、主の元へ速やかに移動すると言う退避計画をたてた。

それぞれが完璧な仕事をなすべく余念がない。

退避訓練は定期的に数度に分け行う事とし不備があればその都度修正する事とする。

セバスは、一抹の不安を感じていた。

あの騒動後、シャルテイアは敵を侮る事無く積極的に様々な事を学び成長している。

その彼女が手も足も出ないとは、どんな隠された能力があるのか見当もつかないからである。

未知なる脅威は迷いを、恐れを、様々な負の感情を招くものである。

 

好奇心を抱けるのは、ごく一部の…そう偉大なる御方アインズ様のような御方だけだろう。

 

アインズ様はどこまで見通されておいでなのだろうか。

今我々はナザリック始まって以来の警戒態勢をとっている。

ナザリック防衛責任者のデミウルゴス様やアルベド様でさえも対応策を協議する程だ。お二人だけにお任せしておくべき事ではありませんね。

 

 

 

「プレアデスの皆さん、少々よろしいでしょうか?

 ペストーニャさん、しばらくそちらをお任せいたします。

 エクレアさんも彼女のお手伝いをして頂けると非常に助かります。」

 

「うけたまわりました・ワン。」

 

「このエクレアが、ナザッ!!!」

 

 

エクレアがペストーニャに引っ張られていく様子を見送り、セバスは集まったプレアデス達と向かい合いナザリック防衛について先程迄考慮していた事をプレアデス達に伝えた。

 

「セバス様の仰ることは御尤もですが、なぜ我々が一般メイドの退避誘導なる任務に就かなければ

 ならないのでしょうか?

 我々は戦闘メイドです。

 例え敵の力が強大でも総力を挙げ戦闘でナザリックに貢献すの事こそ本分であると愚考致します

 が?」

 

ソリュシャンの言は戦闘メイドとして創造された彼女達の総意で当然の主張だ。

それを否定したくないがそうせざる得ない状況である事も事実なのだ。

あのシャルティア様が手も足も出ない相手が仮に敵対者であるならば我々では盾にすらなれない、逆に操られアインズ様に危害を加えようと意に反し試みるかもしれないのだ。

アインズ様は常より実力差のある敵と対した時は撤退するよう仰せだ。

それはアインズ様が慈悲深い御方であり、常に我々の身を案じて下さっての御言葉だ。セバスも主の盾となれるのであれば本望だろう。

 

アインズ様は蘇生の術を御持ちだがナザリックの誰一人も死なせたくないと御考えになられるのは慈悲深い主人であるからこそその考えに至れる。

自身の力不足を不甲斐なくも感じるが、アインズ様の御意思を、御慈悲を反故にする事は許されないのだ。

 

「わかりませんか?はっきりと申し上げましょう。

 始祖なる存在が敵対者であった場合、我々ではアインズ様の足を引っ張るだけで『邪魔』にし

 かならないのですよ。」

 

そう口にしたセバスの拳は強く握りしめられ、白く清潔な手袋が赤く染まり血が滴っている。

それに気付いたのか事態の深刻さと今回の任務の重要性、偉大なる御方の思慮深さと慈悲深さに改めて畏敬の念を抱く一同であった。




デミウルゴスのセリフって大変だなぁ~っと感じました。
次回もナザリック地下大墳墓です!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。